
公開日:
最終更新日:
【岐阜・恵那岩村】「農村景観日本一」の懐かしい風景&観光地化されすぎていない城下町

岐阜県の南東部に位置する恵那(えな)市に岩村(いわむら)という町があるのをご存じでしょうか。
NHK朝ドラ「半分、青い。」のロケ地になった町です。
- 「農村景観日本一」と名づけられた日本昔話のような風景
- 日本三大山城であり日本百名城でもある岩村城址
- 観光地化されすぎず、落ち着いていい感じの町並み
そしておっとりと優しい岐阜の人たち。
岐阜県は、世界から選ばれる旅先となり得る地域・観光プログラム「NEXT GIFU HERITAGE(ネクスト ギフ ヘリテージ)~岐阜未来遺産~」制度をスタートし、「恵那岩村の山城・城下町と農村景観めぐり」はそのひとつに認定されています。
観光地としてはメジャーではありませんが、魅力に溢れた素敵な町「岩村」を歩いてきましたのでご紹介します。
その他、昔の製法を200年以上も伝承し続けているカステラ、これまでの概念がひっくり返るくらい美味しかった五平餅などグルメ情報もたっぷりご紹介します。
目次
「農村景観日本一」富田の風景
環境問題を研究している京都教育大学・木村教授から「農村景観日本一」と名付けられた岩村町富田(とみだ)地区。
人工的なものがほとんど見えず、まさに日本昔話の世界。
日本と日本人が亡くしてしまった「こころの故郷」がここには在ります。
平野ではなく盆地で傾斜があるために棚田状になっており、それが風景に奥行きを持たせて、とても美しい景観になっています。
1998年「第七回美しい日本のむら景観写真コンテスト」の集落部門で農林水産大臣賞(最高賞)を受賞しています。
動画で180度ぐるりご覧ください。
さらに富田の田園地帯にまっすぐ続く道路。
ここも人工物が見えず、独特の雰囲気を持つ空間です。
映画のロケ地としても使用されました。
「重要伝統的建築物群保存地区」に選定された城下町
岩村町本通りは商家群の町並みとして1998年4月、国の重要伝統建築物保存地区に選定されました。(全国で48番目)
江戸~明治~大正~昭和初期の歴史ある建造物が数多く残っている町並みです。
日本のあちこちにテーマパークのように観光地化された町並みはありますが、岩村は違いました。
ここには人々の生活があります。
地元の人たちが日常的に利用するお店や住居があります。
当時の面影を残す商家、旧家、なまこ壁。
観光客が少なく、落ちついてゆっくり歩くことができました。
この通りに住んでいる地元の人たちの生活を垣間見ることができます。
「どうか、いつまでもこのままの姿で在ってほしい」そう感じました。
保存地区には歴史ある道標が残っていました。
1687年頃のものと思われ「是より右へみたけ道」「是より左はなごや道」と彫ってあるそうです(読めませんでしたが笑)。
日本三大山城のひとつ岩村城
日本三大山城のひとつ(あと二つは奈良県の大和高取城、岡山県の備中松山城)であり、日本百名城でもある岩村城。
江戸時代の山城の中でも一番高い場所に位置する城です(標高717m)。
岩村城は、1185年源頼朝の家臣である加藤景兼によって築城されました。
鎌倉時代から明治期まで800年余も存続した歴史ある城です。
織田信長の叔母おつやの方が治めていた時代もあり、岩村は「女城主の里」とも言われています。
天守閣は残っていませんが、石垣が多く残り、当時の姿を思い起こさせてくれます。
他の城ではなかなか見られない岩村城の特徴のひとつが六段壁です。
当初は一段の高石垣でしたが、崩落防止のために上部から補強を繰り返した結果、六段にもおよぶ石垣となりました。全国でも珍しい石垣です。
また、岩村城は気候と地形によって霧が立ち込めることが多いため、別名「霧ヶ城」とも呼ばれています。
城跡のあちこちに石垣が残っており、規模の大きな城であったことがわかります。
城跡の最高地点(717m)の本丸跡からは恵那山を始め、周辺の山々を望みます。
岩村グルメ
水と食が豊かな土地としても知られる岩村。
その中から五平餅、カステーラ、えなハヤシ、日本酒、かんから餅をご紹介しましょう。
五平餅
五平餅は、中部地方の山間部に伝わる郷土料理です。
炊き立てのお米をつぶしお餅に近い状態にして串などに練りつけ、味噌や醤油だれをつけて焼いて食べます。
<今回泊まった岩村山荘で供された五平餅>
名の由来は、五平さんが作ったからとか、小判型だから御幣(ごへい)餅とか諸説あるようです。
