公開日:
最終更新日:
【イタリア】チェルタルドという要塞都市
目次
1. ローマからチェルタルドへ日帰り
2010年の冬の日曜日にローマから279km北、フィレンツェの南西50kmにあるチェルタルド(Certardo)という美しいトスカーナの山岳要塞都市に行ってきました。
トスカーナ地方には、中世の趣が色濃く残る都市がたくさん存在します。この街に行ったのは日本からの調査依頼があったからでしたが、インフラが整備されていないので観光客を誘致するにはかなり難しい場所でした。しかし、イタリア在住の者には静かな中世の要塞都市をブラブラして、ミシュランの一つ星のレストランで食事ができるという大満足の街でしたので、楽しむことができ、満足しながらローマに帰りました。
しかし、私のこの街のプロモーションが悪かったのか、そもそも日本側にこの地域の中世都市にこれ以上興味がわかなかったのか...未だにこの街に行くツアーはありません。
<小高い丘の上に、旧市街である要塞都市がある>
大抵のトスカーナの山岳都市は名前が示すように小高い丘にあり、近代になって人口増加に従って新市街が下の平地に広がっています。
2. 中世の世界へタイムスリップ
新市街からは上の写真のような小さなケーブルカーで結ばれています。このケーブルカーがタイムマシンの役目をしています。いざ!中世の世界へタイムスリップ!!
<街の中心であるボッカチオ通り>
この街は、14世紀イタリアの偉大な詩人で「デカメロン」の著者、ボッカチオが住んでいた街として知られています。彼はフィレンツェで生まれましたが、両親がナポリへ転居した時に引っ越しをしました。そして、最終的にはこの街に住みついたのでした。
ケーブルカーを下りて街を取り囲む壁の中へ入ると、ボッカッチオ通りが長く真っ直ぐに伸びています。
3. 赤玉葱のお話
他にこの街を有名にしたのは、チェルタルドの赤玉葱が、スローフードの箱舟品目にも指定されたことです。プレトリオ宮殿の近くの一つ星レストラン『オステリア・デル・ヴィカリオ』でも玉葱料理が出されます。私は玉葱は根っこだと思っていましたが、根ではなく葉の根元が養分を蓄えて丸く太ったものだそうで、鱗茎(りんけい)と言うそうです。
そのレストランで昼食を取りましたが、あまりに美しい料理だったので、玉葱がつかわれているのかどうか気にせずに食べてしまいました。写真だけ撮ってきましたのでご覧下さい。
4. チェルタルドの歴史
チェルタルドの街の歴史は相当古く、5~6世紀のロンゴバルゾ族が跋扈した時代にさかのぼります。12世紀になってアルベルティという貴族が支配者になり、ここに次々と新しい建物を立てました。しかし、フィレンツェとシエナの戦争に巻き込まれ、農民の逃亡が重なり、生活が苦しくなったアルベルティ家は、1209年とうとうこの場所から逃げ出すことになります。
そしてこの土地がチェルタルドと名づけられ、新たに生まれ変わりました。小さな街ですが、壁の中に一歩踏み込んだ途端に、中世の雰囲気が目の前に広がり、街というより貴族アルベルティ家が残した美しい歴史遺産という感じがします。
<毎年、松明が灯される>
毎年、この街ではヨーロッパ中の大道芸人の祭典があります。街灯のかわりに松明が灯され、まるで中世にタイムスリップしたような雰囲気が味わえるらしいのです。
<陶器が壁に飾られている、プレトリオ宮殿>
<宮殿の屋上にある時刻を告げる鐘>
5. チェルタルドの姉妹都市、群馬県の甘楽町
これも知られていませんが、チェルタルドは群馬県の甘楽町(かんらまち)と姉妹都市提携をしています。
中学生レベルの学生たちがお互いの街を訪問し、ホームスティを通じて交流をしています。日本に住んでいる若い世代に対して、イタリアがいかに古い街並みを保存して子孫代々に伝えようとしているのかということを理解してもらうのは素晴らしいことだと思います。
日本は、すぐに古い街並みを再開発という建前のもとに取り壊し、近代的というか味気のない街に変えてしまいます。古くて伝統的なものを守り育てるという意識を、少しでも若い世代にもってもらえれば無駄ではなかったように思います。
以下は街の宣伝です。
『甘楽町では "道の駅・甘楽" にてチェルタルドのあるトスカーナ州の雰囲気を味わうことができます。"道の駅・甘楽" ではチェルタルド市から直輸入したワインやオリーブオイルの直売コーナーがあり、ワインボトルを使った照明に照らされた店内では、毎月20日は"ワインの日" と定め、日本ではここでしか手に入らないワインを紹介しています。』
お近くにお住まいなら、ぜひチェルタルドのワインをご賞味ください。
6. いつもの余談(チェルタルドとは無関係)です
蚊はハイテク能力でできている
みなさんは蚊に刺されるほうですか?それとも蚊に刺されることはありませんか??
