カタールの魅力&見どころを現地取材! ワールドカップのエピソードも

カタール

日本代表の活躍で、ひときわ注目を集めたサッカーワールドカップ・カタール大会。これまで馴染みの薄かったカタールという国に、ちょっと興味が湧いた人も多いのではないでしょうか。

この記事では、ワールドカップ観戦と合わせて、カタール各地を現地取材してきた筆者が、その魅力や見どころを徹底紹介。現地へ行ったからこそわかる情報を、いっぱい詰め込みました。知られざるワールドカップのエピソードも一緒に紹介します。

目次

<1. カタールってどんな国なの?>

<2. カタールの魅力はここにある!>

<3. カタールの見どころはここ!首都ドーハ編>

<4. カタールの見どころはここ!ドーハ近郊編>

<5. カタールの旅で気をつけたいことは?>

<6. カタールワールドカップ!実際どんな感じだった?>

1. カタールってどんな国なの?

サッカーワールドカップの成功で、新たな旅先としても注目のカタール。まずはカタールの概略について、さくっと紹介します。

カタール 海

カタールは、中東のペルシャ湾に面した小さな国。秋田県よりやや狭い面積に、約260万人の人々が暮らします。その人口の1割ほどがカタール人で、9割ほどは南アジアや北アフリカなどからの移民。石油や天然ガス資源を背景に、近年めまぐるしい経済発展を遂げ、世界屈指の裕福な国になりました。広大な砂漠が広がる一方、首都ドーハには高層ビルが建ち並び、未来へ向けて日々変化している国です。

成田空港からは、ドーハのハマド国際空港まで、カタール航空で約12時間。公用語はアラビア語ですが、英語も広く通用するので、旅行で困ることはあまりないはず。イスラム教徒の国民が多く、街角でも静かに礼拝する人の姿を見かけるなど、イスラム文化が根付いた国となっています。

カタール 路面店

カタールを旅するベストシーズンは、11月~4月。1年を通して気温の高いカタールですが、この時期なら比較的穏やかな気候になります。一方、7月~8月は気温が50度近くまで上がることもあるので、できれば避けたい季節です。

治安も良く、旅しやすい国となったカタール。中東の新たな旅先として、さらに注目度は高まっていくことでしょう。

2. カタールの魅力はここにある!

さて、旅先としてのカタールの魅力って、いったい何なのでしょうか? そこで、現地取材したからこそわかった、カタールならではの魅力を3つ紹介します。

実は多彩な見どころがある国

カタールというと、これといった見どころがなさそうなイメージを持っている人も多いのでは? でも実はカタールは、意外と多彩な見どころがある、中東の宝石箱のような国なのです。

ドーハ 海岸線

近代的な首都ドーハには、洗練された美術館や夜景の美しい海岸線がある一方、伝統的な市場・スークや威厳に満ちたイスラム教のモスクもあります。さらに足を延ばせば、迷路のような風情溢れる町並みに、SFの世界のような新しい計画都市も。小さな国の中に、過去と未来が隣り合い、それらが美しいコントラストを見せるのが、カタールの魅力。これまで馴染みの薄い国だったからこそ、思いがけない発見も多く、知られざる面白さに次々と出会える国です。

ドーハメトロでどこへでも

中東の国へ行ってみたいけど、旅の難易度が高そう......。そんな人にこそ、コンパクトなエリアに見どころが詰まったカタールは、ぴったりの国。その旅の快適さを支えているのは、日本製の鉄道車両が走る「ドーハメトロ」です。

ドーハメトロ

2019年に開通したドーハメトロは、全自動運転の地下鉄。3路線が運行中で、ハマド国際空港やドーハ各地はもちろん、近郊のアル=ワクラやルサイルへも延びています。面積が小さい国なことに加え、主な見どころへはドーハメトロ1本で行けるので、どこへ行くにも気軽に足を延ばすことができるはず。中東のオリエンタルな雰囲気と旅の快適さが同居しているのも、カタールならではの魅力なのです。

世界中の美味しいグルメの数々

カタール料理といっても、すぐに思い浮かばないかもしれません。それもそのはず、移民の多いカタールでは、中東各国のアラブ料理をはじめ、インド料理など、いろいろな料理が親しまれているのです。

アラブ料理

カタールらしい料理を味わいたいなら、アラブ料理のお店へ。ひよこ豆のペースト・フムス、鶏肉や羊肉の串焼き・ケバブ、スパイスを使った炊き込みご飯・ビリヤニなどが定番。リーズナブルに食べたいなら、インド料理やパキスタン料理などのお店がおすすめ。ちょっとリッチな食事なら、フレンチやイタリアンのお店もあります。世界中の美味しいグルメが味わえるのは、様々な国の人が暮らし、豊かに発展を続けるカタールだからこそです。

