【フランス】セーヌ川の流れる中世の町トロワ:道具と職人博物館

<TOP画像:トロワの町並み ©Kanmuri Yuki>

前回はフランスのパリを横断するセーヌ川の水源をご案内しました。今日は、この水源から流れ出たセーヌがパリへたどり着く前、ちょうど道半ばにして通る町トロワをご紹介します。

>>前回の記事:【フランス】セーヌ川の水源を尋ねて...はこちら

目次

シャンパーニュの栓の形をした街

トロワの町の一角
<トロワの町の一角 ©Kanmuri Yuki>

トロワの起こりは古く、古代ローマの博物学者大プリニウスがすでに紀元63年の書物にその名を記しています。ただし、トロワという呼び名が定着したのは、中世に入ってからのことです。

マンホールにも木材が
<マンホールにも木材が!©Kanmuri Yuki>

シャンパーニュ伯領であったこともあるトロワの中心街は、東を上にして置かれたシャンパーニュの栓の形をしていることでも有名です。この形になったのは13世紀前半。シャンパーニュ伯だったチボー4世が、セーヌ川の流れを迂回させ、今見るように、川は栓の頭を描く東側の曲線を流れることとなったのです。そうして、大まかにいえば、東側の栓の頭のほうには昔からの町の機能が、栓の下側にあたる西側には商人や職人らが住むようになりました。

1524年の大火災からの再建

トロワの一番の魅力はなんといってもその建築にあります。中世にしか見えない木組みの家々の隙間を細い路地が縫う町並みは、何度歩いても魔法にかかったような心地になること間違いなし。しかも、これらの古い家々にはいまも人が住み、商店が入り、生活の活気が満ちあふれています。

木組みの家が多く残るトロワ
<木組みの家が多く残るトロワ ©Kanmuri Yuki>

これらの建築のほとんどは、16世紀以降のものです。というのも、1524年の大火災で、トロワの町は四分の一、約1500軒の家が焼失してしまったからです。幸い、この頃のトロワは繊維業や皮革業などで栄えていたこともあり、焼け落ちた区域の再建も速やかに進んだと言います。

トロワ大聖堂のファサード
<トロワ大聖堂のファサード ©Kanmuri Yuki>

トロワには、大聖堂やバジリック以外にも驚くほど多くの教会が建っていますが、そのほとんどに今も16世紀の美しい彫刻を見ることができますので、散策の際は、教会の中もぜひのぞいてみてください。見学はどこも基本的に無料です。トロワ観光局によるトロワの教会紹介ページでは、複数の教会内を3D映像で見学することができます。

>>トロワの教会たちの公式サイトはこちら

道具と職人博物館

教会も建築もひとつひとつ写真を並べたいくらいに見どころが目白押しのトロワですが、その中で今日一押しでご紹介するのは『道具と職人博物館』です。場所は旧市街の少し西寄り、モーロワ邸に入っています。

通りから見たモーロワ邸入り口
<通りから見たモーロワ邸入り口 ©Kanmuri Yuki>

このモーロワ邸も前述の1524年の火災の後再建されたものです。再建者の名はジャン・モーロワ。トロワの北東にあった村コラヴェルデの領主であり、通貨担当行政官でもありました。同氏は後に、病院や、孤児のための職業訓練所コレージュ・ド・トリニテなども設立した人物です。モーロワ邸の建つ通りが「トリニテ通り」と呼ばれるのは、このコレージュ・ド・トリニテに由来するものです。

モーロワ邸中庭
<モーロワ邸中庭 ©Kanmuri Yuki>

さて、モーロワ邸の門をくぐると誰もがまず目を奪われるのはこの建物そのもの!モーロワ邸自体が美術品のように美しく、博物館見学目当てで訪れた人も、まずは皆、中庭で建物の写真を撮らずにはいられなくなる魅力を持っています。モーロワ邸は、国の歴史的建造物の指定も受けており、『三銃士』などの映画の撮影にも使われたことがあります。

一万二千もの道具たち

道具と職人博物館の展示一部
<道具と職人博物館の展示一部 ©Kanmuri Yuki>

とはいえ、道具と職人博物館のコレクションは、この建築のすばらしさにも負けていません。展示されているのは、17世紀から19世紀のありとあらゆるジャンルの職人らが用いた12,000点に上る道具たち。その展示の仕方も芸術的で、どの部屋に入っても思わず感嘆のため息が出ます。

展示室のひとつ
<展示室のひとつ ©Kanmuri Yuki>

芸術家と異なり、個人の名は時の流れに埋没してしまうのが常の職人たちですが、彼らの道具はこんなにも美しく作られ、丹念に手入れされ、手足の一部であるかのように長く長く用いられてきたのです。展示を見ているだけでその重みが伝わり、圧倒されるような心地がします。

舞うような鏝(こて)たち
<舞うような鏝(こて)たち ©Kanmuri Yuki>

莫大で貴重なデータを整頓する道具と職人博物館。サイトやパンフレットには、過去を並べるだけではなく、「現在また未来につながる職人の技と知恵をしっかり評価することを目的とする」と明言しています。1センチ1ミリまで計算されているかに見える展示には、そういう博物館の矜持も感じとることができるでしょう。

道具と職人博物館

  • 休館日:10月から3月の火曜日、年末(2023年年末は12月23日~1月2日)
  • 開館時間:9時~12時、14時~18時
  • 入館料:大人8ユーロ、12~18歳4ユーロ、12歳未満は無料
  • 公式サイト:道具と職人博物館

器械体操でもしているかのような金槌たち
<器械体操でもしているかのような金槌たち ©Kanmuri Yuki>

余談ですが、展示には、今はほぼ使わなくなった道具や職業の名前、さらに数々の専門用語がこれでもかと並び、そういう意味でも面白い博物館でした。いわば、3Dの百科事典を眺めている気分になります。世界的に見ても貴重なコレクション、トロワ観光の際にはお見落としなく。

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冠ゆき

山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。

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