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【札幌】「ガッカリスポット」とは呼ばせない! 札幌市時計台の魅力に迫る!
「札幌市時計台」は、札幌を代表する歴史的建築物です。1時間ごとに鐘の音が時を知らせ、絶えず観光客が記念写真を撮影しています。そんな札幌市時計台ですが、市民には空気のような存在。観光客も記念写真を撮影すると、足早に過ぎ去って行きます。しかし外観だけでは時計台の魅力は伝わりません。内部を見学してみました。
目次
- 北海道屈指の歴史的建築物
- 設計段階では時計塔はなかった!!
- 外壁は白くなかった!!
- クラーク博士は9か月しか札幌にいなかった!!
- 約140年間時を刻み続ける歴史の証
- ガッカリさせない魅力が溢れていた!
北海道屈指の歴史的建築物
「札幌市時計台」は、正式名称を「旧札幌農学校演武場」と言います。札幌農学校は北海道大学の前身で、北海道開拓の指導者を育成する目的で1876(明治9)年に開校しました。1階は展示室、2階はホールになっています。高層ビルに囲まれているため、外から見ると小さく感じますが、中に入ると結構広いことが分かります。
演武場はクラーク博士の提言により、農学校生徒の兵式訓練や入学式・卒業式などを行う中央講堂として1878(明治11)年に建設されました。当時は現在より西方向にあり、敷地内には時計台を囲むように気象観測棟や講堂、学生宿舎などが建っていたそうです。
設計段階では時計塔はなかった!!
展示室を見学すると、時計台の謎がいくつも明らかになります。中でも驚愕なのは「落成当時は時計が設置されていなかった」という事実です。設計段階で時計を設置する予定はなく、鐘楼だけが取り付けられていました。これを見た黒田清隆開拓使長官が「西洋文化の象徴である時計を設置せよ」と指示し、アメリカのハワード社に時計を発注しました。
しかし届いてみると、想像以上に大きくて壁に収まりません。開拓使との話し合いの末、1881(明治14)年に時計塔が完成しました。以降、約140年にわたって札幌市民に時を知らせています。
外壁は白くなかった!!
時計台は赤い屋根に白い外壁のイメージですが、現在の色になったのは1949(明治24)年のこと。塗料の分析によって何度か塗り替えられていることが分かりました。最初は茶色い屋根にグレーの外壁、クリーム色やグリーンの時代もあったそうです。
クラーク博士は9か月しか札幌にいなかった!!
札幌農学校といえば、クラーク博士を思い浮かべます。2階には銅像が設置され、演武場だったホールを見つめています。「Boys, be ambitious(少年よ大志を抱け)」という言葉は有名ですが、功績などについてはあまり知られていません。
クラーク博士はマサチューセッツ農科大学長で、日本が西洋の知識と技術を習得するための教師として招かれました。農学校では教頭のポジションながら、教育面はすべてクラーク博士が定めていました。
教育に尽力を尽くし、札幌に骨をうずめたイメージがありますが、実際の在任期間は9か月という短さ。もちろん途中でサジを投げたわけではなく、マサチューセッツ農科大学での仕事もあり、開拓使との契約上、短期滞在は最初から決まっていたことでした。
しかも1877(明治10)年に帰国しているので、1878(明治11)年に落成した演武場に足を運んだこともありません。市内には羊ヶ丘展望台にも銅像がありますが、こちらを訪れたこともありませんでした。
アメリカに戻ったクラーク博士は、マサチューセッツ農科大学の学長を辞めて事業をはじめましたが、共同経営者の知人が横領を繰り返して逃亡、設立から1年半で破産し、大きな負債を抱えました。さらに晩年は心臓病にかかって寝たり起きたりの生活となり、1886年3月9日、59歳でこの世を去りました。
死の間際には「札幌で過ごした9ヶ月間こそ、私の人生で最も輝かしいときだった」と言い残したと伝えられています。
約140年間時を刻み続ける歴史の証人
時計台の時計は昼も夜も休むことなく動き続けています。1872(明治5)年に太陰暦から太陽暦に変更された際、明治の終わりまでに全国に72の時計塔が設置されましたが、約140年も動き続けているのは札幌市時計台だけです。
昭和初期に止まりかけたことがあったため、近所で時計店を営んでいた井上清さんが修理を買って出ましたが、財政的な理由で断られてしまいました。
井上さんは「死にそうな人がいるのにほおっておくことはできない」と、強引に修理を始めました。その後、時計台のメンテナンスは井上さんのご子息の和雄さんが引き継ぎ、現在は和雄さんから指導を受けた2人の職員が保守を担当しています。
ホールには、実際に使われている時計の兄弟時計が展示されており、時計の動く不思議な仕組みを確かめることができます。
鳩時計のような振り子時計で、小石を入れた木箱をおもりを動力にしています。おもりの重量は運針用が約50kg、打鐘用が約150kg。巻き上げは人力で2週間に1度行われています。不断の努力があってこそ、長く時計が維持されていることが分かりました。
ガッカリさせない魅力が溢れていた!
札幌市時計台は、館内に入らなくては分からない魅力がありました。道外から来た観光客は「思っていた以上に充実していて見る価値があった」と高評価。あまり期待されていない分、満足度が大きいようです。
まわりのビルが映りこまないように、下から見上げるアングルで写真を撮影すると、時計台らしさが引き立ちます。入館料は大人200円、高校生以下無料と言う破格の安さ。もう「ガッカリスポット」とは呼ばせません。その歴史と驚きを堪能してください。
札幌市時計台
- 住所:札幌市中央区北1条西2丁目
- 電話:011-231-0838
- 開園時間:8:45~17:10(入館は17時まで)
- 休館日:1月1日〜3日
- 公式サイト:札幌市時計台
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吉田匡和
- 札幌市在住のよろずライターです。美味しい食べ物から温泉、穴場スポットや定番スポットの知られざる楽しみ方など、地元ライターらしい視点でワクワクを紹介します。