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野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~北海道十勝の旅

<TOP画像:一面のカモミール畑(陸別町)>
野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は「気になる農産物の生育を見たい」とか「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。
地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。今回は北海道の十勝エリアへ。いろいろ気になる人たちの農産物と出会う旅になりました。
目次
今回の旅のきっかけ
トウキ、カンゾウ、キバナオウギ、コウライニンジン、シコン...何かの呪文のようですが、これらは「薬用植物」の名前なのです。
「薬用植物」? 聞きなれない言葉ですね。農林水産省の「薬用植物のページ」では、「薬用作物は生薬の原料となる作物で、その一部または全部が乾燥や簡単な加工を施され、漢方薬等に使用されます。」と説明されています。
医薬品原料として使用される生薬の割合は、中国産が全体の約77%、国産は約11%(※)。中国産生薬の価格が上昇傾向にあることからも、国内での薬用作物生産の需要が高まっているのだそうです。
※出典:日本漢方生薬製剤協会「原料生薬使用量等調査報告(5)(2019)」薬用植物は成長分野なのです。
<ピンク色が可愛いエキナセア(陸別町)>
そう、今回の私の旅のきっかけとなったのは「薬用植物」! 北海道東部のほぼ中央に位置する陸別町に移住して薬用植物を栽培している日向優(ひなたゆう)さんの近況を確認することを中心に組み立てました。
日本一寒い町・陸別町
北海道東部のほぼ中央に位置する陸別町。女満別、釧路、帯広の各空港からもほど近く、道東の各観光地へ至る道路網も整備されて移動もスムーズ。道東観光の拠点としては最適な地にあります。
陸別町と言えば「日本一寒い町」として有名です。厳冬期には、マイナス30℃を下回ることもあるのだそうですよ。
<道の駅「オーロラタウン93りくべつ」前。写真は2024年7月の北海道が一番暑かった日のもの>
寒さが故なのか、空が澄んでいて星がとてもきれいに見えます。それは環境庁(現:環境省)のお墨付きで、昭和62年度「星空の街」に選定され、平成9年度には「星空にやさしい街10選」に認定されました。
それを機に、1998年7月には、「りくべつ宇宙地球科学館」(愛称:「銀河の森天文台」)が開館。また、1910年、国鉄網走本線開通(池田・陸別間)から95年間走り続けてきた「ふるさと銀河線」が、2006年4月に廃止され、その2年後には観光鉄道として「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」に生まれ変わりました。
陸別駅は、2000年に「道」と「鉄道」の交流点の役目をする「道の駅『オーロラタウン93りくべつ』」に。構内では、銀河線で活躍した列車を実際に運転できる「運転体験」や「乗車体験」、足こぎ式の「トロッコ」に乗ることもできます。
<この車体を見に来る人たちも多い>
<『銀河鉄道999』の松本零士氏のサインが入ったメーテルラッピング車両も無料で見学できます>
道の駅「オーロラタウン93りくべつ」
- 住所:北海道足寄郡陸別町大通(国道242号沿い)
- TEL:0156-27-2012
- 公式サイト:道の駅「オーロラタウン93りくべつ」
なぜ陸別町へ?
私が日向さんを知ったのは2020年8月、SNSの投稿でした。地域おこし隊として陸別町にご夫婦で移住し、薬用植物を育て始めた人がいるという情報を受け、すぐさま会いに伺ったのが始まりです。
その後、地域おこし隊の任務を終え、2021年2月に「種を育てる研究所/タネラボ」という会社をスタート。十勝エリアに行った際には何度か伺い、圃場見学もさせていただいています。
「タネラボ」のビジョンは、「地域から発信する商品やサービスによって、人々が心身ともに健康で美しくなる」。薬学の知識で人々の健康と美容に寄与することを目指しています。
圃場では、キバナオウギやトウキ(当帰)などの薬用植物のほか、エキナセアやカモミール、カレンデュラ、フェンネルなどの西洋ハーブなど栽培品目も年々増やしています。
なかでも、今一番力を注いでいるのがトウキです。セリ科多年草で、日本固有の薬用植物。根は生薬「当帰」として漢方薬の原料に用います。葉はセロリのような個性的な香りが特徴で、ヨーロッパではその学名から「天使のハーブ」と呼ばれ、肉料理やスープ、スイーツなどにも利用されています。
トウキの葉が一般に流通することはほとんどありません。近年では、ビタミンやミネラル等の栄養成分が豊富に含まれていることが明らかとなり、その特性を利用した食品や化粧品の開発が徐々に増えてきました。
トウキの葉は天ぷらにしても美味しいこともあり、北見市の飲食店でも使われたり、学校給食に「トウキ入りキーマカレー」が提供されたりしています。トウキの葉の収穫は春と秋の2回あります。
<トウキ畑での草取り中の日向さん>
