JR釧網本線を使って道東・川湯温泉と釧路湿原の見どころを紹介します!

釧路湿原

北海道の道東地方、釧路から網走までJR釧網本線が通っています。その路線沿いには温泉ファンが一目置くほどの湯量と泉質の良さを誇る名湯・川湯温泉と、総面積が220.7平方kmにも及ぶ広大な釧路湿原があります。

今回は釧路から釧路湿原沿いに列車に乗り、川湯温泉で1泊、帰りに釧路湿原の細岡展望台から湿原の絶景を眺めた後、観光列車のノロッコ号で釧路に戻るまでの行程を旅しました。それぞれの見どころを紹介します。

目次

釧路駅から釧網本線で川湯温泉へ

釧路駅

釧網本線(せんもうほんせん)は、釧路から一駅先の東釧路駅から網走駅を結ぶ総延長距離116.2kmある、JR北海道の路線です。1931(昭和6)年に全線が開通した非電化単線です。

起点はあくまで東釧路駅ですが、実質的な起点は釧路駅で釧路駅から出発する列車に乗ります。この日はちょうど釧網本線の中間点近くにあたる川湯温泉まで乗り込みました。

列車

釧路駅から東釧路駅を過ぎると、いよいよ釧網本線のスタートです。最初に釧路湿原の中を列車は走っていきました。釧路湿原については翌日じっくり見る事にしていますが、それでも路線上を走る列車からの緑の湿原地帯は一見の価値があります。

湿原内には釧路川が流れていますが、毛細血管のように支流があり、その一部は達古武沼(たっこぶこ)や塘路湖(とうろこ)などいくつかの湖沼とつながっています。列車はその間を通過していくので、一瞬ですがそれらの湖沼の様子がうかがえます。

JR釧網本線

やがて湿原地帯を抜けていくと風景ががらりと変わり、高い木々で覆われた森の中を列車が走って行くようになりました。森が途絶えたときも湿原とは違う広大な大地を車窓から眺めつつ列車は走っていきます。

摩周駅を越えると、東側に摩周湖、西側に屈斜路湖があるところに差し掛かりました。ふたつの湖のちょうど間に挟まれるように川湯温泉があります。

川湯温泉

釧路駅から90分ほどで川湯温泉駅に到着しました。川湯温泉駅から川湯温泉の中心部まで少し離れており、そこまではバスに乗る必要があります。本数が限られている列車とバスとは連絡しているので、乗り遅れないようにしましょう。

川湯温泉の魅力1:日本屈指の湯治宿

連絡バス

川湯温泉駅からは連絡バスが待っています。バスに乗り遅れると歩いて温泉地までは行けますが、30分以上かかります。バスに乗るとすぐに森の中に入りますが、森のすぐ横には川湯温泉の源泉でもある硫黄山(アトサヌプリ)があります。

この火山は活火山で、1,500以上もの火山ガスや水蒸気を出す噴気孔があります。この火山を源泉としたお湯が川のように流れていることから川湯温泉と名付けられました。

ホテル開紘

バスは15分ほどで川湯温泉の中心部に到着。温泉街の中心に湯気が立ち込めたままの温泉川が流れており、その周辺にホテルや旅館があります。その中心部よりも北西に位置し、屈斜路湖方面に道が続いている温泉地の外れにホテル開紘があります。

ホテル開紘は、ホテルとありますが実質的には湯治宿。一説では日本で五本の指に入るほど有名な湯治宿とも言われています。湯治宿らしく連泊するとお得なシステムとなっていて、1泊なら6,300円ですが、2泊4食で9,500円、3泊6食で12,000円となっています。

ホテル開紘

ホテルは通年営業しているので雪の多い時期でも宿泊ができるのがうれしいところ。ロビーには年代物の調度品が所狭しと置かれています。

客室は23室で100人収容可能です。この日宿泊したのは、2階の部屋で広々とした和室でした。すぐ隣に共同のトイレと洗面があったので非常に便利。食事は部屋食となっていました。

