【オランダ】世界最大級のストリートアート・ミュージアム『STRAAT』

STRAAT(ストラート)は、アムステルダムの北区にある世界最大級のストリートアート・ミュージアムです。旧造船所の倉庫をリノベーションした巨大な空間に、170人以上のアーティストによる大規模な壁画やアート作品が展示されており、ストリートアートの魅力を存分に楽しめます。

従来のアムステルダム観光といえば、ゴッホ美術館やアンネ・フランクの家といった定番スポットが中心でしたが、STRAATはそうした王道コースとは一味違う体験を提供してくれます。

また、アムステルダムの北区は、アートを核とした再開発が進むエリアで、STRAATを訪問した後は周辺のストリートアートや個性的なカフェなど巡ることで、さらに充実した時間を過ごすことができます。

目次

広大な倉庫で迫力のある展示

ストリートアートに焦点を当てたSTRAAT

ストリートアートに焦点を当てたSTRAATは、近年大規模な再開発が進むアムステルダムの北区に2020年にオープンしました。旧造船所の倉庫をリノベーションした建物は、約 8,000平方メートルのフロアと、高さ15m以上の天井を持ち、ストリートアートの大規模な作品を展示するのに最適な空間です。

STRAATには、世界各国のアーティスト170人以上による壁画やグラフィティアート、立体作品など、180点以上の大型作品が展示されています。

ゴッホやレンブラントのような、古典的なオランダ芸術とは一線を画したストリートアート、そしてその巨大な空間を体感してみようとSTRAATを訪問しました。

Let Me Be Myself(ありのままの私でいさせて)

エントランスの外壁を飾るアンネ・フランクの壁画
<エントランスの外壁を飾るアンネ・フランクの壁画>

アムステルダム中央駅からフェリーで北区に向かい、フェリーを降りてからSTRAATまでは徒歩で3分ほどの道のりです。STRAATに到着すると、エントランスの外壁を飾るアンネ・フランクの壁画が目に飛び込んできます。

この240平方メートルの巨大な壁画は、ブラジル人アーティストのエドゥアルド・コブラが2016年に描いた作品で、鮮やかなカラーパレットと幾何学的な模様が特徴です。制作には1か月以上かかり、450缶以上のスプレー塗料と35リットルのラッカー塗料が使われました。

コブラはこの作品について、「アンネ・フランクの勇気と知恵は、多くの人々にインスピレーションを与えてくれます。若い人たちも彼女の物語に感銘を受けています。彼女は平和とともに、個人の尊重を訴えていました。だから私はこの作品に『Let me be myself(ありのままの私でいさせて)』というタイトルを付けたのです」と語っています。

訪れる人々に戦争の悲劇や人権の尊さを考えるきっかけを与えているこの壁画は、STRAATの「アートを通じた社会への問いかけ」という理念を体現しています。

コブラは、ブラジルのリオデジャネイロで描いた『Etnias(民族)』が、世界最大の壁画としてギネス記録に認定されているほどの有名なアーティストです。

サンパウロ、ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワなど、さまざまな地域で壁画を描いていますが、日本ではコブラの壁画を見ることはできません。STRAATはコブラの壁画を鑑賞できる貴重なスポットです。

アーティストの多彩なパレット

アーティストの多彩なパレット

STRAATの中に足を踏み入れると、その壮大な空間に圧倒されます。いくつもの作品が、まるで映画のスクリーンのように整然と並び、それぞれがカラフルな世界を映し出しています。

ひとつの作品を見て、その隣の作品、さらにその奥と、次から次へと現れる作品に引き寄せられるように鑑賞しました。

1. "The Joint Man Returns" Blade (アメリカ)2024年/2. "Bob is Crazy!" DavidL (スペイン)2021年/3. "In Search of the Bottom Line" Ottograph (オランダ)2022年/4. "Realizing Infinity" Kevin Ledo (カナダ)2017年

1. "The Joint Man Returns" Blade (アメリカ)2024年/2. "Bob is Crazy!" DavidL (スペイン)2021年/3. "In Search of the Bottom Line" Ottograph (オランダ)2022年/4. "Realizing Infinity" Kevin Ledo (カナダ)2017年

Bladeなど有名アーティストの作品、アニメのキャラクター、ポップなグラフィティアート、やわらかく繊細なタッチの絵画など、さまざまな作品が隣り合って展示されています。ストリートアートの素材や技法の多彩さに驚かされました(上写真)。

フィルムが上映されているコンテナや、立体作品も展示

錯覚を駆使した作品や幻想的な絵に出会うと、その大きなキャンバスに吸い込まれそうな感覚になります。平面作品の他にも、中でフィルムが上映されているコンテナや、立体作品も展示されています(上写真)。

ストリートアートに刻まれた声

STRAATでは全ての作品に詳細なキャプションが添えられ、制作過程を紹介する映像やインタビューも公開されており、ストリートアートの背景にあるメッセージや社会問題を知ることができます。

スペインのDulkによる"The Giant Change"は、フラミンゴの生態系が、生息地の破壊や水質汚染、気候変動などによって危機に瀕していることを示している

1. スペインのDulkによる"The Giant Change"は、フラミンゴの生態系が、生息地の破壊や水質汚染、気候変動などによって危機に瀕していることを示し、自然と野生動物を守ることの重要性を説いています。

