【京都・福知山市】移住したい人がこの土地を選んだ "決定的な理由" とは?

福知山

こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。

あなたは これまでに"移住" を考えたことがありますか?

昔は移住というと、老後を静かに送りたい世代とか、一念発起して農業を始めたい、といった人が考えるという風潮だったように思います。

しかし時代は変わり、コロナ禍を経て、今はテレワーク、ワーケーションの急速な浸透、ライフスタイルの多様化により、移住を考える年代や目的も幅広くなっているようです。

今回、京都北部にある福知山市が移住者に人気があると聞き、市の取り組み、実際に移住した方のお話を聴いてきました。

取材してみて、移住者たちがなぜ福知山という土地に魅せられたのか、が分かったような気がします。

この記事を読むと、移住する時の注意点、準備すべきこと、心構えなどのポイントが掴めますので、ぜひお読みください。

晴れた日の福知山駅
<意外に(失礼!)開けている JR福知山駅>

目次

福知山城
<福知山のシンボル 街の中心に立つ福知山城>

福知山市とは?

福知山市は京都府の北西部に位置しており、丹波の山々に囲まれた盆地です。現在の人口は約76,148人(2022年10月)。縄文時代から人が住んでいたと考えられており、戦国時代の1579年、明智光秀によって城が築かれました。(世間では明智光秀は謀反人のイメージを持たれていますが、この地では税を無くし、治水政策を行うなど善政を敷いた名君と言われています。)江戸時代以降も丹波と丹後の国にまたがり山陰と近畿をつなぐ交通の要衝として人の往来が多い土地でした。

現在も

  • 鉄道のまち
  • スイーツのまち
  • 肉のまち

としても有名で、由良川、土師川などに囲まれた豊かな街です。人口に比較して学校の数が多く、福知山公立大学など地域に根差した学校もあり、街は若者たちの活気で賑わっています。

福知山市のブランドメッセージは「いがいと!福知山」

・・・後にこのメッセージの意味がとてもよく分かりました。

福知山市役所の方

福知山城では、笑顔の素敵な福知山市役所のおふたりに、温かくお出迎えしていただきました。

ではまず、福知山城から見渡す福知山の風景を動画でご覧ください。

福知山に移住する理由とは?

結論からずばり、申し上げましょう。

福知山市が移住(希望)者に支持されている理由をひとことでいうとしたら、「ほどよく街で、ほどよく田舎」です。

さらに踏みこんでいうと、次のような面が福知山が選ばれる理由でしょう。

  • ちょうど良い住みやすさがある
  • 移住者になにかと優しい
  • 市役所の面倒見が良い
  • 子育て世代に優しい
  • お試し移住がしやすい
  • 都市部へのアクセスが便利
  • 若者(学生)が多く、街に活気がある

以降に、移住した人々の声をご紹介します。

この声に耳を傾けてみれば「あ~なるほど!」と感じることでしょう。

移住した人の話1. 宮田裕美さん(商店街空き店舗活用)

福知山の町の中心にある「新町商店街」。アーケード商店街で全長300mにわたってお店が軒を連ねています。昔はかなり賑わっていたそうです。

新町商店街

しかし、日本全国の多くの商店街が不振にあえぐ中、ここ新町商店街も例に漏れず、近年はシャッター通り商店街となっていました。

新町商店街

そんな今の姿を見て「この新町商店街を、再び活気ある通りにしたい!」と声を挙げ、同じ気持ちを持ったメンバーと共に動きだしたのが、宮田裕美さんです。

宮田さんとスタッフの足立さん
<一般社団法人福知山ワンダーマーケット代表の宮田さん(左)とスタッフの足立さん(右)>

宮田さんは宮城県仙台市出身。大阪出身のご主人が「サラリーマンを辞めて農業をやりたい!」と一念発起。農業塾が福知山だったこともあり、夫婦で福知山に移住を決めました。そしてこの新町商店街をひと目見て「ここで何かやれたらいいな」と衝動が沸き起こりました。

