薬草と古い町並み、温泉もある奥大和の小京都・宇陀松山の魅力を紹介します

宇陀松山

奈良県宇陀市にある宇陀松山を紹介します。奈良県は京都と並んで観光地が各地にあり、その数も多いためでしょうか?見どころが豊富な宇陀松山の存在が、まだまだあまり知られていない気がします。

古代から薬草の町として、また中世の城下町、古い町並みが残り、天然温泉もある、奥大和の小京都・宇陀松山の魅力を紹介しましょう。

目次

宇陀松山へのアクセス

榛原駅

宇陀松山に行くためには、近鉄大阪線の榛原駅まで行く必要があります。榛原駅には快速急行とごく一部の特急列車が停車。榛原駅からは奈良交通のバスで大宇陀行きに乗り、終点の大宇陀バス停下車になります。

奈良交通

車で行く場合は、大阪や奈良方面からの場合はまず桜井を目指します。国道165号は桜井市の中心から東にある、大和朝倉駅手前で国道166号と分かれているので、166号に入ってください。そのまま166号沿いを走っていると、宇陀松山の中心まで行けます。

宇陀松山の魅力1:宇陀松山城跡

まちづくりセンター千軒舎

宇陀松山でいちばんの見どころは宇陀松山城跡です。元々は南北朝時代に宇陀地域を地盤に勢力を持っていた、宇陀三将の国人・秋山氏の城でした。そのため別名秋山城です。

1585(天正13)年に秀吉の弟・豊臣秀長が大和郡山に入部することになり、その後、秋山氏は退去させられます。その後いわゆる「豊臣系大名」が交互に入城しました。

関ヶ原の合戦ののち、福島正則の弟・福島高晴が入城し、このときに大規模な改修を行っています。この頃から松山城と呼ばれるようになりましたが、大坂夏の陣で高晴が豊臣方に内通した疑いがもたれ改易。小堀遠州の手により破却されました。まちづくりセンター千軒舎では宇陀松山城に関する各種資料が展示していあります。

宇陀松山城

宇陀松山城に向かう本来のルートは、大宇陀バス停の北側松山西口関門から春日神社を経由して、舗装されていない山道を登るルートです。

しかし、今は大宇陀バス停の近く、まちかどラボ観光案内所。もしくは、まちづくりセンター千軒舎から登山道が整備されています。基本は登りですが、城跡のある場所まで100メートルごとに案内があり励みになります。

宇陀松山城

残り100メートルを切るあたりから、春日神社側の道と合流します。ここからは舗装がなくなり完全な山道。息を切らせながら急坂を上ると頂上の城跡があります。

山頂付近は人工的な盛土や石垣が残っており、ここが城跡であることが一目瞭然。本丸跡からさらに高台にある天守郭から見える絶景の美しさは、苦労してでも登り切る価値を感じました。

宇陀松山の魅力2:宇陀松山伝統的建造物群保存地区

宇陀松山伝統的建造物群保存地区

宇陀松山の町の中心は、宇陀松山城の城下町として南北に古い町並みが残っており、宇陀松山伝統的建造物群保存地区に指定されています。バス停から少し南に歩いたところにある万六交差点から宇陀川を渡ると、保存地区の南端に行けます。

宇陀松山伝統的建造物群保存地区

保存地区の南端から、北方向に歩いていきます。特に古い建物が密集しているのは、まちかどラボ観光案内所を過ぎたあたりから。ここは古い建物だけでなく古民家カフェや土産物店が密集しています。

気になるお店があったらサクッと入ってみましょう。実際に奈良漬けの店に立ち寄ってみました。また歩きながら右手の山麓には、報恩寺、佐多神社、長隆寺、神楽岡神社と言った神社仏閣が並んでいます。

宇陀松山伝統的建造物群保存地区

古い町並みは料理旅館今阪屋のあたりで2本になります。右側の道沿いには薬の館、森田家住宅「諸木野屋」などの史跡が点在しています。街並みとしては宇陀簡易裁判所の南側でほぼ終わりますが、時間があればさらに北側に行ってみましょう。

天誅組・林豹吉郎の碑やその北側にあって、695年の持統天皇の時代に、吾城行宮の堂宇を拝領して始まったという慶恩寺があります。寺の境内には中世の城主だった秋山城主の碑などがあります。

宇陀松山の魅力3:森野旧薬園

森野旧薬園

古代の宇陀の地は、古代大和王権が薬草をとる場所でした。薬草の場所としての名残をとどめているのが森野旧薬園です。ここは大和本葛の粉を作っていた森野家の11代目に当たる藤助が、8代将軍徳川吉宗の御薬草見習いとして出仕したことがきっかけです。藤助は近畿・北陸の薬草を収集し幕府に発送しました。

この功績により、幕府により薬草種苗をもらうこととなり、宇陀の裏山に植え付けたのが薬園の始まりです。その後薬園の規模が大きくなり、やがて幕府薬園の補助機関の役目を果たしました。

森野旧薬園

森野旧薬園は東京の小石川植物園と並んで日本最古の薬草園のひとつとなります。薬園に入るには、現在も吉野葛を製造販売している森野吉野葛本舗にて、ひとり300円を支払います。

