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【岩手県・花巻・大沢温泉】ザ・湯治の老舗宿で心身ともにリフレッシュした旅
こんにちは!
たびこふれ編集部のシンジーノです。
私には、いつか行ってみたいと熱望する温泉がありました。
それは岩手県花巻市の花巻南温泉峡にある大沢温泉(湯治屋)です。
ここは「ザ・湯治」が味わえる、現在では貴重な温泉宿です。
2024年11月、ついに私は大沢温泉で湯治体験をしてきました。
この記事では、その様子を詳しくご紹介しましょう。
実際に泊まってみたことで、湯治屋に泊まる場合に事前準備(持参)した方が良いものも分かりましたので、その情報もお伝えします。
目次
大沢温泉とは
今から約1,200年前の延暦年間、征夷大将軍の坂上田村麻呂が東征の際、蝦夷軍の毒矢に負傷しましたが、大沢の湯に入浴してほどなく傷が癒えたという伝説が残っています。
大沢温泉の泉質は、弱アルカリ性単純温泉で、特徴は柔らかで刺激が少なく優しいお湯です。
かの宮沢賢治は少年の頃、父に連れられ何度も訪れ、教師時代は生徒たちを引き連れて湯あみに来ています。
また高村光太郎は大沢温泉を「本当の温泉の味がする」と喜んだと伝わっています。
大沢温泉は1軒宿ですが、山水閣、湯治屋、菊水館(ギャラリー)の3つから構成されています。
この記事では「ザ・湯治」気分を存分に味わえる「賢治ゆかりの自炊部 湯治屋」をご紹介します。
玄関
こちらが大沢温泉 湯治屋の玄関です。
どうですか。
「現代にまだこんな宿が残っていたのか・・・」と感じさせる趣のある渋いお宿です。
築約200年の木造建築(増築あり)。とても絵になります。
帳場
玄関の引き戸をあけるとそこはフロント・・・ではなく「帳場」です。
宿泊客はここで靴を脱ぎ、靴を部屋まで持っていきます。
格子戸を越えると、
奥には神棚が。
なんと宿帳は手書きの台帳でした。(宿泊予約はインターネットでも可能です)
休憩処
大沢温泉湯治屋は宿泊だけでなく、日帰り入浴も受けつけています。
帳場の右横の座敷は、日帰り入浴客のためのお休み処です。
まるで博物館のようです笑
売店
帳場の左横には売店があります。
昔の映画に出てきそうな空気が漂っています。
飲み物、お菓子、お土産、お酒、その他自炊客のための食材、調味料などが売っていて、充実しています。豆腐、納豆、卵なども売っています。肉、魚、野菜は売っていませんが、肉魚は帳場に頼むと翌日以降に手配してくれるようです。
自炊する時、持っていった方が良いものは記事内の自炊場の章や最後にも書いていますので参考にしてみてください。
館内の様子
湯治屋内は建て増ししており、想像以上に大きいです。収容人員は57部屋227名定員です。
迷路のようで、チェックインしてしばらくは、うろうろ行ったり来たりしていました。
廊下も味があります。木造のため、廊下や階段を歩くとギシギシいいます。
なんか子どもの頃を思い出します。
こういう建物に泊まれること自体が貴重な体験ですね。
湯治屋は豊沢川沿いに建っています。大沢温泉名物の混浴露天風呂「大沢の湯」は川沿いに建っています。
私が逗留したのは2024/11/11~15の4泊5日で、今年は全国的に暖かくて紅葉はイマイチだったですが、十分楽しめました。
私が泊まった部屋の前から見た朝の風景です。この日は氷点下で、冬の朝を感じさせるピーンと張りつめた気持ちの良い朝でした。
私が逗留した部屋
こちらが、私が4連泊した部屋です。
部屋の番号は「新館十二」。
8畳間でひとりには充分すぎる広さでした。
部屋内には、冷蔵庫、金庫、水屋(食器、食品などを入れる)が揃っています。
お湯のポットもあって、帳場に持っていけば交換してもらえます(7:00~20:00)