浴室

開紘の浴室は1階にあります。お世辞でも綺麗とは言えない浴槽ですが、中にある湯は源泉から直接引いており、もちろんかけ流しの非常にレベルの高い湯です。温泉通もうなる湯は、24時間自由に入れるようになっています。

湯そのものは無色透明ですが、硫黄、鉄、硫酸塩、塩化物を多量に含む強酸性の温泉です。あまりにも気持ちが良かったので夜と朝の2回入りました。

川湯温泉の魅力2:運が良ければ間近で見られる花火大会

夜

普段は山に囲まれた静かな川湯温泉でしたが、この日の夜は特別でした。コロナ禍に負けずに頑張るという意味で、花火大会が行われると聞いたのです。大まかな場所はネットで確認していたので、始まる15分前に宿を出て花火会場の近くに向かいました。

ただすでに暗い時間帯で、温泉地の中心以外は周りが森に囲まれたような場所、外灯もなく歩くのは慎重になりました。夜に散歩するときは、温泉街の中心のみにとどめておいた方が無難です。

花火

花火会場は、弟子屈町立川湯小学校のあたりだと聞き、ホテルからは大鵬通りをあるいて学校尾の近くまで行くと、ちょうど花火が打ちあがる時間になり、大きな音と同時に大輪の花火が打ちあがりました。

花火大会は全国にあり何度も見たことがありますが、大抵は人が多く少し離れたところが打ち上げ場所。しかし川湯温泉の花火大会は、本当にすぐ近くから見られます。耳に響く大きな音と大きな花火の光の輪が目の前に広がりました。

花火

花火大会はおおよそ30分くらい続きました。特に何のアナウンスもなくいきなり始まった感じで、そのまま終わるまで見続けました。終わったときも特に何もなく、しばらく待っていて花火がこれ以上上がらないのを見届けました。

川の温泉のほとり

帰りは少し遠回りですが、温泉街の中心部を経由して帰りました。温泉街は大小旅館が立ち並んでいるエリアで、こちらは外灯もあります。途中温泉が流れている川湯に架かる橋を渡りました。常に湯気を出している川の温泉のほとりに立ち寄ってみると、うっすらと温泉の香りが立ち込めてきました。

川湯温泉の魅力3:湯煙でゆったり過ごす足湯

案内板

翌日は早朝に起きて、宿から5分くらいのところにある足湯に行ってみました。川湯温泉の足湯は24時間自由に無料で入れます。泉質は低張性酸性高温泉(酸性明ばん緑ばん泉)です。

足湯

場所は温泉が流れている川湯からお湯を引いているようです。ちょっと小雨交じりの天気でしたが、東屋になっているので、雨は気にせずに入れます。ただし、温泉の影響で滑りやすくなっているので注意しましょう。

足湯

足湯の場所はしっかりと整備されており、人工的な石に覆われ、木の椅子に腰かけて足をつけてみました。川の水と混じって流れているはずですが、十分熱いです。ただやけどするほど高温ではないので、比較的長時間味をつけていることができます。

足湯

足だけをつけていましたが、2・3分で全身に熱が伝わるのがかわかります。10分近く足湯に入っていましたが、全身の血行が良くなった気がします。

そのまま足湯のすぐ横で流れている川湯の様子を見ました。常に湯気を立てており、温泉成分の影響か川底が青っぽく変色しています。あらためて川湯温泉の泉質の高さを知ることができました。

川湯温泉の魅力4:川湯ビジターセンターや大鵬相撲記念館など見どころ満載

川湯の森案内

足湯の後1時間ほど温泉街を歩いてみることにしました。川湯温泉の温泉街は1時間もあれば十分回れます。最初に川湯ビジターセンターのある川湯の森に入ってみました。ここは足湯のある場所のすぐ近くにあります。

