【イギリス】エジンバラ近郊の知られざる美しい街と村:おすすめ5選(南部編)

<トップ画像:イギリスの国民的詩人ウォルター・スコット卿の邸宅アボッツフォード>

前回ご紹介したスコットランドのエジンバラ近郊の知られざる美しい街と村の南部編です。

日帰りできるところばかりですので、エジンバラまで来て時間が少しあったら足を伸ばしてくださいね。エジンバラからの行き方もご紹介します。

スコットランドは大きく2つに分けられます。丘陵地の多いイギリスに近い南部に広がる地方をローランド地方、そして北部にある山脈地帯で荒涼とした地域をハイランド地方と呼びます。スコットランドの主要都市であるエジンバラとグラスゴーはローランドにあります。

ローランドの中でもイギリスに近い地方をボーダーズと呼びます。ボーダーズ地方は、スコットランドの丘陵地帯の緑が広がった美しい地域です。 ジェームズ・ボンドやゲーム・オブ・スローンズなどで出てくる荒涼とした緑の少ない山脈地域はハイランドです。

今回はあまり観光客に知られていないローランドにあるボーダーズ地方の美しい村を5つご紹介します。

目次

1. メルローズ

メルローズ
<ゴシック建築のメルローズ修道院(右側)>

メルローズは、ボーダーズ地方にあるツイード川の辺りに広がる街です。オリンピックの正式種目となったラグビーセブンと呼ばれる7人制のラグビーの発祥地とされます。

ツイード川はイギリスとスコットランドの境界から、西から東へとボーダーズ内を流れる川で、この川の名前はスコットランドの毛織物で有名な「ツィード」生地の語源となっています。

メルローズ修道院 (Melrose Abbey)

メルローズ修道院 (Melrose Abbey)
<美しいメルローズ修道院の廃墟(前面)>

メルローズの街の中心に廃墟として残っているゴシック様式のメルローズ修道院があります。

メルローズ修道院は、1136年にスコットランド王デイヴィッド1世の命によって建立されました。その後幾度となくイングランドとの度重なる戦火に巻き込まれ、再建、修復されましたが、1544年の戦いで決定的に崩壊しました。

今日残っているのは14世紀末にイングランド王リチャード2世が手がけたものが主で、ゴシック建築の外壁部分だけですが、英国の中世の教会建築の中でも一番美しい遺跡として知られています。

修道院の建物はボーターズ地方で取れる石材、薄くピンクがかった色のレンガで作られているのが特徴です。

ターナーのメルローズ修道院の絵
<ターナーのメルローズ修道院の絵>

この修道院の美しさに、英国の画家ウイリアム・ターナー、詩人・小説家ウォルター・スコット、そしてドイツの音楽家のメンデルスゾーン(スコットランド旅行の後にスコットランドの愛称して知られる交響曲第3番を作曲しています。)など多くの芸術家がインスピレーションを得たと言われます。

今では廃墟ですが、グリーンマン、ドラゴン、ガーゴイル、ホブゴブリン、おたまを持つ料理人、バグパイプを演奏する豚、太った修道士、リュートを演奏する天使、木槌を持った石工などの面白い彫刻が多く残っているそうです。

しかし、現在は保全のためバリケードがあり、近くまで行けません。装飾は上の方にあるため、下からだとよく見えないのが残念でした。以前は内部にも入れ、また上にも登れたそうですが、今はバリケードの外からの見学のみとなります。

バグパイプを演奏する豚
<バグパイプを演奏する豚>

一番有名なバグパイプを演奏する豚の写真です。

ロバート1世の心臓の埋葬地
<ロバート1世の心臓の埋葬地>

メルローズ修道院が美しいだけでなく、スコットランド人にとって特別な史跡である理由は、スコットランドの独立をイギリスから勝ち取ったスコットランド王のロバート1世(ロバート・ザ・ブルース)の心臓がメルローズ修道院に埋葬されていることです。(体は北部編で紹介したダンファームリン修道院に埋葬されています。)

