スペイン・サラゴサでおよそ2000年の歴史を持つピラール・バシリカ教会堂

先日はじめてサラゴサに行ってきました。人口で見るとスペイン第5の都市ながら、日本での知名度は高くありません。それもあってか私も長いこと足を踏み入れていなかったのですが、行ってみたらとても魅力あふれる町だということがわかりました。

今日はそんなサラゴサを象徴するピラール・バシリカ教会堂※をご紹介します。

※日本語名称はいくつかあり、スペイン政府観光局の日本WEBサイト名称を使用。

目次

ローマ帝国の植民都市やアラゴン王国の首都として栄えた歴史

1972年に見つかったおよそ2000年前のローマ劇場跡
<1972年に見つかったおよそ2000年前のローマ劇場跡>

サラゴサはスペイン北東部に位置するアラゴン州の州都です。町の歴史は古く、散策中に立派なローマ時代の劇場跡を見つけて思わず息を飲みました。

なんでもローマ帝国の「カエサルアウグスタ」と呼ばれる植民都市で、2世紀頃に繁栄を極めたのだとか。また、12世紀のはじめにアラゴン王アルフォンソ1世がこの地をイスラム教徒から奪回してからは、アラゴン王国の首都として栄えたのです。

聖母マリアのお告げで建てられたピラール・バシリカ教会堂

そして、サラゴサの歴史を語る上で欠かせないのが、聖母ピラール。時は遡ること紀元40年、イエスの12使徒の一人で、スペインにキリスト教を布教したヤコブ(スペイン語ではサンティアゴ)が、町を流れるエブロ川のほとりで祈りを捧げていました。

そこに聖母マリアが出現し、自身を模った小さな木像と碧玉製の柱をヤコブに渡し、教会をつくるように告げたのです。興味深いことに、この時聖母はまだ被昇天前、つまりはエルサレムに存命中だったといいます。被昇天前の出現は、後にも先にもこの1回きりだったと言われています。

エブロ川に映る姿も美しいピラール・バジリカ教会堂
<エブロ川に映る姿も美しいピラール・バジリカ教会堂>

最初は小さな聖堂で、イスラム支配下を経て12世紀にはロマネスク様式の教会に建て替ええられましたが、15世紀に起きた火災で大被害を受け、その後ゴシック・ムデハル様式の教会が建てられます。

その後も聖母ピラールの信仰はますます高まるばかりで、17世紀にはさらに立派なバロック様式への建て替えがはじまり、18世紀半ばに完成。その後も増改築を繰り返して現在に至ります。ちなみに司教座のある教会のことを大聖堂(カテドラル)と言い、このピラール・バジリカ教会堂にも司教座があるので大聖堂なのです。

すぐ近くにサン・サルバドール大聖堂もありますが、ひとつの自治体にふたつの大聖堂があるのは、スペインでサラゴサだけでとても珍しいそうです。

スペインとヒスパニック諸国の守護聖母

聖母ピラールは、スペインと全ヒスパニックの守護聖母として広く崇められているだけあり、教会堂は大きく荘厳な建物です。建物の四隅には塔、中央には大きなドーム、そのまわりには11のドームがあり、エブロ川越しに見るその美しさは、いにしえから多くの人々を魅了してきました。

わずか36㎝のピラールの聖母木像

<わずか36㎝のピラールの聖母木像:撮影:Agustín Martínez 提供:サラゴサ市観光局 Turismo Zaragoza>

聖母の木像は意外にも小さく驚きました。高さは36㎝しかありません。現存するのは15世紀の火災で焼失した後すぐにつくられたものだそうですが、柱はオリジナルのままだと言われています。

人が絶えない聖母ピラール像のある礼拝堂
<人が絶えない聖母ピラール像のある礼拝堂。聖母像は下部中央よりやや右側のガラスケース内に>

聖母像のある礼拝堂では祈りを捧げている人の姿も見られ、多くの人に崇拝されている聖母であることがわかります。ところで堂内が広いので聖母像がどこにあるのか迷うかもしれません。

教会堂への入り口は向かって右と左の2か所ありますが、聖母像のある礼拝堂は右側から入ってすぐななめ左にあります。大勢の人がいるのが目印になるかと。なお、ミサの時間になると左側の入り口は閉鎖されます。

教会堂内には巨匠ゴヤの天井画も

スペイン美術史で必ず名前があがるフランシスコ・ゴヤはサラゴサ郊外フエンデトドスの出身で、この教会堂内にはゴヤが描いた天井画があるのでお見逃しなく。

天井はかなり高いので、よく見たい方はオペラグラスがあると役立ちます。教会堂への入場は無料です。スペインでは以前は無料だった大聖堂や教会も有料になった昨今、ありがたいことです。

ただ、堂内にある宗教宝飾品を展示したピラリスタ・ミュージアムは有料となります(2ユーロ)。小さなミュージアムですが展示品のすばらしさに目を見張ると同時に、時価でどのくらいするんだろうと気になってしまいました。

ちなみに私はこのピラリスタ・ミュージアム、聖フランシスコ・デ・ボルハの塔展望台、サン・サルバドール大聖堂と併設のタペストリー美術館、そして歩いて10分ほど離れたところにあるロサリオ・デ・クリスタルの入場がセットになったチケットを購入したのですが、12ユーロとお得でした。

勇気を出して最後まで登りたい展望台

教会堂に4つある塔のひとつ聖フランシスコ・デ・ボルハの塔は展望台として開放されており、こちらは有料で入場することができます(6ユーロ)。入り口は教会堂の裏側にあたる川沿いの道に面しています。

エレベータを降りると目の前にサラダゴの景色
<エレベータを降りると目の前にはこの景色>

途中の地上62mの地点まではエレベーター。その先は階段で地上80mのガラス張りの展望台に上がるのですが、最初の部分は外が大きく丸見えで網が貼ってあるだけ、階段自体もスケルトンで、高いところが苦手な私は一歩たりとも階段を登ることができませんでした・・。

途中からは屋内のらせん階段になるそうなのですが、あの先を進んでいたらどんな眺めが待っていたのか、残念で仕方ありません。

ピラール・バシリカ教会堂 Catedral Basílica de Nuestra Señora la Virgen del Pilar

  • 所在地:Plaza del Pilar s/n, Zaragoza
  • 開堂時間:10:00~14:30 16:00~20:00、日曜10:00~12:00 16:00~20:00
  • 閉館日:無し
  • 入場料:無料(但し、ミュージアムは2ユーロ、塔の展望台は6ユーロ)
  • 公式サイト:ピラール・バシリカ教会

※聖フランシスコ・デ・ボルハ塔展望台、ピラリスタ・ミュージアム時間帯は公式サイトで要確認

おわりに

さてさて、長きにわたりスペインとヒスパニックの人々からの信仰を集めるピラールの聖母と教会堂に興味を持っていただけましたか?

スペイン旅行の際にはぜひピラール・バシリカ教会堂をお訪ねください。マドリードとバルセロナのほぼ中間に位置し、両都市から高速列車で1時間半ほどの距離なので便利です。

今回は字数の関係もあり、ピラール・バシリカ教会堂の話だけになってしまいましたが、機会があればサラゴサの別の観光スポットについてもご紹介したいと思っています。サラゴサは素敵な町です。どうぞお楽しみに。

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田川敬子(Keiko Tagawa)

1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。

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