【綾部市・福知山市】こんな時代だからこそ「もうひとつの京都」の価値が見える。テーマは「食」

朴葉味噌御膳

こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。

京都府の北部に「森の京都」と言われるエリアがあります。

その中に綾部市福地山市という街があります。

どんな所か、ご存知ですか?

「名前は聞いたことがあるけどよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。私もそのひとりでした。

さて話は変わりますが、あなたには、好きな歌手(アーティスト)はいますか?

その歌手のお気に入りのアルバムを思い浮かべてみてください。アルバムの中に、シングルカットはされていないのだけれど、どこか心惹かれる、お気に入りの曲ってありませんか?決して派手ではなくシングルになるほどのインパクトもない、でもなんとなく気になる曲。

綾部や福知山はそんな、アルバムの中にある小曲に似ていると思います。

今回はその綾部、福知山を「食」をテーマに探求します。

目次

森の京都とは?

山の恵みを受け、豊かな森とともに発展してきた、もうひとつの京都「森の京都」。山から湧き出す清らかな水と肥えた大地は、古くから京の都の繁栄を支え、長い年月をかけながら、人々の暮らしと地域文化を育んできました。農村ののどかな生活を彷彿とさせる里山の風景や、茅葺き屋根が美しい日本の原風景、受け継がれた知恵を活かし森の恵みを享受して生きる人々の姿。「森の京都」は、そういった自然とともにある日々の小さな感動を、もう一度大切にしたくなる場所かもしれません。(森の京都サイトより引用)

>>森の京都公式サイトはこちら

森の京都は福知山市、綾部市、京丹波町、南丹市、亀岡市、京北から成っています。(綾部市と福知山市は「海の京都」にも属しています。)

綾部市

綾部は京都府の北部に位置する田園都市です。

美しい自然環境や豊かな里山、平和と歴史、文化に彩られた市街地、ものづくり産業の集積、京阪神と日本海を結ぶ交通の要衝であることなど、地方小都市ながらさまざまな機能や特性が備わった街です。室町幕府初代将軍 足利尊氏生誕の地とも言われています。

近年移住者が増えており、農家民宿の数が京都府内で一番多い街です。

福知山市

福知山も京都府の北部に位置する都市です。

戦国時代、明智光秀が福知山城を築き、城下町を形成したと伝わります。古くは縄文時代から人が住んでいたと考えられており、交通の要衝として栄えてきた街です。福知山をひとことで言い表すとしたら「ほどよく街でほどよく田舎」で、近年移住者が増えています。「スイーツのまち」「肉のまち」「鉄道のまち」とも言われています。

それでは、綾部市、福知山市の「食」を探って参りましょう!

室町時代にタイムスリップ「御味噌庵 織りや」の朴葉味噌膳(綾部市)

「織りや」は、築約150年の古民家を利用した食事処です。

織りや
<織りやの外観>

どっしりと趣のある家屋です。綾部市には古民家がたくさんあるそうです。

メニュー

時代劇映画のワンシーンのような世界が広がります。

コンセプトはずばり「室町時代」

「ん? 室町時代だって?」

なぜ、室町時代なのか、織りやの女将さんで、空間プロデューサーでもある春山眞由美さんに伺いました。

織りやの女将 春山眞由美さん
<織りやの女将 春山眞由美さん>

春山さん「日本昔ばなしってあるでしょう?あの舞台は江戸時代じゃなく室町時代の物語が多いんですよ」

え~知りませんでした。桃太郎や浦島太郎、カチカチ山などは室町時代の物語が多いんですって。

また、春山さんのご実家は京都西陣織の織物屋さん。西陣という地名の由来は室町時代の「応仁の乱」の時、西の地に陣を張ったことからきているそう。店名の「織りや」はご実家の稼業を引き継いで命名されました。

