野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~岩手の旅

<TOP画像:盛岡出身の宮沢賢治。「宮沢賢治童話村」の「妖精の小径」前のモニュメント>

野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。

地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。今回は、野菜ソムリエ仲間に誘われて岩手の旅を紹介します。

目次

今回の旅のきっかけ

全国各地におよそ6万人もの野菜ソムリエたちがいます。私も20数年前にその資格を取得してからは、南は沖縄まで仲良くしてもらっている野菜ソムリエのお友達がいます。

共通の話題があることですぐに親しくなれ、各地の野菜や果物の特徴や美味しい時期を教えてくれたり、時には旬の美味しい農産物を送ってくれたりと、ますます近しい間柄になっています。

今回は、熊本の野菜ソムリエ仲間から(前に熊本の旅でご紹介した野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~熊本への旅(柑橘))「岩手に行くのでご一緒しませんか?」という連絡をいただき、もちろん参加。

フェリーと高速バスで安価に旅をする

北海道と東北を結ぶといえばフェリーですね。

実は、フェリーを使うとお得な上に非日常感を楽しむ旅を体験できます。

<シルバーフェリー「ティアラ」>
<シルバーフェリー「ティアラ」>

「なかよしきっぷ」はご存知ですか? 

苫小牧港と八戸港を結ぶフェリー乗船券(シルバーフェリー)とバス乗車券(北海道中央バスと岩手県北バス・南部バス)がセットになったお得なセット切符です。

札幌から盛岡までの片道料金が8400円(札幌から八戸までは6500円)という魅力的な値段。追加料金を支払えば、個室などにグレードアップも可能です。

<行きは個室が取れました。狭い部屋ですが、テーブルと椅子、ベッドもあります>
<行きは個室が取れました。狭い部屋ですが、テーブルと椅子、ベッドもあります>

そして、1泊の旅が3泊になるというマジック⁉金曜日の20時台に札幌市内を出て、苫小牧港を23:59出航。7時半に八戸港に着き、バスに乗り換えて11時前後に盛岡市内に着きます。ちなみに、帰りは18時ころに盛岡市内を出て、八戸港を22時に出航。8時台には札幌市内に到着。ステキな朝帰りです。

<出航前の苫小牧港>
<出航前の苫小牧港>

フェリー内には船舶電話やお土産の販売を行っている広いエントランスホール、展望浴室や24時間利用できるプロムナードデッキなどがあり、とても快適に過ごせます。

<展望風呂の入口。その下にはお土産販売のコーナーが見えます>
<展望風呂の入口。その下にはお土産販売のコーナーが見えます>

<個室利用 プロムナードデッキ 2等室利用>
<個室利用でこのプロムナードデッキは利用しなかったですが、2等室利用だったらここでまったりするのもいいですね>

<八戸港が近くなり、デッキから撮影した朝日>
<八戸港が近くなり、デッキから撮影した朝日>

フェリーから海越しの日の出を見るのもいいんですよねー。

先発隊と合流して、まずは冷麺

熊本から参加の方々は盛岡市内に前泊、関東からの参加者は新幹線で移動してすでに盛岡市内を散策。11時過ぎに入った私も合流して、予約していただいた盛岡冷麺の老舗「ぴょんぴょん舎」へ。

<ぴょんぴょん舎の看板>
<ぴょんぴょん舎の看板>

盛岡に来たならば「盛岡冷麺」を食べないとね!

盛岡冷麺を紐解くと、盛岡の麺職人の青木輝人氏が昭和29年に「食道園」を開店した際に、朝鮮半島に伝わる咸興冷麺と平壌冷麺を融合させた創作麺を考案したのが始まり。

咸興冷麺は「ピビン冷麺」という甘辛いソースに麺を混ぜ合わせたもので、平壌冷麺は高麗キジのだし汁に、「冬沈漬(トンチミ)」という酸味のあるダイコンの水漬けの汁を加えて作るあっさり味のスープ冷麺です。

行列が絶えない「ぴょんぴょん舎」の盛岡冷麺
<行列が絶えない「ぴょんぴょん舎」の盛岡冷麺>

青木氏は牛骨で取ったスープに酸味と辛味のあるキムチを組み合わせたオリジナルスープを考案。平壌冷麺はソバ粉を練り上げた黒っぽい麺ですが、青木氏はソバ粉の代わりに小麦粉を使って半透明の麺に仕上げました。

そうすることでコシの強さはそのままで、つるっとした喉ごしのよさや見た目のおいしさが加わった、独自の冷麺を作り上げたのです。ちなみに具はキムチのほか、牛肉のチャーシュー、ゆで卵、三杯酢漬けのキュウリ、そしてこの時期はスイカが添えられており、これらも麺やスープとの相性が抜群。

