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神戸市御影(みかげ)をめぐる発見:その1

記事投稿日:2022/07/12最終更新日:2022/07/12

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酒造

御影は、「阪神間」にある神戸市東灘区の一区域を指す地名です。阪神間とは、文字通り大"阪"と"神"戸の"間"の地域を指します。20世紀の初め、大正期から昭和にかけて、「阪神間モダニズム」と呼ばれる近代芸術文化を醸成したことでも知られます。今回は、その「阪神間」の中でも、特に東灘区に注目してみましょう。

目次

日本一の長者村と呼ばれた住吉

香雪美術館
<元大邸宅の敷地内に建つ香雪美術館 ©Kanmuri Yuki>

開発当時、阪神間には高級住宅地が多く開発されました。今の神戸市東灘区にあたる地域もそのひとつです。東灘区の始まりは1950年、御影(みかげ)・住吉・魚崎の三ケ町村が神戸市に合併されたときでした。このうち特に住吉村は、富豪の大邸宅が並ぶことで知られ、明治後期から昭和初期にかけて「日本一の長者村」と呼ばれたほどでした。

「御影」「住吉」「魚崎」は駅名にも採用されていて、いまでも関西では身近な地名です。東の大阪と西の神戸を結ぶ鉄道は、阪急、JR、阪神の三路線で、北側からこの順にほぼ並行して走っています。阪急には御影駅、JRには住吉駅、最も古い阪神路線には、御影、住吉、魚崎の三駅が存在します。

三本足の八咫烏(やたがらす)を紋とする弓弦羽神社

弓弦羽神社
<右の塀が香雪美術館、左が弓弦羽神社 ©Kanmuri Yuki>

阪急電鉄御影駅の南側には、朝日新聞を創業した村山龍平の邸宅跡がいまも残っています。広い敷地内には、村山氏が収集した数多くの美術品を収める香雪美術館も置かれていますが、現在は改築工事のため長期休館中となっています。

弓弦羽神社
<弓弦羽神社 ©Kanmuri Yuki>

この香雪美術館のすぐ西隣に鎮座ましますのが、1200年もの歴史を誇る弓弦羽(ゆづるは)神社。後述する多くの造り酒屋が信仰する神社でもあります。

最近ではフィギュアスケートの羽生結弦選手と名前が似ていることから注目されることが増えましたが、その起源はもちろんスケートとは何の関係もなく、「神功皇后が、忍熊王がむほんを企てたのを知り、この地に軍を置き、戦勝を祈ってその背山に熊野権現を勧請したのが縁起(御影郷土資料室展示より引用)」とされています。

熊野大神の神使は三本足の八咫烏(やたがらす)で、同神社でも「弓弦より解き放たれた矢に」乗った「みちびきの八咫烏」を紋として使っています。(同神社立て札説明より)

>>弓弦羽神社 公式サイト

「御影(みかげ)」の起源

実は、上述の弓弦羽神社の縁起に出てくる神功皇后は、一説には、御影(みかげ)という地名の起源にも関わったとされています。曰く「14代仲哀天皇の皇后・神功皇后が三韓出兵からの帰り、御影の浜に上陸され、そこに湧く美しい泉にその御姿を映されたことから「御影」という地名がつけられた」(御影郷土資料室展示より引用)というのです。

沢の井
<神功皇后が御姿を映したという湧水 ©Kanmuri Yuki>

この言い伝えの湧泉は、いまも阪神御影駅近くに「沢の井」として残っています。改札口から少し西の高架下にスポットが設けられており、石碑には同様の主旨が刻まれています。水に触れることはできませんが、清水を見ていると不思議と心が落ち着く場所です。

灘五郷と後醍醐天皇

沢の井
<沢の井 ©Kanmuri Yuki>

沢の井の碑にはもうひとつ興味深い言い伝えが刻まれています。南北朝時代にこの沢の井の水で作った酒を後醍醐天皇に献上したところ「たいそうよろこ(嘉)ばれて酒を納められた」ため、「その時からこの辺りの酒造家は「嘉納」という姓を名乗った」というものです。

水車
<灘の酒造りを支えた水車 ©Kanmuri Yuki>

「嘉納」と聞いて、ピン!とくる人は、なかなかの神戸通!実は、灘五郷のひとつである御影郷には、嘉納家が創業した酒造会社が2社存在します。ひとつは1659年創業の菊正宗酒造、もうひとつは1743年創業の白鶴酒造。後醍醐天皇の在位期間は14世紀前半でしたから、時代の隔たりも大きく、直接の関連は不明ですが、次に御影郷のお酒を飲むときは、後醍醐天皇に献上されたお酒の味を想像してみたくなる逸話です。

日本遺産となった酒どころ

酒蔵
<臨場感あふれる展示 ©Kanmuri Yuki>

日本酒好きの方には、酒蔵巡りもおすすめです。灘には無料で見学可能な酒蔵が複数あり、どこもそれぞれ趣があります。上の写真の白鶴酒造資料館は、大正初期から昭和44年まで実際に使っていた酒蔵を利用して伝統的な酒造りの工程を説明しています。

酒蔵
<伝統の酒造り ©Kanmuri Yuki>

また、古い技術だけでなく、現代のプロジェクト紹介も興味深いものです。例えば、白鶴社オリジナルの酒米「白鶴錦」の稲わらを用いて制作した畳の座り心地を試すコーナーなどもおかれています。利き酒のできる酒蔵も多く、売店にはお酒を使った化粧品やスイーツなども並びますから、お酒を飲まない人も楽しむことができます。

興味のある方は、ぜひ灘五郷酒造組合サイトなどを参考にしてください。ちなみに、阪神間では、伊丹も灘に並んで酒の名所として知られています。2020年には、伊丹と灘五郷が日本遺産に認定されたところです。

>>灘五郷酒造組合 公式サイト

>>「伊丹諸白」と「灘の生一本」 | 日本遺産ポータルサイト

白鶴酒造資料館
<白鶴酒造資料館入り口 ©Kanmuri Yuki>

白鶴酒造資料館

  • 住所:兵庫県神戸市東灘区住吉南町4-5-5
  • 開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
  • 休館日:お盆・年末年始
  • 入館料無料
  • 公式サイト:白鶴酒造資料館

続く「その2」では、御影郷の白嘉納家が設立した美術館や、阪神間モダニズムを代表する建築物を紹介します。

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