日本のお札がつくられている現場を見学できる「国立印刷局」ってどんな所?

「日本のお札の製造技術は世界的にみても優れている」

そんな印象をお持ちではありませんか?

私はなんとなくそう思っていました。

外国で高額紙幣を使おうとすると、お店の人が偽札ではないかと透かしてみたり念入りに調べたり、といった場面に出くわすことがありますが、日本ではそんな光景はまず見られません。

普段使っているだけでも何となく、日本のお札の製造技術や偽造防止技術がすごいということは伝わってきますが、その内情はベールに包まれた印象があります。

そんなお札の製造現場を見学できると聞いて、国立印刷局東京工場へ行ってきました。

普段はできない貴重な体験や日本のお札の歴史など、興味深いお話が聴けて面白かったのでレポートします。

目次

日本でお札をつくっているのはどこ?

そもそも日本ではお札(紙幣)はどこでつくられているのでしょうか?

その答えは「国立印刷局」です。

国立印刷局は、本局と研究所のほか、全国に6つの工場があります。

※6つの工場とは、東京工場、王子工場、小田原工場、静岡工場、彦根工場、岡山工場を指します。

東京工場
<国立印刷局 東京工場>

今回は東京都北区西ヶ原にある東京工場を見学しました。

>>国立印刷局の公式サイトはこちら

国立印刷局では何をやっているの?

国立印刷局は「社会基盤を支える日本銀行券、官報、旅券などの製品や情報サービスを確実に提供することにより、日本経済の発展と国民生活の安定に貢献する」ことを使命としており、お札以外にも官報、旅券、切手、印紙などを製造しています。

見学できる内容

国立印刷局では、公共性の高いさまざまな製品を製造していますが、お札づくりについて見学できます。

見学の流れ

まず、国立印刷局の概要説明を聴き、事業案内の映像を視聴します。(約30分)

視聴質

製造工程の概略を視聴した後、実際にお札の印刷を工場2階の見学廊下からガラス越しに見学します。(約20分)

印刷工場見学風景
<印刷工場見学風景>

※工場内は撮影不可ですが、特別な許可を得て撮影しています。

工場内
<写真提供:国立印刷局>

ここでほとんどの見学者が「あっ!」と驚く、ある"仕掛け"が為されています。

ぜひ現場で体験してみてください。

その後、展示室でお札の製造工程や偽造防止技術を学びます。1億円のお札の重さを体験したり、肉眼では見えづらいマイクロ文字などの偽造防止技術など楽しく学ぶことができます。(約30分)

展示室
<展示室の様子>

1億円分の重さ

1億円分のお札はどのくらいの重さだと思いますか?

私の感想は「意外に・・・。」ぜひご自身で体感してみてください。

記念撮影
<来場記念に記念撮影もできます>

上記見学の所要時間はおよそ90分間です。

日本のお札造りの優れている点

日本のお札づくりの特徴のひとつとして「高度な職人技」が挙げられます。

国立印刷局には高度な技術と芸術的センスを持ち、製品のデザインや彫刻を行う「工芸官」という専門の職員さんが約30名おられます。

お札のデザインのもとになる原図は、デザイン担当の工芸官が色鉛筆や絵具を使って手作業で精密に描きます。

また原版は、金属板にビュランという特殊な彫刻刀で点や線を彫刻し作製します。

手作業を伴う職人技は、偽造防止技術としても高い効果があるそうです。

その他にも、深凹版印刷、すき入れ、マイクロ文字、ホログラム、潜像模様、パールインキ、特殊発光インキなど、幾重もの偽造防止技術を搭載し、お札が製造されています。

詳しい説明はぜひ工場見学で聴いてみてください。

>>お札の偽造防止技術の例

厳重な管理体制

見学に際して、見学者は以下のような注意事項に従いながら見学します。

  • 事前に氏名、年齢、住所を登録
  • 入場時に身分証明書を提示
  • 施設内では常に入館証を着用
  • 見学の途中での離脱は不可
  • 施設内は撮影禁止(一部展示室内は可)

お札の製造現場には多くの機密情報があり、想像以上に厳しい管理体制でした。

そして驚いたのは、来場者だけでなく国立印刷局で働く職員さんも厳重なセキュリティの下で勤務しているという点です。

例えば、製造現場には私物(現金)の持込はできません。また、自分の管轄外のエリアに入場することはできず、原則として昼食をとるために工場敷地の外に出ることもできません。

これだけしっかり管理の下でお札がつくられていることを実感しました。

日本のお札のあれこれ

日本のお札は約20年に一度改刷されているそうです。

私は改刷時に一気に製造したらしばらくの間は製造しなくてよいのかと思っていましたが、実際はそうではありません。

現在、市中には約185億枚のお札が流通しているそうです。

お札は紙ですから、人の手や水などによって汚れたり破れたりしてしまうため、古いお札と新しいお札を定期的に入れ替えているそうで、例えば、令和6年度は財務大臣の定める製造計画に従って、29.5億枚のお札が製造されるそうです。

日本で近代紙幣が流通するようになったのは明治以降。

元々お札の製造技術に乏しかった日本は、当初は外国が製造しました(現在でも自国でお札をつくっておらず他国へ製造を依頼している国もあるそうです。)。その後、イタリア人技師をはじめとした「お雇い外国人」を招へいし、徐々に日本でもお札製造技術が発展していきました。

過去には、紙質強化を目的としてこんにゃく芋の粉を使ってお札をつくったところ、ねずみにかじられたり、温泉地では温泉の成分により青色インクが化学反応を起こし、お札が黒くなってしまうなど、お札の歴史の中ではいろいろなエピソードがあったそうです。

そういったこぼれ話も聴けて面白かったです。

まとめ

実際にお札がつくられている現場を見て、改めて日本の技術の粋を感じました。

どんどん巧妙になる偽札手段に負けないよう、さまざまな仕掛けが施してありました。

特にカラーコピー機では再現が困難なマイクロ文字は、肉眼でも確認できないほどの微小さに驚きました。

マイクロ文字
<偽造防止のマイクロ文字。写真提供:国立印刷局>

ひとくちにお札製造といっても、多くの人たちが携わり、厳密に管理されていることにより、現在の日本の技術が保たれていることがわかり、勉強になりました。

この国立印刷局の見学は個人でのお申し込みが基本ですが、阪急交通社では国立印刷局見学を組み込んだバスツアーを企画したそうです。

詳しくはこちらのサイトでご確認ください。

>>国立印刷局・東京証券取引所・クリクラ町田工場 トリプル社会見学ツアー
※外部サイトに遷移します

>>国立印刷局の公式サイトはこちら

【おまけ】

国立印刷局東京工場内の敷地には、お札の紙の原料のひとつである"みつまた"が植えられていました。

みつまた
<みつまた>

みつまたは、外皮と幹の間にある白い内皮が用いられるそうです。

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シンジーノ

3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

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