高速道路のサービスエリア等でよく見かける五平餅。
正直、個人的にはあまり好みではありませんでした。
甘い、重い、くどい、そういう印象があったからです。
しかし岩村でいくつか五平餅を食べましたが、これまでのイメージが覆されるほど、五平餅は美味しい食べ物でした。
美味しい五平餅を作るコツは次の3つだそうです。
- "炊きたてのお米"を半ごろし(おはぎくらいのつぶつぶが残る状態)にする(炊きたてではないお米で作っても美味しくない)
- 一度たれをつけずに焼いて表面がカリカリになってから、たれをつけて焼く
- 焦げめが香ばしくて美味しいが、たれをつけた後は頻繁にひっくり返し、ほどよい焦げ状態にする
ことだそうです。
また、たれはてっきり味噌味なのかと思っていましたが、醤油たれも多い(味噌もある)ようで、たれの中にくるみ、ピーナッツ、胡麻などがたくさん入っていることであのとろみが出るそうです。
五平餅はもともと家庭料理で、新米を収穫した後に作ってふるまうおもてなしのごちそうだったのだそう。
各家庭やお店によって味や形が違うので、食べ比べをしても楽しいでしょう。
農村景観日本一の富田地区にある「茅の宿とみだ」では五平餅作り体験ができ、今回実際に作ってみました。
<茅の宿とみだ>
農村のイメージそのままの茅葺きの宿です。以前はおばあさんがおひとりでお住まいになっていたのを農泊できる宿にしたそうです。
<茅の宿とみだの囲炉裏>
この懐かしいムード満点の茅葺の家で五平餅を作りました。
富田地区で穫れたこしひかり(炊きたて)を半ごろしにつぶし、串に刺して焼いていきます。
たれが焦げる香ばしい香りが充満しています。
私が焼いた五平餅です。形は少々いびつですが、美味しかったです。
どこかのサービスエリアで食べたあの五平餅とは似て非なるものでした。
五平餅は小判型のイメージが強いですが、こういうのもあります。
<恵那駅に本店があり、岩村にも支店がある「あまから」の団子型五平餅>
これがまた美味しい。お腹が空いていなくてもぺろっと食べられちゃいます。
恵那駅そばのあまから本店は中山道の近くにあり、昔は街道を往く人たちにも提供していたのでしょう。
カステーラ
室町時代末期、ポルトガルの宣教師によりカステラの製法が日本の長崎に伝わりました。
その後、時代を経てカステラの製法も変わっていったようです。
しかし、日本に伝来した当時の製法で今なおカステラを作り続けているのがここ岩村です。
江戸時代、岩村藩の御殿医が、長崎で医学を学んでいる滞在中にオランダ人からその製法を教わり、帰国後町民に伝授したものと伝えられています。
岩村のカステラの特徴は銅板造りの小釜を使うこと。1本1本を炭火と同じ300度で上下から高温で焼き上げ風味をそのままに閉じ込めます。
更に卵をかき混ぜるときには石臼でゆっくりと行います。すると気泡が小さくなって身が詰まり、卵焼きのようなカステラに仕上がります。
岩村の中でも老舗のカステーラ屋が、本通りにある松浦軒本店。
<松浦軒本店>
創業1796年の老舗。
高級菓子というよりは懐かしく温かい素朴な美味しさです。お値段もとても良心的。
観光客相手ではなく、地元に根ざしている姿勢が感じられます。
<松浦軒のカステーラ>
表面はこんがり、いい具合に焼き色がつき、中はしっとりふんわりしたカステーラ。優しい甘さで濃厚な卵の風味が感じられます。
<松浦軒のからすみ>
長崎にあるからすみはボラの卵から作られた珍味ですが、岩村を含む東濃地域特産のからすみはこちら、米粉で作られた和菓子です。
ひな祭りのお供えやお菓子として長い間愛されています。見た目はういろうのようですが、ういろうよりもやや固めでもっちりした食感。
切った形が山型になるのが、岩村のからすみの特徴です。
もうひとつユニークなカステラを作っているお店がこちら。
<かめや菓子舗>
こちらで作られているカステラ(かすてぃら)のひとつがこちら。
<朝かすてぃら>
こちらは焼いて食べるカステラです。
<焼く前の朝かすてぃら>
これをトースターで2~3分焼いたものがこちら。
<トーストした朝かすてぃら>
表面がこんがり香ばしく甘さ控えめで美味しかったです。牛乳やコーヒー、紅茶とも合います。
こちらも430円ととても良心的価格です。
えなハヤシ
ハヤシライスの生みの親といわれる早矢仕有的(はやしゆうてき)さんにゆかりのある恵那市のご当地グルメです。
えなハヤシの特徴は次の3つ。
- 地元の米を使った薬膳米のごはん
- 恵那市特産の寒天