上記ふたつの理由から、コンセプトを室町時代に定め、まるで彼の時代にタイムスリップしたような世界をここ綾部の地で表現したいと思ったそうです。

美術系大学を卒業し、有名広告代理店のデザイナーとして手腕を振るっていた春山さん。設えのあちこちにセンスが光ります。

店内の一角

色あいがいいですね。灯りの照度も素晴らしい。室町時代ってこんな感じだったかも、と思わせます。

展示品

まるで、歴史博物館の展示品を見ているかのよう。。。

空間

織りやを「単に食べる場所ではなく、居る時間を楽しむ場所にしたい、思わず写真を撮りたいと思うような空間にしたい。」それが春山さんの願いです。

食事をいただく母屋の裏(奥)には、室町時代の商店をイメージした場所があります。

室町時代の商店をイメージした場所

「へえ~っ室町時代のお店ってこんな感じだったんだ~。」思わず見入り、シャッターを切ります。

室町時代の商店をイメージした場所

京都市内でなく、綾部という田園地帯の中にあるからこそ、この風景が馴染むのかもしれません。

流行を追わない

春山さんが広告代理店でデザイナーとして華々しい活躍をしていた頃、仕事のやり方について、自身のめざす方向性とのずれに苦しんでいました。

世の中に、インパクトある話題を投げかけ、流行を創り出す。多くの人に知ってもらうことは嬉しいけれど、本当にそれが良いことなのだろうか。。。?

そして気づきました。

「流行ると、必ず廃れる」世の中が一時振り向いて有名になったとしても、その後続かなければ意味がない。使い捨てにされてしまう。

目の前の話題性や過激さに振り回されるのではなく、一歩ずつ確かに、価値を認めてくれるコアな人たちと文化を共に育てていきたい。

実際、織りやにはそういう春山さんの姿勢に共感する人たちが集まってくるそうです。

織りやの食事は基本的に予約制です。ひとつづつ無駄なく仕入れ、作り、供されます。お客さんのお店での滞在時間は長め。織りやに居る時間そのものが価値あるものになるのですね。

食事の間
<織りやの食事の間>

黒子

御膳を持ってきてくれるのはなんと黒子。まるでお芝居を観ているかのよう。世界観が徹底しています。

朴葉味噌御膳
<一番人気の朴葉味噌御膳3,300円>

味噌が朴葉の上で温められています。亀岡牛、えのき、人参、かぼちゃ、万願寺などにその味噌を付けていただきます。

味噌の焦げる匂いが香ばしく、食欲をそそります。

お米もおいしい。しっとりムチムチしています。お椀は粕汁です。酒粕の優しい甘みとコクが体に染みとおります。

味噌を温めている朴葉をちらっと上げてみると・・・

炭

コンロの中にはなんと炭が入っていました。こういうお膳では普通、蝋で作られた固形燃料が使われますが、いやさすがですね。

すべてにおいて「織りやの世界観」にこだわっています。

食べ物だけでなく「織りやで過ごす時間」が価値を創り出していました。

>>織りや公式サイトはこちら

楮(こうぞ)餅作り体験「すまいる工房あやべ」(綾部市)

綾部市は農家民宿が京都府で一番多いところです。

お客さんは農家民宿に泊まって何をするのでしょうか。その中のひとつが「●●作り体験」です。

今回、紙の原料である楮(こうぞ)を使ったお餅作り体験をしました。

綾部はブランド手漉き和紙「黒谷和紙」(京都府指定無形文化財)の産地でもあります。

和紙の原料は楮や、みつまたですが、綾部でも多くの楮を栽培しています。しかし和紙に使うのは楮の茎(樹皮)の部分であり、葉っぱは捨てられていました。

なんとか葉っぱも有効活用できないかと考え、生み出されたのが楮餅です。

綾部市の中上林(なかかんばやし)地区にある村おこし研修館に於いて「すまいる工房あやべ」の力をお借りして体験しました。

里山
<日本の原風景を思わせる懐かしい里山が広がる中上林(なかかんばやし)地区>

すまいる工房あやべのお母さんたち

「村おこし体験館」ではすまいる工房あやべのお母さんたちが準備して待ってくださっていました。

すまいる工房あやべのお母さんたち

緑色に見えるのが楮の葉っぱです。

餅つき

ツアー参加者が順番にぺったんぺったんとお餅をついていきます。

餅

つきあがったお餅をちぎって丸めていきます。子どもの頃砂場で泥だんごを丸めたようにくるくると形作っていきます。ぷにょぷにょと柔らかく、赤ちゃんの肌みたいで気持ちよかったです。

ぜんざい

出来たお餅をそのまま醤油をつけて食べたり、ぜんざいにしていただきます。小豆は丹波大納言、大粒でほくほくじゅわ~の小豆です。つきたてのお餅はとっても美味しかったです。

