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ポルトガルといえばアズレージョ!リスボンとその近郊でアズレージョがある場所5選
ポルトガルの街中を歩くと、そこかしこで建物を彩る装飾タイルの「アズレージョ」に出会います。白と青を基調にしたタイルが彩る、美しい建築物の写真を見たことがある人も多いことでしょう。
2024年9月にポルトガルを訪れた筆者も、華麗なアズレージョにすっかり魅了されました。今回は首都リスボンおよびその近郊で見た、特に印象的なアズレージョをご紹介します。リスボンを訪れる際は必見です。
目次
- アズレージョの歴史
- 街を歩けばアズレージョ
- 見どころ1. サン・ロケ教会のダイヤモンド・ポイント
- 見どころ2. ジェロニモス修道院の黄色と青のアズレージョ
- 見どころ3. 装飾芸術美術館 貴族の邸宅を華やかに彩るアズレージョ
- 見どころ4. 国立アズレージョ美術館はポルトガルの宝
- 見どころ5. シントラの国立宮殿 王たちが愛したアズレージョ
- まとめ
アズレージョの歴史
アズレージョは15世紀にムーア人(中世のアフリカ北西部やイベリア半島、シチリアなどに住んでいたイスラム教徒)が伝えた、色柄タイルが起源とされています。ポルトガル王のマヌエル1世が、1498年にスペインのアンダルシアを訪問した際にこの美しいタイルを気に入り、後にポルトガルに輸入しました。
<シントラの王宮を彩る15世紀の色柄タイル>
教会や宮殿を彩る装飾品として用いられたアズレージョは、時代とともに変化していきます。16世紀にはスペインやフランドル、イタリアから陶工がやってきて、マヨルカ焼の技術も伝来。リスボンにはアズレージョを生産する工房が開設され、多彩な色のタイルがさまざまな壁を彩るようになります。
17~18世紀には、中国や日本の磁器の影響を受けて、白地に青の釉薬で模様を描くデルフトタイルがオランダで流行。ポルトガルでも白地に青色のタイルが盛んに作られるようになりました。宗教や歴史の場面を精緻な青い線で描く、タペストリーのようなアズレージョは圧巻です。
<国立アズレージョ美術館の青と白のアズレージョ。タペストリーのよう>
1755年のリスボン大地震の後では、復興の過程で、一般の住宅にも幾何学模様などのアズレージョが使われるようになりました。それまで教会や宮殿といった限られた場所で使われていたアズレージョが、実用的な建材として街の至るところに溢れていったのです。
ポルトガル全体を彩るアズレージョは、今も多くの観光客を魅了しています。
<リスボンのサン・ロケ教会の近くに並ぶアズレージョの建物>
街を歩けばアズレージョ
ポルトガル観光の第一歩は、首都のリスボンという人が多いことでしょう。世界最古の都市の1つであるリスボンは、歴史的な建造物が点在する壮麗な街。市中を歩くと大通りの店舗から小路の住宅に至るまで、外壁をアズレージョに彩られた建物があふれています。
筆者が宿泊したバイロ・アルト地区にも多くのアズレージョの建物が並んでおり、終始目が釘付けになりました。街全体がまるで美術館のようです。
石畳の道が多いため、街なかでの建築物めぐりにはスニーカーの着用がおすすめです。車やスリにもご注意くださいね。
<小道の周囲の建物もアズレージョが彩る>
見どころ1. サン・ロケ教会のダイヤモンド・ポイント
ここからはリスボンの観光名所の中で、印象的だったアズレージョをご紹介します。
まずバイロ・アルト地区の「サン・ロケ教会」は、1584年に天正遣欧使節が滞在した教会として、日本人観光客が多く訪れる場所。イエズス会の教会です。
マニエリスム様式、バロック様式、ロココ様式などの装飾で華麗に彩られた教会の内部は、植民地のブラジルで取れた金をふんだんに使い、豪華絢爛。ひとつひとつの礼拝堂が、目もくらみそうな輝きを見せています。
<サン・ロケ教会>
<金色に輝くサン・ロケ教会の内部>
そんな中で入口や内陣の横の壁を見ると、紺・黄色・白を基調とした複雑な模様のアズレージョに目を惹きつけられます。こちらは「ダイヤモンド・ポイント」と呼ばれるパターンの16世紀のアズレージョ。
繊細でありながら素朴な雰囲気を漂わせる絵タイルに、これを作った人々の手のぬくもりまで感じるような気がしました。豪奢な礼拝堂とともに、ぜひ見ておきたいアズレージョです。
<壁を彩るアズレージョに注目>
<ダイヤモンド・ポイントと呼ばれる16世紀の貴重なアズレージョ>
サン・ロケ教会(Igreja de São Roque)
