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神社とお寺の違いとは? 観光時のポイントや注意点
日常で、そして旅先で、日本人にとって馴染み深い神社とお寺。その違いについて、詳しく知っていますか?
この記事では、宗教や参拝方法、施設における特徴などについて、神社とお寺がどう違うのかを解説します。さらに、神社やお寺を観光するとき、それぞれどのような点に注目するといいのかも紹介。これを読めば、旅先の神社やお寺の風景も、より魅力的に見えてくるはずです。
目次
神社とお寺の宗教における違い
そもそも神社とお寺は、宗教がそれぞれ異なる施設。かつては神仏習合によって神社とお寺が明確には区別されない時代もありましたが、明治時代初頭の神仏分離令を経て、神社とお寺ははっきりと分けられるようになりました。では、宗教がどう違うかを見ていきましょう。
神社の宗教
神社は、日本古来の宗教である「神道(しんとう)」の施設。遠い昔、自然現象に神々を感じた日本人の暮らしから生まれた、海や山、風といった自然崇拝に基づく宗教です。さらに自然だけでなく、あらゆるものに神は宿るとして、歴史的な偉人や祖先の霊など、「八百万(やおよろず)の神」を祀るのが特徴。また教祖がいないため、教典もなければ厳格な教えもない、日本固有の信仰による宗教となっています。
神道には、豊かな自然を大切に守り、祭りを通じて地域の和を保ち、日本の限りない発展を祈るという、日本人の価値観が生きています。そんな神道に基づいて、神の住む神聖な場所に建てられたのが神社なのです。お正月の初詣、子どもの成長を祈るお宮参りや七五三、そして結婚式など、今も人生の節目に神社を訪れる人が多いように、神道は日本人の心の拠り所といえるでしょう。
お寺の宗教
お寺は、インドから始まり、中国を経由して伝わってきた「仏教」の施設。古代インドで仏陀を開祖に説かれ、その教えを僧侶や信者が修行し、悟りを開いて、苦しみの輪廻転生から解脱することを目指す宗教です。日本には6世紀に伝来としたとされ、聖徳太子によって広まり根付いていきました。仏陀の教えを記した経典をもとにして、釈迦如来をはじめ、阿弥陀如来、大日如来、薬師如来など、悟りを開いた「仏」を信仰の対象としています。
今では多くの宗派が開かれていますが、仏陀を教祖としている点は同じ。そうした仏教を信仰する僧侶が住み、その教えを学んだり修行をしたりする場こそ、お寺なのです。旅先でお寺を観光する機会が多いことにも象徴されるように、異国から伝わった宗教でありながら、日本人に深く浸透していったのが仏教といえるでしょう。
神社とお寺の参拝方法やマナーの違い
神社やお寺で礼拝するとき、手は叩くんだっけ? 礼は? と思わず迷ってしまう方もいるのではないでしょうか。そこで、神社とお寺の参拝方法やマナーの違いを解説します。
神社の参拝方法
神社に着いたら、俗界と神域を分けて建つ鳥居の前で一礼を。その後、手水舎(ちょうずや)で手と口を清めましょう。参道の中央は神様が通る道とされるので、中央を避けて参道を歩いていくのもポイントです。
拝殿の前に立ったら、お賽銭箱にお賽銭を入れ、鈴を鳴らします。そして礼拝は、「二礼二拍手一礼」が基本。最初に礼を2回、そして2回手を叩き、そのまま合掌して願い事を唱えます。最後に礼を1回して、拝殿から離れましょう。願い事は、自分の名前と住所を述べて、これまでの感謝を伝えてから、心を込めてひとつ願うことが大切です。
<出典:イラストAC>
詳しくは「神社の正しいお参りの仕方とは?」のページをご覧ください。
お寺の参拝方法
お寺に着いたら、悟りの領域への入口に建つ山門の前で一礼を。その後、神社と同じように手水舎で手と口を清めます。自由に撞ける梵鐘がある場合、参拝前に撞きましょう。お線香を供える常香炉があったら、お線香をお供えして身を清めるのもいいでしょう。香炉の煙を身体の悪いところに浴びると良くなる、とも言われています。
<出典:写真AC>
本堂の前に立ったら、お賽銭箱にお賽銭をそっと入れ、金属製の鰐口(わにぐち)を鳴らします。礼拝は神社と異なり、手は叩かないのが基本。両手を静かに合わせて願い事を唱えた後、「南無阿弥陀仏」などご本尊の名前の前に「南無」を付けて唱えましょう。
詳しくは「お寺の参拝方法は? 手順やマナーの基本、神社との違いなどを紹介」のページをご覧ください。
神社とお寺の施設における違い
神社とお寺をそれぞれイメージすると、神社にあってお寺にないもの、あるいはお寺にあって神社にないものに気づくはず。そこで、施設の特徴がどのように違うのかを解説します。
