日本初上陸!ドイツのソウルフード「レバーケーゼ・ゼンメル」専門店「TOTEMO」オープン

レバーケーゼ・ゼンメル

ドイツのソウルフード「レバーケーゼ・ゼンメル」をご存知ですか?

実は2025年5月、東京の千駄木に専門店「TOTEMO」がオープンし、密かに話題となっています。

そんなレバーケーゼ・ゼンメル専門店について、

  • そもそも「レバーケーゼ・ゼンメル」ってどんな料理だろう
  • さまざまな種類があるみたいだけど、オススメを知りたい

という悩みがある方もいるでしょう。

そこで今回、東京で世界の料理を専門で開拓する海外グルメマニアのオグが、「TOTEMO」のオーナー・マティアスさんにお話を伺いました。

本記事では、レバーケーゼ・ゼンメルの特徴や「TOTEMO」のこだわり、オススメのメニュー3品、今後の展望まで詳しくご紹介します!

目次

ドイツのソウルフード「レバーケーゼ・ゼンメル」

ドイツ南部(バイエルン州)やオーストリアで愛されるドイツ風ミートローフ「レバーケーゼ」。直訳すると「肝臓(Leber)‐チーズ(Käse)」ですが、実際には肝臓もチーズも入っていないことが多く、名称の由来には諸説あります。有力なのは、バイエルン方言で「塊(Laib)」が変化したという説です。

もっともポピュラーな食べ方が「レバーケーゼ・ゼンメル」。焼きたてのレバーケーゼを厚切りにし、硬めのゼンメル(パン)に挟んで、甘いマスタードや中辛マスタードを添えるスタイルです。ドイツ南部では屋台や肉屋、スーパーマーケットで気軽に買える「国民的な軽食」として親しまれており、まさに日本の「おにぎり」のような存在と言えるでしょう。

バリエーションも豊富です。チーズを混ぜ込んだもの、ピザ風味、オーストリアでは馬肉を使ったものも見られます。

TOTEMOフレーバーマップの張り紙

本記事で紹介する日本初のレバーケーゼ・ゼンメル専門店「TOTEMO(千駄木)」の店内には、ドイツ・オーストリアの地図が掲示されています。この地図は、地域ごとに食べられるレバーケーゼ・ゼンメルの違いをお客様に知ってもらうため、「TOTEMO」のスタッフさんが考案したものです。

実は、ドイツでは北と南で食文化が大きく異なります。白いソーセージやレバーケーゼ・ゼンメルはドイツ南部とオーストリアの名物で、南部では「おにぎり」のような位置付け。スーパーや肉屋で気軽に買うことができます。

Totemo カレー
<Totemo カレー>

一方、北部のベルリンやケルンなどでも食べられますが、特別な店でしか見かけません。北部ではむしろカレーソーセージが主流なのです。

日本初のレバーケーゼ・ゼンメル専門店「TOTEMO(千駄木)」のこだわり

マティアスさん

「TOTEMO」のオーナー・マティアスさんは、アーノルド・シュワルツェネッガーの出身地として有名なオーストリアのグラーツで生まれました。

グラーツの大学に進学したマティアスさんは、そこで運命の出会いを果たします。

奥様は、オーストリア人と日本人のハーフでミュンヘン生まれ。オーストリアに住み、マティアスさんと同じ大学に入学していました。大学で出会った二人は卒業後、グラーツの同じ会社に入社します。仕事の都合でマティアスさんは韓国へ、奥様は日本へと転勤になり、遠距離生活が始まりました。

しかしコロナ禍により1年半もの間、会うことすらできない状況でした。マティアスさんは奥様と一緒に暮らしたいとの思いから、韓国での仕事を辞める決意をします。奥様は日本人の血を引いていることもあり、日本への思い入れが深かったため、二人は日本で新しい生活を始めることにしました。

日本でレバーケーゼ・ゼンメルの専門店を作りたい

日本に移住したマティアスさんは、日本語を学びながら、主夫として家事全般をこなす日々。そんな中、ある思いが芽生えてきました。「故郷の味を作りたい」。それが、レバーケーゼ・ゼンメルだったのです。

