スイスの伝統料理、チーズフォンデュの世界

スイスで有名な食べ物、といえばチーズフォンデュやラクレットといったチーズ料理を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。

そのとおり、スイスにはチーズをふんだんに使った郷土料理がたくさんあります。特に冬の寒い時期には、チーズフォンデュなど体が芯まで暖まる料理がよく食されるのですが、日本でもこの時期は鍋料理が人気だったりしますので、それとよく似ていますね!

寒い時期に迎えるクリスマスや大晦日などでも、定番の年末料理として登場するチーズフォンデュ。今回は、そんなスイスのチーズフォンデュのお話です。

目次

スイスといえばチーズ料理

グリュイエールチーズ工場
<グリュイエールチーズ工場内のチーズ>

私が初めてスイスのチーズというものに出会ったのは、アニメ「アルプスの少女ハイジ」の中でですが、スイスへ移住してホンモノのスイスチーズに出会えた時は「本当にアニメに出てくるチーズと同じだ~!」と感激したものです(笑)

チーズフォンデュには、スイス北東部に位置するアッペンツェル地方で生産されるアッペンツェラーチーズや、西部フランス語圏フリブール州のグリュイエールチーズなどがよく使われているようです。

グリュイエール村
<グリュイエール村>

他には「ラクレット」というチーズ料理もあります。ラクレットはもともとスイス南部ヴァレー州(ヴァリス州)の郷土料理で、ラクレットチーズという巨大な丸いチーズを溶かした後、ジャガイモやピクルスの上にとろ~りとかけて一緒に食べるのですが、こちらもシンプルながら人気の伝統料理です。

日本とスイスのチーズフォンデュ、違いは?

チーズフォンデュ用チーズ
<チーズフォンデュ用チーズはスーパーなどで購入できます>

チーズフォンデュは日本でもメジャーになりつつあり、専門レストランも見かけるようになりました。スイスのチーズフォンデュは、フォンデュ用チーズを白ワインとともに「カクロン(Caquelon)」と呼ばれる鍋で溶かし、それが溶けたところで、細長いフォークに刺したパンや茹でたジャガイモをチーズにからめて食べます。

日本ではパンやジャガイモだけではなく、ブロッコリやニンジンといった野菜やソーセージなどの肉もフォンデュしたりしますが、スイス人の友人知人たちに言わせれば、それは"邪道"なのだそう(苦笑)

こってりチーズとパン・ジャガイモだけだと栄養がかたよりそう、なんて思われそうですが、スイスではサラダやサラミなどの干し肉、ピクルスを前菜として食べた後に、メインとしてチーズフォンデュをいただく――という流れが多いです。

前菜
<前菜の干し肉とサラミ、ピクルス>

ただ、家でチーズフォンデュを自分たちで作って食べる時は、周りにスイス人たちがいないことをいいことに、こっそり野菜や肉なども一緒にチーズフォンデュをしていることは、ここだけのナイショです(笑)

いろいろな場所で楽しめる、チーズフォンデュ1~列車で

チーズフォンデュの人気の理由の1つに、お手軽にどこでも食べられるというのがあります。私自身、スイスのスキーリゾートにありそうな山小屋でチーズフォンデュ、という印象が強かったのですが、スイスへ来てから実に様々な場所でチーズフォンデュを楽しんできました。 

例えば列車でのチーズフォンデュ。フリブール州のグリュイエール地方で運行している『チーズフォンデュ列車』なるものに乗ったことがあります。列車はレトロ風で、他のスイス鉄道のものとは明らかに異なるため、駅のプラットホームで見つけやすかったです。

駅を出発した後は、飲み物を飲みながらのんびり。家族で来ている人たち、カップルや友人グループで来ている人など色々でしたが、みんな楽しそう!

そろそろお腹が空いてきたなあ、と思い始めた頃、スタッフの方がチーズフォンデュ用のカクロンに白ワインとキルシュ酒を入れに来てくれました。さあ、いよいよフォンデュが来る!と思ったらなんと渡されたのはハサミとチーズの入った袋。

どうやら自分たちでチーズをカクロンに入れて溶かせ、ということらしい。袋の後ろに作り方が書いてあったので、それを読みつつチーズをカクロンに入れて混ぜる混ぜる!

できあがったフォンデュがテーブルに直接来るよりも自分たちで作る(というほどでもありませんが)フォンデュだったので、さらに美味しくいただけました。

チーズ
<列車内で配られたチーズをカクロンに入れているところ>

フォンデュ・トレイン(Train Fondue)

  • 出発地:Bulle(ビュール)駅7番線(変更になる場合もありますので、出発前念のためご確認を)
  • TEL:+41 26 913 05 12
  • mail: train-retro(at)tpf.ch
  • 料金:おとな 53.9スイスフラン /こども(7歳~12歳)33.9スイスフラン/6歳以下無料(食事なし)
  • 日時・出発時間:2023年1月初め~4月末まで。出発日時の詳細は以下のホームページや予約ページでご確認ください。所要時間は約3時間。
  • 公式サイト:Train Fondue(仏語)
  • 予約ページ:Train Fondue 予約ページ (仏語)