アーキテンポとは「空き店舗」・主(あるじ)を意味する "archi"、建築家を意味する "architect" から名付けた造語だそうです。

アーキテンポは、元紳士服屋だったところをレンタルスペースとして1日から貸りることができます。

アーキテンポ
<アーキテンポの内観>

とてもおしゃれな空間です。

このスペースに「お店を開業してみたい」という挑戦者がテスト的にお店を開きます。正式開店の予行演習のようなイメージでしょう。例えば製麺所をやっている人がここで試験的にラーメン屋を開業し、手ごたえを感じて駅前にラーメン屋を開店することになったというような事例があります。

そんな風にお店を開業したい人がこの場所を短期で借りてまずやってみる、という"場"として提供しています。ジャンルはさまざまでお菓子屋さんだったり、BARだったり。

宮田さんは「この商店街の空き店舗が再び埋まって、賑わうようになればいいな」と思っていました。

しかし、すべての空き店舗にお店が入ることは現実的にはなかなか難しい。

空き店舗をすぐ埋めることはできなくても、商店街に活気を呼び戻すことはできないか、その方法のひとつがワンダーマーケットです。

ワンダーマーケットとは?

ワンダーマーケットとは、簡単に言うと露店を商店街の路上に開くイベントマーケットのことです。

ワンダーマーケット
<ワンダーマーケットの様子>

毎月第4日曜に新町商店街に約40店舗がオープンします。ワンダーマーケットが始まって今年で6年目。始めた当初は出店者を募るのも大変だったそうですが、半年くらい経ったころから出店者も来場者も徐々に増えていきました。

ワンダーマーケット

ワンダーマーケットにはベンチも置いてあります。目指しているのは、単なる買い物をする場所ではなく「人が集う場所」なのです。

出店するお店は、こだわりのある雑貨、アクセサリー、食べ物のお店など。

出店者曰く「ワンダーマーケットに来られるお客さんは客層がいいと思います。ゆっくりとお話ができます。ワンダーマーケットに参加して、私は改めて商いの面白さを知りました」と評判も上々で、リピート出店するお店も多いそうです。

ワンダーマーケット

地元のおばあちゃんがワンダーマーケットを歩きながら「まるで昔の賑やかだった頃の商店街を見ているようやわぁ」と喜んでおられるのを見て、宮田さんも「ワンダーマーケットを始めてよかったなぁ」と嬉しく思うそうです。

宮田さんに、これからの夢を伺いました。

「この新町商店街をもっと賑わいのある通りにしたいです。実現は簡単ではありませんが、ワンダーマーケットとアーキテンポでその推進役ができれば嬉しいです。」

移住者としての福知山市の印象を訪ねてみました。

「ほとんど予備知識無しで移住しましたが、福知山って意外と都会なんだな(笑)と思いました。駅近辺は街ですし、買い物にも困りません。福知山で充分楽しめます。もう都会の生活には戻れないかな(笑)」(宮田さんは農家なので、街の中心ではなく、農村部にお住まいです。)

宮田さんとスタッフの足立さん

新町商店街にはいくつか黒板が置いてあって、こんなことが書いてありました。

黒板

福知山市は教育にも力を入れているそうです。子育てに良さそう、と移住してくる家族も多いのだとか。

賑わいのある街づくりへ邁進する宮田さんと足立さん、すごいです。がんばれ!

>>アーキテンポの詳細、連絡先はこちら

福知山に移住した人2. 羽星大地さん (クラフトビール製造)

旧銀行跡地を利用して、福知山初のクラフトビール造りを始めたのが、CRAFT BANKの羽星(はぼし)大地さんです。

羽星さん

CRAFT BANK

CRAFT BANKはいかにも銀行の建物らしい頑強なビルの中にあります。

カウンター席

店内に入ると、ビールを飲めるおしゃれなカウンター席が。その奥には大きなビールタンクをガラス越しに見ることが出来ます。

クラフトビール造り

クラフトビール造りは、清潔さが第一。タンクを徹底的に洗いこまないと美味しいビールは造ることができないそうで、力仕事が8割だそうです。

羽星さんは元IT会社のサラリーマン。その経歴をあっさり脱ぎ捨てて「ビール片手になんかやろう」をスローガンにビール造りの世界に飛び込みました。

「なぜビール造りを始めようと思ったのですか?」の問いに羽星さんはこう答えました。

「学生時代にヨーロッパを旅したんです。その時に訪れたドイツで、外国人たちとビールを酌み交わしました。それで強く感じたことは、「ビールを酌み交わせば、言葉は通じなくても心は通じる」これは他のお酒では感じられない、ビールならではの魅力でした。」と。

