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野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~北海道旭川の旅
<TOP画像:立派な「瑞の香」というイチゴ>
野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。
地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。今回は北海道の旭川と東川へ。イチゴとお酒と発酵の旅になりました。
目次
今回の旅のきっかけ!
今回は、東北在住で気の合う野菜ソムリエから「東川町のオーベルジュに行くのでご一緒しませんか?」というお誘いメールから立案。
それならばと、旭川のイチゴ農家さんなどに立ち寄ったあと、午後からは天人峡温泉へ自分癒しの旅に行く友と別れ、私は旭川の旅を満喫することにしました。いつもは気になる農産物から旅を組み立てるのですが、今回は逆パターンの旅です。
<北海道第2の都市にふさわしい大きくて機能的な旭川駅。内装は木がふんだんに使われ、ショッピングモールも隣接されています>
ステキなオーベルジュへ
友は旭川でレンタカーを借りるというので、札幌在住の私は都市間高速バスで旭川に向かいました。16時過ぎに待ち合わせ。そのまま東川に向かいましたが、日暮れが早い冬の北海道。16時を過ぎるとあたりはもう薄暗い。
米どころの東川町。田んぼに囲まれたオーベルジュに着いた時はもう真っ暗でした。
<車のナビとGoogle Mapを駆使して、1時間ほどでオーベルジュに到着。真っ暗でしたが、星がとても綺麗でした>
「東川ペリカン」は2024年春にオープンした、地元の旬食材と北海道のワインを提供するワインオーベルジュです。
オーナーシェフの佐野健さんは、39歳で東京・広尾にて「広尾ペリカン」を開店。その後、北海道のワイナリーへ通ううちに、北海道のワインや食材に魅せられて2023年に一家で移住したというわけです。
<ワインボトルをくわえたペリカンが目印>
チラチラと雪が舞い落ちる寒い中、温かなまきストーブが迎えてくれました。シンプルでコンパクトな造りの建物には、1階に厨房とレストランスペースが、2階には2組が宿泊できる客室(定員2名)があります。
<まきストーブが北国らしい>
さっそく夕食です。主に北海道ワイン中心に、常時30~50種類のワインがありセレクトできます。ワインはお好みのものをボトルでもグラスでも可能ですし、10枚のチケット制で料理に合ったものを選んでもくれます。
地元の食材を使用し、巧みな技で提供するフレンチ料理はどれも美味しく、ワインもいろいろ楽しめて大満足でした。
<ゆっくりと料理とワインのコラボが楽しめて大満足!写真は料理中心ですが>
積もる話をたくさんして迎えた朝。うっすらと雪が積もっていました。
<田んぼに囲まれていることを、朝改めて知りました>
朝食は意外にも和食。東川町は米どころであり、水が綺麗で有名なところらしい。ほかほか炊き立てご飯と地元の大きな湯豆腐、それにスープや魚、小鉢、デザートなどが付きます。
<どれも美味しいご飯に合うおかずばかり>
東川ペリカン
- 住所:北海道上川郡東川町西8号北26
- 電話番号:0166-56-8846
- 公式サイト:東川ペリカン
※基本的には前日までに要予約
移住者が多い東川町
前述の「東川ペリカン」のご家族もそうですが、東川町は移住者や移住してきた企業も多いのです。その1つが、「三千櫻酒造」です。
<全国から銘酒を求めて来店者が訪れます(駐車場にはレンタカーが多い)>
明治10年、岐阜中津川で創業。143年の歴史を歩んできた三千櫻酒造は、2020年11月「東川町公設酒蔵・三千櫻酒造」として新たなスタートを切りました。
調べてみると、人口約8,500人のうち、約6割が移住者だそう。移住し、起業している人もとても多いのだとか。すばらしい町です。
東川町公設酒造・三千櫻酒造
- 住所:北海道勇払郡厚真町宇隆163-5
- TEL:0145-27-2137
- FAX:0145-27-3138
- 公式サイト:三千櫻酒造
品種改良も手掛けるイチゴ生産者
久々に立ち寄らせていただいた「のなか農園」。園主の野中剛さんは3代目で、1999年に就農。現在は、稲作を中心に、アスパラガスやカブ、キヌサヤなどの野菜、そして、野中さんが始めたイチゴの通年栽培です。
きっかけは地元のホテルで、ウェディングケーキに1年中イチゴを使用したいというひと声から。
<北海道の冬は、一部の野菜を除いては栽培不可能。「のなか農園」ではハウスで通年イチゴを栽培しています>
イチゴは暑さに弱く、日本では旬は冬。イチゴ栽培に取り掛かり始めたころの夏のイチゴの品種は、酸味が強くケーキにするにはよかったのですが、生食するにはむかない。
美味しい品種がないなら自分で作るしかないとオリジナルのイチゴの品種を開発。そうして品種登録したのが「瑞の香」です。名前の通りみずみずしく、果肉の中まで真っ赤で、大粒で、甘い味と香りの余韻が長い。
<イチゴの品種改良は、母親にする花の雄しべを取り除き、父親にする花の花粉をつけ交配するのだそうです>
このイチゴでできたスパークリングがあるのですよ。
<これ1本(375ml)にイチゴ400gも使います。品種は瑞の香をベースにその年の良い状態の苺を加えています>
味はドライに仕上がっているのでフレッシュなイチゴにも合いますが、前菜料理にも合うと思います。