神社の施設の特徴
神社の象徴と言えば、なんといっても鳥居。人が住む俗界と神が住む神域の境界に建っているのが鳥居です。また鳥居や参道の両側では、狛犬が神社を守っています。稲荷神社では狐、天満宮では牛がいることも。
<出典:写真AC>
灯籠の並ぶ参道の先にあるのが、ご神体やご祭神が祀られている本殿です。1つの社殿に一柱のご神体を祀り、人が入ることを前提にせず、外からは見えない造りとなっています。その屋根は檜皮(ひわだ)葺きや柿(こけら)葺き、茅葺きが基本で、建物は高床式の板張りになっているのも特徴。
<出典:写真AC>
本殿の手前に神への捧げ物を奉る幣殿があり、さらに手前には祭祀や礼拝を行う拝殿があります。参拝客がお賽銭を入れて礼拝するのは、この拝殿なのです。
このほか神社には、神楽や舞を奉納する神楽殿や舞殿、規模の小さな社である摂社や末社、神職や巫女(みこ)のいる社務所などがあります。また、神聖な場所を他と区切る注連縄(しめなわ)も、神社を象徴する飾りです。
お寺の施設の特徴
お寺を象徴するのは、伽藍(がらん)と呼ばれる建物群。時代や宗派によってその伽藍配置は異なり、たとえば奈良なら、法隆寺と薬師寺、東大寺は、伽藍配置がまったく異なるお寺となっています。
そんなお寺の入口に建つのが山門で、その両側には阿吽(あうん)の姿をした金剛力士像があることも。
<出典:写真AC>
参道を抜けると、ご本尊の仏像を安置する本堂が建っています。金堂や仏殿とも呼ばれ、お寺の中心となる建物です。さらに、仏陀の遺骨である仏舎利や遺物の一部を安置する仏塔は、五重塔や三重塔、多宝塔などとして建っています。このほかお寺には、説法を行う講堂、書物や経典を収める経蔵、梵鐘が吊された鐘楼、僧侶が住む僧坊などがあります。
<出典:写真AC>
神社と大きく異なるのは、建物の屋根に瓦が使われていること。中国から伝わった仏教のお寺では、同じく大陸から伝わった瓦を使っているのです。神社に比べると、建物の数が多く、より勇壮なのがお寺の特徴といえるでしょう。
観光時のポイントや注意点
旅先に神社やお寺があったら、つい立ち寄りたくなりますよね。そんなとき、神社やお寺でどのような点に注目するといいのでしょうか。それぞれの観光時のポイントや注意点を解説します。
神社を観光するときのポイント
神社を訪れたら、その社殿だけでなく、周囲の自然を含めた景観を楽しみましょう。神道は自然崇拝から生まれたため、山や海、森など自然に近接して建つ神社が多いのです。たとえば、雄大な海に浮かぶ鳥居や林の中を抜ける参道、木漏れ日が降り注ぐ社殿など、有名な神社から知る人ぞ知る神社まで、そこはまさにパワースポット。自然の圧倒的な力を感じながら参拝すれば、身も心もすっきりと浄化されていくはずです。
<出典:写真AC>
参拝後は、ご朱印やお守りをいただくのもいいでしょう。最近では、個性豊かなご朱印や可愛いデザインのお守りをいただける神社も増えてきました。
どんな御朱印があるかについては「全国の御朱印特集」のページもご覧ください。
また、おみくじを引いて、吉凶を占ってみるのも楽しいもの。おみくじには神様からの言葉が書かれているので、できればそのまま持ち帰って、たまに読み返してみるのがおすすめです。
神社は観光スポットである前に、神様の住む聖なる場所。騒いだりはしゃいだりせず、神聖な雰囲気を乱すことがないよう、心を込めて静かに参拝しましょう。
お寺を観光するときのポイント
お寺を訪れたら、まずは勇壮な伽藍を楽しむのがポイントです。中国から伝わった仏教のお寺には、和様や大仏様、禅宗様といった、それぞれの時代の仏教建築が建っています。参拝客を迎え入れる山門、境内の中心に建つ巨大な本堂、美しく聳えている五重塔など、どれも見応えのある建物ばかり。また、回遊式庭園や浄土式庭園、枯山水といった庭園があることも多いので、仏教の世界をたっぷり味わいましょう。
<出典:写真AC>
お寺の観光では、仏像と対面することも忘れずに。仏像とは、「仏」の姿を映した彫刻のこと。悟りを開いた姿の如来像、悟りを求める姿の菩薩像のほか、睨みをきかせた顔をした明王像など、その種類は様々。静かに佇む仏像を眺めているだけで、気持ちが透き通っていくような感覚に包まれるはずです。
ただし、仏像を触ったり無断で写真を撮ったりすることは控えましょう。お寺は僧侶が暮らす修行の場なので、露出度の高い服装は避けるなど、節度を守って参拝することが大切です。
有名な神社やお寺は?