→これはとても重宝しました。
エアコンはついていません。
Wi-Fiは飛んでいます(電波はそれほど安定していませんでした)
コタツ、ストーブ、扇風機はオプションです。布団や毛布もオプションですが、予約タイプに拠ります(私は布団込みプランでした)
新館2階は食事処やはぎの上階に当たり、自炊場、帳場、売店、お風呂にも比較的近い便利な場所でした。館内MAP参照↓
正直、防音は期待できません。隣の部屋のしゃべり声などよく聞こえました。
ひとりで泊まっている男性客も多かったので、大人数での騒がしさは感じませんでしたが、咳ばらい、独り言、鼻歌、ため息などよく聞こえました。
同年代なので私も気をつけようと思いました(笑)
音が気になる方は、耳栓を準備しておくと良いかもしれません。
トイレ、洗面は共同です。私はすべてのトイレを利用したわけではないのですが、使ったところはシャワー付きトイレでした。
部屋内でも懐かしいものに出会いました。
鍵です。昔の家では当たり前でしたね。
湯治屋の部屋は一部(若葉荘)を除き、内部からは鍵がかかりますが、外から施錠することはできません。
お風呂や食事に出る時、貴重品は金庫に入れるか帳場に預けます。
時期的に朝は氷点下になることもあるので、私はストーブを借りました(1回660円)。
普段、気密性の高いマンション住まいなので、木造家屋は寒かったです~。
ストーブ以外に石油ファンヒーターもあります。
食事処 やはぎ
宿泊者は、お食事処やはぎで食事することができます。(昼夜の時間帯は日帰り入浴者も利用可能)
例えば、1泊2食プランはもちろん素泊まりでも昼、夜はアラカルトで食べることができます。(朝食だけ予約が必要)
<やはぎのメニュー>
私は今回、「湯治屋デビュー!おまかせ夕食付き布団付き 大沢温泉の素付きプラン」1泊1夕食5,150円で予約しました。
4回おまかせの夕食をいただきました。
では、実際に食べた4回の夕食をご覧ください。
<ひっつみ定食>
最初の夕食は必ずこのひっつみが出るようです。ある意味ここの看板メニュー。
ひっつみとはすいとんのような小麦粉を練って丸い団子状になったひっつみが入った汁です。
こちらがひっつみです。小麦粉に雑穀が混ぜてあって素朴で美味しかったです。
つゆもあっさりした塩味で美味でした。いなり寿司もしっとり優しい甘さで気に入りました。
<焼肉定食>
おまかせメニューなので2日目からはその都度変わるのだと思います。
温泉旅館に泊まって豪華な宴会御膳を食べるのも良いですが、連泊する時はこのくらいのボリュームがちょうど良いと感じました。
やはぎは全般的に濃いめ(東北だからか)で甘みのある味つけでごはんが進みました。
<うなぎ定食>
なんとうなぎ!ふっくら肉厚でぷりぷり食感でした。
<カツ煮定食>
4日目はカツ煮。ごはんが進む食欲もりもりのメニューでした。
個人的には初日のひっつみ定食が一番好みでした。
単独で頼むとそれぞれ凡そ1,200円位の定食でしたので、その夕食込みで1泊5,150円(平日)は超お得ですね。
その他、単品で田舎もりそばを食べました(950円)
膳の右下にある白い小皿には大根おろしのしぼり汁が入っていて、それを好みでつゆに入れて食べます。美味しかったですよ。
<やはぎの内観>
その他、おかずは自炊で作るけれど、ごはんとみそ汁は頼みたいという人向けにやはぎの隣に「炊き出しコーナー(時間制)」がありました。
お風呂
大沢温泉のシンボルともいえる豊沢川沿いの混浴露天風呂「大沢の湯」。
<露天風呂「大沢の湯」>
囲いもない分、川の対岸からは丸見えです。
でもその分解放感抜群の露天風呂です。
湯治屋に泊まる客は、4種のお風呂に入ることができます。