- 恵那山麓育ちの三浦豚
今回、岩村で人気のレストラン「エスポワール」でいただきました。
<時期限定のスペシャルメニュー ダムハヤシ>
ハヤシライスのソースがとっても濃厚で食べごたえがありました。古代米と絡みあう相性もぴったり。
お腹いっぱい、大満足のハヤシライスでした。
日本酒「女城主」
200年以上も続く歴史ある岩村の酒蔵。
銘柄は「女城主」。
オーナーのこだわりはきれいな酒造り。
<岩村醸造>
トロッコの線路が今も敷地内に残っています。これで商品や材料が運ばれていました。
<トロッコの線路>
今回おすすめ3種のお酒の飲み比べをしました。
- 特別純米・・・バランスよく飲み飽きない食中酒
- しぼりたて生原酒(本醸造)・・・アルコール度数19度の濃厚な旨みのある甘口
- 酔むすび(純米大吟醸)・・・岐阜県の新しい酒米「酔むすび」を使った新商品で上品な旨み。
社長の言う「きれいな酒づくり」を感じさせ、「女城主」という銘柄にぴったりの品のある清らかなお酒でした。
かんから餅
明治時代から続く甘味処。
あんこ、きなこ、ごまの3種のかんから餅が名物です。
お餅はもっちもちで柔らかく、きめ細やかな優しい味です。
そしてもうひとつ、このお店の名物がうどんです。
<餅玉うどん>
きしめんっぽい細くて平打ちのうどんにお餅、大ぶりな油揚げ、かまぼこが入っていてかき玉風うどんです。
このお餅もとろとろで柔らかくて美味しかったです。
昔から地元で愛されている様子が伝わってきました。
宿泊は旧藩主邸そばの岩村山荘
岩村城址の麓。藩主邸のあった高台に建つ宿「岩村山荘」。
<岩村山荘の外観>
町の高台に位置し、天守閣を思わせる外観は岩村を代表する宿です。
館内は太い梁のしっかりした造りで旅人を迎えます。
岩村山荘は、囲炉裏炭火料理「戦国料理」が自慢。
飛騨牛、岩村ブランドの三浦豚、味噌づけの鶏。その他新鮮な野菜(原木しいたけ、ねぎ、なす、玉ねぎ)を囲炉裏で炭火焼でいただきます。
さっきまで水槽で泳いでいた新鮮な岩魚を串に刺し、生から焼きます。
どれも美味しかったですが、岩魚が絶品でした。ふっくらふわふわで川魚特有の臭さもなく、こんなに美味しい岩魚を初めて食べました。
朝食も湯豆腐鍋やだし巻もついてとても豪華でした。
岩村は標高530mの高地に位置しています。積雪量は多くありませんが、朝晩の寒暖差が大きく冬は厳しい環境です。
布団には湯たんぽが入れてあり、ぽかぽかと温かく眠ることができました。
岩村へのアクセス
名古屋駅からJR中央本線で恵那駅まで約60~70分。
恵那駅からは第三セクターの明知鉄道に乗って山に分け入って行き、約30分で岩村駅に到着します。
明知鉄道は観光路線というよりは地元の足として現役で活躍している列車です。
イベント列車も運行しており、今回はその中のひとつ「じねんじょ列車」に乗りました。
<明知鉄道の「じねんじょ列車」>
<じねんじょ列車内部>
車窓の移りゆく風景を見ながらお弁当をいただきます。車掌さんの明るい面白い案内もあり、楽しく過ごせました。
<列車内で提供されたじねんじょ弁当>
車内には大きなすり鉢にはいったじねんじょのとろろが。。。
明知鉄道山岡駅にあるレストラン「かんてんかん」のスタッフさんが乗車し、サービスしてくれます。
こちらが麦めしにとろろをかけたとろろめしです。
出汁が利いていてスルスルッと食べられました。女性でも5~6杯お代わりする人がいるのだとか。
<明知鉄道 岩村駅舎>
<岩村駅ホーム>
山あいにある静かな駅という風情です。
ここにも古き良き懐かしい日本の空気が漂っていました。
最後に
いかがでしたか、岐阜県恵那市岩村町。
「日本にはまだまだ知られていない素敵な町があるなぁ~」と改めて思いました。
- 懐かしい日本の農村のイメージそのままの風景
- 江戸~明治~大正~昭和の空気を今に繋ぐ町並み
- 日本三大山城のひとつである岩村城
人ごみが苦手、静かにゆったりと町歩きを楽しみたい、そんな人にぴったりの町。
名古屋駅から恵那駅までの間、しばらくは新興住宅地のような街並みが続くのですが、岐阜県に入ると一転、自然が残った懐かしい風景が広がります。
できればこのまま観光地化されすぎない姿で、未来に受け継いでいってもらいたい町。
穏やかでガツガツしていない岐阜の人たちなら大丈夫かもしれませんね。
Ranking岐阜記事ランキング
-
シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。