「ビールには、人と人をつなぐ力がある」

「クラフトビールは他のビールに比べても、特に前向きに生きているような感じがするんですよね~」と羽星さん。

そしてクラフトビール製造の世界に一から飛び込みました。世界コンテストで金賞を獲った宮崎の「ひでじビール」で修行しました。その時、クラフトビール業界はオープンマインドだと感じたそうです。教えを乞えば、師匠からすべてつつみ隠さず教えてもらえたそうです。

ILAZY IPA

こちらが今回いただいたLAZY IPA。クラフトビールの入門編のような飲みやすいビールでした。フルーティーな香りと、トロッとしてなめらかな口当たりが特徴です。

クラフトバンクは、2022年内にECで全国販売を開始する予定なのだとか。楽しみです。

「ビールは人と人とをつなぐ力がある」とゼロからクラフトビール造りに踏み出した羽星さん。ここでも「人とのつながり」が人や街を動かす原動力になっていることを感じました。

>>CRAFT BANKの公式サイトはこちら

福知山に移住した人3. 安岡恵美里さん(イラストレーター)

イラストレーターであり、福知山市産業支援センタードッコイセ!Biz 相談員でもあるのが安岡恵美里さんです。

安岡 恵美里さん
<安岡 恵美里さん>

安岡さんは福知山市の「移住お試し住宅」に住んでみた後、実際に移住を決めた人です。その経験を活かして、福知山市への移住や起業を考えている人の相談にのっています。

安岡さんが移住をするきっかけとなったのが、お友達夫婦の存在です。神奈川県から福知山市に移住してきたお友達夫婦にすすめられたのです。

ちょうど人生の次のステップを考えている時だったこともあり、福知山市への体験移住を決めました。いきなり本格的な移住ではなく、お試し体験だったこと、またお友達が移住経験者だったこともあって、それほど深刻に考えることなく移住体験に踏み切れたそうです。

福知山に来てからもお友達のパン屋を手伝ったりしていましたが、環境の良さとストレスの少なさからイラスト描きに集中できるようになったそうです。

イラストレーターは、オンラインコミュニケーションやDXの進化により全国どこに住んでいても仕事ができるというのが良い点です。

私「福知山に実際住んでみた感想は?」

安岡さん「友だちに誘われて、面白そうという軽い気持ちで移住体験を始めましたが、最初は定住する気持ちはなかったんです。お試しで1年間住んでみて周りの人たちにすごく助けられたんです。人とのつながりもできて福知山への愛着がより一層深くなり、定住を決めました。」

私「移住してみてイラストレーターとして心境の変化はありましたか?」

安岡さん「自然豊かな環境のせいか、心が落ち着いてイラストが書けるようになったと思います。風景がきれいで、ストレスが減ったとも思います。通勤ラッシュがないこともすごく良かったですね。」

私「移住することによって、失ったものってありますか?」

安岡さん「う~ん、うまく言えないですけど、ひとつところに腰を据えて住むというこだわりは減ったかも。転居するワクワク感を楽しむ自分がいる、というか(笑)」

移住者のイメージは、人見知りしない、自己主張がはっきりしている、行動力があるといった精神的にタフな人だと思っていました。実際そういう人も多いと感じましたし。

でも安岡さんは、どちらかというとおとなしく、自分が自分が、と前に出るようなタイプではない印象を受けました。彼女は周りの人の支援によって移住という低くはないハードルを軽々と乗り越えられたのでしょう。

超アグレッシブではない人も、人との温かいつながりと交流の中で移住を楽しんでいる様子が見えて、同じような性格の私(笑)も勇気をもらえたような気がしました。

安岡さんの作品

安岡さんのイラストは優しくて、とても温かい気持ちになります。

安岡さんの作品

安岡さんがイラストを描く時、大切にしていることは「ハッピーサイクル」なのだとか見る人が笑顔になったり、幸せになるようなイラストを描きたいと思っているそうです。はい、その気持ちちゃんと伝わってきますよ。

