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スコットランドの夏の伝統の祭典、ハイランドゲームズでスコットランド文化を満喫しよう!
<TOP画像:ハイランドダンス>
ハイランドゲームズという名前を聞いたことがありますか?
ハイランドゲームズ (Highland Games) は、スコットランドの各地で夏に催されるスコットランド伝統の競技会です。場所によっては、ハイランド集会 (Highland Gathering) と呼ばれます。ここでは、スコットランドの民族衣装のキルトを着用して、バグパイプ演奏、重量競技、ハイランドダンスなどのスコットランドの伝統文化で競う、スコットランド文化の祭典です。
スコットランドの人口は540万人です。イギリス国民6,800万人の8%にも満たないスコットランド人はケルト民族で、今でもその文化を強く継承している誇り高い民族です。
長年アングロサクソン系のイングランド人と独立戦争をしてきたスコットランド人が1年に一度地域で集い、民族意識を再確認するのがこのハイランドゲームズです。まさにスコットランドを感じるお祭りです。
この記事では、ハイランドゲームズの説明と、2024年8月11日に行われたパース・ハイランドゲームズのレポートをします。夏にスコットランドを訪れたら、毎週どこかの街や村でやっているので、行ってみてください。スコットランドの文化をまさに感じる特別な1日になること間違いなしです。
目次
ハイランドゲームズの始まりは?
<丸太投げ>
ハイランドゲームズが最初に記録されているのは、11世紀のスコットランド王のマルコム3世の時代です。マルコム3世が、スコットランドで最速のランナーを見つけて王の使者にする目的で、ブレイマーを見下ろす丘を駆け上がるよう男たちを召集したという記録が残っています。
また、他にも最も強く勇敢な兵士が誰かを競うイベントが昔からあったと考えられています。その後、強さと力だけでなく、ダンスと音楽のスキルも競うイベントへと進化し、王様や女王様、そして氏族長達に披露し、代表する氏族の名誉を高めるよう競い合うようになったと考えられています。
しかし、1746年にスコットランド王朝・スチュアート朝の復興を試みたジャコバイトの反乱を封じるため、イングランド政府によってスコットランド氏族制度は解体され、武器の所持、キルトの着用、バグパイプの演奏、集会の開催が禁じられたことによって、ハイランドゲームズは開催できなくなります。その後、ロマン主義運動そしてスコットランドの詩人で小説家のウォルター・スコット卿の作品の人気により、スコットランドの文化や伝統を見直す動きが広がり、1820年代にハイランドゲームズが相次いで復興また新たに創設されて今に至っています。
スコットランドを愛したヴィクトリア女王は、1848年にブレーマー・ ギャザリング(Braemar Gathering)に参加しました。それ以降、近郊のバルモラル城に夏に滞在するイギリス王室のメンバーは、現在でも定期的にブレーマー・ギャダリングに出席しています。
どこでハイランドゲームズは行われるの?
<パイプバンド>
ハイランドゲームズは、スコットランドの各地で毎年5月から9月半ばまで行われます。その数は60以上です。
最も有名なハイランドゲームズは、最も古い歴史があり王族の出席するブレマー・ギャザリングで、毎年9月初めに開催されます。
他に有名なハイランドゲームズをいくつか挙げます。
- アトール・ギャダリング(The Atoll Gatherings)開催地:ブレア城、5月末
- ストラスモア・ハイランドゲームズ(Strathmore Highland Games )開催地:グラームス城、6月初
- セレス・ゲームズ (Ceres Games) 開催地: セレス、6月末
- 1314年にスコットランド王のロバート1世によってバノックバーンの戦いの勝利に貢献した村人のために開催することが認められた最初の正式なハイランドゲームズ
- ラス・ハイランドギャダリング(Luss Highland Gathering) 開催地:ローモンド湖、7月初め
- インヴァネス・ハイランドゲームズ(Inverness Highland Games) 開催地:インヴァネス、7月中旬
- インヴァレイ・ハイランドゲームズ(Inveraray Highland Games)開催地:インヴァレイ、7月半ば。1563年にスコットランド女王のメアリーのために開催されたもの
- パース・ハイランドゲームズ (Perth Highland Games) 開催地:パース、8月第2日曜日
- クリフ・ハイランドゲームズ(Crieff Highland Games)開催地:クリフ、8月半ば。スコットランド重量選手権開催地
- コーワル・ハイランドギャザリング(Cowal Highland Gathering) 開催地:ダヌーン、8月末。3500人の競技者に23000人の観客が参加する1番大規模なもの。ハイランドダンス世界選手権の開催地
- ピトロクリー・ハイランドゲームズ (Pitlochry Highland Games) 開催地:ピトロクリー、9月半ば。毎年最後に開催されるハイランドゲームズ
各ハイランドゲームの詳細情報は、ロイヤル・スコティッシュ・ハイランドゲームズ協会 (RSHGA)の公式サイトにあります。
>>ロイヤル・スコティッシュ・ハイランドゲームズ協会の公式サイトはこちら
各イベントにより、催される競技が違っています。大規模のものは、バグパイプの大会、重量競技やハイランドダンスがありますが、小さいものは徒競走や自転車競技などがモダンな競技が大部分のところもありますので、大きなものを狙っていくとスコットランドを体感できます。
1. 重量競技
ハイランドゲームズの醍醐味は重量競技です。キルトを身につけて力を競い合うゲームです。主な種目を紹介します。
丸太投げ (Caber Toss)
<丸太投げ>
ハイランドゲームズの代表競技です。ケーバーと呼ばれる150 ポンド (68kg) の重さで 20 フィート(6m) の長さの丸太を抱えて助走し、できるだけ遠くに投げる競技です。12時の方角に真っ直ぐ着地することも大切だそうです。
ハンマー投げ (Hammer Throw)
<ハンマー投げ>
今の陸上競技のハンマー投げの元祖です。スコティッシュ・ハンマーは、重さが最大 22 ポンド(10kg)の金属製のボールに木製のハンドルがついています。競技者はフィールドに背を向けて立ち、ハンマーを頭上で振り回してから180度回転させて、できるだけ遠くに投げます。
石投げ (Stone Put)
<石投げ>
今の砲丸投げです。元々は選手が近くの川から拾った約18ポンド(8kg) の石を投げたそうです。競技者は三角板と呼ばれる板の後ろから石を投げ、できるだけ遠くまで飛ばします。
重り投げ
<重り投げ(距離)>
高さ( Weight for height) と距離( Weight for distance) を競う2つの競技があります。 高さを競うものは、56ポンド (25kg)金属のおもりにハンドルのついたものを、2本の支柱の間に渡したクロスバーの上にどれだけ高く投げられるかを競います。距離を競うものは、同じおもりを投げる距離を競います。
綱引き (Tug o' War)
運動会でお馴染みの綱引きの原型です。1910年までオリンピック競技でした。15人のチームが力と戦略を競い合い、3本先取で対戦します。知っていますか?
