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インドに行くと人生観が変わる?インド独特の5つの理由
<TOP画像/引用:Unsplash>
昔から「インドに行くと人生観が変わる」と言われ、数多くの旅人を魅了し続ける国、インド。ビートルズや長渕剛など、数々のアーティストがインドに滞在し、名曲を生み出した過去もあり、インスピレーションが得られる国の代名詞となっているのではないのでしょうか。
私自身6年間インドに滞在し、「人生観が変わる」という表現を身に染みて感じることも多々あります。日本とまったく異なる価値観の中で人々の暮らしを見て、感じることで、自分自身も大きく影響を受けました。
今回はインドに行くと人生観が変わると言われる、その背景にはどんな理由があるのかを私なりに考えてみました。
目次
- 理由1. 目の前に広がる圧倒的な貧富の差
- 理由2. 人生で出会うことがなかったずる賢い人たちに簡単に出会える
- 理由3. 家族観、結婚観が日本とまったく違う
- 理由4. 宗教が日常生活の中で感じられる
- 理由5. 生も死も近い
- まとめ 常識が通じない国、インドへようこそ!
理由1. 目の前に広がる圧倒的な貧富の差
まず、インドに行った時に感じたのは日本の均一性がいかに高いかということでした。日本では大半の人が生活するのに困らない衣食住を確保し、当たり前に文字が読め、自分で選んだ仕事をしています。その人がお金持ちか貧乏か、見た目からはそこまでわかりませんし、わかる必要もありません。
一方で、インドに広がるのは圧倒的な貧富の差です。お店にランク付けがあり、それらを個人の経済状況によって当たり前に使い分けています。同じレストラン、同じメニューでも「AC(エアコン)つき」のセクションは綺麗な内装で値段が高く、ACなしの大衆食堂セクションは安く、ステンレスの食器に雑に食べ物が盛られ、知らない人との相席も普通です。
電車も狭い横長ベンチに身を寄せあって座る最低ランクから、ACつき個室まであります。個人の経済状況が見た目や体つき、服装などから非常にわかりやすいのも特徴です。
お金持ちは大きな宝石のついたアクセサリーを付け、Tシャツなど現代的な服装の人が多く、一方で、庶民ほどサリーなど伝統的な衣服や装飾品を日常的に好む傾向にあります。そして、お金がない人たちは「お金持ちが自分のような立場に寄付するのは当然、助けてもらうべき」という理論で物乞いをしたり、お金を要求したりしてくることも。
お金持ちは、親切心からか、あるいは「寄ってくるな」という思いからか、小銭を寄付することへの抵抗はなさそうに見えます。ですが、経済的に恵まれない層が悲観的かと言えばそうでもなく、祭のたびに爆竹を鳴らしたり爆音の音楽を流したりして、大騒ぎをして明るく生きています。
日々の苦労はあるものの、定期的にガス抜きをして、今を精一杯暮らしているのです。
政府の施策では一生埋まらないであろう市民の貧富の差をまざまざと見せつけられるのは、非常に衝撃的でした。生まれた国次第でこうも状況が変わるのか、自分がもし日本以外で生まれていたら...と思うと、自らの境遇や家族について考えさせられます。
理由2. 人生で出会うことがなかったずる賢い人たちに簡単に出会える
移動しようと思うと、オートリキシャーと値段交渉。適正かどうかわからないお土産の値段。市場を歩けば客引きに行く道を遮られ、物乞いにつきまとわれ、何一つスムーズにものごとを進めることができません。
何をするにも、どこに行くにも「インド人」とやりとりをしないといけないのです。これがインド旅行の醍醐味でもありつつ、「二度と行きたくない」と思う人たちも多い理由でしょう。
残念ながら「外国人は金持ちだから、その人たちからお金をもらうことは悪いことではない」と考える人たちもたくさんいて、ぼったくりや旅行代理店詐欺(偽のツアーを予約させる、など)などが横行しています。多かれ少なかれ、何かしらの形でインド旅行中にはトラブルに見舞われることになるでしょう。
しかし、インド人の助けなしでは何もできません。現地の人々とのやりとりの中で交渉の作法を身につけ、目の前の人が誠実なのか詐欺師かを判断しなければならず、気が付けばサバイバル術のようなものが身につきます。
現地で知り合った日本人の方も「こんなにはっきりと『No』を他人に突きつけたのはインドが初めて」と言っていました。
もちろん、欲張らず、謙虚な人もたくさんいます。写真の方は、悪い人ではなく自分の仕事を息抜きしながらも全うしている、ぶっきらぼうだけど親切なよい方でした。ただ、悪い人やずる賢い人との距離が、日本と比べると圧倒的に近いのです。
そのような状況で、自分が日本という国の中でいかに守られていたのか、気づくことになります。
理由3. 家族観、結婚観が日本とまったく違う
インドは「早く結婚してすぐに子どもを産む」ことがよいとされており、家族は息子や娘が結婚適齢期になると相手探しに全力を尽くします。お見合い結婚が非常に一般的で、個人的な体感では7〜8割の夫婦がお見合い結婚をしているようでした。