「由良川沿いの土手を歩くのが好き」という安岡さん。福知山へ移住して自分の居場所が見つかったのかもしれませんね。

福知山に移住した人4. 森さん(農業・廃校活用)

市街地から車で約15分くらい走ったところにある中六人部(なかむとべ)集落。そこには廃校を活用して農業やカフェを運営している会社があります。

THE 610 BASE
<元小学校だった廃校を活用したTHE 610 BASE>

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いわゆる懐かしい昭和レトロ感満載の校舎ではなく平成になって建てられた、築30年ほどのまだ新しい近代的な建物です。

二宮金次郎像

校庭にはお約束の二宮金次郎像が!なんかちょっとポップな金次郎さんです(笑)

THE 610 BASE

建物内にはそこかしこにセンスの良さが光っています。「廃校を利用して農業をする」というイメージとはちょっと違いました。

スケボーのランプ

ある部屋にはなんとスケボーのランプが。。。これ、スタッフの手作りなんですって。これは単なる農業やっている会社じゃないぞ。

イチゴ栽培ハウス

校舎の建物を抜けた校庭跡には、7棟の大きなイチゴ栽培ハウスがありました。

車

ハウス横に止まっている車もやんちゃです。やっぱりこの会社、ただものじゃなさそう。

プランターで栽培されているイチゴ

ハウスの中は、プランターで栽培されているイチゴが並んでいました。

現在3種類のイチゴ(紅ほっぺ、かおり野、章姫)を作っているそうです。「あれっ?イチゴの位置がずいぶん高いな。イチゴ狩りってもっと下の方にしゃがんで摘むんじゃなかったっけ・・・?」

カフェ

館内にはカフェもあります。

森さん

THE 610 BASEのスタッフ 森さんです。

「?」がたくさんあるのでいろいろ質問をぶつけました。それに対する森さんのお答えがこちらです。

「もともとは電気事業の卸をやっている会社です。事業多角化の為に、新規事業のアイデアを社内で募りました。介護タクシーや魚の養殖案などいろいろ出た中で、福知山という土地で役立てる意義のある仕事は・・・という点から「農業」を選んだのです。

やろうとしていることは農業ですから、最初は農地を探していたんです。しかしなかなかこれだ、という農地が見つからない中、時代は学校の統廃合が急加速しており、廃校になる学校が増えていました。

まだ新しい校舎なのに廃校にするのはもったいない、何か役に立てないかなと。学校は人が集まる場所です。校庭は広くて日当たりもいいからここを農地にすればいいんじゃないか。役目を一旦終えた廃校が、もう一度人が集まる場所になれば地元の人たちも嬉しいんじゃないかな、と。

電気事業の会社なので、農業はノウハウがありません。最初はトマトを作ろうとしたんです。この地ではそれが無謀だとわかって断念したり。それはもう試行錯誤の連続。動きながら答えを探していきました。

単に農作物を作って売るだけでは面白くないな、「●●狩り」のようにお客さんと交流できたらいいな、とイチゴにたどり着きました。

イチゴは福知山名産ではなかったですが、逆の見方をすると競合がいないのでバッティングはしない。イチゴはイチゴ狩りができたり、女性や子どもが好きだから人が集まりやすいのでは?と思いました。ほぼ1年を通じて栽培することもできるし。

イチゴのプランターの位置が高いのは、イチゴ狩りの時、お客さんが高い位置の方が摘みやすいし、生産者としても作業がしやすい、少ない土の量でも育てやすいということでこのプランター方式にしました。