私は若いころ、と言っても50年ほど昔になりますが、よく蚊に刺されて、痒いから掻きむしって刺された箇所の周りが腫れることがしばしばありました。しかし、30代後半からどういう理由か分からなかったのですが、蚊に刺されることはなくなりました。普通の人なら、良かったなで、済ますのでしょうが、私は、これには何かあると原因を究明しようといろんな文献や蚊に関する論文を読みました。
そこで、分かったことは、人間を刺すのは蚊の雌だけで、それも出産を控えてエネルギー補給しなければならない雌だけだということが分かりました。
また、蚊の針は人間には無痛で、蚊が止まって血を吸飲しているところを視認して分かるのが大半で、血を吸われている人間にはほとんど分からない。
蚊はストロー状の針と2本のノコギリ状の針を微細に上下に振動させながら皮膚をサクサクと切り裂き、針全体を皮膚の中に差しこんでいきます。 この6本の針束は、直径約80μmと髪の毛1本分の細さしかなく、皮膚の痛点を避けることができるため痛さを感じないのです。 最近、この蚊の針をヒントに痛みの少ない注射針が開発されました。この針は液を注入する針と2本のノコギリ状の針の計3本からなり、蚊の刺し方をマネた微細上下運動で刺すことにより痛さをやわらげることが可能になったのです。
蚊の針は素晴らしいハイテク技術のかたまりだったわけです。また、この技術を応用して血液検査と点滴の時に使う針の大きさも何とかして欲しい。
私の静脈は男にしては皮膚の深いところにあって、血液採取のときに若い看護師さんだと何回も失敗して、その都度、ごめんなさいと言いながら、私の腕にグサグサと針を刺すのです。これって、本当に痛いのです。ごめんで済むなら警察はいらん!!(笑)
さて、蚊に刺されない人とはどういうことかが、最近分かってきました。雌のお母さんの蚊は飛びながら近赤外線カメラの目を通して、皮膚の血管を造影して、血流に障害のない、正常な血液を選んで、ターゲットを決めているのだそうです。これは、蚊に刺されるということは、蚊のお母さんのする血液検査に合格したということです。
蚊のお母さんは、命がけで我が子のために人間に近づいて、血を吸うわけですから、問題のある血液を吸うわけにはいかない。また、上記のように蚊の針は極細だから、コレステロールのような不純物が血に混じっていたら、針が詰まってしまって死活問題になります。だから、サラサラの血液でないと、蚊のお母さんとしては許せない訳です。反対に言うと、蚊のお母さんに嫌われたら、血液に問題があるということですね。
私は蚊に刺されないと喜んでいる場合ではない。すぐに、病院で血液検査をしてもらうべきなのです。
昆虫医科学という研究分野があるそうですが、今、蚊の近赤外線カメラの目の機能を医療に活かすように研究を進めているそうです。将来、私のように痛い思いをして採血しなくても、赤外線カメラの下に腕を出すだけで血液検査が出来るようになると思います。
蚊は様々な病原体を媒介して、人間や動物を殺してきたわけですが、一方ではこのようなハイテクで人類を救ってくれる一面もあります。蚊の針に、細菌が付着しているので、蚊が血を吸っているときに叩き潰すとその菌のついた針が皮膚の中に残ってしまうので、良くないようです。
蚊が満腹になって針を抜いた時に、叩き潰すのが細菌を移されない良い方法だそうです。
以上、参考になれば。
関連記事
Rankingイタリア記事ランキング
-
ドルチェビータ
- 2003年より2011年までイタリア、2014年から2017年まで英国にいました。