史実の裏付けとされるロバート・ザ・ブルースの心臓が入っていると考えられる鉛製のケースが1996年に発見され、現在は敷地内にある埋葬場所が整備されています。(防腐処理が施されているそうです。)

【メルローズ修道院 (Melrose Abbey)】

プライアーウッド・ガーデン(Priorwood Garden)

プライアーウッド・ガーデン(Priorwood Garden)
<プライアーウッド・ガーデン>

左がプライアーウッド・ガーデンの果樹園
<左がプライアーウッド・ガーデンの果樹園>

メルローズには美しい庭園があります。その1つがメルローズ修道院の境内にある壁に囲まれた庭園、プライアーウッド・ガーデンです。

庭園の面積は2エーカーもあり、ドライフラワーにするための花やハーブを栽培するための庭と果樹園があります。果樹園は元々修道院の僧のためのものだったと考えられ、7種類以上の古い品種のリンゴが今でも収穫できるそうです。

エジンバラのからの行き方

  • ウエイヴァリー駅(Waverley Station)から電車でTweedbankへ。(1時間ほど)Tweedbankから 68番のJebdburgh行きのバスに乗り、Abbey Car Park下車(10分)
  • ウエイヴァリー駅(Waverley Station)から電車でGalashielsへ。(55分ほどTweedbankから 68番のJebdburgh行き、または964 St Boswells行きのバスに乗り、Abbey Car Park下車(10分)

【プライアーウッド・ガーデン(Priorwood Garden)】

2. アボッツフォード (Abbotsford) 

アボッツフォードの邸宅玄関
<アボッツフォードの邸宅玄関>

アボッツフォードは、メルローズの近くに位置するツイード川沿いにある19世紀に活躍したスコットランドの産んだ英国の偉大な詩人・小説家ウォルター・スコット卿の建てた邸宅です。 

ロマン主義作家として知られるウォルター・スコットは、歴史小説のパイオニアです。1814年に連載の始まったスコットランドのイングランドとの戦いを題材にした「ウェイヴァリー」は、小説シリーズの出版史上初のベストセラーとなりました。

続いて、サクソン人とノルマン人の抗争を描いた「アイバンホー」、スコットランドのロビン・フッドとして知られるロブ・ロイ・マクレガーの小説「ロブ・ロイ」などのベストセラーを生みました。

ウォルター・スコットの作品は、スコットランドのイメージを野蛮なハイランダーの住む不毛の地というイメージから、ロマンチックなスコットランドというイメージに一新することに貢献しました。

スコット卿の小説が、スコットランドへロマンスを求めて旅行する動きの火付け役になったと言われています。

そんなウォルター・スコット卿は、スコットランド人の誇りです。 

小説の「ウェイヴァリー」が、エジンバラの中央ターミナル駅、ウェイヴァリー駅の名前になり、またスコットランド銀行の発行する紙幣にはスコット卿の肖像画が刷られています。

モリス・ガーデン
<モリス・ガーデン>

アボッツフォード・ハウスは、ウォルター・スコット卿が晩年過ごしたところで、その邸宅と庭園は現在一般公開されていています。 

アボッツフォードの敷地は広大です。100エーカー(404,686平方メートル、東京ドーム約6.8個分)もあるそうです。邸宅内には生前のスコットを偲ぶ多くの物と9,000冊の蔵書、そしてスコット卿が蒐集した武具などのコレクションがあり、公開されています。

壁に囲まれたガーデン
<壁に囲まれたガーデン>

スコット卿のデザインした温室がある壁に囲まれたガーデン
<スコット卿のデザインした温室がある壁に囲まれたガーデン>

スコット卿がデザインした庭園はまた美しく、サウスコートと呼ばれる邸宅前の庭、モリス・ガーデンと呼ばれる庭、そしてスコット卿の家庭菜園の壁に囲まれたガーデンがあり、季節の花々を楽しむことができます。