韓国に住んでいた5年間、「レバーケーゼ・ゼンメル」を食べたいと思って探しても見つかりませんでした。日本でもレバーケーゼ(肉)とゼンメル(パン)を肉屋とパン屋で別々に購入してやっと食べられるような状況で、1つの店で完成品として売られているところがなかったのです。「それなら、自分の手で作ろう」マティアスさんは決意しました。こうして、日本初のレバーケーゼ・ゼンメル専門店「TOTEMO」への道が始まります。

「TOTEMO」が提供する「レバーケーゼ・ゼンメル」は、レバーケーゼ(肉)、ゼンメル(パン)、マスタードという3つの要素すべてがそろって初めて完成する料理です。どれか1つでも本場の味でなければ、本物の「レバーケーゼ・ゼンメル」にはなりません。マティアスさんがこだわり抜いたのは、この3大要素すべてを妥協なく再現すること、そして誰でも手に入る価格帯で提供することでした。

高級な肉屋でレバーケーゼを買い、マスタードをドイツから輸入し、パンも特別なパン屋で仕入れると、価格は3〜4倍にもなってしまいます。本場の味と手頃な価格の両立----このこだわりが詰まっているからこそ、完成までには時間がかかりました。

最初は自宅のキッチンミキサーと市販の食材を使い、レバーケーゼ作りに挑戦します。しかし本場の味には及ばず、1年間にわたりほぼ毎週金曜日にレバーケーゼの試作を繰り返していたそうです。

ガラス容器に入ったお肉

こだわり抜いたレバーケーゼの商品開発

本場のレバーケーゼを再現するには、専門の肉屋との協力が不可欠でした。しかし、日本でレバーケーゼを作れる肉屋はほとんど存在しません。特別なドイツの肉屋もありますが、価格が非常に高く、「みんなが買えるレバーケーゼ」という理想には合いませんでした。

ソーセージを作る肉屋を探し回りましたが、東京の業者は大手ばかりで、最低仕入れ量が多すぎて対応できません。探し続けた結果、ついに北海道・苫小牧で協力してくれる肉屋を見つけることができました。

しかし、海外出身で小さな会社を始めたばかりのマティアスさんにとって、契約を結ぶこと自体が大きなハードルです。そんな中、北海道の肉屋が興味を持ち、「一緒にやってみよう」と言ってくれたことが大きな転機となります。

担当の方と連絡を取りながら、レバーケーゼの生地の開発を進めていきました。肉屋にとっても初めての挑戦であり、本場の食感と味を再現するために、何度も試作を重ねました。

特に重要なのが温度管理です。肉に氷を加えて温まりすぎないようコントロールし、材料や塩の配合、牛肉と豚肉のバランス、使用部位(肩、バラなど)を細かく調整しました。部位が変わるだけで食感も味も全く変わってしまうほど繊細な作業です。完成までには、2年以上の歳月を要しました。

3色の容器に入ったマスタード

「1番難しいのはマスタード」とマティアスさんは語ります。

東京のインターナショナルスーパーでドイツのマスタードを探しても見つからず、アメリカ、フランス、中国、日本のマスタードをすべて試しましたが、どれもレバーケーゼに合いませんでした。アメリカのマスタードは酸味が強すぎ、フランス・中国・日本のマスタードは辛すぎたのです。マスタードが違うだけで、全体の味が台無しになってしまいます。

チューブのマスタード

ドイツのレバーケーゼスタンドの半分以上で使われているのが、最大手メーカーのマスタード。また、ヘンデルマヨという会社の、白いソーセージと食べるマスタードとして有名な、甘いマスタードもよく使われます。しかし、日本ではこれらのマスタードが手に入りません。そこでマティアスさんは、ドイツから現地のマスタードを持ち帰り、日本のマスタード専門家に送って、同じようにレバーケーゼに合う商品を作ってくれるところを探しました。

反応を示してくれたのは、埼玉のマスタード専門会社「ナイキフーズ」。さまざまなマスタードを製造している同社でさえ、ドイツでもっともシェアの高い中辛マスタードは取り扱っていませんでした。しかし、「TOTEMO」のために特別にマスタードを開発してくれることになったのです。

カイザー・ゼンメル

パンも特別なものを使用しています。ドイツ・オーストリアで親しまれている「カイザー・ゼンメル」です。レバーケーゼはミートローフに似てしっとりとした、やや弾力のある食感が特徴的。やわらかすぎるパンでは油分で潰れてしまいますが、ゼンメルのしっかりしたクラスト(パンの外側の部分)が具材を支えてくれるのです。