今後はイチゴだけじゃなく、クラフトビール作りをしたいと絶賛計画中です。

あちこちにこだわりが見える設えですが、THE 610 BASEが大切にしていることは、次の4つだそうです。

  • ヴィンテージ感 
  • イギリス風
  • 手づくり感
  • 人(プロ)任せにせず、自分たちで作る

森さんは、新卒で今の会社に就職したもののモノづくりがしたいと退職し、豆腐屋をやったりしていたのですが、改めて会社から声がかかり、出戻ったそうです。

「会社から声をかけてもらったのも嬉しかったですが、僕の人生でこんな仕事ができるとは思ってもみなかった。実際仕事は大変なことも多いですが、やっていて楽しいです」

「僕ら、お客さんから「イチゴの妖精」って言われてるんですよ。たった2人のお客さんからですけど(笑)うれしいですね。」

ちなみに森さんは福知山生まれではなく、京都府亀岡市出身。福知山という町は、まったく関心のない町だったそう。

しかし実際住んでみて、福知山の人たちの温かさに救われ、勇気をもらえたと言います。

「普通、外から人が移住してきたら、地元の人から嫌がられること多いじゃないですか。でもここ中六人部の人たちは温かかったんです。この廃校跡を使って農業をしたい、と言ったら、「よしわかった!じゃ俺たちはなにしようか」と言ってくれたんです。地元の人たちも廃校に賑わいが戻ったら嬉しいと思っていただけたのかなぁと。」

この未知の新事業ビジネス、採算面からみてどうなのか、ズバリ訊いてみました。

「ビジネスはビジョンとその先の予測が大事じゃないですか。でもこの事業はなかなか予測できません。何をもって成果とみるかですが、正直収支面ではまだまだです。でもこの事業を展開したことで、自治体と繋がりができました。イチゴ農家さんと繋がりができました。農業に進出したという広告宣伝効果もあって会社の知名度が上がりました。この事業をきっかけに新規で電気工事を受注できたりしているんです。そういう間接的な成果も意味あるんじゃないかと思います。」

今THE 610 BASEは5人のスタッフで運営されています。毎日忙しく試行錯誤の連続だそうですが、

「僕たちのやっていることは嘘ではないという誇りがあります。こだわりを大切にし、急がず焦らず一歩づつ進んでいきたいと思います。僕たちはFARMERじゃなく、FUNMERですから」

がんばれ、若きFUNMERたち!

>>THE610BASEの公式サイトはこちら

福知山に移住した人5. 堀代知さん (移住体験型シェアハウス運営)

祖父母が住んでいた家を改修して、移住体験型シェアハウス、田舎体験型宿泊施設を運営しているのが、Wぴーすの堀代知さんです。

Wぴーす

堀さんは、京都市内で生まれました。この家はおじいちゃんおばあちゃんが住んでいた家で、堀さんは子供の頃、盆と正月に遊びにきていました。

シェアハウス

うわ~、いかにもおじいちゃん、おばあちゃんちという雰囲気です。

階段
<階段も懐かしさ満載です>

おじいちゃん、おばあちゃんが亡くなって約4年間、ここは空き家でした。経費(町会費、畑管理費等)もかかり、家を継ぐ者もおらず、親族は始末に困っていたそうです。もちろん、孫の堀さんも福知山に住むつもりはなく、長野県軽井沢で人力車夫の仕事をしていました。

そしてコロナが襲います。観光業に従事していた堀さんの仕事はぱったり止まり、貯金を取り崩す生活になりました。

長引くコロナ禍で長野の家も引き払い、堀さんは一時避難するという感覚で福知山のこの家にやってきました。

ご夫婦で若い頃ニュージーランドでシェアハウスに住んだこともあり、漠然と「いつか年とったら僕たちもシェアハウスができたらいいね~」という気持ちは持ってはいましたが、期せずして自分たちがお試し移住をすることになったのです。

「中六人部(なかむとべ)は高齢者人口が半分以上の限界集落です。「ここで何か自分たちにできること、この土地の役に立てることはないかな」そう考えるようになったんです。福知山市は、市が手厚い移住支援をしていることで取り組みやすいことも背中を押してくれました。」

そうして堀さんは、一時的な生活のための手段として移住体験型シェアハウスを始めましたが、やっている内に楽しくなってきたんでそうです。

それは人とのつながることの楽しさを知ったからです。

シェアハウスの入居者たちが夜お酒を飲んで楽しそうに話しているのをみるとしあわせを感じるそうです。

Room【さくら】

建物はレトロ感満載ですが、部屋、サロン、キッチン、きれいにリノベーションされています。

Room【ゆず】
<入居者が入る部屋の一例>

最近では、居住者が地元の農家さんと知り合いになって休日いっしょに遊びに行ったり、ヨガ教室を開いたり、地域とのつながりが深まっています。そういうのをみていても「シェアハウスをやっていてよかったなぁ」と感じるそうです。

