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スペインの宝くじonce(オンセ)
スペインの街を歩いているとよくOnceのキヨスクをみかけます。街の広場や教会の前などにもあるこのキヨスク、何が売っているのかというと、宝くじですが、ただの宝くじではありません。
OnceというのはOrganización Nacional de Ciegos Españoles の頭文字をとってONCE、訳すとスペインの盲目者団体で、宝くじを買うことを通して、障害を持っている人たちを支援するというものです。
それ以外にもスペインには色々な宝くじがあります。今回は、スペインの宝くじをテーマに書いてみたいと思います。
目次
Once団体の歴史
20世紀初頭、盲目の人たちは街角で物乞いをする他生活の手段がありませんでしたが、彼らを助けるために地域の人たちがくじを作るようになりました。
1930年代、そのくじは合法ではないにも関わらず、レバンテやカタルーニャ、アンダルシア州など広い地域で売られるようになり、盲目者の団体が作られるようになりました。
1938年、地域の団体がまとまり、国に認められたOrganización Nacional de Ciegos Españoles(スペイン盲目者連合)が誕生し、翌年、盲目者が売っていたくじを「一般的な仕事をできない盲人のための例外的かつ排他的な収入形態」として商業化することに成功しました。
その後スペイン内戦でケガをしてしまった人なども取り込み、現在は、盲目者だけではなく、ざまざまな障害を抱えた人たちが働く場所として、国内に7,000か所以上のキヨスクがあり、また2万人以上が路上でくじを売っています。
例えば、昨日インタビューを受けてくれたこの方は、イベント会場の前でくじを売っていました。
彼は呼吸の障害があり、頻繁に病院に行かなくてはならないため、普通に働くことは難しいです。彼は、固定された売店ではなく、1か所にとどまってくじを売るスタイルですが、カフェテリアなどを回ってくじを売っている人もいます。
売店でくじを売っている人は、盲目者や足が不自由な人など移動することに危険を伴う人、歩き売りをしている人は移動はできる人で、組織からどこのエリアでくじを売るかが決められているそうです。
もちろんスペインにも障害がある人の年金はありますが、生活をするには十分ではないため、Onceのくじを売る仕事を得られたことで、本当に助かっているとのことでした。
魅力的な宝くじ
そもそも、私がこのくじを知ったのはスペイン人のパートナーが、街を歩いてると1回はこのくじを買うという習慣のあることからでした。
当たるといくらもらえるのかを聞くと、「種類によるけど、自分が買うやつは、当たると毎月の給料のようにお金がもらえるやつ」とのこと。
調べてみるとその宝くじ「Sueldazo」は即金で30万ユーロ(日本円で約4800万円)さらに、20年間にわたり、毎月5,000ユーロもらえるというもの。
「宝くじで高額を手にしたはいいけど、それが原因で人間関係が悪化したりお金のトラブルで不幸になった」みたいな話は、聞いたことがありますよね。
でもこの即金+20年間にわたり毎月5,000ユーロというのはとても魅力的ではないですか?早期退職も夢ではありません。
もちろん、日本のように普通の宝くじや年末ドリームジャンボのような期間限定宝くじもあります。
スペイン人と宝くじ
では、スペイン人は本当に宝くじを買うのか?友達や近所の人に聞いてみました。その中で圧倒的にコメントが多かったのがスペイン政府がやっているクリスマスの宝くじです。
昔から家族や職場の仲間で買うのが習慣になっていて、当選者の発表日は、朝からほとんどの家庭がテレビやラジオでその中継を聞いていたほど。面白いと思ったのは職場や家族で同じ番号のくじを買うこと。
そうすれば、当たった時はみんなで喜ぶことができて、自分だけ当たって皆に羨ましがられすぎて問題が起こることもありません。
クリスマスの宝くじは、コマーシャルもいつも素敵。インターネットで2021年のものを見つけましたのでリンクを貼っておきます。
スペイン語が分からなくても、あらすじがわかりますが、ある雪深い田舎の村のある家にクリスマスカードが届きます。
中には1枚の宝くじが入っていて、「親愛なるお隣さんへ もしこの宝くじが当たったら私が大切にしている皆さんと一緒にお祝いできるという幻想ほど、私をわくわくさせるものはありません。
「メリークリスマス!」 と書いてありますが、差出人の名前がありません。なんて素敵なカードなんだろうと思った夫妻は、近所の人に同じことをすると、その輪が広がっていきます。
クリスマス宝くじは1枚20ユーロと少し高額なので、色々な団体が主催する宝くじの参加券が売られています。参加券は、3ユーロほどで、そのうち0.5ユーロをその団体に寄付するというもの。
そのほかにも、旅行のお土産に宝くじを買ったり、久しぶりに会った友達と共同で宝くじを買ったり、何かと、宝くじはスペイン人の暮らしの中にあるようです。(観光地のレストランで売られているクリスマス宝くじ。お土産に買う人がいるのでしょうか?)
宝くじ当選者体験談
では、そんなにメジャーな宝くじ。実際に当たった人はいるのでしょうか。
友だちに一人います!彼は1999年、まだユーロ通貨に統合される前ですが、今のユーロ貨幣にすると400万ユーロ(日本円で6億円4000万円ほど)を手にしました。
当時、史上5番目の大金だったようです。スペインにはOnceや国営のくじ以外にもさまざまな宝くじがありますが、彼が買った宝くじはカタルーニャ州の宝くじ。好きな数字を10個選ぶものだったので、彼は自分の住所に出てくる数字+年齢+車のナンバーを入れたそうです。
その後、ラジオで、「同じ村の売店で買ったくじが当選した」と聞いた時、期待が裏切られるのが嫌で、当選番号をわざわざ聞かなかったそうです。
「2週間たっても、当選者が現れないらしいよ」という噂を聞き、おそるおそる当選番号を聞いたところ、見事当選!6億円以上の大金を得て何をしたかというと、まず、赤字が続いていた父親が始めた家業の借金を払い、工場を閉じて従業員に通常以上の解雇手当を払い、さらに兄弟5人に60万ユーロ(日本円で960万円くらい)を配りました。
その後は好きな仕事をしながら、しっかり年金をかけ、当選から30年以上がたった今も、宝くじの恩恵を受けた暮らしをしています。
90%以上の宝くじの高額当選者が、「5~7年で、当たる前より幸福度が落ちる」という統計があるようですが、彼は家族の幸せを一番に考えて行動できたからでしょうか、今も幸せに暮らしています。
「宝くじに当たったことで、何かにつけて、自分がラッキーな男だと思えることがうれしい。そしてその幸運を本当に感謝できることが嬉しい」というコメントが心に残りました。
今回は、スペインの宝くじについてお伝えしました。障碍を持った人が活躍できて、支援にもなる宝くじの存在や、家族や職場の仲間と喜びを共有できる宝くじの買い方など、素敵ですよね。
「この宝くじがもし、あたったら。」という期待は、毎日の生活にうるおいや、みんなでワクワクを共有する一体感を与えてくれます。スペインを訪れた際には、Onceの宝くじをぜひ気にしてみてください。
こちらは毎週金曜日に抽選が行われる宝くじ。一等賞は600万ユーロ。当たりますように。
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IZUKAWAUSO
- 日本青年海外協力隊員。チリ南部の田舎暮らしも8年半になります。趣味は旅行(特に屋台めぐりと温泉)と料理。地元の週末フリーマーケットでおにぎりと味噌汁売ってます。