フェリーの中でパンと缶コーヒーの軽い朝食を取りましたが、三位一体となった盛岡冷麺は胃袋に沁みましたー。

焼肉・冷麺 ぴょんぴょん舎 盛岡駅

世界遺産の「平泉中尊寺」へ

いつもは晴れ女の私。今回は私の力及ばず雨の「中尊寺」になってしまいました。参道の脇には江戸時代に伊達藩によって植樹された樹齢約300年の幾本もの老杉が参拝客を迎えます。この老杉と山の空気、そしてしっとりと降る雨が作り出す荘厳な雰囲気に浸ることができました

雨に濡れる参道と杉
<雨に濡れる参道と杉>

中尊寺は850(嘉祥3)年に、比叡山延暦寺の高僧慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)によって開かれ、その後、12世紀初め、奥州藤原氏初代清衡公によって大規模な堂塔の造営が行われました。

まず東北地方の中心にあたる関山に一基の塔を建て、境内の中央に釈迦・多宝如来の並座する多宝寺を、続いて百余体の釈迦如来を安置した釈迦堂を建立。この伽藍(がらん)建立は『法華経』の中に説かれる有名な一場面を具体的に表現したものです。

紆余曲折、そして、火災などで多くの堂塔や宝物を焼失しましたが、国宝建造物第1号の金色堂をはじめ、建築、絵画、書跡、工芸、彫刻、考古、民俗の各分野にわたる文化遺産が現在まで良好に伝えられ、東日本随一の平安仏教美術の宝庫と称されています。

中尊寺を含む「平泉の文化遺産
<撮影できるところが限られていましたが、ここは撮影ポイントということでパチリ>

平成23(2011)年に中尊寺を含む「平泉の文化遺産」が世界文化遺産に登載されています。

中尊寺

  • 住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関20
  • 電話:0191-46-221
  • 公式サイト:中尊寺

岩手県花巻市へ

花巻市は岩手県のほぼ中央に位置し、豊かな自然が広がり、四季折々の美しい風景を楽しめます。

花巻といえば"宮沢賢治"

花巻市は『銀河鉄道の夜』や『風の又三郎』など多くの童話や詩を残した作家の宮沢賢治の出身地としても知られています。

市内には彼の生涯や独特な世界観を感じることができる場所がいくつもあります。

そのひとつ、「宮沢賢治童話村」に行ってきました。ここは賢治の幻想的な童話の世界を立体的に体験でき、大人も子どももワクワクする施設です。

童話村の案内
<童話村の案内>

村の入口にあたる「銀河ステーション」。ここをくぐった先に「銀河ステーション広場」あり、その先に賢治の学校があります。

童話村の入口である「銀河ステーション
<童話村の入口である「銀河ステーション>

「賢治の学校」は、賢治の世界観をテーマにした「ファンタジックホール」「宇宙の部屋」「天空の部屋」「大地の部屋」「水の部屋」の5つのゾーンで構成されており、賢治の童話の中に迷い込んだような体験ができます。

天空の部屋はいろいろな正座をイメージしたアートが目を見張ります。
<天空の部屋はいろいろな正座をイメージしたアートが目を見張ります>

ユニークな形の椅子に座るだけで童心に帰ったような気持ちになりました
<ユニークな形の椅子に座るだけで童心に帰ったような気持ちになりました>

賢治の童話に登場するさまざまなキャラクターや世界観を再現した空間に浸り、いい大人たちが時間を忘れて楽しんでいました。

宮沢賢治童村

  • 住所:岩手県花巻市高松26-1
  • 電話:0198-31-2211
  • 公式サイト:宮沢賢治童村

花巻といえば"温泉"

日本一深い天然自噴岩風呂を有す秘湯宿として有名な「花巻温泉郷 鉛温泉 藤三旅館」があります。

ここは、日本にわずか1%しか存在しないといわれる加温も加水もしていない"湯守"のいる温泉です。

湯守とは温泉の管理人のこと。江戸時代からの伝統職で、熟練の職人技をもってお湯を守っています。その湯は600年前からの歴史があり、「新日本百名湯」「日本温泉遺産」に選ばれるほど。230年以上の歴史を誇る「藤三旅館」には、有名といわれる温泉地でさえも滅多にない源泉5本を有しており、時間帯別でそれぞれのお湯を愉しめます。

<歴史のある温泉だとわかる説明書>
<歴史のある温泉だとわかる説明書>

「白猿の湯」は、鉛温泉発祥の伝説に登場する「白猿」の名をつけられた、歴史のあるお風呂です。湯船の深さが平均1.25メートルもある立居浴専用の温泉です。深いところは158センチメートルの私の顎あたりまであります。