Wピースは移住体験型シェアハウスですから、滞在し続けることはできません。滞在期間は最低2週間から最大1年まで。平均すると2か月滞在という人が多いのだとか。年代的には20代~30代のひとりで滞在するケースが多いですが、50代の人もいるそう。

家具、家電も揃っていて身ひとつでやってきても暮らせるのが体験型住宅の手軽さです。入居に必要な金額は、保証金30,000円と月額家賃37,000~41,000円(取材時)。

ダイニングルーム
<共同キッチン>

私世代(50代)からすると、他人と共同生活するシェアハウスというのは、ハードルが高くて行動に躊躇してしまう気持ちがありました。

「最近の若い人にはそういう気持ちはあまりないものなのか・・・?」この疑問を堀さんにぶつけてみました。

「昔に比べると共同生活をすることに抵抗がないという層は増えているように思います。しかし全体からみれば日本ではまだまだです。やはりシェアハウス入居の一番の理由は「安いから」でしょう。でもね、こんな例もありました。人見知りの女の子がこわごわシェアハウスに入ってきて、ある時期から顔色が変わり、行動が変わったんです。人と人とのつながりはそれほど生きるエネルギーを与えるのだと思います。」

堀さんはこのWぴーすを通じて「地域を未来へつなぐ一つの架け橋になりたい」と思っているそうです。

Wぴーす

堀さんは若い頃、一度移住経験があるそうです。しかしその時は数か月で挫折してしまった。3日間誰とも口を利かないことがあったり、孤独に耐え切れなくなったそうです。

「人とのつながり、交流が生きる活力になり、ひいては世界平和につながる。その一助になりたい。大げさに聞こえるかもしれませんが、今は心からそう思っています。」そう話す堀さんの目は輝いていました。

>>Wぴーすの公式サイトはこちら

移住を考えている人に、移住経験者からのアドバイス まとめ

「移住したいと思う時、どんなことを意識したらよいでしょうか?」という質問に対して・・・

  • 「確固たる信念がなければ、移住は成功しない」ということはありません。フットワークの軽さも大事です
  • 事前にいろいろ調べておくことも大事ですが、動いてみて初めてわかることもあります
  • お試し移住等ができる町なら、ぜひ体験してみた方が良い
  • 最悪の事態(例:収入が途絶えても月に最低限いくらあれば生活していけるか?等)を予め想定しておくと、思い通りにいかないことが起こってもパニクらない
  • 自分ひとりで抱え込まないで、周りの人に頼ったり、相談したりすることを躊躇しないで!

福知山のグルメ(ジビエ・フレンチ、親子丼、鬼そば)

福知山は食がとても豊かな街でした。今回食べた福知山グルメをどど~んとご紹介しましょう。

ビストロq

福知山市街にある、おしゃれなジビエ&フレンチ料理を供するビストロq

ビストロq

「中学生の時に作った料理を両親が美味しいといってくれた」のが塩見シェフが料理の道に入ったきっかけだったそうです。

今はお父さんが育てた野菜を使って息子が料理の腕を振るっています。

ちなみになぜ店名が「q」なのか尋ねてみたところ、塩見シェフはこう答えられました。

「数字の「9」が好きなこと、まだ駆け出しの頃、尊敬する経営者から「3は安定を意味し、その3が3つ揃った9が最も安定する数字」ということを教わり、心に強く響きました。
また私は「4」という数字は好きではありません。ただ「4」をどうにか受け入れ、克服する術はないかと考えました。そして四ツ葉のクローバーは4でありながら幸福の象徴であることを思い出しました。四ツ葉のクローバーはフランス語で「trefle a quatre feuilles」ですので、四ツ葉(quatre feuilles)の頭文字からq(9)を拝借した意味合いもあります。自分の人生に於いて、好きなことも苦手なことも受け入れて財産にしていかなければいけないな、という想いも込めています。」と。

