野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~仙台の旅

<TOP画像:ずっと自分の目で確かめたかった「ジョイント栽培」のナシ>

野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。

地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。今回は、野菜ソムリエであり、「青果物ブランディングマイスター」仲間と一緒に仙台への学びの旅をご紹介します。

目次

今回の旅のきっかけ

私たち「青果物ブランディングマイスター」は2014年に資格を有してから、毎年どこかの産地を訪れて学ぶことを続けています。ちなみに「青果物ブランディングマイスター」とは、ブランディングという手法を正しく理解し、青果物のブランディングを行う実践力を身に付け、生産者さんと共働でその方の利益を上げるお手伝いをしています。

全国に散らばった10名が、それぞれの地域で活動しています。というわけで、年に1回はリアルに集まって現地で学び合っています。

今回はどこに行こうかと、今年の初めからアイデアを出しながら決まったのが仙台。「いつもは野菜が多いので、今回はフルーツを学ぼう」ということで、「JRフルーツパーク仙台あらはま」を中心に旅を組み立てました。

JRフルーツパーク仙台あらはま」のエントランス
<「JRフルーツパーク仙台あらはま」のエントランス>

2年越しで行きたかった果樹園

仙台市若林区荒浜にある「JRフルーツパーク仙台あらはま」。一年を通して旬の果物の摘み取りができる体験型観光農園です。ただ果物を摘み取るだけでなく、施設では農業のことを、食べて、触れて、学ぶ工夫が随所にあります。

ハウスの前には、中にどんな品種の果物が植えられているのかわかるようになっています
<ハウスの前には、中にどんな品種の果物が植えられているのかわかるようになっています>

私は、ここの観光農業部専門監で農学博士の菊地秀喜氏とはSNSで知り合い、ここ数年は、旬の果物を送っていただいたりしていました。そのご縁で、今回は施設の成り立ちから現在に至るまでを説明する"研修"を申し込みました。

研修室から移動し、約2時間、ハウスのある施設の端から端まで案内してくださり、時には食べごろの果物を摘み取って食べさせていただきました。

美味しい食べごろとなったブドウを取ってくださる菊地氏
<美味しい食べごろとなったブドウを取ってくださる菊地氏>

施設は最新の栽培技術を取り入れています。私たちが勉強したかったことの一つが「ジョイント栽培」です。ジョイント栽培とは、神奈川県農業技術センターで開発された、和梨の早期成園化と省力化を実現する技術なのです。

その技術の必要性の説明は長くなるので割愛しますが、古くなった樹から新しい苗木を定植して成園化するまでには10年ほどかかってしまうところ、ジョイント栽培を取り入れることでそれが半分ほどで済むのだそうです。

さらに、同じ向きで成長するので一定方向に管理でき、受粉や摘果などの作業時間が短縮されます。

まるで果物のトンネルです
<まるで果物のトンネルです>

下の方を見てもらうとわかると思いますが、樹は何本もあるのですが、根元の枝が順次つながっています
<下の方を見てもらうとわかると思いますが、樹は何本もあるのですが、根元の枝が順次つながっています>

栽培がしやすいことだけではなく、見た目も美しい。この景色を一目見たいと思っていました。

ずっと先まで枝がつながっている不思議な光景
<ずっと先まで枝がつながっている不思議な光景>

ここでは、ブルーベリーやブドウ、イチジク、ナシ、リンゴ、イチゴなどの果物狩りなど、1年を通じて収穫体験ができます。また、施設内にある「カフェ・レストランLes Pommes(レポム)」はグループ会社の「ホテルメトロポリタン仙台」のシェフがプロデュースし、農園と地域の旬の食材をメインとした料理やデザートやドリンクが楽しめます(営業時間11:00~15:00)。

レストランが提供するサラダ類を自分で一つの器に盛り付け、もう一つの器にご飯と2種類のカレーをかけて仕上げます
<レストランが提供するサラダ類を自分で一つの器に盛り付け、もう一つの器にご飯と2種類のカレーをかけて仕上げます>

私たちはここで、菊地氏がおすすめした「ビュッフェスパイスカレー」をセレクト!園内の果物を使ったデザートの種類は豊富。「ぶどうといちじくのパフェ」や数量限定のクインニーナの贅沢パフェ、数量限定完熟シャインマスカットの贅沢パフェなど、お腹に余裕があったら食べたかった!

