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野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~ハスカップ北海道厚真町の旅
<TOP画像:旅の決め手は厚真町のハスカップ>
野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。
地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。でも、今回はいつもとは違って、私が全国の野菜ソムリエたちに呼びかけて企画した、野菜ソムリエのための旅です。
目次
今回、旅のきっかけ!
実はこの旅企画は野菜ソムリエ仲間では2回目。旅企画のご紹介の前に、みなさん、「ハスカップ」という小果実をご存知でしょうか?北海道を中心とした北日本のほか、シベリア東部やモンゴル、中国東北部、朝鮮半島北部、サハリンのほか、カナダの一部など、世界でもほとんど栽培されていません。
<たわわに実ったハスカップ。大きく見えますが、大きく見える実でも人差し指大です>
北海道内でも一部のエリアの栽培なので、北海道民も知らない人が多いハスカップ。しかし、"野菜ソムリエたるもの、ハスカップを知らないのはダメ"という私の呼びかけで、2023年は9名が、2024年は7名が参加。ハスカップが大好きな私。私の"ハスカップ愛"を受け止めてもらいました。
元は自生していたハスカップ
ハスカップの産地(栽培している場所)は、主に千歳市や厚真町、美唄市など。栽培ものは自生しているものを選抜して、食べても美味しい小果実へと育てていきます。ちなみに、自生のものは粒も小さく、酸味が強くて渋みもあります。
北海道にはハスカップが自生しているところがいくつかありますが、その1つ、新千歳空港に近い、苫小牧に"勇払(ゆうふつ)原野"があります。
昭和40年代に、港の建設や工業地帯の造成などでこの地域の開発が進み、その中で失われていくハスカップを隣接する厚真町の農家の人たちが移植して守り育て、昭和57年ころから厚真町での本格的な栽培が始まりました。
1992年には道立中央農業試験場が品種改良した勇払原野のハスカップを元にしたハスカップが「ゆうふつ」と名付けられ、ハスカップ栽培が盛んになりました。
<今は美味しいハスカップの苗木から育てます。成長してある程度実を着ける木は150cmくらいの丈になります>
日本一のハスカップ
本州ではあまり聞きなれない小果実ハスカップ。北海道・厚真町の農家の4分の1が栽培しており、2013年には栽培面積日本一になりました(現在は栽培面積も収量も日本一)。そんなハスカップを厚真町内で広め、6次産業化にも取り組んでいるのがハスカップファーム山口農園です。
<活動が評価された証>
「すっぱい、渋い」といわれていたハスカップを糖度の高い品種に育て、おいしい商品にするまでには、4代目の母親の努力と、それを受け継いできた5代目の善紀氏のチャレンジがありました。
<善紀さんが品種改良した「ゆうしげ」(手前)と「あつまみらい」>
厚真町は、2018年の胆振東部地震で多大な被害を受けたエリアです。農地の多くも被災しながらも日本一を継続している背景には、ハスカップファーム山口農園の功績が欠かせません。
家族みんなで美味しいハスカップづくりを行ってきた話は長くなるので、詳細は公式サイトを参考にしてください。
とてもユニークな方法で美味しい木を見つけて増やしてきたこと、善紀氏の町のハスカップ繁栄のために奔走し、ハスカップ愛があふれていることなどとてもワクワクしながら読めますよ。
ハスカップの収穫は6月末~7月中旬頃まで。手作業で一粒ずつ丁寧に収穫します。ここ数年、ハスカップはスーパーフードにも匹敵する栄養が含まれていると人気が高くなっています。
歯や骨を構成する『カルシウム』、ブルーベリーの約3倍含んでいる『鉄分』、風邪予防や美肌効果が期待できる『ビタミンC』、活性酸素を除去する『ビタミンE』、ポリフェノールの一種で目の疲れや視力向上の効果的な『アントシアニン』など。ただ、弱点は"実も皮もとても柔らかい"ことです。
山口農園では収穫したばかりの生のハスカップを冷凍したもののほか、ジャムやピューレ、などさまざまなハスカップ加工品を製造、販売しています。
また、ソフトクリームやクレープなどは町内の「HASKAP CAFÉ LABO」で食べることもできます。
<ハスカップスイーツを食べられたり、加工品を購入できるHASKAP CAFÉ LABO>
ハスカップファーム山口農園
- 住所:北海道勇払郡厚真町宇隆163-5
- TEL:0145-27-2137
- FAX:0145-27-3138
- 公式サイト:ハスカップファーム山口農園
HASKAP CAFÉ LABO
- 住所:北海道勇払郡厚真町表町53-6
- TEL : 0145-29-8168 (※店舗が混んでいる場合は出られない場合あり)
- 営業時間 平日 11:00〜18:00(11月〜3月の冬期は11:00〜17:00 / 土日・祝 10:00〜17:00)
- 定休日:毎週木・金曜日(祝日の場合は営業、翌平日休み)
- 公式サイト:HASKAP CAFÉ LABO