川湯ビジターセンター

川湯ビジターセンターは、もともとはエコミュージアムセンターという名前でした。ここは自然と人を結ぶ「もりのパレット」をコンセプトにした施設で、川湯温泉の自然や歴史、見どころがわかりやすく紹介している設備です。

館内には紹介する資料展示のほか、コーヒーショップがあり一息付けます。さらに訪問時には間でありませんでしたが、2022年12月にはショップがオープンしました。川湯温泉に次に行くことがあればまた訪れたい施設です。

大鵬相撲記念館

川湯の森を歩いていくと温泉街があり、その先にはもうひとつ気になる施設が見えてきました。それは大鵬相撲記念館です。

大鵬相撲記念館は、川湯温泉で少年時代を過ごした第48代横綱大鵬ための記念館です。大鵬は32回の優勝をはじめ、45連勝をとげたり、6場所連続優勝を2回遂げるなど、相撲界の偉人のひとりです。

大鵬相撲記念館

正面入り口にある大鵬の像をはじめ、館内には少年時代から相撲界への入門時代、横綱時代と貴重な品の数々が展示しています。鉄砲柱や大鵬ゆかりの相撲甚句、当時の番付表や化粧回し、相撲ミニやぐらなど、相撲ファンでなくても見る価値の高い資料が並んでいます。

釧路湿原の魅力1:情報が満載!細岡ビジターズラウンジ

釧路温泉駅

川湯温泉から釧路湿原に向かいました。釧路湿原は非常に大きく、いくつかのビューポイントがあります。その中でも最もオーソドックスな細岡展望台を目指しました。この展望台は公共交通で行く場合最も行きやすい場所です。

こうして川湯温泉駅から、釧路湿原駅に向かいます。なお一駅手前に細岡駅がありますが、ここではありませんので注意しましょう。

細岡ビジターズラウンジへの道

釧路湿原駅は1988(昭和63)年に臨時駅として開業しましたが、1996(平成8)年に常設駅となりました。釧路湿原の観光用のために作られた駅で、ログハウス風の駅からは上に上がる階段が続き、その上には細岡ビジターズラウンジがあります。

ちなみに細岡の名前の由来ですが、元々は隣の細岡駅から付けられたもので、これにはふたつの説があるそうです。ひとつは釧路川の左岸に細い丘が連なっているという説、もうひとつは鉄道建設の際に担当した監督官が細岡さんだったという説です。

細岡ビジターズラウンジ

細岡ビジターズラウンジは、細岡展望台のすぐ近くにある施設で、釧路高原駅からは階段を上って20分くらいのところにあります。ここは展望台に来た人が気軽に過ごせるようになっていました。

館内には釧路湿原に関する情報があり、風景や花々の写真が飾られています。最初に細岡展望台に行く前にも立ち寄りましたが、帰りも立ち寄る程居心地の良い場所です。

細岡ビジターズラウンジ

館内の真ん中には暖炉があり、室内は非常に温かいです。喫茶のコーナーがあり、温かいコーヒーで一息つけます。またお土産コーナーも必見。スタッフが常駐しており釧路高原のガイドをしてくれたり荷物を預かってくれたりもしてくれます。

釧路湿原の魅力2:細岡展望台からの絶景

細岡展望台

釧路湿原にはふたつの展望台があります。ビジターセンターの近くにあるのは第一展望台です。こちらからも釧路湿原の様子が見られ、主にスケッチに向いているスポットです。

湿原の絶景をもっともよく見渡せる細岡展望台(第二展望台・大観望)はその先にあります。

釧路湿原国立公園

細岡展望台は道路からさらに突き出たところにあり、180度以上の絶景が広がっています。緑の芝生に覆われたような釧路川が蛇行している様子がはっきりとわかり、遠くには湿原の反対側の陸地が山のように見えます。その先には雌・雄阿寒岳が見渡せます。