庭から見る邸宅
<庭から見る邸宅>

邸宅と庭園の入場には観覧料を払いますが、広大な敷地は無料で楽しむことができます。

【アボッツフォード (Abbotsford)】

エジンバラのからの行き方

  • ウエイヴァリー駅(Waverley Station)から電車でTweedbankへ。(1時間ほど)
  • Tweedbankから徒歩20分(1.6kmほど)。または、巡回するミニバスがあり、Tweedbank station、Melrose Abbeyを経て、アボッツフォード に行くこともできるということです。

スコッツ・ヴュー (Scott's View)

ウォルター・スコット卿が愛した眺め 
<ウォルター・スコット卿が愛した眺め>

「スコットの眺め」と呼ばれるヴューポイントです。名前の通り、ウォルター・スコット卿のお気に入りのボーダーズ地方の眺めです。

スコット卿はアボッツフォードの自宅に向かう途中で頻繁にこの地点に立ち寄り思索にふけっていたため、馬が命令なしで止まるようになったと伝わっています。

スコット卿の葬儀の日、ドライバラ修道院(Dryburgh Abbey) での埋葬に向かう途中に、スコット卿に最後に見てもらうために立ち寄ったとされる場所です。

エイルドン丘陵(Eildon Hills) と呼ばれる3つの山頂を持つ山が遠くに見え、ツイード川沿いとその渓谷の広がる起伏のある緑の農地を一望できるボーダーズ地方の美しい景色を眺めることができます。

スコット卿ファンは必ず立ち寄る場所として知られ、また地元の人気スポットですが、本当に何も周りにありません。単にベンチがあり、そこに座って景色を楽しむ所です。

アボッツフォードよりも、メルローズに近く、メルローズからおおよそ5kmの細い道沿いの丘の上にあります。地元の人がハイキングやサイクリングで訪れるところで、公共の交通機関で直接行く方法はないため、時間のない観光客としては、ツアーで立ち寄ることがおすすめです。

メルローズのからの行き方

メルローズ修道院の駐車場から、51,60,67,68,313,314番のバスにのり、Leaderfoot bridgeから徒歩50分です。

3. ケルソー (Kelso)

ケルソー修道院の廃墟
<ケルソー修道院の廃墟>

ケルソー修道院

ケルソーは、メルローズから少し南にあるボーダーズ地方の街です。マーケットタウンとして、市場が立つ街という歴史があり、今でも毎月第4土曜日に、町役場の広場でファーマーズマーケットが開かれています。

ケルソーの街には、1100年に建立されたケルソー修道院の廃墟があります。保全のため中に入ることはできませんが、外からは見ることができます。

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<ケルソー橋から見えるフロアーズ城>

修道院の近くにあるツイード川にかかるケルソー橋から、ケルソーの一番有名な観光スポットのフロアーズ城が見えます。

【ケルソー修道院(Kelso Abbey)】

  • 住所:Kelso, Scottish Borders TD5 7JD
  • 公式サイト:Kelso Abbey

フロアーズ城 (Floors Castle)

フロアーズ城
フロアーズ城

フロアーズ城は、ケルソーの街にあるスコットランドで最大の邸宅と呼ばれているロックスバラ公爵のお城です。 1721-1726年に建てられて以来、11世代のロックスバラ公爵が住んでいます。

巨大な邸宅は、ツイード川沿いの広大な敷地にあります。

今でもフロアーズ城には公爵家が住んでいますが、5月1日から9月30日までお城の一部が公開されています。

私はケルソーの街に行きましたが、残念ながら季節外れでお城の中には入ることができませんでした。

フロアーズ城は、また美しい庭園があることでも有名です。フランス風のミレニアムガーデン、ヴィクトリア朝の壁に囲まれたガーデンがあります。(庭園とカフェは1月初めから9月末まで開いています。)

広大な敷地内には、森林が広がり、またツイード川沿いの散歩道やサイクリングトレイルも用意されていますので、ゆっくりと一日過ごすことができるところです。

フロアーズ城(Floors Castle)】

エジンバラのからの行き方

  • ウエイヴァリー駅(Waverley Station)から電車でBerwick-upon-tweedへ。(40分ほど)Galashiels行きのバス67番に乗り1時間、 WHsmith (Kelso) 下車
  • ウエイヴァリー駅(Waverley Station)から電車でGalashielsへ。 (52分ほど)Berwick-upon-tweed行きのバス67番に乗り1時間、 Coledale Car Park (Kelso) 下車