- 住所:Largo Trindade Coelho, 1200-470 Lisboa
- 営業時間:火-日曜 10:00~18:00(月曜 13:00~18:00)4,9月は10:00~19:00
- 料金:無料(付属美術館は€2.5)
- 公式サイト:付属美術館
見どころ2. ジェロニモス修道院の黄色と青のアズレージョ
リスボン中心部から6kmほど西にあるベレン地区には、大航海時代を象徴する歴史的建造物の数々があります。中でも代表格は「ジェロニモス修道院」。
世界史の教科書でおなじみのエンリケ航海王子とヴァスコ・ダ・ガマの偉業をたたえ、新天地への航海の安全を祈るために、1502年にマヌエル1世によって着工されました。
巨大で壮麗なこの建物は、外壁や回廊など至るところに、航海のモチーフの彫像があしらわれています。船や天球儀、ロープ、サンゴ、海の生物など...。とりわけ回廊の柱の装飾は美しく、細部まで見入ってしまいます。
<ジェロニモス修道院>
<天球儀やロープの彫刻が彩る回廊>
回廊の一角には、修道士の食堂として使われていた部屋があります。こちらの壁をぐるりと彩るアズレージョが印象的!石で出来た太いロープの彫刻の下に、青と黄色と小豆色を使ったタイルで、聖書の場面や美しい花々を描いているのです。
これらのアズレージョは、1780年~85年に作られたもの。部屋の北端には新約聖書の「パンと魚の奇跡」が、側壁には旧約聖書の「エジプトでのヨセフ」の場面が描かれています。
明るい黄色と冴えた青色を大胆に使った絵タイルは、はっと目を引く鮮やかさ。多くの観光客が、お気に入りの場面の前で写真を撮っていました。優美な回廊とともに、必見の部屋です。
<18世紀のアズレージョが取り囲む食堂>
<黄色と青の配色が美しい、聖書の一場面を描くアズレージョ>
ジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jerónimos)
- 住所:Praça do Império 1400-206 Lisboa
- 営業時間:9:30~18:00
- 休日:1/1、聖日曜日、5/1、12/25
- 料金:€12.75
- 公式サイト:ジェロニモス修道院
見どころ3. 装飾芸術美術館 貴族の邸宅を華やかに彩るアズレージョ
リスボンの中でもひときわ古い街並みが残るアルファマ地区に、17世紀の邸宅を利用した「装飾芸術美術館」があります。目の前にはポルタス・デ・ソル広場があり、旧市街の家々とテージョ川の眺めが絶景。
館内はかつてのポルトガルの貴族のお屋敷の雰囲気を再現しており、家具調度品や金細工、磁器、絵画などのコレクションが、優美な部屋に飾られています。
<装飾芸術美術館>
<優雅な調度品に囲まれた音楽室>
この邸宅のあちこちを彩るアズレージョが素敵です。屋内へと続く階段の壁には、騙し絵的な手すりを描くアズレージョ。きらびやかな家具が並ぶ室内の腰壁も、花や天使を描くアズレージョ。
豪奢な食堂や寝室の壁にも唐草模様が優美なアズレージョ...と、華やかな絵タイルのオンパレードなのです。
<寝室を彩るアズレージョ>
<食堂にもアズレージョ>
等身大の人物像を背景から切り抜いたように配置したアズレージョもあります。並んで記念撮影すると、絵の中の人物と会話している気分になりますよ。
昔の貴族はアズレージョを巧みに使って、生活を華やかに演出していたのだなあと実感できる邸宅です。眺望抜群のポルタス・デ・ソル広場とともに、訪れることをおすすめします!
<等身大の人物像のアズレージョが階段前でお出迎え>
<目の前にあるポルタス・デ・ソル広場からの絶景>
装飾芸術美術館(Museu Escola de Artes Decorativas)
- 住所:Largo Portas do Sol 2, 1100-411 Lisboa
- 営業時間:10:00~17:00
- 休館日:火曜日、1/1、5/1、12/25
- 料金:€10
- 公式サイト:装飾芸術美術館
見どころ4. 国立アズレージョ美術館はポルトガルの宝
リスボンの中心地から北東の少し離れた場所にある「国立アズレージョ美術館」は、15世紀から現代までの珠玉のアズレージョを展示する施設。マードレ・デ・デウス修道院を改装して作られました。
優美なアーチの回廊や礼拝堂を彩るアズレージョが美しく、展示品というよりも生きたアズレージョを見る思いがする美術館です。
バス停「Igreja de Madre de Deus」からは、徒歩で1分ほど。中心部からバスに乗って見に行く価値は、十分にあります!
