クサンバの塩とは?バリ島で受け継がれる伝統塩づくり【インドネシア】

皆さま、こんにちは。

バリ島は乾季の時期にあり、穏やかな日々が続いています。先日の大雨で一部地域が洪水となりましたが、現在は落ち着きを取り戻し、毎日青空が広がっています。

さて、今回はバリ島の塩についてご紹介します。

クサンバやテジャクラ、アメッドといった地域では、昔ながらの製法を守り、ほぼ手作業で非加熱・天日干しの天然塩が作られています。

ミネラルを豊富に含むため、お料理に使えば旨味がぐっと引き立ち、塩風呂にすればデトックスやリラックス効果も期待できます。自宅用にはもちろん、お土産としても大変喜ばれるお塩です。

私が日本へ一時帰国する際、友人や家族から最もリクエストが多いのも「クサンバの塩」。在住者の間でも愛用者が多く、一度使うと手放せなくなる魅力があります。

バリ島を繰り返し訪れる日本の友人は、来るたびに必ず7キロほどまとめて購入し、日本へ持ち帰ります。それほどまでに人気の高いお塩なのです。

今回は、その中でも特に知られている「クサンバの塩」について、伝統的な製造工程を交えながらお伝えしていきます。

目次

クサンバの塩とは?

クサンバの海

バリ東部のクサンバは、黒砂の浜に広がる伝統的な塩田で知られています。

南国のバリ島と聞くと、白い珊瑚の砂浜を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、バリ島東部のビーチはアグン山の噴火による溶岩の影響で、真っ黒な砂浜がどこまでも続いています。

この浜辺は穏やかに見えて実は、沖へ引く強いカレントや複雑な潮の流れがあり、サーファーや海水浴客の姿を見ることはありません。

手つかずの自然が残る、静かで美しい海が広がっています。この海は漁師たちが伝統的な漁を行い、村の生活に深く根ざした場所でもあります。

観光地化されたビーチとは違い、人の気配が少なく、ただ海と空と黒砂が広がるだけの素朴な風景。

だからこそ、今も昔ながらの手作業による塩作りの風景がそのまま残っているのです。

クサンバの塩脱水

クサンバの塩の特徴

クサンバの塩の最大の特徴は、火を一切使わず、太陽と風の力だけで作られる天日製法にあります。

黒砂の浜に海水を撒き、自然の力でじっくり水分を蒸発、塩分を濃縮させることで、塩の結晶がゆっくり育ちます。過熱していないため、海水に含まれるミネラルのうまみがそのまま残り、まろやかで優しい味わいになるのです。

口に含むと、一般的な精製塩のような強い塩辛さはなく、ほんのりとした甘みとコクが広がります。料理の素材そのものの旨みを引き立て、調和のとれた味に仕上げてくれるのが魅力です。

また、クサンバの塩にはわずかに水分が残っているため、サラサラではなく少ししっとりした質感。完全な工業製品ではなく自然の手作りなので、よく見ると黒砂の小さな粒が混ざっていることもあります。

これもまた「自然の浜で生まれた塩」である証です。

クサンバの塩の主な成分

  • 塩化ナトリウム(NaCl):塩の主成分。精製塩ほど高純度ではなく、自然な風味を残す。
  • マグネシウム(Mg):ほのかな苦味と旨みを加える。
  • カリウム(K):塩辛さを和らげ、後味に甘みをもたらす。
  • カルシウム(Ca):味にコクと深みを与える。

このバランスの良いミネラルが、クサンバの塩ならではのまろやかで奥行きのある味わいにつながっています。

クサンバの塩の楽しみ方

クサンバの塩は、まずはシンプルな料理で試すのがおすすめです。

おにぎりに使えばご飯の甘みが際立ち、焼き魚に振れば香ばしさと塩のまろやかさが調和します。漬物や卵料理でも、強すぎない塩気が素材の旨みを引き出してくれます。

意外な楽しみ方としては、サラダにひと振りするだけで野菜の甘みが増し、ステーキや揚げ物の仕上げに使えば重さを和らげて風味を高めてくれます。

さらにチョコレートやキャラメルに少量添えれば、甘さと塩味が絶妙に調和して新鮮な味わいを楽しめます。

自然の力で生まれたやさしい塩だからこそ、日常の料理からちょっとしたアレンジまで幅広く活躍します。

クサンバの場所と行き方

クサンバの塩の看板

クサンバの場所と行き方

クサンバはバリ島東部・クルンクン県にある海辺の村で、黒砂の浜に広がる伝統的な塩田で知られています。空港(ングラライ国際空港)からは車で約2時間~2時間半、海沿いの道路を東へ向かえばアクセスできます。

画像は私がよく訪れるクサンバの塩田の看板です。訪れる際の目印にしてみてください。

移動手段としておすすめなのは、運転手付きのカーチャーターです。安全で快適に移動できるうえ、日本語や英語を話せるドライバーなら通訳代わりにもなります。さらに途中の観光スポットに立ち寄れる自由度の高さも魅力です。