3. カタールの見どころはここ!首都ドーハ編

小さな国でありながら、多彩な見どころがあるカタール。現地取材した筆者が、ここだけは行ってほしい!と自信を持っておすすめできるスポットを10ヶ所選びました。まずは、首都ドーハにある5つのおすすめスポットを紹介します。

スーク・ワキーフ

ドーハを訪れたらまず足を運びたいのが、中心部にある市場、スーク・ワキーフ。地元の人と観光客が行き交う、ドーハで最も賑わう場所となっています。

アーケードの路地

レストランやカフェが並ぶ表通りも楽しいですが、アーケードの路地へと入ってみて。狭い空間にいくつもの店が軒を連ね、魅惑的なランプの灯りに、漂ってくるスパイスの香りと、そこはもうアラビアンナイトの世界。色鮮やかな民族衣装、ゴージャスに輝く貴金属、芳しい香りを放つ香水など、あらゆる物を売る店に出会えます。お土産探しはもちろん、路地を散策するだけで楽しいスポット。日中は閉まっている店が多いので、市場が活気付く夕方から夜にかけて訪れるのがいいでしょう。

コーニッシュ

古くからの港町であり、発展を続ける近代都市でもあるドーハを象徴するのが、海岸通りのコーニッシュ。ドーハ湾の向こうに高層ビルが建ち並ぶ風景は、写真撮影にもぴったりです。

ドーハ 夜景

とくにおすすめなのが、真珠記念碑の辺りから見る風景。青空の下にドーハ湾が輝く昼間はもちろん、夕暮れどき、高層ビル群に色とりどりのネオンが煌めき始める光景は、思わず心揺さぶられる美しさ。香港や上海にも似ていますが、溢れるような未来への活力はそれ以上です。コーニッシュでは、伝統的な木造帆船、ダウ船のクルーズに乗ってみるのもいいでしょう。船の上から眺めるドーハの風景は、ひときわ思い出深いものになるはずです。

イスラム美術館

ドーハのみならず、カタールという国のランドマークになっているのが、コーニッシュの人工島に建つイスラム美術館。ワールドカップ開催に合わせてリニューアルオープンし、さらに魅力的な美術館になりました。

イスラム美術館

中東各国をはじめ、世界各地から集められたイスラム芸術の品々を1000点以上も展示。豊かな文様の陶磁器、鮮やかに輝く宝飾品、意味ありげに光る武器など、深い知識がなくても感動できる展示品ばかり。なかでも、イランで収集された「青い猿の像」は必見です。イスラムの神秘に触れた後は、館内のカフェへ立ち寄るのがおすすめ。広い窓からはドーハ湾を一望し、美味しい中東グルメやスイーツをゆったり味わえます。

カタラ・カルチュラル・ヴィレッジ

ドーハ北部、カタラ地区にあるカタラ・カルチュラル・ヴィレッジは、文化施設やレストランが集まった、海辺の開発エリア。なかでも訪れたいのが、カタラ・モスクとカタラ・ビーチです。

カタラ・カルチュラル・ヴィレッジ

カタラ・モスクは、カタールで最も美しいと称えられるモスク。外観はイラン式で青いモザイクタイルが煌めき、内観はトルコ式で落ち着いた礼拝空間が神秘的に広がります。モスクを訪れた後は、歩いてカタラ・ビーチへ。湾の向こうに人工島、ザ・パール・カタールを望み、海岸では釣ったばかりの魚を干す光景が見られるなど、ローカルな風情に溢れています。ビーチに設けられた礼拝所で、人々が静かに礼拝する姿には、カタールの美を感じられるはずです。

ステート・グランド・モスク

カタール最大規模のモスク、ステート・グランド・モスクも、イスラム文化に触れるのに最適のスポット。礼拝の時間でなければ見学でき、スカーフや民族衣装も無料で貸してくれます。

ステート・グランド・モスク

3万人以上を収容する礼拝堂はまさに圧巻で、独特な形でそびえるミナレットに、繊細なアラベスク模様の扉など、伝統と新しさが美しく融合した空間。とくに、モスクの広大なテラスの向こうに高層ビル群が広がる風景は、ドーハならではの絶景です。夜のライトアップされたモスクも幻想的。異教徒も受け入れてくれる、イスラムの人々の温かさを感じるモスクです。

4. カタールの見どころはここ!ドーハ近郊編

続いて紹介するのは、ドーハ近郊にある5つのおすすめスポット。ドーハから少し足を延ばすだけで、さらに多彩な見どころに出会うことができます。いずれもドーハメトロや路線バス、タクシーでふらっと気軽に行けますよ。