園内には資料館があり、そこから見ておくとわかりやすいです。2階建ての建物で、ここには森野旧薬園に関する資料が並んでいます。またその横には吉野葛製造の道具と方法が展示されています。こちらも見逃さないようにしましょう。

森野旧薬園

薬園は裏山にあるため、そこに行くまで登りがあります。途中に東屋があるので、休憩しながら上がりましょう。登りきると、多種多様の薬草が今も植えられているのがわかります。

薬園内には、薬草のほかいくつかの建物があります。知止荘跡は2020年の不審火で焼失した茶屋の跡。隣の土蔵は焼け残りました。

また最も奥にある賽郭祠堂は、40歳代で家業を託し薬草の研究に打ち込んだ森野賽郭の子・武貞が、自らの親の偉業を子孫に伝えるために建てたもの。賽郭夫妻と独身のまま主に仕えた左兵衛の木像が安置されています。

>>森野旧薬園 公式サイト(森野吉野葛本舗)

宇陀松山の魅力4:万葉公園(かぎろひの丘)

万葉公園

万葉公園は、宇陀松山の街並みから見て西側中庄地域のかぎろひの丘にあります。日本書紀によれば、611(推古19)年の五月条に「夏五月の五日に、菟田野に薬猟す。」という記述があり、それを根拠にして整備された公園。

菟田野(うだの)とは宇陀野を意味しており、「阿騎野(あきの)」の推定地とされます。これは史料で確認できる日本初の薬猟の記録。大和王権の宮廷行事として実施されたもので、男性が鹿の角を取る、女性は薬草を積むことを行いました。

万葉公園

万葉公園には一面を芝生で覆われた場所と、東屋があります。そのほか当時の様子を再現した絵がパネルで置いてあり、当時の人たちがどのようにして薬草や鹿の角を取ったのかがわかります。

万葉歌人として有名な柿本人麻呂は、この地を歌で詠みました。692年に軽皇子(文武天皇)が、阿騎野へ遊猟に来た際に同行し柿本人麻呂が詠んだもの。『万葉集』巻1・48に収蔵されている「東(ひむがし)の野に炎(かぎろひ)の立つ見えてかへりみすれば月傾かたぶきぬ」という歌がとくに有名です。

万葉公園

また万葉公園のすぐ隣には阿騎野・人麻呂公園があります。これは1995年(平成7年)に発掘された中之庄遺跡の保存を目的として整備されました。公園内には柿本人麻呂像と人麻呂の歌碑が建てられています。

さらに時間があれば、西にある阿紀神社まで足を運びましょう。天照皇大神を主祭神として、4柱の神を配祀、さらに4柱の神々を合祀。境内には江戸時代に建てられた能舞台があり、毎年6月にあきの螢能と呼ばれる能が奉納されます。加えて阿紀神社に向かう途中に、高天原(阿紀神社旧社地)と呼ばれるパワースポットがあります。

>>かぎろひの丘万葉公園の詳細はこちら(なら旅ネット)

宇陀松山の魅力5:松山西口関門と春日神社

松山西口関門

松山西口関門は、宇陀川を渡ったところにあります。門が黒塗りをしているため通称黒門と呼ばれているもの。宇陀松山城の城下町の雰囲気が残っている門といえます。門をくぐった先は城下町の大手筋にあたります。門は16世紀末から17世紀初頭に福島高晴によって造営されたとか。

建てられた当時のまま残っている城下町の門としては貴重なものとして、道路の敷地を含めた部分が、1931(昭和6)年に国の史跡になりました。

松山西口関門

西口関門から突き当りを右に曲がり、伝統的建築物の通りに入ります。史跡の植田家住宅「かぎや」を越え、さらに直進すると、宇陀松山城の春日門跡に行きます。立派な石垣が残っており、かつてはここから宇陀松山城に登城しました。

春日門跡の横に宇陀松山陣屋の跡があります。これは福島高晴が改易された後の話。織田信長の次男・信雄が宇陀郡の所領を得ました。信雄は宇陀とは別に現在の群馬県にあたる上野国甘楽郡の所領も得ており、信雄四男が上野国を五男が宇陀松山を継承。宇陀松山藩として城ではなく平地に陣屋を建て住みました。

宇陀松山藩の織田家は元禄時代まで存続しましたが、宇陀崩れ(うだくずれ)により、減封・国替えとなり、宇陀松山藩は廃藩、以降は天領となっています。

春日神社

春日門から続く道は、いったん春日神社の境内に入ります。春日神社の歴史は宇陀の町並みが形成された時代よりも古く、室町幕府3代将軍足利義満が、宇陀の地を春日大社に寄進したことがきっかけで創建されました。

春日神社はその場所から宇陀松山城とのつながりが深く、城とつながっている抜け穴跡があります。また1291年に石大工の井行元(いのゆきもと)が作った銘が残る水鉢は、五輪塔を加工したもの。宇陀市の文化財に指定されています。