他の地域でもチーズフォンデュ列車は多くありますので、滞在先のツーリストインフォメーションなどに問い合わせてみてくださいね。

いろいろな場所で楽しめる、チーズフォンデュ2~ゴンドラで

レストラン
<古いゴンドラが並ぶレストランのテラス>

また、スキー場でおなじみのゴンドラでチーズフォンデュを食べたこともあります。

特にコロナ禍の頃は、安全に屋外で飲食でき寒さに凍えることがないうえ、ユニークということでスキー場から引退した古いゴンドラを設置するレストランが増えました。

ゴンドラ
<ゴンドラの内部はこんな感じ>

ゴンドラの中は何だか"秘密基地"っぽい雰囲気があり、周りに人がいないので気兼ねなくいろいろな話ができて面白かったです。 ただ2人だとちょうど良い広さですが、4人ぐらいになると多少窮屈でした。

あとは、椅子がベンチ(毛皮は敷いてあります)のため、長時間座っているとお尻が痛くなります。暖房がよく効いていたゴンドラや、コートなしでは寒いゴンドラまでレストランによって様々でした。とはいえ寒いゴンドラでも、チーズフォンデュの熱ですぐ暖かくなりましたけどね。

いろいろな場所で楽しめる、チーズフォンデュ3~雪の家「イグルー」で

私にとって一番印象が強かったのは、雪の家「イグルー」で食べたチーズフォンデュ体験でしょうか。
 
イグルーといえば、カナダ・アメリカ北部のイヌイットの人たちが住んでいる雪でできた家ですが、そこでチーズフォンデュやバーでお酒が楽しめる場所が、スイスにもいくつかあるのです。

ダボス(Davos)やツェルマット(Zermatt)、エンゲルベルク(Engelberg)、グシュタード(Gstaad)といった冬のリゾート地にあるイグルー村が有名ですが、私が行ったのはシュトックホルン(Stockhorn)というベルン州にある山。

シュトックホルンにあるイグルー村は1,600mほどの標高の場所にあるので、夕暮れのケーブルカーに乗り込みたどり着くと、突然冷凍室にいるかのような寒さを感じました。

ケーブルカー駅で待ってくださっていたガイドさんに引率され雪の中を歩いていくと、氷が張った湖で釣りをしている人々の姿が見えました。

イグルー
<イグルー内でくつろぐお客さんたち>

雪の家イグルーへ到着すると、スパイス入りホットワインとスナック菓子がふるまわれました。イグルーの内部には彫刻があったり、氷でできたバーがあったりと本格的。小さな"かまくら"みたいなのものを想像して来たのですが、本当に「雪の家」!

チーズフォンデュは食べ放題でしたが、すぐお腹いっぱいになってしまい、とてもおかわりなんてできませんでした。他のテーブルではおかわりをしている猛者が結構いたようでしたが......(さすがスイス人!)。

チーズフォンデュ
<イグルー内は以外に暖かい!チーズフォンデュでさらに温まります>

食事後は日がとっぷり暮れた雪山の中を歩き回ってカロリー消費に努めました(笑)空を見上げると、降り注ぎそうなほどに星たちが夜空に広がっていました。

イグルー
<イグルー内のバーカウンター>

ほかにもまだある、こんなチーズフォンデュ体験

さきほどご紹介した列車やゴンドラ、イグルーでのチーズフォンデュ体験のほか、クルーズ船や路面電車、馬車など、スイスでは本当に色々な場所でチーズフォンデュが楽しめてしまいます。

またチーズフォンデュは一種類ではありません。ヤギのチーズでできたフォンデュ、ハーブ入りやトリュフ入りはもちろん、マッシュルームやトマトが混ざったヘルシーそうなチーズフォンデュもよく見かけます。

スイス中央部に位置するルツェルン(Luzern)を訪れた時に行ったレストランには、なんと100種類のチーズフォンデュがあり驚きました。結局普通のチーズフォンデュを選んでしまいましたが、ワサビ入りやマスタード入り、フルーツ入りフォンデュなど気になるチーズフォンデュがたくさんあったので、挑戦したい方はぜひ!

ツンフトハウスレストラン フィステルン(Zunfthausrestaurant Pfistern)

  • 住所:Kornmarkt 4, CH-6004 Luzern, Switzerland
  • 電話:+41 41 410 36 50
  • 営業時間:月曜日~土曜日 9:00~0:00/日曜日 9:00~23:00
  • 公式サイト:Zunfthausrestaurant Pfistern(英語)

レストラン
<レストラン前のテラス席がキラキラで素敵でした>

まとめ

スイスで暮らすようになって、素朴でシンプルに見えるチーズフォンデュって実は奥が深いんだな、と思うようになりました。スイスへいらした時は、ご自分のお気に入りも見つけてみてはいかがでしょうか。

また、スイスのチーズはこってり重いため、食べ過ぎるとお腹をこわす人もいるようです(私もそうです)。そのためお腹の調子に不安がある方は、食べる量にご注意を!温かいミントティーなどを飲みつつ、本場のチーズフォンデュをエンジョイしてくださいね。

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小島瑞生

1998年~2009年まで暮らしたアイルランドから、2009年スイスへ移住。面白そうなコト・モノを求め、スイス国内や欧州の国々をウロウロしながら、雑誌やウェブサイト、ラジオ等のメディアに様々な情報を発信中。趣味は旅行とハープ&ピアノ演奏。

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