楮はどんな味かというと、よもぎ餅のような草の香りがほんのりしましたが、味にクセはなく美味しくいただきました。

楮の葉っぱはカロチン、ビタミンA、ビタミンB1、カルシウムや鉄分、亜鉛などが豊富で昔から薬としても使われていたようです。体にも良く一石二鳥ですね。

田園風景

中上林は田園風景が広がる田舎で、観光地らしいものは何も見当たりません。

しかし「何もない」が売り(土地の魅力)になる、と綾部に移住を決めたのが、工忠(くちゅう)照幸さんです。

工忠さん
<餅つきのお手本を見せてくれる工忠さん>

工忠さんは、大阪府吹田市の出身。バックパッカーとして7年間で世界を2周した猛者。帰国後、ホテルマンや海外添乗員を経験し、37歳の時、綾部の上林地区へ移住。現在、旅行会社MATA TABIとしてツアー運営、各種体験プログラム企画運営、ゲストハウス「クチュール」経営、通訳案内士の資格も保有。

クチュールはフランス語で「仕立て」という意味。工忠さんがクチュールを経営する、というのも洒落ていますね。

すまいる工房あやべでの楮餅つき体験も工忠さんのコーディネイトでアレンジしていただきました。

工忠さんが移住先として綾部を選んだ理由は、これからの時代は「何もしない」が売り(魅力)になると思ったからです。

それを裏付けるエピソードをひとつ。

工忠さんは農家民宿を経営していて世界の旅人の嗜好に地域差があることがわかったそうです。

日本人、東南アジア、ヨーロッパにざっくり分けてみると、

  • 日本人は農業体験とか、モノづくり体験とか、田舎でできる体験を求めてくる人が多い
  • 東南アジアの人たちは、ハイキングとか川遊びとか自分たちで何かを見つけて遊ぶ人が多い
  • それに比べてヨーロッパの人たちは「何もしない」人が多いというのです

(上記は大まかな話で、もちろん志向は人それぞれです。すべての人がそう行動するということではありません)

例えば、中上林にやって来たフィンランド人は滞在中、木に吊るしたハンモックに揺られていたというのです。あとは宿の付近をぶらぶら歩いたりするだけ。

私たち日本人は旅行したら、何かしないともったいない、と思ってしまいます。することがないと退屈してしまう。

しかし、ヨーロッパの人たちからすると日本の田園風景がなによりの価値だと感じるんですね。その空間に身を置くことが旅の醍醐味であり価値であると。

日本は国土の約60%が森林です。これはアマゾンを擁するブラジルに肩を並べるほどです。日本は先進国の中では稀有な森林大国なのです。その価値を外国人は分かるのかもしれません。

この視点は、日本にいる私たち生き方に何らかの示唆を与えてくれそうです。

工忠さんが綾部に住んでみて感じたことは「綾部の人は外からの人にオープンな人が多いな」ということだったそうです。

田舎というと、閉鎖的で外からの人をなかなか受け入れないというイメージがありますが、綾部に移住者が増えているのには、そういう理由もあるのかもしれません。

田園風景

里山のイメージそのままの風景が広がります。

田園風景

子供の頃に見た「懐かしい田舎の風景」を思い出します。夏の夜にはホタルが舞うそうです。

>>工忠さんの里山ゲストハウス「クチュール」の公式サイトはこちら

>>工忠さんの旅行会社MATATABI公式サイトはこちら

>>すまいる工房あやべの情報はこちら

あやべグンゼスクエア(綾部市)

綾部市は、あのグンゼ発祥の地だったってこと、ご存知でしたか?

グンゼ(旧群是製紙)といえば、肌着やストッキングのメーカーというイメージが大きいですよね。

しかしグンゼは「一本の生糸づくり」から始まりました。

綾部の蚕糸業発展に捧げた創業者 波多野鶴吉氏の精神を継承しながら技術革新に挑み、現在では医療機器製造にも領域を広げ、人々に「ここちよさ」を提供し続けています。

綾部市には、グンゼスクエアという場所があり、グンゼの歴史を継承する「グンゼ博物苑」、地元の人々によって大事に育てられている綾部バラ園、綾部の特産品を買うことができる「あやべ特産館」の3つを楽しむことができます。(入場無料)

グンゼ博物苑

明治29年に創業したグンゼ株式会社の博物館。3つの蔵(創業館、現代蔵、未来蔵)から成り、創業時からの歩みを時系列に紹介しています。

グンゼ博物苑

グンゼ創業者である波多野 鶴吉は「事業の根本は人にあり」の信念の下、人材教育に熱心で「グンゼは表は工場、裏は学校」と言われていたそうです。
工場で働く人は養蚕農家の娘が多かったようですが「嫁にもらうならグンゼの娘をもらえ」と言われていたとか。