全国に神社は約8万1,000社、お寺は約7万7,000寺あると言われています。そこで、その中でも有名な神社やお寺をいくつか紹介します。
全国的に有名な神社の例
全国の神社の中で最大の聖域になっているのは、三重県にある皇室ゆかりの「伊勢神宮」。内宮(ないくう)と外宮(げくう)からなり、20年に1度社殿を造り替える式年遷宮でも知られる、日本人の心のふるさとです。
たくさんの神社がある京都府でとくに有名なのは、稲荷神社の総本社「伏見稲荷大社」。赤い鳥居がどこまでも続く千本鳥居の風景は、京都の象徴として今では世界的に知られています。
広島県の「厳島神社」は、海に浮かぶ赤い大鳥居で知られる神社。平清盛によって寝殿造りの社殿が整備された姿は、日本三景のひとつとして、またユネスコの世界遺産としても親しまれています。
<出典:写真AC>
学問の神様として有名なのは、福岡県の「太宰府天満宮」。菅原道真を祀る神社で、道真を慕って一夜にして飛んできたと伝えられる飛梅をはじめ、春には境内に梅の花が咲き誇ります。
一方、徳川家康を祀る神社が、栃木県の「日光東照宮」。絢爛豪華な陽明門のほか、見ざる・言わざる・聞かざるの三猿、眠り猫といった彫刻でも知られる、世界遺産にも登録されている神社です。
全国的に有名なお寺の例
全国に知られたお寺が多い京都府でも、別格の存在なのが「清水寺」。なかでも断崖に建つ本堂の舞台は、釘を1本も使わない懸造りで建てられ、日本の木造建築の美しさを象徴する圧巻の光景です。
同じく圧倒的な力を放つお寺が、奈良県にある「東大寺」。世界最大級の木造建築物である大仏殿には、奈良の大仏として知られる盧舎那仏像(るしゃなぶつぞう)が鎮座し、今も静かに日本を見守っています。
<出典:写真AC>
日本の首都・東京都で有名なお寺は、なんといっても「浅草寺」。浅草観音として知られ、赤い大提灯が吊された雷門や表参道の仲見世など、今も多くの参拝客で賑わうお寺です。
牛に引かれて......の例えでも知られているのは、長野県の「善光寺」。日本最古の仏像と伝わる一光三尊阿弥陀如来をご本尊とし、7年に1度行われる、ご本尊の身代わり・前立本尊のご開帳で親しまれています。
岩手県の「中尊寺」は、平泉の地に浄土を築くことを目指して建てられたお寺。世界遺産にも登録され、創建当初の姿を伝える金色堂(こんじきどう)は、今も金箔で黄金に輝いています。
日本の長い歴史とともに受け継がれてきた、神社とお寺。その違いを意識することなく観光で訪れる方も多いかもしれませんが、それぞれ宗教や参拝方法は異なっています。次の旅先で神社やお寺を訪れたとき、その違いを意識して観光することで、きっと新しく見えてくるものがあるはず。神社とお寺、それぞれの魅力をたっぷり味わって、日本の旅を楽しみましょう。
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