<国立アズレージョ美術館の中庭>
<回廊を彩るアズレージョ>
<礼拝堂のアズレージョ>
イスラム文化の影響が色濃い初期の幾何学模様の絵タイルや17世紀のタペストリーのような青と白の歴史画、現代のタイルアートなど、幅広いアズレージョを一度に見られるのが魅力。
リスボン大震災前の街並みを壁いっぱいに描いたアズレージョもあります。自分が訪れた場所や泊まっている地域を確認したくなります。時間をたっぷり取って訪れることをおすすめします。
<青と白の精緻な歴史絵巻>
<リスボン大震災前の街の様子を描いたアズレージョ。サン・ジョルジェ城が見える>
国立アズレージョ美術館(Museu Nacional do Azulejo)
- 住所:Largo Portas do Sol 2, 1100-411 Lisboa
- 営業時間:10:00~13:00 14:00~18:00
- 休館日:月曜日、1/1、聖日曜日、5/1、6/13、12/25
- 料金:€8
- 公式サイト:国立アズレージョ美術館
見どころ5. シントラの国立宮殿 王が愛したアズレージョ
リスボン郊外にあるシントラは、王の居城や貴族の別荘が点在する歴史的な保養地。リスボンのロシオ駅から電車で40~50分ほどで行くことができ、観光客の人気を集めています。
一番人気の施設は色鮮やかなペーナ宮殿ですが、アズレージョが見事な場所としておすすめしたいのは、何と言っても「国立宮殿(王宮)」です!
<シントラの国立宮殿>
もともとはイベリア半島を支配していたムーア人(イスラム教徒)の住居だったものを、13世紀末にディニス王が居城としたのがこの宮殿です。15世紀初めにジョアン1世が増改築を行ない、王宮の基礎を築きました。
シンボルとなっている2本の巨大な円錐形の煙突は、この時に作られたものです。16世紀初頭には、マヌエル1世によって新たな建築と装飾が加えられ、この時に壮麗なアズレージョが導入されました。このアズレージョが圧倒的な存在感を放っています。
<カササギの間のアズレージョ>
<レリーフ状の花々が美しい、カササギの間のタイル細部>
宮殿に入るとまず目に飛び込んでくるのは、マヌエル1世がセビーリャに特注させた多色使いのタイルの壁です。幾何学模様や花模様、植物のつるなどが描かれたタイルは、立体感があり、豊かな色彩に富んだもの。
アラビア風の雰囲気が漂っており、アズレージョがイスラム文化の影響を受けたものであることを実感できます。「カササギの間」や「アラブの間」、王の寝室や中庭など、至る所でエキゾチックな装飾が見られますよ。
<繊細な葉とつるの柄が美しい、王の寝室のアズレージョ>
華やかさに目を奪われるのは「紋章の間」。16世紀に作られた八角形のドーム天井には、ポルトガルの貴族たちの紋章が描かれており、頂点の部分には王家の紋章があります。金で彩られた天井がまぶしい!
正方形の部屋の壁は、18世紀のアズレージョで覆われています。白地に青い線と濃淡で、狩猟の場面や屋外で過ごす貴族たちが描かれており、最高級のタペストリーのような優雅さと迫力。
繊細な青色のアズレージョと天井の金色がお互いを引き立てており、吸い込まれるような美しさです。こちらの壁の前で記念撮影すると、ポルトガルの貴族になったような気分を味わえますよ。筆者にとって、最も印象に残ったアズレージョの1つです。
<紋章の間のアズレージョと天井>
シントラの国立宮殿(Palácio Nacional de Sintra)
- 住所: Largo Rainha Dona Amélia, 2710-616 Sintra
- 営業時間:9:30~18:30
- 休日:1/1、聖日曜日、5/1、12/25
- 料金:13ユーロ
- 公式サイト:シントラの国立宮殿
まとめ
ポルトガルを華麗に彩るアズレージョは見応え抜群です。以下のことを心に留めながら、リスボンとその近郊のアズレージョを堪能してくださいね。
- 15世紀にムーア人が伝えた色柄タイルが起源となったアズレージョは、その後ポルトガルで独自の変化をしながら発展していきます
- 市中には外壁をアズレージョで彩られた建物が多数並んでいます。石畳の道が多いので、建築物めぐりにはスニーカーの着用がおすすめです。車やスリにもご注意
- バイロ・アルト地区のサン・ロケ教会には「ダイヤモンド・ポイント」と呼ばれる16世紀の貴重なアズレージョがあります
- ベレン地区のジェロニモス修道院では食堂に注目。青と黄色と小豆色で聖書の場面を描いた18世紀のアズレージョがあります
- アルファマ地区の装飾芸術美術館は、17世紀の邸宅を利用したもの。貴族の屋敷を彩るアズレージョがどんなものだったかがわかります
- 国立アズレージョ美術館は、マードレ・デ・デウス修道院を改装して作られたアズレージョの殿堂。15世紀から現代までの珠玉のアズレージョを展示しています
- シントラの国立宮殿は、ポルトガルの王たちが増築を重ねた王宮。マヌエル1世が16世紀初頭に導入したイスラム風の絵タイルや、紋章の間を彩る18世紀のアズレージョが特に見事です
それでは、宝石のようなアズレージョに魅了される素敵な旅を!
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朝茶
- ライター/英和・和英翻訳者。出版社に11年勤務後、2009年にシンガポールに転居。東南アジアの文化と料理にハマる。2013年に帰国した後は日本文化に改めて関心を深め、今はとにかく国内各地を旅したいです!