実はマティアスさん、デンマーク人が経営する広尾のベーカリー「BRØD」で働き、パン作りの技術を磨いていました。青山のファーマーズマーケットでパンを販売したり店舗を手伝ったりと、さまざまな仕事に携わりながら、日本での経営ノウハウも学んでいきます。同時に日本語も勉強し、お客様との交流を深めていきました。この経験を通じて、「いつか東京で自分の店を開きたい」という思いが、どんどん強くなっていったのです。

「TOTEMO」の店舗情報

  • 住所:東京都文京区千駄木2-13-1 ルネ千駄木プラザ 102
  • 電話番号:なし
  • アクセス:東京メトロ千代田「千駄木」駅 徒歩3分
  • 営業時間:平日:10:00 〜 19:30、土日:10:00 〜 19:30
  • 定休日:無休
  • 公式Instagram:@totemo.co.jp

「TOTEMO(千駄木)」オススメのメニュー3品

● Totemo チーズ
● Totemo サラダ
● Totemo はちみつバター

Totemo チーズ

Totemo チーズ
<Totemo チーズ 単品 ¥630>

温かいパン(ゼンメル)に、焼き立てのレバーケーゼと特製中辛マスタードを挟んだ一品。特にミュンヘンとオーストリアで人気の高いバリエーションで、男性に1番人気のメニューです。

チーズの含まれたレバーケーゼの生地

レバーケーゼの生地そのものは「Totemo オリジナル」と同じですが、焼く際にチーズを加えることで、よりクリーミーでコクのある味わいに仕上がっています。チーズ好きの方は必食の一品で、私もイチ押しのメニューです!

レバーケーゼは塩気がしっかりしており、肉本来の風味がダイレクトに伝わります。断面は滑らかで、細かく挽かれた肉が密に詰まっているため、なめらかな舌触りが特徴です。食感はミートローフに近いですが、よりしっとりとして、やや弾力があります。一方、外側には香ばしいクラスト(焼き色)があり、カリッとした歯触りが楽しめます。この「内側のしっとり感」と「外側の香ばしさ」のコントラストが、レバーケーゼならではの魅力です。

パンはしっかりとした外皮とふんわりした内側を持ち、肉のしっとり感を受け止めつつ、軽やかさも加えてくれます。中辛マスタードの程よい辛味と酸味が、肉の塩味と香ばしさを引き締め、味わいに切れを与えます。

肉の満足感がありながらも、パンとマスタードのおかげで重くなりすぎず、軽めのランチやスナックとしても最適です。温かいうちに食べるのがベストで、クラストの香ばしさと肉のジューシーさがもっとも生きます。

エルダーフラワーソーダ

食後のドリンクとしてオススメなのが、セイヨウニワトコの花を利用して作る、花の香り豊かな炭酸飲料「エルダーフラワーソーダ」です。

マティアスさんは子どものころ、花を収穫して家でシロップを作っていたそうで、飲むと夏の思い出がよみがえるのだとか。そんな懐かしの味は、花から作られたシロップのほんのり甘い味わいと爽快な風味で、食後に潤いを与えてくれます。

Totemo サラダ

Totemo サラダ
<Totemo サラダ ¥590>

レバーケーゼ、ピクルス、マヨネーズ、マスタードで作る「お肉のサラダ」です。冷たくクリーミーなので、夏の暑い時期に特に人気があります。根強いファンがいる一品で、女性からの支持も高いメニューです。

容器からサラダをすくうところ

サラダは単品でも購入可能。ドイツのライ麦パンにゆで卵、きゅうり、トマトなどを乗せてオープンサンドにするのもオススメです。お客様の中には、グリーンサラダにドレッシングをかけ、お肉のサラダをトッピングして楽しむ方もいます。マティアスさんは二日酔いの時にこのサラダレバーケーゼを食べていたそうで、さっぱりとした味わいが特徴です。

ニュルンベルガーソーセージ
<ニュルンベルガーソーセージ 単品 ¥630>

「Totemo サラダ」とともに女性に人気なのが「ニュルンベルガーソーセージ」です。オススメの3品とは異なり、甘いマスタードを使用し、ザワークラウト、チーズと合わせています。