GrabやGojekといった配車アプリを利用すれば移動自体は簡単ですが、複数の観光地を巡るには不向きです。

効率よく観光したい方には、現地ツアーに参加するのも安心な方法です。クサンバの塩田は、ゴア・ラワ寺院やティルタ・ガンガなど東部の人気スポットとセットにした日帰りツアーに組み込まれていることが多く、時間を有効に使えます。

塩田と一緒に巡りたいスポット

ゴア・ラワ寺院(コウモリの洞窟寺院)

クサンバ近くにある由緒ある寺院。数千匹のコウモリがひしめく洞窟は神秘的な雰囲気です。

ティルタ・ガンガ(水の宮殿)

王族の離宮だった庭園。池に浮かぶ飛び石は、人気のフォトスポットです。

アメッド

透明度の高い海でシュノーケリングやダイビングが楽しめるエリア。サンゴ礁や色鮮やかな魚たちに出会えます。

ランプヤン寺院

「天空の門」と呼ばれる絶景スポット。門の向こうにアグン山を望む景色は、一度は見てみたい光景です。

バリ・ズー

動物との距離が近く、餌やりや写真撮影が楽しめる人気の動物園。子どもから大人まで幅広く楽しめます。

クサンバの塩田を訪れる際は、近隣の寺院や宮殿、アメッドの海、動物園などを組み合わせて一日の観光コースにするのがおすすめです。カーチャーターなら自由度が高く、自分好みのプランを作れるのが魅力。

一方で、現地ツアーを利用すれば効率よく巡ることができ、初めて訪れる方でも安心です。どちらを選んでも、東バリの魅力を存分に味わえる一日になると思います。

伝統的な塩作りの風景

それでは、ここからクサンバの塩がどのように作られているのかをご紹介します。

私がよく訪れるのは、長年塩づくりを続けている ニョマンさんの塩田 です。

訪れると気さくに迎えてくれ、観光客が望めばいつでも塩づくりを体験させてくれます。特に体験料が必要なわけでもなく、気軽に挑戦できるのが嬉しいところです。

クサンバの塩田入口

ここが塩田への入り口です。

この先には、本当にバリ島の塩田だけが広がり、手つかずの自然と昔ながらの原風景に出会えます。

クサンバの塩ろ過施設

見えてきました。ここがニョマンさんの塩田です。

目の前にある小さな小屋は、黒砂から塩分をろ過するための施設で、すべて手作りのものです。

クサンバの潮かけ

クサンバの塩づくりは、まず海から海水を汲み上げ、それを黒砂の浜に何度も撒いていくところから始まります。

棒の両端に吊るした袋状の容器に海水を入れて運びます。その重さは相当で、しかも塩田には日影がまったくありません。

強い日差しを遮るものがない中、この作業を何度も繰り返すのは想像以上に過酷です。

クサンバの潮かけ

以前、ニョマンさんに「ポンプを使って海水を撒くことはしないのですか?」と聞いたことがあります。

すると「実はポンプを使ったこともあるんだけど、海の塩ですぐに壊れてしまってね。結局は手でやるしかないんだよ」と笑っていました。

機械化が難しい環境だからこそ、今も昔と変わらない手作業が受け継がれているのだと実感しました。

クサンバの塩収穫

強い日差しと風にさらされることで水分が蒸発し、黒砂の表面には塩分が白く浮き出てきます。

その塩分を含んだ黒砂を、広い浜から丁寧にかき集めていきます。炎天下で延々と続くこの作業は大変な重労働ですが、この工程が次のろ過へとつながる大切なステップなのです。

クサンバの塩収穫

塩分をたっぷり含んだ黒砂は、かき集められてろ過施設の小屋へと運ばれます。

クサンバ天日塩の製造に使われる道具

集めた塩分を含んだ黒砂に、さらに海水をかけてろ過していきます。

黒砂が天然のフィルターの役割を果たし、下には塩分濃度の高い塩水だけがしみ出していきます。

クサンバ天日塩の製造に使われる道具

ろ過された塩分濃度の高い塩水は、樋を伝ってゆっくりと流れていきます。やがて、ヤシの木をくりぬいて作られた、船のような大きな入れ物に溜められていきます。

クサンバの塩天日濃縮

そして塩水は、パルン(ヤシの幹を割って作られた樋のような道具)にためられ、太陽の下で数日間かけて天日干しされます。

クサンバの天日採塩

パルンでろ過した塩水を天日で乾かすと、白い結晶が少しずつ現れます。

まだ水分を多く含んだ塩は、ココナッツの殻で作ったひしゃくですくい取り、竹ざるに移して水切りします。

クサンバの天日採塩 笑顔のニュマンさん

無事に塩を収穫できて、思わず満面の笑みを浮かべるニョマンさん。けれど、これはあくまでも途中の段階で、塩づくりの作業はまだ続きます。

クサンバの塩脱水 

時間をかけてじっくり水を切り、さらに太陽の下で数日間天日干しにします。

クサンバの塩天日乾燥

そうしてようやく、真っ白で大粒のクサンバの天然塩が完成します。

こうして一つひとつの工程をすべて人の手で行い、自然の力を借りながら仕上げられるのがクサンバの塩です。シンプルながらも重労働の積み重ねこそが、この特別な味わいを生み出しています。

クサンバの塩はどこで買える?