- 露天風呂 大沢の湯(混浴:20~21時は女性専用)・・・シャンプーコンディショナー無し。シャワーも無し)
- 昭和レトロ 薬師の湯(内湯)
- 豊沢の湯(山水閣にある半露天風呂)
- かわべの湯(女性専用露天風呂)
「あつゆ」「ぬるゆ」の2種類あります。
私はぬるめの湯に長時間入るのが好きなのでぬる湯があるのはありがたかったです。
一番人気は大沢の湯ですが、私の個人的お気に入りは「昭和レトロの薬師の湯」でした。
自炊場
湯治というと浮かぶのが「自炊」ではないでしょうか。
大沢温泉 湯治屋にも自炊場がありました。
<自炊場>
結構広めで多くの人が同時に自炊することができます。
といっても私が滞在した4泊中、自炊をしていた人は4~5人くらいでしたが。
湯治屋と言っても食事処やはぎが充実しているのでそこで食べる人の方が多いように思います。
ここ自炊場で面白いのがガスコンロです。
10円で7~8分ガスを使えます。
元栓を開いて、10円玉を入れハンドルを右側にグルッと回し、マッチかチャッカマンで火を付けます。
こんな年代物のガスコンロ初めて見ました。
私は朝、昼と自炊しましたが、このガスコンロはいい働きをしてくれました。
自炊場には、調理器具(菜箸、フライ返し、おたま、おろし金、まな板等)食器(茶碗、汁椀、どんぶり、お皿(大小)、コップ、カップ等)、たわし、洗剤、タオルなどひと通り揃っています。包丁は自炊場に置いてなく、帳場に借りに行きます。
調味料(塩、コショウ、サラダ油)は置いてありませんので、使う分だけ持参した方が良いでしょう。(売店でも売っていましたが、滞在中に使い切るには大きめサイズでした)
私は朝は持参したパックご飯やパンを食べました。
電子レンジ、オーブントースターはあって無料で使えました(これも重宝しました)。
昼には焼きそばを作りました。
<私が作った焼きそば>
菊水館(昔ギャラリー)
湯治屋、山水閣の川の対岸にあるのが菊水館です。
以前は宿(温泉)として営業していたようですが、現在は昔ギャラリーとして常設展、企画展をやっています。
<菊水館 昔ギャラリーの内部>
往時を偲ぶ茅葺の建物は風情があります。大沢温泉に訪れた時にはこちらも見学することをおすすめします。
(菊水館入館料:500円。冬季閉鎖時期あり)
大沢温泉 湯治屋に泊まる時のポイント
いかがだったでしょうか。
念願の大沢温泉 湯治屋宿泊。大満足の旅でした。また来年も行きたいと思っています。
実際に泊まってみて感じたことを記します。
大沢温泉に泊まってみたいという方の参考になれば嬉しいです。
- 予約は3か月前から受付開始
- 湯治屋は基本セルフサービス
- 木造なので冬(特に朝)は寒い。防寒はしっかり。(エアコン無し)
- 自炊する場合、調味料関係は持参した方が良い(塩コショウ、サラダ油、醤油など)
今回4泊し、お風呂には計12回入りました。
充分湯治を満喫できました。
湯治は1泊だけではもったいないと思います。最低2泊、できれば3~4泊すると身も心もすっかり湯治のプロになれると思います。
今回初めて"昼間の宿の気持ち良さ(価値)"を感じました。
掃き掃除、はたきをかける音、空いているお風呂、静かな館内はとても心地良いものでした。
自分の家のようにくつろげました。
1泊だけだと、夕方慌ただしくチェックインし、さっとお風呂を浴びてごはん食べて、またお風呂入って寝て、朝お風呂入ってチェックアウトと忙しく、その宿の良さは見えてきません。ぜひ、2~3泊の連泊がおすすめです。
以下、よくある質問が大沢温泉の公式サイトに載っていますので参考にしてください。
大沢温泉 湯治屋 どうかこのままの姿でいつまでも存続してくれることを願います。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。