アル=ワクラ

ドーハの南に位置するアル=ワクラは、ワールドカップで日本vsクロアチアのベスト8をかけた激闘が行われた都市。実はこのアル=ワクラ、まるで時が止まったような、カタール屈指の美しい町並みがある都市なのです。

アル=ワクラ

その町並みが広がるのは、海沿いにあるスーク・ワキーフと呼ばれる古いエリア。土色の壁をした家々に、昔ながらの商店やモスク、そして迷路のように入り組んだ細い路地......。アル=ワクラでは、自分の勘に任せて、路地から路地へと探索していくのがおすすめ。ワクワクしながら路地を抜け出れば、リゾート地を思わせる、青い海が広がるビーチへ辿り着きます。海沿いに並ぶレストランへ立ち寄って、美味しいシーフードを味わうのもいいでしょう。

カタール国立図書館

ドーハの西、大学や研究機関が集まるエデュケーション・シティで、ひときわ存在感を放って建つのがカタール国立図書館。中へ入った瞬間、思わず感嘆の声を上げてしまう、知られざる美しい図書館です。

カタール国立図書館

2017年に開館、まるで翼のような開放的な外観も見事ですが、階段状のテラスに真っ白な書棚が並ぶ内観も見惚れてしまう美しさ。太陽光が館内へ柔らかく差し込み、明るく清潔に満ちた空間を作り出しています。図書館の地下には、貴重な古書や地図などを展示するスペースも。また館内のレストランでは、落ち着いた雰囲気の中でパスタやサンドイッチを味わえます。誰でも自由に見学できるので、旅の合間に疲れを取るスポットとしても最適です。

ヴィラジオ・モール

新しく個性に溢れたショッピングモールが多いカタール。なかでも訪れてほしいのが、ドーハの西、スポーツ施設が集まるアスパイアゾーンにあるヴィラジオ・モールです。

ヴィラジオ・モール

ヴィラジオ・モールは、イタリア・ヴェネツィアの街並みを再現したショッピングモール。館内に美しい運河が流れ、本場と同じく船頭の漕ぐゴンドラに乗ることもできます。さらに屋内遊園地やスケートリンクもあり、テーマパークのような楽しい雰囲気。そしてヴィラジオ・モールの横には、ワールドカップで日本がドイツやスペインを破る歓喜の舞台となった、ハリーファ国際スタジアムも。日本にとって縁起の良いスポットなので、ぜひ立ち寄っていきましょう。

ルサイル

日々発展を続けるカタールの象徴と言えるのが、ドーハの北に位置する計画都市・ルサイル。ワールドカップのために開発され、やがては50万人近くの人々が住むとされる都市です。

ルサイル

ルサイルのシンボルは、黄金色に輝くルサイルスタジアム。カタール最大の8万人収容、ワールドカップでは決勝戦の舞台となり、この地でアルゼンチンが優勝を果たしました。また、新しいショッピング街を抜けると、目の前にそびえるのは4棟のルサイルプラザタワー。SFの世界から飛び出してきたような、近未来的な美しさは一見の価値あり。歩いているだけで、カタールの未来へのパワーを実感できる都市です。

アル・ズバラ考古遺跡

小さな国であるカタールにも、たったひとつだけユネスコの世界遺産があります。それがカタール北西部にある、アル・ズバラ考古遺跡。ドーハからタクシーで1時間強、やがて砂漠地帯の果てに、ぽつんと佇む美しい要塞が見えてきます。

アル・ズバラ考古遺跡

アル・ズバラは、クウェートの商人によって築かれ、18世紀~19世紀、交易や真珠産業の中心地として栄えた港町。その遺跡の中でも見どころなのが、砂漠にそびえるアル・ズバラ要塞です。らせん階段で要塞の上へと登れば、目の前に広がるのは茫漠と続くカタールの砂漠。厳しい自然で育まれた悠久の歴史を感じ、旅情に溢れた時間を過ごせるスポットです。

5. カタールの旅で気をつけたいことは?