現地で直接買うのがおすすめ

クサンバの塩製品

クサンバの塩は、やはり塩田で直接購入するのが一番のおすすめです。

見た目は素朴でパッケージも簡易的ですが、非加熱のままの本物を確実に手に入れることができます。

バリ島の塩は税関も問題なく通過できますし、私がよく訪れるニョマンさんのところでは、希望すればステッカーを分けてもらえます。それを袋に貼っておけば、より商品らしく見えるため、税関でも安心です。

価格は1キロでおよそ3万ルピア前後です。その時の状況によって多少変わりますが、日本円にするとだいたい300円程度です。

ちなみに、現在の価格は3万ルピア(約270円/2025年9月時点)。1キロ袋と250グラム袋が用意されています。

購入の際には、塩田や製造過程を見学できたり、簡単な塩づくり体験をさせてもらえることもあります。ちょっとした体験付きで買えるのも、現地ならではの魅力です。

一方、市販されているものは人の手がさらに加わって加工されていたり、加熱されている場合もあります。そのため、確実に本物を求めるなら、現地で直接買うのが一番です。

どうしても現地に行けない場合は...

旅行のスケジュールや滞在場所によってクサンバまで行けない方もいると思います。そうした場合には、ウブドやサヌールなど観光地のスーパーやお土産店で見つけられることがあります。

ウブドで買える場所

ビンタン・スーパーマーケット(Bintang Supermarket)
ウブド中心部にある大型スーパー。観光客向けの商品が豊富で、クサンバの塩も手に入りやすい。

ウブド・マーケット周辺のオーガニックショップ
小規模なオーガニックショップが点在しており、瓶詰めやオリジナルパッケージのクサンバ塩が見つかることも。

Earth Cafe & Market
レストランとオーガニック食材店が一体になったお店。健康志向の商品が多く、クサンバの塩を置いている場合もある。

KOU CUISINE(コウ・クイジーン)
ジャムやアロマ製品を扱う人気のお土産店。クサンバの塩もおしゃれな瓶詰めで販売されており、お土産向き。

天然塩専門店(プンゴセカン通り)
クサンバ塩を含む各種天然塩を専門に扱うショップ。塩好きにはおすすめ。

サヌールで買える場所

Hardy's Sanur
サヌール中心部の大型スーパー。地元食品からお土産まで揃っており、クサンバの塩も販売されていることが多い。

ジャラン・ダナウ・タンブリンガン通り
サヌールのメインストリート。お土産店や雑貨店が並び、クサンバの塩を取り扱う店も点在。

島内のその他スーパー

Pepito Supermarket(ペピト・スーパーマーケット)
バリ島各地に展開するチェーンスーパー。高級食材や輸入品の取り扱いが多く、店舗によってはクサンバの塩を販売していることもあります。

ジンバランやウブド、サヌール、スミニャックなど観光客に人気のエリアにもあるので、旅行中に立ち寄りやすいスーパーです。

観光地やスーパーで売られているクサンバの塩は、加熱されているものや在庫がない場合もあるので要注意です。

「どうしても欲しいけど現地に行けない」ときの代替案として考えるのが安心です。

最後に

クサンバの飼いネコ

日本では非加熱の天然塩は入手が難しく、しかも高価です。

かつては成田空港でも「クサンバの塩」が販売されていましたが、すべて手作りのため生産が追いつかず、現在は販売されていません。そのため、本物を手に入れるには、やはりバリ島で直接購入するのが確実です。

ネットショップで見かけることもありますが、実際に非加熱のままなのかは分かりません。中には加熱してサラサラに加工されたものもあるようです。

安心して「本物」を求めるなら、現地で買うのが一番おすすめです。

私がよく訪れるのは、クサンバで代々塩づくりを続けているニョマンさんの塩田です。初めて伺ったとき、ニョマンさんは「この仕事は重労働すぎて後継ぎがいない。自分の代で終わりかもしれない」と話していました。

その言葉を聞いたとき、こんなに美味しくて栄養豊富な塩がなくなってしまうのかと思うと、とても残念に感じました。けれど子供たちが大人になり、クサンバの塩の貴重さに気づいて親せきと力を合わせて伝統を引き継いでいることを最近知り、少しホッとしました。

クサンバの塩は、昔ながらの製法と人の手間が詰まった、素朴だけれど深い味わいがあります。

クサンバを訪れる機会があったら、塩をお土産にするのもおすすめです。

クサンバの塩田は日影がほとんどなく日差しも強いので、帽子や日焼け対策をお忘れなく。

PETANI GARAM TRADISIONAL- NYOMAN WARTA

  • 所在地:CFXF+GMF, Pesinggahan, Dawan, Klungkung Regency, Bali
  • 電話番号:081-339-179-145(日本からは+62-81-339-179-145)

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2014年に日本からバリ島へ移住。現在は夫・猫の姉妹と暮らしている主婦です。バリ島のおすすめ情報からディープなバリ島の姿まで、幅広い内容を在住者目線でお届けします!どうぞよろしくお願いします♪

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