隣には「直売所 あらはまマルシェ」があり、周辺の農業事業者が生産する野菜やお米、園内で収穫した果物などが販売されています(営業時間10:00~16:00)。

この時期はナシやブドウ、イチジク、リンゴなどがありました
<この時期はナシやブドウ、イチジク、リンゴなどがありました>

JRフルーツパーク仙台あらはま

日本のハクサイを牽引する現場へ

「JRフルーツパーク仙台あらはま」から足を伸ばして「株式会社渡辺採種場」へ。ここは、今食べているようなハクサイの原型を生んだ「松島純一号」から採種し、1924年には「松島純二号」を、1943年には「松島純二号」などの改良種を生み出しました。

実は、ハクサイはほかのアブラナ科の植物と交雑しやすいため、宮城店松島湾内の浦戸諸島で育成したことが成功した秘訣だそうです。なぜ、島々で育成?

「交雑の原因にハチが蜜を求めて花へ花へと移動することにあったから」と研究農場の宮川憲一さん。

さまざまな品目の野菜の試験栽培。手前は試験中のハクサイ
<さまざまな品目の野菜の試験栽培。手前は試験中のハクサイ>

「プチぷよ」というミニトマトはご存知ですか? 皮が気にならないほど柔らかく、トマトじゃないみたいなトマトです。このトマトもこの会社が作った品種です。ハウスの中のプチぷよを試食させていただきました。

皮が柔らかくてツヤツヤなミニトマト
<皮が柔らかくてツヤツヤ!>

昨今は、温暖化による病気や害虫、さらに農業従事者の減少による人手不足、さらに食べる人の意識などさまざまな面を考慮した品種改良をしていかないといけないようです。

株式会社 渡辺採種場研究農場

山形県にも足を伸ばしました

地元の野菜ソムリエのご紹介で、お隣の山形県の「四季の果実 長沼果樹園」にも伺いました。同園は、サクランボやプルーン、西洋梨、リンゴ、キウイフルーツなど、季節ごとの多彩な果物の栽培と販売を行っています。

由紀さんのあとを付いて果樹園の説明をうける
<由紀さんのあとを付いて果樹園を歩きます>

同園の概要を、代表の長沼由紀さんにお聞きしました。最近、全国各地で熊の話題が出ていますが、こちらもご多分に漏れず、熊が美味しい果実を食べたり、さらにサルの被害も多いそうです。

由紀さんが一番こだわっているのが、果実の美味しさと栄養を最大限に引き出す手作りの肥料。それぞれの果物で異なる栄養分が必要となるため、大豆や菜の花、昆布など、動物性と植物性の素材を巧みに組み合わせた独自の肥料を使用しています。

伺った日のラフランスはまだ収穫前でした
<伺った日のラフランスはまだ収穫前でした>

山形と言えば、ラフランス。果実一つひとつに太陽の光が十分に当たるように棚仕立て栽培をしています。これ、見た目や収穫のしやすさなどはいいですが、管理が大変また大変。冬には積もった雪を落とす作業も加わります。

果樹園の傾斜がわかりますね。奥に見えるのが蔵王連峰です
<果樹園の傾斜がわかりますね。奥に見えるのが蔵王連峰です>

長沼果樹園の果物の人気の秘密は前述した"傾斜"。この傾斜が美味しい果物に仕上げるのです。傾斜地があるとなぜ美味しくなるか?ですが、「傾斜=高さがある」ということ。

その分、寒暖差が大きくなって糖度も上がり、酸味とのバランスの良い果物に仕上がるというわけなのです。さらに、「熟した瞬間に収穫することで美味しくて栄養価の高い果物を提供しています」と由紀さん。

いろいろな苦労を乗り越えて、これからも頑張ってくださいね。

四季の果実 長沼果樹園

美味しいモノもいろいろ食べてきました

今回は、学びが中心の旅でしたが、せっかく仙台に来たのですから、果物だけではなく美味しいものも食べなきゃ。居酒屋さんで食べたもので気になったもの! 