お見合い結婚の場合、大切になるのがカーストです。カーストは身分差というよりも所属コミュニティの違いと言った方が適切かもしれません。相手の経済状況がよくても、カーストが違うと結婚を認めてもらえないことがあります。
宗教の違いも「カーストの違い」としてひとまとめにされることも多く、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒では結婚が非常に難しくなる傾向にあります。結婚では本人たちの気持ちよりも家と家がつながることに重きを置かれ、そのつながりを何度も確かめるように、結婚式は何日もかけて行います。
「自分が好きな相手と結婚できなくてもいいの?」と聞くと、「親が選んだ人だったら自分も好きになるから大丈夫」とのことでした。この言葉からも見てとれるように、インドでは家族への依存度が高い人が多い気がします。
親は子どもを自分の所有物のように思い、子どもも親に従います。育ててあげたのだから、育ててもらったのだからと、親を早めに引退させてその後子どもの収入で生活するという家庭をよく見かけます。自分が身を置いてきた家庭の形とはまったく異なるインドの家族観。
「家族たちが支え合って生きている」または「依存しあっている」と感じるのか、また自分と家族との距離感について考えるきっかけになるでしょう。
理由4. 宗教が日常生活の中で感じられる
<引用:Unsplash>
日本では「自分がどの宗教を信じ、どの宗派に所属し、どの神様に向かって祈る」ということを考える機会はそうありません。一方で、インドは宗教の存在がとても身近で、インド人の3大アイデンティティ(仕事、出身地、宗教)の1つだと個人的には感じています。
イスラム教徒、仏教徒、ヒンドゥー教徒、キリスト教徒...その他どの宗教であっても、お寺や教会などの宗教施設を訪れる習慣があり、祭壇のようなものが各家庭にあり、同じ宗教の仲間と日常生活をともにします。
ことあるごとに神様に祈り、大きな宗教行事の日は祝日になります。また、神様の名前を子どもにつけたり、神様のシールをバイクや車に貼ったり、ヒンドゥー教の神話がドラマシリーズになっていたりと、宗教と推し活が混在しているようにも思えます。
私には、いるかどうかもわからない神様ですが、インド人の心の中には神様が存在しているということは確実に言えるでしょう。宗教施設の中で厳格な儀式に同席すると、スピリチュアルとはこういうことなのか、と不思議な感覚になることもあります。
神様とは誰なのか、自分は何を信じるのか、そういったことを立ち止まって考えるきっかけになります。
理由5. 生も死も近い
インドでは、生も死も日本よりずっと近いところにあると感じます。出生率が高いこともあり、都会は人だらけ。圧倒的な生命のエネルギーが爆発しています。
子どもが多いのはもちろん、野生の犬猫や牛が子どもを連れています。私が生まれたばかりの子犬を見たのは、インドが初めてでした。生命が繋がれていくことを、しみじみと感じます。
同時に、インドでは死も身近です。街の至るところにある「チキンセンター」では生きたニワトリがカゴに入れられ、500g、1kg、などと注文すると生きたニワトリがその場でさばかれます。断末魔が聞こえた後、袋に詰められた肉はまだあたたかさが残っているのです。
イスラム教徒の犠牲祭の時期には街にたくさんのヤギがつながれ、さばかれ、食べられます。食肉はもともと動物であるということを嫌でも意識させられます。それが理由でベジタリアンを貫くという人も一定数います。
<引用:Unsplash>
また、聖なる宗教都市バラナシでは、死後ガンジス川に流されることを求めるヒンドゥー教徒が集まります。川辺では、人が焼かれ、骨になっていく姿が毎日広がっています。人間の死に生々しく触れる体験はここでしかできないことかもしれません。
日々なんとなく過ごしてしまいがちですが、自分が誕生したからには終わりがある、生命の循環の中で生かされている、ということを感じざるをえません。
まとめ 常識が通じない国、インドへようこそ!
インドでは、自分が日本で生きてきた中で培った常識が通用しません。それが、「インドに行くと人生観が変わる」と言われる背景なのだと思います。インドは、日本から最も簡単にアクセスできる宇宙だと思った方がいいかもしれません。
それくらい、あらゆる物差しや考え方、文化や習慣が異なります。また、それがおもしろいのも事実です。異文化の中を大冒険したいなら、インド旅行ほど楽しいものはありません。ぜひ、まとまった休みを取って、インド独特の世界観にどっぷりと浸ってみてください。
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やまもと
- インドのバンガロール・ムンバイの2拠点で活動している翻訳者・ライターです。インドの野良犬とヨガが大好きです!