ビストロq
<おしゃれかつシンプルで「大人の空間」というビストロqの店内>

塩見シェフ

塩見シェフが「今日はいい鹿が入ったのでこちらをご提供します。」と見せてくださいました。

前菜
<前菜>
左から、丸なす揚げミートソース 万願寺、かぼちゃのマリネクミン風味。晩餐の序章です。万願寺の食感、絶妙でした。

丹波もみじ(鹿肉)のテリーヌ(フォアグラ入)
<丹波もみじ(鹿肉)のテリーヌ(フォアグラ入)。赤水菜、からし水菜添え>

ねっとりと濃厚なコクがあり、白ワインが進みます。

キクイモのポタージュスープ
<キクイモのポタージュスープ>

初めて食べました。キクイモは薬のイメージがありましたが、ポタージュにぴったりのまろやかな舌触りでクセもなく、美味しかったです。

ウスバハギのトマトソース
<ウスバハギのトマトソース。アオリイカ、パプリカ添え> 

白身のあっさりした魚ですが、ほどよく脂ものって、肝を使った濃厚なソースが絡み、食べ応えのあるお料理でした。

スイカのシャーベット
<スイカのシャーベット>

さっぱりした甘さとジューシーさで口直しにぴったり。

鹿肉ビール煮込み
<鹿肉ビール煮込み>

出ました!本日のメインディッシュ。濃厚ですがクドくはありません。赤ワインとベストマッチングです。獣肉のクセはまったく感じません。

鹿肉のステーキ
<鹿肉のステーキ。万願寺、ポテトソース添え> 

さらにこちら。これは想像を超える美味しさでした。脂身が少ないのに柔らかく、きめ細かい絹のような舌ざわりです。

他のどんな肉よりも上品で上等なステーキだと感じました。若く新鮮な鹿だからこそ、この味が出るのだろうと思います。

クレームブリュレ
<クレームブリュレ>

大江町の「卵どすえ」を使ったデザート。表面の焦げめが想像以上にパリパリで、中の卵が色も味も濃厚で、生まれてこれまで食べたの中で一番深い味のクレームブリュレでした。

いや~レベルの高いフレンチでした。さすが「肉の町 福知山!」

>>ビストロqの公式サイトはこちら

柳町

福知山の中でも、城下町風情の残る下柳地区にある鴨鍋がメインのレストランです。

下柳地区

静かでどこか懐かしい、情趣溢れる通りにそのお店はあります。

柳町

柳町。明治時代の町家を改装し、落ち着いた雰囲気の中で、名物の鴨肉と葱だけの鍋"鴨すき"や地元産の野菜や地鶏を使ったメニューを楽しむことができます。まるで京都の祇園にいるようです。

柳町

明治の文豪が住んでいたかのような立派なお屋敷です。

柳町

内観はシンプルでよけいなものは削ぎ落とされています。

名物親子丼
<名物親子丼。(1,200円)>

玉子の色が濃いでしょう? 半熟度合いが絶妙で、トロトロ感。親子丼はこうでなくちゃいけません。香りが甘く、地鶏も柔らかくコクがあり、歯ごたえもしっかりあります。山椒の効いた黒七味をかけると更に旨みと香りが広がります。

ちなみにこの親子丼、11月8~9日に福知山城で行われた将棋の竜王戦で、あの藤井聡太さんがランチで召し上がったそうですよ。

柳町は観光客だけでなく、地元のお客さんも多く訪れるようです。

私たちがお店を出る時には・・・

終了の案内

親子丼、売り切れ。。。予約必須です。

Bar

入口にはこれまたおしゃれなBarがあり、こだわりの美味しいコーヒーやお酒をいただくことができます。

>>柳町の公式サイトはこちら

鬼ヶそば

鬼伝説が残る大江町の山深い場所にあるのが鬼ヶそばです。

鬼ヶそば

う~ん、この雰囲気はちょっとやそっとじゃ出せません。何かが出てきそうな(笑)。座敷に通され、囲炉裏端でいただいたそばがこちらです。

ざるそば
<ざるそば(900円)>

殻まで挽いたひきぐるみの黒いそばで、風味が強いです。歯ごたえもしっかりしています。そば通を唸らせる味でしょう。

>>鬼ヶそばを食べログで見てみる

移住に関する福知山市役所の対応が評判!