創業の精神は「人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる」その哲学と思いは地域に深く愛されていたようです。

グンゼ博物苑

綾部バラ園

綾部バラ園は2010年にオープン。約180名のボランティアが150種1,200本のバラを管理しています。モットーは「できる人ができることをできる範囲でやる」。シンボルは園内中央に咲く「アンネのバラ」。平和への願いを込めて植えられています。

アンネのバラ
<アンネのバラ>

アンネのバラとは

第二次大戦時、ナチスに捕えられ、強制収容所で15歳の命を失ったアンネ・フランク。

アンネのバラは、ベルギーのバラ育種家デル・フォルグ氏がアンネの死を悼み「アンネの形見のバラ」と命名した品種で、アンネの父オットー・フランク氏に贈られました。

1971年、綾部市出身の大槻武二氏が創設した「聖イエス会」合唱団が海外演奏旅行に出かけた際、教会で演奏を聴いていたオットー氏から声をかけられ、それ以来交流が深まってアンネのバラの苗木が日本に贈られました。その苗木の内の1本が綾部で増殖され、今も「愛と平和の使徒」として愛されています。

綾部バラ園

バラの楽しみ方として「自分がお気に入りのバラを見つけると良い」と教えてもらいました。

そこで私が気に入ったバラがこちらです。

バラ

存在感ある真っ赤な姿の良いバラ。「私のお気に入りのバラはこれだ!」と決めると不思議と愛着が生まれます。

訪れた時はバラの最盛期ではありませんでしたので、一面に咲き誇るという感じではありませんでしたが、ボランティアの方々が大切に育てられている様子が感じられて、グンゼという企業が地元綾部で愛されていることが伝わりました。

あやべ特産館

綾部の特産品が豊富に揃っているショップです。野菜、お菓子、お酒、工芸品など綾部のお土産を買うならここがおすすめです。

あやべ特産館

館内にはカフェも併設しており、ひといき入れるにもおすすめの場所です。

あやべ特産館

>>あやべグンゼスクエアの公式サイトはこちら

おむすび懐石「料亭 ゆう月」(綾部市)

綾部での夕食は「おむすび懐石」をいただきました。

綾部でおむすび?なぜ?

日本人が愛する「ソウルフード」、それがおむすびです。米、具材、握り方はもちろんのこと、食べる場所、風景、食卓を囲む人の顔、さまざまな要素が絡み合うことで、おむすびには一期一会の物語が生まれます。(綾部市パンフレットより)

「日本のソウルフードおむすびをお米の美味しい綾部で食べていただこう!」と綾部市の約20軒のお店が、それぞれの持ち味を生かしたおむすびを提供しています。

綾部むすび、綾部のお米が美味しい理由

おむすびで握られるお米は綾部産米。水源の里が育む豊かな水と澄んだ空気、肥沃な土壌に恵まれ、美味しいお米が育ちます。「京のプレミアム米コンテスト」では綾部のコシヒカリが最高金賞を受賞しています。

綾部のお米が美味しい理由として以下の理由が挙げられます。

  • 昼夜の寒暖差が大きい
  • 由良川以外に大きい川がなく、お米の多くは山からの水で作られる

丹波地方は稲作発祥の地と言われています。砂地の土ではなく、米作りに適した粘土質の土で作られています。

お米や野菜など質の高い食材ができる為、綾部には料理旅館が多く、現在でも6店舗の料理旅館があります。

「なるほど、お米が美味しい綾部でおむすびを食べる、いいじゃないですか・・・ただおむすびですよね。遠足とかで食べる。。。料亭で食べるおむすびってどんな感じなんだろうね~」なんて思いながら「ゆう月」へ向かいました。

ゆう月へ通じる道は大型バスは通れない為、途中でワンボックス車に乗り換えて進みました。

そこでみた「ゆう月」さんは、まごうかたなき "料亭" でした。

まずは敷地内の池の写真をご覧ください。

夜景

わかるでしょうか。 夜景だからわかりにくいかもしれませんが、上下がほぼ対称に見えるのは、紅葉が湖面に映っているからです、鏡のように。

幻想的な世界に言葉を失いました。

ゆう月の敷地は1200坪。四季折々の姿を見せてくれます。夏にはホタルが舞うそうです。四季の中でも、特に冬は白い花が咲いたようでそれはそれは美しいそうです。春夏秋冬すべての季節に来なければなりませんね。