同様に甘いマスタードを使用するのが「Totemo 豚バラ」。24時間塩漬けにした豚バラ肉を、2時間ほど低温のオーブンでじっくり焼き上げます。塩が肉の中までしっかり染み込み、驚くほど柔らかく仕上がるのが特徴です。

豚バラのロースト(シュバイネハウラータン)は、マティアスさんが大学時代、ルームメイトと一緒に作っていたソウルフード。週末の夜、テレビでジェームズ・ボンドを観ながら食べていた思い出の味です。

Totemo はちみつバター

Totemo はちみつバター
<Totemo はちみつバター ¥320>

大人気の「Totemo チーズ」とは異なり、隠れメニューとしてぜひ食べてもらいたいのが「Totemo はちみつバター」です。マティアスさんが子どものころ、ほぼ毎朝食べていたという特別な一品。

カイザーゼンメルにたっぷりのバターとドイツのはちみつを合わせたシンプルな組み合わせながら、上品な甘塩っぱさに心を鷲掴みにされました。週末の朝、コーヒーと一緒に楽しむのが最高だそうです。「TOTEMO」は土日の朝10時から営業しているので、早起きしてモーニングを楽しむのもよいでしょう。

店舗拡大やドイツビールのメニュー追加も!「TOTEMO」の今後の展開

TOTEMOの外観

現在の「TOTEMO」は小さなテイクアウト専門店です。これは、レバーケーゼ・ゼンメルが日本で受け入れられるかを試すための第一歩でした。開店前は「お客様が来てくれるだろうか」という不安もありましたが、今では良いフィードバックをいただき、大きなモチベーションになっています。

店頭には一脚のテーブルがあり、ドアの小さなカウンターをテーブルにしスタンディングで出来立てを楽しむこともできます。しかし、マティアスさんの夢はここで終わりません。

次のステップとして、イートインスペースを備えた新店舗の展開を計画中。そこではドイツの生ビールも提供したいと考えています。本場ドイツでは、レバーケーゼ・ゼンメルとビールの組み合わせが定番。この体験を東京でも味わえる日が待ち遠しいです。

TOTEMOのロゴが付いた紙カップ

「日本ではまだ知られていないので、知名度を上げるには時間がかかる」とマティアスさんは語ります。「でも、いいクオリティを提供し、接客も丁寧にして、口コミで広げていきたい」。その真摯な姿勢が、少しずつ確実にファンを増やしています。

【まとめ】「TOTEMO(千駄木)」で本場のレバーケーゼ・ゼンメルを堪能しよう!

容器に入ったお肉やソーセージ

日本初のレバーケーゼ・ゼンメル専門店「TOTEMO」は、オーストリア出身のマティアスさんが、故郷の味を再現したいという思いから生まれました。

本場の味と手頃な価格の両立を目指し、北海道の肉屋、埼玉のマスタード専門会社と協力。2年以上の歳月をかけて、レバーケーゼプレート、ゼンメル、マスタードという3大要素すべてにこだわり抜いた、本物のレバーケーゼ・ゼンメルが完成しました。

次のステップとして、イートインスペースを備えた新店舗の展開も計画中。そこでは本場ドイツのように、レバーケーゼ・ゼンメルと生ビールの組み合わせを楽しめる日が待ち遠しいです。

レバーケーゼ・ゼンメルはまだ日本では馴染みがないため、認知度を高めるには時間がかかるかもしれません。それでも、こだわり抜いた品質と丁寧な接客を心がける真摯な姿勢が、お客様の高評価に繋がり着実にファンを増やしていると感じました。

都内にはドイツ・オーストリアのレストランが複数あります。しかし現地出身の方が営むレストランはほとんど見かけません。その意味でも本場出身のマティアスさんが作るレバーケーゼ・ゼンメルは非常に貴重です。東京にいながら、食からドイツ・オーストリアを旅している気分を味わえます。

ドイツのソウルフード、レバーケーゼ・ゼンメル。その魅力を日本に広める挑戦は、まだ始まったばかりです。

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東京にある美味しい・珍しい海外グルメを食べ歩く海外グルメマニア。ブログには100ヶ国以上の世界の料理を掲載し、休日だけで年間365以上の海外グルメを開拓しています。実際に現地に行き本場のグルメも食べていて、これまでヨーロッパを中心に60ヶ国以上に渡航しています。

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