現在、畑では日本の薬用植物だけでなく、西洋ハーブ類も加えて約20種類の植物を栽培しています。そのことにより、多様な商品を創ることができ、多様なニーズに応えることができます。
これまでにほとんど例がない、日本の薬草と西洋ハーブを組み合わせた商品の開発も視野に入れています。現在ハーブティーやハーブコーディアル(シロップ)、エッセンシャルオイルなどの加工品を製造しています。商品は自社のサイトのほか「オーロラタウン93りくべつ」でも販売しています。
<カモミール畑>
<オリジナル商品のハーブコーディアル>
種を育てる研究所/タネラボ
- 住所:北海道足寄郡陸別町字陸別基線316-22
- TEL:0156-27-8222
- 公式サイト:種を育てる研究所/タネラボ
十勝エリアで西洋野菜の栽培は珍しい
十勝に行ったら、音更町の「たけなかファーム」にも立ち寄ります。十勝の農業といえば畑作(穀類や豆類、イモ類)が中心です。
「たけなかファーム」では17年ほど前に帯広のレストランオーナーシェフに薦められて、自身の畑作以外にも、当時では珍しかったリーキ(西洋ネギ)やセロリアック、ベルギーエシャロット、カラフルニンジンなどの西洋野菜の栽培を始めました。今では全国のレストランやこだわりの青果店にも出荷しています。
<奥までずっとリーキ畑。普通のネギの畑とは異なる風景です>
広い大地に広がるリーキの畑に圧巻です。リーキは一般的なネギとはちょっと違って、緑の部分が扇のように広がっています。
<20~30センチは土に埋まっていて、緑の部分はまるでパイナップルが植わっているみたいです>
私が好きなリーキ料理は「すき焼き」です。たくさん煮ても煮崩れないので、しばらく煮て肉汁をしっかり含んだリーキと肉を一緒に食べるのが本当に美味しいと思います。
たけなかファーム(有限会社竹中農場)
- 住所:北海道河東郡音更町字西中音更北14-15
- TEL:0155-45-2014
- 公式サイト:たけなかファーム
帯広を楽しむなら
帯広は、十勝エリアのほぼ中心にあります。宿泊は帯広が多いのですが、最近は素泊りにして、夜は居酒屋、朝は朝風呂&朝食を楽しんでいます。
よく行く居酒屋が「大地のあきんど」。農家直送の十勝の美味しいものを美味しく食べられます。何を食べても本当に美味しい。
<大きなメークインを四つ割りにしたフライドポテト、ナガイモのお好み焼き十勝牛のステーキなど十勝の恵みをいただけます>
大地のあきんど
- 住所:北海道帯広市西1条南9丁目20番地
- TEL: 0155-26-8877
- 営業時間:17:00~23:00
- 定休日:日曜
朝は早起きして、余裕があればゆっくりランニングしながら、時間がないときは車で行くのが「天然温泉ホテル光南」の朝風呂(6:00~11:00)です。
朝からモール温泉に入ることができます。その上、朝食バイキング(7:00~9:30)もあるのです。
<野菜が多く使われた家庭的な料理が並び、自分で盛り付けて好きなものを好きなだけ食べられます>
天然温泉ホテル光南
- 住所:北海道帯広市東2条南19丁目15
- TEL:0166-23-8000(代表)0155-23-7353
- 公式サイト:天然温泉ホテル光南
【注意事項】
※現在、温泉の改修工事中につき、入浴はご利用いただけません。
※宿泊の方は、シャワーでの対応となります。
(工事は3月末に完了予定です)
札幌に戻る前にもう1カ所に立ち寄り
十勝は行きたいところがたくさんあるのですが、行きか帰りに寄るのが清水町の「森田農場」です。
<奥の方は刈り取った小麦畑、手前が小豆です>
畑作中心の「森田農場」。土づくりにもこだわっています。なかでも、特に小豆(アズキ)に対する愛情が半端ないのです。
自社のホームページを見ると、小豆の美味しい煮方の動画や、「小豆コラム」など、小豆のある生活のすばらしさも提唱しています。また、あんこや「小豆茶」、「発酵あずき」「ホクホクあずき」など小豆商品も手掛けています。
私も、小豆と黒豆はこちらから買っています。ちなみに小豆の花は何色かわかりますか?黄色です。小さくて可愛い黄色い花を着けます。
<小豆の黄色い花>
森田農場(株式会社A-Netファーム十勝)(インターネット事業所)
- 住所:北海道上川郡清水町御影東4条3丁目15番地
- 電話番号:0156-63-2789
- 営業時間:12:00~20:00
定休日:土・日曜・祝日 - 公式サイト:森田農場
北海道は四季がはっきりしているのでどの季節も楽しめます。特に十勝エリアは、ちょっと車を走らせると広い畑が広がっています。その景色を見るだけでもリラックスできます。また、食べ物は美味しいですし、温泉も多い。ぜひ、おすすめのエリアです。
私がお土産に選んだのは、こちら!十勝エリアとネットでしか買えない美味しいジンです。前述の「タネラボ」の「天使のジン」。
<「トウキ」を使った「天使のジン」。なんか体によさげですよね>
あとは、帰りのドライブのお供に買ったユウガオ。道の駅にはふだんスーパーには並ばない珍しい野菜もあるので、よく立ち寄ります。
<大きなユウガオをゲット!>
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吉川雅子
- 札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。