玄関

ゆう月の玄関です。

店内

食事

お庭を見ながら、優雅なおむすび懐石をいただきます。こちらが、いただいた「おむすび懐石」です。

おむすび懐石
<おむすび懐石4,000円>

ゆう月 おむすび懐石のメニュー

  • 秋の鮮魚のお造り
  • 牡蠣と万願寺のポン酢がけ
  • 合鴨ロースのすぐき菜添え
  • 美山湯葉の竈甲ジュレ掛け
  • 柿と菊菜の白和え
  • 零余子真丈 いが栗見立て毬揚げ
  • 鶏もも肉の柚庵焼き 花蓮根煎餅
  • 真鯛と大黒本しめじの東寺揚げ 青唐素揚げ 
  • 海老の茶碗蒸し 
  • 奥上林産こしひかりの塩おむすび
  • ちりめん山椒、大根の香味醤油漬け、梅肉、へしこフレーク、小畑味噌
  • 黒豆の和三盆のゆう月ロール、季節の果物の柑橘ジュレ

おむすびと侮るなかれ、この内容です。しかもこの内容で4,000円です。京都市内の料亭なら倍近くのお値段はするんじゃないでしょうか。。。

「京料理は五感で感じるもの」と言われるそうです。

四季折々で食材も、器も、お店に飾られるお花も、お庭の風景も変わる。おむすび懐石は1品ずつ供されたのですが、例えばデザートはこのように出てきます。

デザート

う~ん季節を感じますね。芸術作品を見ているようです。

京料理は季節ごとに訪れるのが良いと言われましたが、なるほどその通りだと思いました。

綾部に移住し「一汁一菜の宿ちゃぶダイニング」を経営しながら、ゆう月をお手伝いされている山根 顕さんに移住者の目線で「綾部の魅力」を伺いました。

山根さんが、移住先を綾部に決めた理由

  • 綾部の人たちがとても優しかった 
  • 田舎暮らしをしたいと思った
  • 事前に先輩移住者と知り合えて、綾部の良さがよくわかった
  • 移住に際し、最初は海沿いの町がいいなと思っていたが、綾部の里山と田んぼの景色が想像以上に良かった

料亭 ゆう月のおむすび懐石、美味しかったですね~。レベル高いです。コスパも良い。

最近、お米がすっかり悪者にされていますよね。糖質制限とかいって。サラリーマンランチも「ごはん半分で!」と言う人の多いこと多いこと。

私は食べますよ、お米を、おむすびを!お腹いっぱいいただきます。農家さんに美味しいお米をこれからも作り続けてもらいたいですから。。。

>>料亭 ゆう月の公式サイトはこちら

さて、綾部市の食はここまで。ここからは福知山の食をご紹介します。福知山は、スイーツのまち、肉のまちと言われています。人口8万人弱の都市ですが、全国的に有名なお店も多く、市を挙げてイベントを開催したり、店めぐりマップを作ったり、クーポンを発行したりと盛り上がっています。

丹波栗テリーヌ「足立音衛門」(福知山市)

足立音衛門(あだちおとえもん)は、西洋焼き菓子のお店です。

足立音衛門
<足立音衛門>

創業は平成3年と、歴史はまだ浅いですが、東京大阪にも進出し全国的にも知られています。

現在ではお店の代名詞となっている丹波栗テリーヌですが、丹波栗は収穫量がとても少なく、新参者ということもあって、創業当初はなかなか分けてもらえなかったそうです。

丹波栗の特徴は栗の粒が大きく、旨味、香りが芳醇なことです。足立音衛門は大正元年築の松村家住宅をお店として使用しています。

田原店長
<足立音衛門の田原店長>  

栗のテリーヌ「天」

こちらが看板商品のパウンドケーキ 栗のテリーヌ「天」。なんと11,880円!

丹波栗、讃岐和三盆、発酵ラヴィエットバターなどが惜しげもなく使われている最高級ケーキです。1本に栗が400g以上入っています。

栗のテリーヌ「天」

「天」を試食させていただきました。

贅沢です。栗が大きい。栗をまるごとほおばって食べている感じです。甘味は和三盆の優しい甘さ。生地もしっとりしていて、このサイズでもしっかり重みがあります。

商品

「天」は高級品ですが、それ以外にも3,000円くらいから購入できる商品もあります。

足立音衛門のスイーツは、オンラインショップでも購入できますので、ご興味のある方はこちらをご覧ください。

>>足立音衛門公式オンラインショップはこちら

福知山城の天守閣内で2022年11月8~9日に行われた将棋の竜王戦のおやつ部門に提供された商品がこの「王様のどら焼き」です。

どら焼き

こちらも大きい栗がごろっと入っています。

カフェ

これまでは持ち帰り専門でしたが、今年から敷地内の洋館をカフェとしてオープンし、この素敵な空間で食べることができるようになりました。福知山にお越しの際にはぜひお立ち寄りください。