現在のオリンピックのハンマー投げと砲丸投げはハイランドゲームズからきています。
近代オリンピックの創始者のクーベルタン男爵は、1889年のパリ博覧会でハイランド競技を見て印象的だったため、ハンマー投げ、砲丸投げ、綱引きをオリンピック競技に導入したそうです。
2. ハイランドダンス
<ハイランドフリング>
スコットランドの伝統的な衣装を着たダンサー達は、バグパイプの音楽に合わせて剣舞やハイランドフリングと呼ばれる、複雑なステップで、足を高く上げたり、ジャンプしたり、回転したりする動きの入ったスコットランド地方のフォークダンスを踊ります。
<剣舞>
年齢とレベルに分けて競われ、4歳から6歳の可愛いダンサーから、プレミエと言われる上級ダンサーまでいます。
3. パイプバンド
<パイプバンド>
ハイランドゲームズで最も印象に残る光景の1つは、なんといってもキルトを纏った数百人のパイパーとドラマーが集まり、一斉に演奏し行進する大勢のバンドです。
ソロのパイプ演奏競技もあります。
パース・ハイランドゲームズ・レポート
<バグパイパー>
実際に行ってきたパース・ハイランドゲームズの様子をお伝えします。
パース・ハイランドゲームズは、毎年第2日曜日に開催される大規模なハイランドゲームズです。首都のエジンバラから電車で1時間半くらいで行くことができ、その上開催場所は、駅から徒歩5分ほどというアクセスがいい場所で、本格的なハイランドゲームズを観戦することができることが魅力です。
2024年は、ヨーロッパ・パイプバンド選手権が、ハイランドゲームズと同時開催されたので、例年よりも人がすごかったそうです。
<パイプバンドのビデオ>
集まったパイプバンドの数は157バンド! 学校のバンドもあれば、地域バンドもあり、子どもから大人までたくさんのバンドがあってバグパイパーの層の厚さを感じました。
<パイプバンド>
これだけのバグパイパーが集うとまさに圧巻!1日中バグパイプの音が響き渡っていました。
やはり一番人気は、重量競技でした。フィールドにはたくさんの人が集まって熱心に観戦していました。
<丸太投げのビデオ>
<重り投げのビデオ>
この日の重量競技は、丸太投げ、砲丸投げ、ハンマー投げ、重り投げ(距離)で、男女が分かれて競っていました。競技者の年齢もさまざまで、伝統が受け継がれているのを感じます。丸太がうまく12時の方向に落ちると観客は大きな歓声をあげて楽しんでいました。
その横で、行われていたのはハイランドダンス競技会です。
<ハイランドダンスのビデオ>
<ハイランドダンス>
<ハイランドダンス>
驚いたのは、参加した競技者の数です。子どもから大人まで、男の子もいました。
そして、なぜか舞台の周りにやたらあったのはテントです。 その理由は、さまざまなダンスがあるので、参加するダンサーがテントの中で各ダンスの衣装に着替えるためのもののようでした。一家に1テントを用意していたという感じでした。
出番前には、テントの前のマットの上でストレッチをしたりして、まさに家族総出の真剣なイベントでした。
ハイランドダンスだけかと思ったら、アイリッシュダンス、そしてセーラーダンスのようなものもあって、5時間くらいのイベントでした。 これだけの人達が集って踊るハイランドダンス大会は、これもまた圧巻でした。
最後に
スコットランドの伝統、そしてそれを守るスコットランド人の誇りを感じる、まさにスコットランドの夏の祭典です。
スコットランドの美しい景色の中で行われるハイランドゲームズにぜひ行ってみてください。
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Sachiko
- 名古屋市出身、海外滞在歴30年、38カ国490以上の都市を訪れました。多趣味で、アート系のクラッシック鑑賞、バレエ・ダンス鑑賞、美術鑑賞、アンティーク収集から、スポーツ系のテニス・ダイビング、グルメまで色々なことが好きですので、様々な視点で皆様に旅の楽しさがお伝えできればと思っています。捨て猫2匹をインドネシアで拾い、日本まで連れてきました。