野中さんとは来年度の話もして別れ、野菜ソムリエ仲間の青果店「amuse market」や美味しいお蕎麦屋さんに寄り、友と別れてホテルへ。
<地元の人がひっきりなしに訪れる、野菜ソムリエ仲間の青果店「amuse market」>
のなか農園
- 住所:北海道旭川市東鷹栖10線15号
- 公式サイト:のなか農園
せっかくなので私も温泉でまったり
「ホテルWBFグランデ旭川」にチェックイン。ここには日帰り入浴もできて、観光客だけではなく、多くの地元の方々も利用しています。
<「ホテルWBFグランデ旭川」の外観>
さまざまなタイプの岩盤浴もあり、私は夕食前に読書をしながらまったり。
<岩盤浴でゆっくり過ごせるホテルは珍しい>
そこで言葉を交わした方から地元のおすすめのお店を教えてもらいましたので、夕食はそちらへ。
<教えてもらったお店で、海の幸とネギ入り卵焼きをいただきました。もちろん地元のお酒とともに>
ホテルに戻って、宿泊専用のラウンジに立ち寄り。ここではアルコールのほか、ソフトドリンクやアイスキャンディーなどの無料提供があります。
<地元の日本酒だけではなく、土日は北海道ワインの提供もあります>
翌日は大浴場の露天風呂で気持ちをシャキッとさせて朝食会場へ。ビュッフェスタイルで好きなものが選べるので、前日食べられなかった旭川名物の新子焼きと旭川ラーメンをメインにセレクト。
<家族連れにも人気のホテルなので、地元メニューのほか老若男女に人気のメニューがいろいろ並びます>
<食べきれないほどの種類が多く、厳選して!>
ホテルWBFグランデ旭川
- 住所:北海道旭川市宮下通10-3-3
- TEL:0166-23-8000(代表)
- 公式サイト:ホテルWBFグランデ旭川
発酵の学びへ
ホテルを後にして、発酵の学びへ。発酵といえば日本酒ははずせません!旭川には、大正時代の最盛期には17軒の酒蔵がありましたが、現在は3軒だけとなりました。
その1つ、「髙砂酒造」を訊ねました。明治32(1899)年創業の老舗で、大雪山系の伏流水と道産酒造好適米を原料に、純北海道産の酒を造り続けています。
工場内の見学をさせていただきました。1929年には鉄筋コンクリート造の製造工場を竣工。木造建築が多かった当時としては珍しかったそう。もちろん、現在も当時の建物そのままで使用しています。
<歴史ある工場の中ではその時代の味を追求しながら人々に愛される日本酒を作り続けてきました>
1975年には大人気の辛口で男性的な酒「国士無双」が誕生。酒蔵併設の直売所「髙砂明治酒蔵」では、代表銘柄「国士無双」シリーズのほか、季節限定酒や蔵元限定酒、生酒などを販売。試飲コーナーも備えています。
<商品数が多くて迷います。外国人客もいらっしゃいます>
髙砂酒造株式会社
- 住所:北海道旭川市宮下通17丁目右1号
- 電話番号:0166-23-2251 直売店直通:0166-22-7480
- 直売店営業時間:9:00~17:00
- 公式サイト:髙砂酒造株式会社
続いて、「日本醤油工業株式会社(キッコ―二ホン)」へ。創業80年、昔ながらの建物で、伝統の味を守りながら脈々と醤油を製造。現在は、醤油のほか、つゆやたれ、ドレッシングなども製造しています。
<昔ながらの木造の建物がいい味を出している直売所>
併設する直売店ではそれらのほか、醤油を使ったお菓子やおつまみ、夏冬問わずしょうゆアイスキャンディーが大人気です。
<醬油やドレッシングなどもありますが、お菓子や雑貨など駄菓子屋さんのようで楽しい直売店>
日本醤油工業株式会社(キッコ―二ホン)
- 住所:北海道旭川市曙1条1丁目
- 電話番号:0800-800-7772
- 営業時間:10:00~17:30
- 公式サイト:日本醤油工業株式会社
自分お土産たち
今回はバス移動だったので厳選してセレクト。「髙砂酒造」で酒粕を使った商品が気になっていたので「フィッシュスティック」と「甘酒餅」を。
酒粕は醪を圧搾した際に出てくる酒の副産物で約3割にもなるそう。栄養成分が高く、健康食品としても注目されています。
<「フィッシュスティック」は日本酒だけでなくワインにも合います。「甘酒餅」は高砂酒造の「国士無双」の酒粕を使用しています。>
「日本醬油工業」では、生醤油と北海道産しゅまり小豆を使って甘すぎない羊羹と「あさひやまどうぶつえん」アニマルボトルの本醸造濃口醤油をゲット。
<可愛い卓上醤油とミニ羊羹>
地元では愛されているB級グルメ「ジュンドッグ」。ずっと気になっていたもの。地元の飲食店が考案した、いわゆるお米のホットドッグ。
駅のkioskにえびフライとチキンカツ、ソーセージの3種類がありました。このままレンチンして熱々を食べるワンハンドフード。
<具の味付けがクセになる「ジュンドッグ」>
旭川と言えば、市内にある「旭川スタルヒン球場」があります。2024年にはオープンから40周年を迎えました。
ここは夏の高校野球・北北海道大会の会場であり、2013年に照明設備が整備されたことから、プロ野球のナイター試合開催が可能になりました。
2014年7月には、当時、日本ハムの選手だった大谷翔平選手もピッチャーとして活躍した場所です。ほかにも、老若男女に人気の「旭山動物園」やお花に癒される「上野ファーム」、より自然に触れるなら旭岳や層雲峡、冬場は周辺にパウダースノーが堪能できるゲレンデも多数あり、コンパクトな旅を楽しみたい方におすすめの街です。
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吉川雅子
- 札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。