>>足立音衛門公式サイトはこちら

食べたいように食べて後は寝るだけ「ku-nel」(福知山市)

福知山は「肉のまち」としても有名です。しかし福知山牛というブランド牛が育てられているわけでもありません。

なぜ肉のまちと言われているかというと、昔「三大畜産市場」があったため多くの肉が福知山に集まってきていた、という点が理由のひとつに挙げられます。

福知山市内には焼き肉屋さんがとても多いです。

県別で見ると、人口10万人当たりの焼き肉屋店数が一番多いのは石川県で28.1軒、二位は福井県、大分県と続き、京都府は15.4軒で20位です。

しかし県ではなく市単位で見ると、福知山市は最近のデータでは10万人当たり32.5軒となり、石川県を凌ぐほど圧倒的に焼き肉屋が多いのです。

ku-nelのオーナーシェフである足立 龍さんは福知山市出身。

足立さん
<ku-nelのオーナーシェフ 足立 龍さん>

ku-nel

足立さん「福知山は焼き肉屋は多いんですが、ステーキ屋は少ないんです。私は「肉を"塊"で食べたい」が信条なので、ku-nelを2020年にオープンしました。

ku-nel
<ステーキハウスらしいモダンでシンプルな内観>

ku-nel

店名ku-nelの名の由来は「食べたい時に食べて後は寝るだけ」。

ku-nelでは、ステーキを提供していますが、足立さんは元々パティシェ出身。「福知山が「肉のまち」だから肉料理を始めたわけじゃありません。おいしい料理、おいしいお菓子、美味しいお酒をシンプルにわかりやすく自由に楽しんでほしい、それがku-nelを始めた理由です」

こだわりのお店をやっている人は、地元の食材を使うことにこだわる人が多いですよね。

しかし足立さんは言います。「丹波牛や但馬牛はとても美味しいですが、値段も高い。私は手軽にステーキを食べてもらいたいので、輸入肉も使います。」

とりわけ料理

今回いただいたのはこちら。コース料理というよりは、皆でワイワイいいながら取り分けて食べる大皿料理です。

ku-nelのメニュー

  • サーロインのすき焼き風
  • 鶏のから揚げ
  • ニョッキ
  • ステーキ2種(ハネシタ・イチボ)
  • サラダ

中でもサーロインのすき焼きが驚きの旨さでした。それを足立さんに伝えると「あの料理のメインは実は肉ではなく卵なんです。」という意外な答えが返ってきました。

サラダ

サラダが巨大なグラスに入って出てきます。これだけでも楽しくなっちゃいます。ku-nelの自由自在さが伝わってきます。

ハネシタとイチボ

出た~!「肉は塊で食べたい」という人にぴったりのお肉。脂身が少ない赤身なので、食感が肉々しく、ワイルドです。「肉を食らっている~」と感じます。

肉は丹波牛、但馬牛に拘らず、と仰っていた足立さんですが、福知山の食材はとても豊かだと感じていて、地元産の食材だけで何かを作りたいと完成させたのがカヌレです(原材料:牛乳、卵、小麦粉)。

カヌレ
<大人気のカヌレ>

最近若い人たちの間でカヌレブームが再燃しているそうですが、足立さんはブームに乗っかろうとか、流行を狙うという気持ちはないそうです。「人気が出るのは嬉しいですが、逆に流行ってほしくないという気持ちもあるんですよね(笑)」

この感性は、綾部「織りや」の春山さんに通じますね。

足立さんがパティシエになろうと思ったきっかけは?