大きな三角油揚げ
<大きな三角油揚げ>

宮城県の人気グルメといえば、牛たんや笹かまぼこが有名ですが、実は地元で長年愛されている名物に「三角油揚げ」があります。大きな三角形にたくさんのネギ、外は香ばしくてカリッ、中はふんわりとジューシー、美味しかった!

スサビノリ シンプルで美味しい。ビールにも日本酒にも合います

<シンプルで美味しい。ビールにも日本酒にも合います>

宮城県は板海苔に加工される「スサビノリ」の生産量が全国5位で、国内有数のノリ産地です。このさっと揚げたものもおつまみに最高でした。

山形の「長沼果樹園」のすぐ下にある蒟蒻(コンニャク)専門店に、長沼果樹園の由紀さんが連れて行ってくださいました。蒟蒻のコース料理だと聞いてはいましたが、その無限的なバリエーションにただただ驚くばかりでした。

店内に入ると、まずは蒟蒻の加工品がところ狭しと並んでいます。試食もできます。

炉の字型の3面と壁側にも蒟蒻の加工品が並んでいます
<炉の字型の3面と壁側にも蒟蒻の加工品が並んでいます>

奥の部屋で蒟蒻フルコースを堪能しました。これが蒟蒻でできているとは思えない料理ばかり。そしてお腹もいっぱいに。

当日のお品書き。これを見ただけでは蒟蒻でできているとは想像できませんでした
<当日のお品書き。これを見ただけでは蒟蒻でできているとは想像できませんでした>

こちらがそのお料理。圧巻は甘エビのお刺身。袋を押し出すと甘エビっぽくて味もそんな感じがしました
<こちらがそのお料理。圧巻は甘エビのお刺身。袋を押し出すと甘エビっぽくて味もそんな感じがしました>

楢下宿 丹野こんにゃく

仙台と言えば「ずんだ」

仙台といえばソウルフードの「ずんだ」も外せません。豊かなエダマメの香りと鮮やかな緑が食欲をそそります。

大きな道の駅のずんだのお土産が盛りだくさん
<大きな道の駅のずんだのお土産が盛りだくさん>

いろいろずんだスイーツを楽しみたかったのですが、今回はいろいろ学ばせていただく旅。訪れる先は果樹園や道の駅などばかりでスイーツ店などに立ち寄る時間がありませんでした。

空港内の「ずんだ茶寮」で。外国人の利用も多かった
<空港内の「ずんだ茶寮」で。外国人の利用も多かった!>

かろうじて帰りの空港で「ずんだシェイク」を飲むことができました。エダマメのあっさりした甘さにミルキーなバニラアイスがまじわり、喉越しの良いドリンクです。

いろいろな品種のイチジクを味わうことがなかったので多めに。ほかにも旬の果物をゲット
<いろいろな品種のイチジクを味わうことがなかったので多めに。ほかにも旬の果物をゲット>

自分お土産は、「JRフルーツパーク仙台あらはま」で買って送ってもらったフルーツと、蒟蒻専門店で味見して買ったものや空港で買ったものたちです。

辛子マヨネーズの商品はちょっとカズノコのような食感が気に入って2個買ってしまいました。黒豆の形をした蒟蒻と黒豆の煮物も美味しい
<辛子マヨネーズの商品はちょっとカズノコのような食感が気に入って2個買ってしまいました。黒豆の形をした蒟蒻と黒豆の煮物も美味しい>

お酒好きがばれてしまうものばかりですねー。

今回は学びのための施設が多かったですが、「JRフルーツパークあらはま」は、季節ごとに立ち寄りたいところです。

果物は品種ごとに美味しい旬が異なります。ここではその時に美味しい食べごろ品種を教えてくれるので、美味しい果物の摘み取り体験もできます。摘み取り、そして食事、お土産と老若男女楽しめますね。

次回は、ずんだになる大豆の学びもしたいと思います。

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吉川雅子

札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。

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