景色

訪問したときはやや曇りがちの午前中でしたので、遠くの山々はかすかに見える程度、天気が良ければ夕日がとても綺麗なスポットです。

また説明板によると4000年くらい前までは海が広がっていた場所で、海水が引いた後に湿原に変わったそうです。

釧路湿原

釧路湿原の価値が評価されたのは20世紀の後半以降で、1980年にラムサール条約で中心部の7863ヘクタールが日本初の登録湿地になった事を受け、1987年にさらに広範囲の2万8788haが釧路湿原国立公園になりました。

釧路湿原駅からくしろ湿原ノロッコ号に乗車

釧路湿原駅

釧路湿原の見学の後、釧路湿原駅に戻りました。ここからは観光列車のくしろ湿原ノロッコ号に乗るためです。ノロッコ号は4月から10月の期間限定で運行されている列車で、車ではいけない釧路湿原の風景が堪能できるように運行されているものです。

くしろ湿原ノロッコ号

ノロッコ号は4両編成で運行されています。通常の釧網本線はワンマンの1両編成が多いなか、ディーゼル機関車にけん引された4両編成の客車で編成されており、車掌とガイドが乗車しています。

1日2往復しており、1両だけ通常車両の自由席がありますが、観光客で人気が高い展望車両はすべて指定席です。そのためあらかじめ予約しておくのが無難。今回は数日前に予約しておきました。

くしろ湿原ノロッコ号

自由席以外の展望車は通路を挟んで真ん中にテーブルがあるボックス席と、窓方向に席が並んでいるベンチシート席があります。なお湿原の様子を見る場合、釧路方面のに向かう場合は右側になるボックス席です。

くしろ湿原ノロッコ号

釧路湿原駅を動き出した列車はガイドによる案内があるので、見どころが一目瞭然です。ただ観光客が多く団体客旅行でも使われているので、訪問時期の中でも最も人混みが多かったです。

釧路湿原の魅力3:車窓から見えた岩保木水門

車窓から見える景色

釧路湿原駅から釧路方面での見どころといえば岩保木水門(いわぼっきすいもん)にあたります。これは釧路川にある水門でこの水門より北側に湿原が広がっているからです。

岩保木水門

岩保木水門は、湿原方面から流れてくる釧路川をコントロールする目的で作られました。1920年に釧路市街が洪水で1週間以上も水没する事態になります。そこで釧路川とは別に新釧路川を掘削します。水門は旧釧路川と新釧路川との分岐点に1931年に設けられました。

車窓

ただし現在列車から見える水門は1990年年に竣工した新水門で、旧水門のある分岐点よりも旧釧路川寄りに設置されています。旧水門は木造の水門として建造物だけが史跡として残っていますが、残念ながら列車の車窓からは見えません。

くしろ湿原ノロッコ号

岩保木水門を越えると釧網本線は釧路湿原から出て風景が大幅に変わります。やがて町が見えてくるとくしろ湿原ノロッコ号は東釧路駅に到着し、そのまま釧路駅に向かいます。釧路駅に到着したところで、今回の旅は終わりました。

川湯温泉と釧路湿原は大自然が堪能できる二大観光地

細岡展望台案内図

道東にある川湯温泉と釧路湿原は、火山の活動による温泉と、広大な湿原地帯という大自然が堪能できる二大観光地です。車でアクセスする方が便利通いですが、釧網本線を使うと、車では入れない湿原の内部を見学できます。

また川湯温泉もしっかりと時刻表を元に計画を立てれば公共交通でも十分楽しめる場所。広大な北海道をローカル線の乗って旅をしてみましょう。

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万代正平

旅行が好きな旅人。日本国内は、北海道の網走、道東周辺から沖縄の八重山諸島・与那国島まで47都道府県すべて行ったことがあります。2020年2月までは毎年東南アジアに渡航しており、東南アジア10か国すべて訪問しました。海外では他にヨーロッパ(英国、ベルギー、アイルランド)アメリカ、中国、香港、マカオ、台湾、韓国への渡航経験があります。2020年春以降は、主に国内の旅行を中心に活動しています。

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