足立さんは、男3人兄弟の末っ子。
お母さんが毎日のように作ってくれたシフォンケーキ。足立さんは母を手伝うのがとても嬉しかったそうです。工業高校に通いましたが「3男でもあるし、わがまま言わせてもらおう」と好きなお菓子作りの道へ進むことを決意しました。

福知山には洋菓子マウンテン(後述)という名店があります。足立さんはマウンテンのオーナー水野さんの傍らでスイーツ作りを勉強したいと思ったそうです。

ワイン塩

ワインを塩に含ませて作るワイン塩。サラダやお肉にかけて食べると絶品です。

置物

>>ku-nel公式サイトはこちら

チョコレート・チーズケーキ「洋菓子マウンテン」(福知山市)

福知山のスイーツの名店といえば、洋菓子マウンテン。福知山市の郊外 三段池公園のそばに建っています。

洋菓子マウンテン

洋菓子マウンテン
<洋菓子マウンテンの外観>

2代目オーナーシェフ水野直巳さん
<洋菓子マウンテンの2代目オーナーシェフ水野直巳さん>

水野さんは2007年「ワールドチョコレートマスターズ」フランス・パリ大会で世界第一位の称号を得ました。

日本人パティシエとして快挙である賞を得たにも関わらず、水野さんは故郷福知山に帰ることを決心します。

「東京にいればもっと有名になるし、いろいろなことができるのになぜ?」と多くの人が反対したそうですが、水野さんの決意は変わりませんでした。

「自分が生まれた土地で子供を育てたい。私が今日まで生きてこれたのは、父が作ったケーキを買ってくれたお客さんがいたから」だと。

洋菓子マウンテンは1978年、福知山市内の商店街で水野さんのお父さん水野亘さんが開店しました。

マウンテンはスフレタイプのチーズケーキが名物で、福知山の人たちにとってマウンテンのチーズケーキは誕生日ケーキ。チーズケーキを買う時「ろうそくを付けて!」というリクエストも多いことから、いかに地元の人たちに愛されてきたかがわかります。

スフレチーズケーキ
<福知山市民にとっての誕生日ケーキであるマウンテンのスフレチーズケーキ>

スフレタイプなのでとても軽い。ふわっふわです。さっぱりして甘すぎない味。奇をてらわない。インパクトを狙っていません。

ひとことで言えば、飽きない味です。でもそういうお菓子を作るのは簡単ではありません。福知山の人が誕生日に楽しみにしているケーキというのがよくわかります。

チーズケーキはピースで340円。ホールで2,550円というお手頃価格。

地元の人たちの大切な味。水野さんが福知山に帰ってきたのは正しかったのですね。

マウンテンの店名の由来

店名の由来は2つあるそうです。

  • 福知山の"山"
  • 水野さんのお父さんは福知山市大江町(山)の出身。その"山"

お父さんの小学校の恩師が名づけてくれたそうです。ふるさとを愛し、地元の人たちに愛されるお菓子作りをしていた、初代シェフ水野亘さんの想いがしっかりと2代目直巳さんに継承されています。

水野直巳さんが「趣味」と言いきるチョコレート作り。父からのお菓子作りを伝承しつつ自分の世界も作っています。

「チョコはバレンタインだけじゃない 常日頃から楽しんでもらいたい」「誰が食べても安心するようなほっこりしたチョコ造りを目指しています。」

「ワールドチョコレートマスターズ2007」第一位受賞作品「杏と塩」

こちらが世界一の称号を得たチョコレートです。

杏と塩

「味覚の流れを楽しんで欲しい。最初に杏の酸味が広がり、最後に塩が残る。塩もミネラルたっぷりの塩だと邪魔をするので、結晶のつぶの食感が際立つ塩を使います。」

食べた感想は「これはもはやチョコではない・・・」です。言葉でうまく表現できません。これそのものがスイーツでひとつの料理、いえ作品です。

水野さんは「チョコレート造りの技術を持った人間を輩出したい」のが一番の願いで、今も多くの若者が水野さんの元に修行に来ます。

すごい賞を獲った人だからさぞお弟子さんにも厳しく、気難しい人かと思っていましたが、水野さんは気さくでサービス精神旺盛、ざっくばらんに思いを語っていただきました。

ku-nelの足立さん含め、第二第三の水野さんが巣立っていかれているようです。日本のスイーツ業界、楽しみです。

>>洋菓子マウンテンの公式サイトはこちら

夜久野(やくの)そば(福知山市)

福知山市で注目されているそばがあります。それが夜久野そばです。夜久野とは地名で高原地帯で霧が多く、寒暖差がある地域のため、美味しいそばを育てるのにぴったりの土地です。

夜久野そば

そばの殻ごと挽くひきぐるみの黒そばで、そばの香りが立ち、典型的な田舎そばですが、のど越しもよく上品な味のそばでした。つゆは江戸の濃い味とは違って優しくさっぱりしており、するするっといただくことができました。