比較的治安が良く、快適に旅を楽しめるカタールですが、イスラム文化ならではの習慣もあり、旅の注意点がいくつかあります。

カタール レストラン

まず、観光客であっても公共エリアでの飲酒は禁止されていることに注意。お酒を飲みたい場合、外国人向けのホテルやレストランを利用するようにしましょう。また服装は、ノースリーブやミニスカートなど、肌の露出度の高い服装は控えた方が無難。肩や膝などの露出を控えた服装を心掛けましょう。

そしてカタールは写真撮影の禁止場所が多いことにも気をつけて。警察官や軍人、それに関連した施設の撮影が禁止されているのはもちろん、モスクや建設現場なども無許可での撮影はしないように。さらに空港も撮影禁止の対象が多いので、カメラを構えるのは控えるようにしましょう。

またカタールは空気が乾燥しているだけでなく、砂漠から砂嵐の影響を受けることも多く、喉を痛めてしまうことがあるので、必要に応じてマスクや喉飴などを活用するのがおすすめ。屋内は冷房が強いので、どんな季節であっても上着を持参していくことも忘れないようにしましょう。

6. カタールワールドカップ!実際どんな感じだった?

中東で初めての開催となった、サッカーワールドカップ・カタール大会。日本代表の活躍も光った大会ですが、現地は実際どんな感じだったのでしょうか? 現地観戦した筆者が、「カタールらしさ」をキーワードに、印象的だった3つのエピソードを紹介します。

カタールの人々のおもてなし精神

スタジアムで、そして街中で、いつも感じていたのは、カタールの人々のおもてなし精神。ワールドカップを成功へと導いたのは、日々大会を支えてくれた彼らの存在でした。

カタール 街並み

なかでも印象に残っているのは、ボランティアの人々の頑張り。スタジアムで席の位置がわからないとき、あるいは地下鉄の駅を探して迷っているとき、自分から聞かなくとも、ボランティアの彼らがすぐに気づいて、親切に助けてくれることが何度もありました。きっと慣れない仕事でありながら、笑顔で楽しそうに出迎えてくれた彼らこそ、この大会の真のMVPだったような気がします。

もちろん、カタールにとっては初めて経験するビッグイベント。すべてがスムーズに進んだわけではありません。でも、世界中からのサポーターが心地良く旅できたのは、カタールの人々の力があったからこそ。一人ひとりのおもてなしの気持ちが、熱狂のワールドカップを作り出してくれたのです。

日本人サポーターへの温かなエール

日本代表の活躍とともに、カタールでは日本人サポーターへの注目度も高まりました。とくに嬉しかったのは、同じアジアの国として、日本を応援してくれるカタールの人々に多く出会えたことです。

国旗

日本vsスペイン戦を間近に控えた夜、スタジアムでオランダvsカタール戦を観戦したときのこと。カタールが敗れ、スタジアムにがっかりした雰囲気が漂う中、カタール人サポーターの若い男性にこんな言葉を掛けられ、思いがけず温かい気持ちになりました。

「きっと日本は、スペインに勝てると思う」

彼の予言は見事に当たり、日本は強豪スペインに劇的な勝利。そのスタジアムからの帰り道は、日本人サポーターにとって、カタールで最も幸せに包まれる夜になりました。世界各国からのサポーターはもちろん、カタールのボランティアの人々やただすれ違っただけの人々に、次々にお祝いの言葉を掛けてもらえることになったからです。日本おめでとう!と。

アラブ世界がひとつになった大会

ワールドカップは、国を背負って選手たちが戦う最高峰の大会。でも同時に、国を越えてサポーターたちがひとつになれる大会でもあることに、気づかせてくれた夜がありました。

カタール バス

アラブ諸国のチームとして、最後まで残ったモロッコ代表。そのモロッコがスペインに勝利し、ベスト8進出を決めた夜、ドーハの街はまさにお祭り騒ぎになりました。モロッコの国旗を振りながら歩く人々、鳴り止まない車のクラクション、交わされる笑顔とお祝いの声......。その喜びは、モロッコの人々だけのものではありませんでした。ワールドカップに出場できなかったヨルダンやリビア、アルジェリアから応援に来た人々、そして開催国カタールの人々も、同じアラブ諸国の活躍に、喜びを爆発させていたのです。

アラブ諸国には、いまだ紛争や内戦が続く国もあります。でも、アラブ世界がひとつになったその夜、ほんの少しだけ、未来への平和の片鱗が輝いたように見えました。

青空にそびえる高層ビル群に伝統的なスークやモスク、迷路のような町並みや砂漠の果ての世界遺産......。そこが小さな国とは思えないほど、カタールには多彩な魅力や見どころがあります。ワールドカップが成功し、中東の新たな旅先として注目のカタール。きっとこの国を訪れれば、ブラボー!と思わず叫びたくなるような旅が、あなたを待っているはずです。

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手塚 大貴

沢木耕太郎氏の『深夜特急』がきっかけで、アジアやヨーロッパ、南米など世界各地をひとり旅。オリンピックやサッカーワールドカップなど、スポーツ観戦の旅も好き。実は世界遺産検定マイスター。旅エッセイやコラムも得意としています。

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