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【アルゼンチン】アルゼンチンタンゴ世界選手権2023を終えて
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは、冬の終わり8月にタンゴのフェスティバルが行われます。そのプログラムの一環としてアルゼンチンタンゴダンスの世界選手権(ムンディアル)も行われます。
今回は、この世界選手権(ムンディアル)についてご紹介します。
目次
アルゼンチンタンゴフェスティバルの全容
タンゴのフェスティバルでは、ブエノスアイレスの町中のコンサート会場や劇場で
- タンゴのオーケストラの演奏
- タンゴ歌手のリサイタル
- タンゴにちなんだ演劇
- タンゴの著名人の演説
- タンゴダンスのショーイベント
- タンゴダンス世界選手権(ムンディアル)
が行われます。
このフェスティバルは、国ではなくブエノスアイレス自治区の主導で開催されており、全て運営は自治区の政府職員が行っています。
今年は、4年に一度の選挙の年ということもあり、政府の混乱が影響してか、フェスティバルの情報が開示されるまでに時間がかかりました。
通常であれば、2カ月前には情報が開示されますが、今年は1 カ月前にやっと開催日程が発表され、海外からの参加者は大変だったのではないでしょうか。
そんなドタバタな開催もブエノスアイレスらしい、と言えるでしょう。
今年のタンゴ世界選手権の特徴
この世界選手権は、8カ月の外出禁止中だった2020年は開催できなかったものの、2021年、2022年はリアルとオンラインの両方で開催されて世界中からの参加が続いていました。
今年はなんと大会開催が20周年という節目。世界中の流行病が収束して、海外旅行に出かける人が増えた2023年。
昨年まで行っていたオンライン参加が今年からなくなり、久しぶりのリアルのみの開催でした。来場者も増え、マスクをしている人もほぼ見かけません。
20周年のお祝いとして、これまでにサロン部門、エセナリオ(ショー)部門のチャンピオン達が全員で踊るショーも演目にありました。世界選手権のチャンピオン達の踊りはやはり圧巻です。
今年からセニョール部門(55歳以上)が追加された
アルゼンチン国内では「タンゴ」は曲や歌のファンが多く日本の演歌のような存在として聴かれています。
ご年配の方がラジオからタンゴを流しながら、家事や仕事をこなしている風景をよく見かけます。窓からタンゴの曲がもれ聞こえてくる穏やかな時間は、ブエノスアイレスらしさの1つ。
それでも、ご年配の方でタンゴダンスを踊る人は少なく、貴重な存在です。
私たち外国人が持つタンゴのイメージは、ダンサーが足を高くあげたり、男性が女性を持ち上げるリフトと呼ばれる技があります。これは「エセナリオ」と呼ばれるタンゴショー用の踊りです。
でもブエノスアイレスの市民が踊るタンゴはもっと穏やか。本来、タンゴは一緒に踊る相手と歩くことから始まる踊りです。今年から世界選手権の中でも「セニョール部門」という55歳以上のカテゴリーが追加されました。
タンゴの曲を愛し、人生を50年以上歩んできた方々のタンゴの踊りは深みがあって、見応えがあります。相手を柔らかく抱擁し、絶妙な距離感で歩む姿と小粋なステップは、年齢を重ねたセニョールならではの踊りです。
世界選手権ファイナルの様子
今年の世界選手権のファイナルは、plaza de mayo(プラザ デ マジョ)通りを閉鎖して、ブエノスアイレスの象徴「オベリスコ」を背に開催されました。
ブエノスアイレスの8月は冬。非常に寒い日で、朝方まで雨が降っていたので当日は予定通り開催されるのか、情報が錯そうしました。
以前は、ファイナルを見るためには朝早くからチケットの配布に並ぶ必要がありましたが、現在はウェブ予約のシステムが導入され3日前から予約が可能です。16時からの開催に15時頃入場すると、すでに人は座っていて舞台前の前列には空きはありません。
16時からサロン部門のファイナルが始まります。今年は最終的に残った40組の中からチャンピオンが選ばれます。10組づつ別れて、その場で発表される3曲を踊り審査が行われますが、基本は審査員の採点で決まります。その他にウェブ上で閲覧者たちの人気投票も行っていました。
今回のサロン部門の優勝は、Suyay Quiroga Y Jhonny Carvajal(スシャイ キロガとジョニー カルバハール)。彼らは、5月に行われたブエノスアイレス市の代表を決める選手権「メトロポリターノ」でも優勝しました。
私もメトロポリターノで彼女たちが予選に参加する日に踊りを見ましたが、ずば抜けた存在感はまさに王者の風格。ブエノスアイレス市と世界選手権ダブルでの優勝もうなずけます。
サロンの4つのグループが踊り終わると、次はエセナリオ(ショー)の部門が踊り始めます。
エセナリオ部門は1組ずつ踊ります。私は、今年はエセナリオのセミフィナルを見ていなかったので、全ての演目の踊りが初見でした。
感想としては、技術的にはどのパレハも高く大差はなかったです。エセナリオ部門は振り付けとストーリー、そしてイメージを色濃く表現する衣装が大きく結果を分けたように個人的には感じました。
優勝はJulian Sanchez Y Bruna Estellista (フリアン サンチェスとブルーナ エステリータ)でした。
それぞれ優勝者が発表されると、最後にチャンピオン達の歓喜の踊りが披露されます。そこに立つまでの今までの努力や苦悩を想像すると、同じ踊りを踊る人間として感動の涙と鳥肌が止まりません。
アルゼンチンタンゴは世界中で踊られる踊り
アルゼンチンタンゴは、今や世界中で踊られています。タンゴのダンスパーティー「ミロンガ」を求めて、海外遠征するミロンゲーロ(ミロンガを愛する人)が日本だけでなく、海外にも多く存在します。最近はヨーロッパやトルコ、アジアでは韓国や中国も盛り上がってきています。
一見、アブラッソと呼ばれる抱擁は日本人にとって抵抗がある踊りです。しかし、ここ数年の人と距離を持って生活する日々が続いたことにより、より人とのつながりの大切さを思い出させてくれました。
昨今は、抱擁による心身への素晴らしい効果も認められ、タンゴセラピーというカテゴリーも認知され始めています。
ぜひ、アルゼンチンタンゴに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
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AKANE
- アルゼンチンのブエノス・アイレス在住のタンゴダンサー、講師。タンゴやブエノス・アイレスの文化・情報について、日本から見て地球の反対側の本場ブエノス・アイレスから情報を発信中。