>>夜久野そばを支援するやくの農業振興団の公式サイトはこちら

ジビエは獣害対策ではなく「美味しいから食べよう!」という世界にしたい

福知山市夜久野町で猟師歴20年のジビエハンターであり、料理人でもある中島健太郎さんの言葉がとても印象的でした。

「福知山では鹿などのジビエ料理も盛んです。ジビエというと獣害対策の一環として見られがちなんですが、私はそういう捉え方をしたくないんです。実際、鹿もきちっとした処理をすれば臭みもなく、美味しく食べられるんです。「獣害対策じゃなく、美味しいから食べよう!」そういうものにしたいんです。福知山の鹿肉は地域の宝だと思っています。」心強い言葉です。

鹿肉のロースト

ジビエハンター中島さんが捕まえて捌いた鹿肉のローストです。臭みはまったくなく、さっぱりと美味しくいくらでも食べられそうでした。

ジビエ

中島さんのジビエはオンラインで購入することもできます。

>>健太郎の京都ジビエオンラインショップはこちら

>>ジビエハンター&料理人 中島さんのサイトはこちら

綾部市・福知山市の「食」の魅力まとめ

京都市の市街地を車で少々北に走ると、直に「森ばかりの風景」が現れます。実は京都府は面積の75%が森林なのだそうです(知りませんでした)。

京都は美食の都ですし、京野菜なども有名ですが、京都の食を支えているのは京都府の田畑であり、森なのです。

京都の深い緑の森を見ていると「日本人のこころの故郷」だと感じました。

「京都の北部は田舎で何もない」という印象があるかもしれませんが、このエリアには最近移住者も増え、隠れ家的カフェや農家民宿なども続々と出来ており、注目されているエリアです。

まさに「何もない」が価値になる時代が来たのだと感じます。いえ「何もなくはない」のです。そこには "豊かさ" があるのです。

ヨーロッパ人旅行者始め外国の人たちが私たちに教えてくれます。

いきなりヨーロッパの人たちの境地まで行くのは難しいとしても、そういう価値もあるのだということを理解するだけでも先ずは良いと思います。

そこから、これからの日本が進むべき道が見えてくるかもしれません。

おまけ(福知山城)

今回の記事は「食」をテーマにしましたので、観光スポットには言及していません。

また綾部にも福知山にも「これぞ観光地!」というようなスポットは少ないのですが、福知山の観光のシンボルといえば「福知山城」ですから少し触れたいと思います。

福知山城

福知山城は、織田信長の丹波平定の足掛かりとして明智光秀が築いたと言われています。天守閣は再建ですが、石垣は一部当時のものが残っています。

石垣

石垣は見た目はあまり整然としていませんが、石積みのプロ集団といわれた穴太衆(あのうしゅう)による野面(のづら)積みです。大きな石の隙間にある小さい石が実は大事で、小石があるからこそ石垣の中に水が入り、崩れない頑丈な作りになるのだそうです。また石の中には墓や石塔を用いた部分もあり、転用石と言われています。

転用石を使うことで早く石垣を築くことができます。転用石を使わなければ、山や川から石を運んでこなければなりません。全国統一を急ぐ織田信長からすれば早く築城することが重要だったので、転用石を使うことは当時の流行だったようです。

明智光秀といえば、主君の信長を攻めた謀反人のレッテルが張られています。

しかし、福知山では、飢饉に苦しむ民のために税金を免除したり、治水政策を行ったりと善政を敷いた名君と捉えられているようです。

戦国武将の性格を表すエピソードとして「ほととぎす」がありますね。

  • 信長は「鳴かぬなら、殺してしまえ ほととぎす」
  • 秀吉は「鳴かぬなら、鳴かせてみしょう ほととぎす」
  • 家康は「鳴かぬなら、鳴くまで待とう ほととぎす」

ですね。

明智光秀ならこう言ったと言われています。

「鳴かぬなら、放してやろう ほととぎす」

光秀が如何に人々に愛され、慕われていたかが伝わるエピソードですね。

天守閣からの風景
<福知山城天守閣から見える風景>

将棋の竜王戦が行われた

2022年11月8日~9日。福知山城天守閣に於いて将棋の竜王戦が行われました。訪れた日には、対局の間がそのまま保存されていて見ることができました。

対局の間
<将棋の竜王戦 対局の間>

福知山城

福知山城は市街地の中心にあり、今も福知山を見守っています。

紅葉

ちょうど紅葉が美しい時期に訪れることができました。

田園風景

綾部、福知山、豊かで静かでゆったりしていて、とってもいいところでした。気持ちが優しくなったような気がします。あなたもぜひ!

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シンジーノ

3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

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