>>大宇陀(宇陀松山)春日神社 Facebookページはこちら

宇陀松山の魅力6:道の駅 宇陀路大宇陀

宇陀路大宇陀

宇陀松山の観光の起点と言えるのが道の駅「宇陀路大宇陀」です。榛原方面からのバスの終点大宇陀バス停も道の駅の目の前にあります。

建物は2階建てですが、2階は会議室と研修室。1階には喫茶・軽食コーナー、物販コーナー、レストランがあります。また宇陀の情報コーナーも併設。トイレやATM、レンタルサイクルもあるなど宇陀観光の拠点になっています。

宇陀路大宇陀

さらに、敷地内には宇陀地域の阿騎野新鮮野菜直売所があります。地場で撮れたての農産物が農家からの直売なので、リーズナブルに野菜の購入が可能。地元の人にも大人気。

宇陀観光のついでに、地元で採れた野菜を買ってみるのもよさそうですが、遅い時間だと売り切れる可能性があるので早目に買いに行きましょう。

宇陀路大宇陀

道の駅 宇陀路大宇陀には温泉に関する施設があり、温泉好きにはたまりません。これは道の駅のすぐ近くにある源泉井戸から湧いているもの。まず施設の左横には無料の足湯があります。ちょっとリラックスしようと旅の疲れを癒すのに最適。

さらに、温泉スタンドも併設しており、40リットル100円で天然温泉の湯が汲めます。車で宇陀に来た際には、あらかじめ容器を用意して置き、ぜひ温泉の湯を手に入れて自宅で温泉三昧を楽しみましょう。

>>道の駅 宇陀路大宇陀 公式サイトはこちら

宇陀松山の魅力の温泉:万葉薬湯 大宇陀温泉 あきののゆ

あきののゆ

足湯や温泉スタンドではなく、ゆったりと大宇陀の湯に入りたいときには、万葉薬湯 大宇陀温泉 あきののゆに行きましょう。場所は道の駅から南西の方向にあたる心の森総合福祉公園内にあります。

車の場合は駐車場がありますが、送迎バスなどはないので、歩く際には坂を登る必要があります。

あきののゆ

大宇陀温泉の泉質はアルカリ性単純温泉で、神経痛、筋肉痛などの効能があります。館内には露天風呂があり、ゆったりとしたひと時が過ごせます。温泉はPH9.6というのが特徴。温泉から出ると肌が石鹸のようなヌメリが肌の汚れを取り除いてくれるので、湯から出たら肌がツルツルスベスベとなります。

それから見逃してははいけないのは薬湯です。こちらは宇陀の大和当帰を使った薬湯で、無色透明の天然温泉と対照的に、緑色した湯。入ったときから薬草の香が鼻を通じて感じられます。推古天皇の時代以来、薬の町として発展した宇陀の薬湯はおすすめです。

大宇陀温泉 あきののゆ

  • 住所:奈良県宇陀市大宇陀拾生250-2
  • TEL:0745-83-4126
  • 営業時間:10:00~21:00(20:30受付終了)
  • 定休日:木曜日(祝日は営業)
  • Facebook:大宇陀温泉 あきののゆ

宇陀松山の魅力のショッピング:久保本家酒造

久保本家酒造

宇陀松山には日本酒の酒蔵があり、それも複数の酒蔵があります。その中でも元禄15年創業の久保本家酒造の日本酒はお土産に最適。

ちなみに久保本家酒造のお酒「初かすみ」は、大阪市内の日本橋、難波に直営店を持っており、舌の肥えた酒呑みも納得の味わいです。

久保本家酒造

酒造りを始めて300年という老舗の酒蔵内に酒蔵カフェがあります。残念ながら現在休業中とのことですが、300年前の酒蔵の建物をリノベーションし、明治時代の座敷を利用しているレトロな作り。

また再開したら、古い町並みの雰囲気を味わいながら酒蔵カフェで美酒を呑みたいと思いました。

久保本家酒造 

  • 住所: 奈良県宇陀市大宇陀出新 1834番地
  • TEL:0745-83-0036
  • 営業時間:8:00〜17:00
  • 定休日:無休
  • 公式サイト:久保本家酒造

薬草・温泉・街並みなど歴史豊かな宇陀松山はもっと多くの人に知られてほしい穴場観光地

久保本家酒造

城下町や古い町並み、温泉や酒蔵は全国各地にありますが、古代から薬草の町として今なお薬園がある宇陀は独自の面白さがあります。

観光の目玉になるものが本当に多くありながら、観光資源の豊富な奈良にあり、さらに少し山奥にあるためか、まだまだ知られていない気がしました。

宇陀松山はもっと多くの人に知られてほしい穴場観光地です。

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万代正平

旅行が好きな旅人。日本国内は、北海道の網走、道東周辺から沖縄の八重山諸島・与那国島まで47都道府県すべて行ったことがあります。2020年2月までは毎年東南アジアに渡航しており、東南アジア10か国すべて訪問しました。海外では他にヨーロッパ(英国、ベルギー、アイルランド)アメリカ、中国、香港、マカオ、台湾、韓国への渡航経験があります。2020年春以降は、主に国内の旅行を中心に活動しています。

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