2. ブラジルのCranioの作品"Amazonia House; a Vida com "Wi-Fi Spirit", Ritual na Caverna"には、ブラジルの先住民が青いキャラクターとして描かれています。かつて自然のままに広がっていた森に、消費主義がもたらされ環境破壊が進んだ結果、現代の先住民たちが病んでしまったことを表しています。

3. オランダのNina Valkhoffは、"Lamento en la Selva"に絶滅危惧種の動物を登場させ、その存在の尊さと美しさを訴えています。

STRAATには世界各国のアーティストの作品が展示されており、それぞれの国の特徴や、アーティストの生い立ちが芸術活動に与えた影響などを感じることもできます。

イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、ポーランド、スウェーデン、アメリカ、カナダ、メキシコ、ペルー、コロンビア、フィリピン、日本など、オランダにいながら世界のストリートアートを見比べられるのは、なかなか贅沢な経験です。

ストリートアート・ミュージアム『STRAAT』絵画

1. フィリピン人のMark Jeffrey Santosは"Drifting on Water" で、世界を旅するという自らの夢を託すように、大きな生き物と一緒に冒険に出るキャラクターを描いています。

2. スペイン人のBelinは"El Caballero de la Mano en el Pecho Postneocubista"で、スペインのトレドで活躍したエル・グレコの絵画を、ポストネオキュビズムの様式で再構成しています。

3. 絨毯商人の家に生まれたイラン人のNafirは、手織りのペルシャ絨毯をキャンバスにして"Out Beyond Right Doing and Wrong Doing There is a Field I Will Meet you There"を描いています。

4. 日本人のAIKOは卯年生まれであることにインスピレーションを得て、長寿や成功、友情、自由の象徴でもあるウサギの絵"The Bunny"を描いています。

SNS映えの要素が満載

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<スケールのカラフルな壁画や立体作品。天井からはトラック造船所だった名残をとどめるクレーンやパイプが現代アートと融合。荷物を預けるロッカーも、工場のような演出>

STRAATの魅力のひとつは、やはりその圧倒的なスケールです。 日本ではなかなか見られないスケールのカラフルな壁画や立体作品が並び、天井からはトラックが吊り下げられていたりと、迫力満点の記念撮影が楽しめます。

さらに、かつて造船所だった名残をとどめるクレーンやパイプが現代アートと融合し、フォトジェニックなスポットを生み出しています。荷物を預けるロッカーも、工場のような演出がされていました。

大きな赤青メガネを使って眺める作品や、ブースで写真を撮影してプリントできる、プリクラのようなセット

大きな赤青メガネを使って眺める作品や、ブースで写真を撮影してプリントできる、プリクラのようなセットもあります。

STRAATでは定期的にワークショップや音楽イベントなども開催されており、運が良ければアーティストのライブペインティングを鑑賞できます。

展示スペースを見渡せるカフェ
<展示スペースを見渡せるカフェ>

展示スペースを見渡せるカフェ、アーティストのグッズを購入できるミュージアムショップ、新進気鋭のアーティストによる企画展を開催するギャラリーもあります。

北区散策とIJ湾クルーズ

港に係留された船を改装した水上に浮かぶホテル
<港に係留された船を改装した水上に浮かぶホテル>

STRAATを鑑賞した後は、ぜひ周辺のエリアを散策してみてください。アムステルダムの北区はクリエイティブなスポットとして注目を集めており、お洒落なレストランやカフェ、ショップ、アトリエ、ストリートアートやパブリックアートなどに出会えます。

造船所で使われていた大型クレーンを改装したホテルや、港に係留された船を改装した水上に浮かぶホテルといった、オランダらしい奇抜なスポットもあります。

IJ湾クルーズ
<IJ湾クルーズ>

北区の観光をする際、私がいつも楽しみにしているのがフェリーでの「IJ湾クルーズ」です。アムステルダム中央駅の北側にはフェリー発着所があり、IJ湾を横断して北区に向かうフェリーが無料で運航されています。

連絡船としてのフェリーなので厳密にはクルーズではないのですが、船上からIJ湾周辺のスカイラインを眺められるので、私はいつも「IJ湾クルーズ」と呼んでいます。

STRAATを訪問する際は、NDSM埠頭行きのフェリーに乗船します。「IJ湾クルーズ」を存分に楽しみたい方には、風や水しぶきを感じられる船首または船尾のオープンデッキがおすすめです。

まとめ・施設情報

STRAATは旧造船所の広大な空間で、現代アートの迫力を体感できるスポットです。世界各国のアーティストの自由な表現やメッセージに触れ、オランダのアートシーンにおける新たな一面を発見できます。NDSM埠頭までの「IJ湾クルーズ」や、クリエイティブな北区の散策が楽しめるのも魅力です。

アムステルダム観光の定番コースでは満足できない方や、斬新な体験を求めている方に特におすすめです。アムステルダムの歴史的な街並みを楽しんだ後は、ぜひSTRAATを訪れてみてください。

STRAAT(ストラート)

  • 所在地:NDSM-Plein 1, 1033 WC, Amsterdam
  • 電話:+31 (0)20 370 9630           
  • 営業時間:月曜 12:00~17:00、火~日曜 10:00~17:00
  • 定休日:無し 
  • 料金:大人19.5ユーロ, 13~18歳9.5ユーロ, 13歳未満無料, アムステルダム・シティカード無料
  • アクセス:アムステルダム中央駅北口のフェリー乗り場よりNDSM埠頭行きの無料フェリー(15分間隔で運航)で15分NDSM埠頭下船徒歩3分
  • 公式サイト:STRAAT

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Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

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