4. ロスリン (Roslin)

ロスリンチャペル
<ロスリンチャペル>

ロスリンチャペル (Rosslyn Chapel)

スコットランドのエジンバラ近郊のロスリン(Roslin)の村には、15世紀に建てられたゴシック建築のたくさんの彫刻が施されている美しい礼拝堂・ロスリンチャペルがあります。

ロスリンチャペルは、2007年に公開されたハリウッド映画「ダビンチコード」で、聖杯を求めて主人公が訪れる礼拝堂として登場し、一躍世界で有名になりました。

ロスリンチャペルは、石のみで建てられた礼拝堂です。天井から壁に埋め尽くすように彫刻が施されているため「石のタピストリー」、「石の詩」などと呼ばれています。

礼拝堂の内部の壁と天井一面に、そして外部にもたくさんの彫刻が施されています。

彫刻がユニークで、その彫刻にまつわる伝説が多く生まれ、その謎を読み解こうと人々の想像を生みました。その1つが、ハリウッド映画「ダビンチコード」の原作となった、2003年にダン・ブラウンの書いた小説「ダ・ヴィンチ・コード」です。

1つ気になるのが礼拝堂の名前のスペリングです。礼拝堂は、Rosslynですが、何故か村の名前もお城の名前もRoslinです。(発音は同じなので日本語ではロスリンです。)異なるスペリングの理由は、礼拝堂のみ古いスペリングを使っているからだそうです。

ロスリンチャペルについては、以前「映画「ダ・ヴィンチ・コード」に登場する彫刻の美しいロスリン礼拝堂で謎解きを楽しみませんか?」に詳しく書きましたので、見てくださいね。

【ロスリンチャペル (Rosslyn Chapel)】

ロスリン城 (Roslin Castle)

渓谷にある廃墟のロスリン城
<渓谷にある廃墟のロスリン城>

泊まることのできる新しい部分のロスリン城
<泊まることのできる新しい部分のロスリン城>

ロスリンチャペルまで来たら、礼拝堂の横にあるロスリン城も訪れてください。

ロスリンチャペルを建てたセントクレア家が居住していたロスリン城は、古い部分は廃墟となっています。 

緑深いロスリン渓谷にあるロスリン城の廃墟は、詩人のロバート・バーンズや小説家ウォルター・スコットなどの芸術家たちのインスピレーションとなったロマンチックな光景です。  

14世紀の初めに建てられたロスリン城は、1622年に再建され、それ以降その一部は居住することができる状態ということです。1980年代に修復されて、今はホリデーアコモデーションとして貸し出されています。

ロスリンチャペルからロスリン城一帯は、ロスリン渓谷カントリーパークとして自然保護区に指定されているため、緑に溢れた渓谷を散策することができます。

【ロスリン城(Roslin Castle)】

エジンバラのからの行き方

エジンバラ市内から37番のPenicuik/ Deanburn行きのバスに乗り、Rosslyn Hotelで下車(50分程度)

まとめ

エジンバラの南に広がるスコティッシュボーダーズと言われる地方は、ツイード川沿いの緑豊かな丘陵地です。スコット卿の愛した歴史のある観光客にはあまり知られていない美しい街や村を散策してみてください。違う顔のスコットランドが見えてきます。

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Sachiko

名古屋市出身、海外滞在歴30年、38カ国490以上の都市を訪れました。多趣味で、アート系のクラッシック鑑賞、バレエ・ダンス鑑賞、美術鑑賞、アンティーク収集から、スポーツ系のテニス・ダイビング、グルメまで色々なことが好きですので、様々な視点で皆様に旅の楽しさがお伝えできればと思っています。捨て猫2匹をインドネシアで拾い、日本まで連れてきました。

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