福知山に移住した人の多くが、福知山移住で良かったところは「市役所が相談しやすく面倒見がいい。お試し移住など受け入れ体制が整っている」点を挙げています。以下 移住者アンケートをご覧ください。

福地山市に移住を決めた理由(アンケート結果)

  • WEBに載っている情報(FUKUFUKU LIFE。下記参照)が充実していた
  • 福知山の近隣地区に過去住んだことがあり、印象が良かった
  • 福知山に関わっている知り合いにすすめられた(配偶者、友人等)
  • お試しで移住体験ができ、それが安心できた

移住の目的

  • スローライフをしたかった
  • 趣味を充実させたかった
  • 子育てが充実していると感じた
  • 地域の人が親切で受け入れてもらえそうと感じた

子育てに関して市役所が特に力を入れているのが「妊娠から就学まで」を一気通貫でサポートする、という点です。

"お役所あるある"でよく見られるのが、縦割り体制のため何かしようとすると、窓口がその度に変わる、ということです。子育てに不安を持つ家族にとってこれはとてもストレスフルで不安なことです。福知山市役所は「子育て総合相談窓口」を設け、幅広く相談に応じ、サポートしています。

福知山市の移住サイト「FUKUFUKU LIFE」の評判

  • ロゴのデザインが柔らかく好印象(ロゴは安岡恵美里さん作)
  • いい意味でお役所っぽい堅苦しさがない
  • 見やすく探しやすい
  • 移住者インタビューの情報量が充実している
  • 空き家情報が充実している

>>福知山市移住サイトFUKUFUKU LIFEはこちら

ほんと見やすくて内容充実のサイトです。確かにお役所っぽくない(笑)柔らかい印象です。

開設1年目での快挙!「ふくちやま電子図書館」が全国1位に!

福知山市立図書館によるインターネット上で24時間どこでも利用できる「ふくちやま電子図書館」が、(株)図書館流通センター(TRC)の提供する電子図書館サービスを導入した全国279図書館の中で、人口1000人あたりの貸出数と閲覧数の両方で1位となったそうです(2023年2月発表)。
なんと電子図書館開設1年目にして、ナンバーワンに輝きました。
またコンテンツ(蔵書)数も現在、京都府内で1位。ますます住みやすい福知山市になりますね。

▼TRC電子図書館 年間利用状況(集計期間:2021年10月1日~2022年9月30日)

<ふくちやま電子図書館>
1000人あたりの貸出数 1860.0:貸出順位(人口比)1位
1000人あたりの閲覧数 3902.0:閲覧順位(人口比)1位
※実質8か月の稼働で1位を獲得(開設は、2022年1月20日)
※TRCの電子図書館サービスは国内導入実績No.1です。

>>ふくちやま電子図書館の更に詳しい情報はこちらへ

福知山移住の魅力まとめ

福知山市が移住者に支持されている理由がおわかりいただけたのではないでしょうか。

  • ほどよく街で、ほどよく田舎(駅周りは栄えているが、車で15分走れば田園地帯が広がる)
  • ちょうど良い住みやすさがある
  • 移住者に優しい
  • 市役所の面倒見が良い(事業者に丸投げせず自分たちで積極的に関与されている)
  • 子育て世代に優しい
  • お試し移住がしやすい
  • 都市部へのアクセスも便利(京都、大阪に約1時間半で行ける)
  • 若者(学生)が多く、街に活気がある

地方に移住したいという人は、田舎らしさを求めるという部分があると思います。

しかし田舎すぎてしまうと、都会の生活に慣れた人にとっては不便さに適合できないかもしれません。田舎の自然ものんびりした空気も、都会の便利さも併せ持つ、そういった町は意外に少ないように思います。その意味で福知山市はちょうど良い街だといえると思います。

Uターン者が感じる福知山の魅力

福地山で生まれ育ち、大学は府外に出て、Uターンで福知山に戻ってきて市役所に勤務している西邑さんに、福知山の印象を訊いてみました。

周りとの距離感がいい感じだと思います。おせっかい過ぎることもなく、見守ってもらっていると感じます。近所の人たちとっても優しいですよ。福知山で生まれ育ち、一度外に出てみて、改めて福知山の良さを知りました。

・・・なんか私自身も福知山への移住を考えてみたくなりました(笑)

福知山の豊かな田園風景を眺めていたら、人は優しくなれるのかもしれませんね。

福知山

福知山、素敵な街だったなぁ~

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シンジーノ

3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。

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