呼びかけに集まった今年の野菜ソムリエたち
私は、山口さんのハスカップ愛に惚れ込むとともに、美味しさや健康効果からハスカップが大好きになりました。しかし、前述のとおり、ハスカップは果肉と果皮がとても柔らかくてつぶれやすい。
<実は小さくて柔らかいから摘むのも大変です>
だから、ハスカップを知っているという人でも、口にしたものはジャムやソースが多く、その本来の爽やかな酸味を知っている人は少ない。山口さんのハスカップ愛を受けた私は、「野菜ソムリエならば、産地でしか味わえない生のハスカップの味を確かめて欲しい、自分で収穫してみてその柔らかさを知ってもらいたい」と思い、全国の野菜ソムリエにお声がけしたのが、2023年の春(1回目に実施)。
その時のSNSの投稿を見た人たちから「来年はぜひ参加したい」という数人の声をいただき、今年も実施したというわけです。
<今年参加した全国からの野菜ソムリエたち>
旅の企画は農園で収穫するだけではなく、地域特産物マイスター(ハスカップ)でもある善紀氏のここまでの苦労した話やこれからの夢、ハスカップの魅力などの20分ほどの講話と、ハスカップの美味しい見分け方や販売していない品種の試食などの体験してもらいました。
<この日は気温が高かったので、遮光をしたハウス内で善紀氏の話を聞きました>
<晴天の中、試食しながらの収穫(観光農園)>
ツアーは野菜ソムリエの交流も目的ですので、宿泊先では無理を言って、採り立てのハスカップでジャムを作ってお土産にしてもらったり、今年は宿の都合でできませんでしたが、私が準備した塩漬けしたハスカップで炊き込みご飯にして食べてもらったり(今年はハスカップの軍艦巻き)して楽しみました。
<無理を言って、厨房の片隅でハスカップジャムを作らせていただきました>
<ハスカップの軍艦巻き。ハスカップの酸味がご飯と合わさって酢飯のような感じになります>
<我が家で炊いたハスカップ炊き込みご飯。研いだ米に塩漬けしたハスカップを10粒ほど加えて炊いたもの>
<地元の人は塩漬けしたハスカップを常備し、梅干し代わりに使っています。おにぎりも美味>
スケジュールの関係で翌日帰る方もいましたが、今年はワイン好きも多かったので、今年の企画にはワインツーリズムも加えてみました。
岩見沢近郊のワイナリー巡り
厚真町から北上して岩見沢市へ。岩見沢市を含む"空知エリア"には数多くのワイナリーやヴィンヤード(農園)があります。
<宝水ワイナリーの小高い丘に広がるブドウ畑>
まずは、映画『ぶどうのなみだ』のロケ地になった「宝水ワイナリー」に行きました。スケジュールが合いましたので、社長の倉内武美氏からワイナリーの歴史などのお話やしていただき、ワイナリーやブドウ畑の見学をさせていただきました。
<2002年に岩見沢市特産ぶどう振興組合としてスタート。2004年に宝水ワイナリーが誕生しました>
宝水ワイナリー
- 住所:岩見沢市宝水町364-3
- TEL:0126-20-1810
- FAX:0126-35-7200
- 公式サイト:宝水ワイナリー
宿泊は、ワイナリーからほど近いログホテル メープルロッジ。自然に囲まれ、トロリとちょっとぬめりのある温泉やサウナ―にも人気のサウナもあるステキなホテルです。ツインルームと1棟だけあるグランピング施設を確保できました。
<自然に囲まれたグランピングテント内には4つのベッドがあり、快適に過ごせます>
今回のメンバーは、初めてグランピングを体験する人ばかりだったので、至れり尽くせりの夕食には感激!
<テーブルに並べきれない量の豪華な夕食>
<豪華な夕食をホテルスタッフが片付けている間は、焚き火の周りでデザートを食べたり、マシュマロを焼いたり、年甲斐もなく花火で盛り上がったり...>
<ワイン好きの野菜ソムリエたち>
落ち着くホテルなので、私も宿泊だけではなく、日帰り入浴を楽しんだりしています。今回は仲間と共有できてよかった!
ログホテル メープルロッジ
- 住所:岩見沢市毛陽町183番地2
- TEL:0126-46-2222
- FAX:0126-46-2882
- 公式サイト:ログホテル メープルロッジ
翌日は厳選した2つのワイナリーに立ち寄って、無事に新千歳空港へ。
<三笠市にあるYAMAZAKI WINERY>
<岩見沢市にあるTAKIZAWA WINERY>
新千歳空港から近いというのが厚真町の大きな魅力!
昨年に引き続き開催したこの旅企画。去年の一番遠方から参加した方は沖縄でした。今年は福岡、鳥取、福井、名古屋、神奈川、千葉、埼玉、宮城から参加してくださいました。
厚真町は新千歳空港から車で約30分という近さが最大の魅力です。極端なことをいうと、関東在住の人は日帰りもできるくらい。心の中では、そういうピンポイントの旅も楽しんでほしいと思っています。
この企画は、実は来年の予約も入っています。同じ資格を有しているからこそ、すぐに打ち解ける人たちが全国にたくさんいます。そして学ぶ機会もたくさんでき、参加した時は同じ気持ちになって楽しめることに幸せを感じます。
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吉川雅子
- 札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。