この白猿の湯は、酸素に触れることによって酸化して成分が変わらないようにと、人力で掘って造った湯舟です。ここは混浴ですが、3回ほど女性専用の時間帯もあります。

<浴室内は撮影できませんでしたが、「白猿の湯」のポスターが貼られていました。湯舟が深いのがわかりますか?>
<浴室内は撮影できませんでしたが、「白猿の湯」のポスターが貼られていました。湯舟が深いのがわかりますか?>

「桂の湯」は、対岸の深緑の染まった木々を見ながら入浴できる大きな窓のある内湯です。外にでれば、露天風呂からは渓流のせせらぎが聞こえ、心と体を完全にリラックスさせることができます。

「白糸の湯」は、展望半露天風呂の窓から白糸のごとく岩肌をつたって豊沢川に注ぐ「白糸の滝」が望めます。全開にした窓からは四季によって趣が異なる自然の風景を眺めながら名湯に浸れます。

<滝のように流れる温泉>
<滝のように流れる温泉>

銀の湯は、ご家族やカップルで貸切きることのできる、プライベートな空間が自慢の浴室です。夏には深緑の木々、秋には紅葉で染まった眺望を愛でながらゆったりとくつろげます。

<宿泊した私たちの食べきれないほどの夕食>
<宿泊した私たちの食べきれないほどの夕食>

花巻温泉郷 鉛温泉 藤三旅館

花巻といえば"花巻東高"

花巻東高校といえば、メジャーリーガーである大谷翔平選手と菊池雄星の出身校です

<多くの選手を輩出している花巻東高校>
<多くの選手を輩出している花巻東高校>

花巻東高校と日居城野運動公園第2駐車場の間にある道路から、高校脇の道路へ進み、黄色い案内看板を目印に日居城野運動公園内を3分ほど歩くと、花巻東高校野球場バックネット裏に到着します。

そこには、「2021 MLB AII-Star Game」に同時選出された記念に、花巻温泉郷観光推進協議会が花巻東高校へ贈呈したモニュメントがあります。

二人のサインと「花巻から世界へ」というメッセージを描いた花巻東高校のユニフォームの写真。両選手の手形が飾られています。自分の手とメジャーリーガーの手を実際に比べてみることもできます。

<私たちも彼らの手形に手を合わせて大きさを確認していました>
<私たちも彼らの手形に手を合わせて大きさを確認していました>

日居城野運動公園

  • 住所:岩手県花巻市松園町613-
  • 電話: 0198-29-4522(花巻観光協会)

もちろん野菜の勉強もしました!

本格的な野菜が出荷される前に訪れたので、まだ野菜の種類はそう多くなかったのですが、主にピーマンを栽培している生産者の高橋さんからは、花びらの数とピーマンの形の関係性の話を聞きました。

ひばり農園

<ピーマンのハウスはとても綺麗に管理されていました>
<ピーマンのハウスはとても綺麗に管理されていました>

<ピーマンの花は白なんですよ>
<ピーマンの花は白なんですよ>

ピーマンの花は大体が5弁ですが、花びらの数でピーマンの形がわかるそうです。写真のような8枚の花弁の場合は、ごつごつと8つのボコボコができるそうです。

<新規就農のひばり農園のお二人>
<新規就農のひばり農園のお二人>

また、有機野菜を栽培するひばり農園の圃場も見せていただきました。

<柔らかくて美味しそうなシュンギク。このままムシャムシャとサラダで食べたい>
<柔らかくて美味しそうなシュンギク。このままムシャムシャとサラダで食べたい>

無農薬で少量多品種の野菜栽培を行っています。水田にはアイガモたちを離して虫などを食べてもらいます。

ワインショップ・アッカトーネ 539

旅の仕上げは、八戸港行きのバスを待ちながら、森岡在住の野菜ソムリエがバスターミナル近くのステキなワインのお店「ワインショップ・アッカトーネ 539」に連れて行ってくれました。

ここは、江戸時代から続く商店、盛岡市景観重要建造物「茣蓙九(ござく)/現:森九商店」の一角を改築した店舗で、ワインの購入とワインの角打ちが楽しめます。

<落ち着きのある古き良き伝統美の空間とワインをコラボしたお店>
<落ち着きのある古き良き伝統美の空間とワインをコラボしたお店>

奥に入ってみてびっくり! ところ狭しとワインが並んでいます。

<ワインのほかにお土産にもなるおつまみ類があります>
<ワインのほかにお土産にもなるおつまみ類があります>

店の奥にはグラスワイン1杯から楽しめるテーブル席もあります。チーズをつまみにグラスを傾け、旅の余韻を楽しみました。

<赤、白10種類の中からお好みのワインが選べます>
<赤、白10種類の中からお好みのワインが選べます>

ワインショップ・アッカトーネ539

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吉川雅子

札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。

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