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【岡山】備中(びっちゅう)は知られざる魅力の宝庫だった(日本酒蔵・アート列車・観光)
<トップの画像:高梁市の吹屋の街並み>
こんにちは! たびこふれ編集部のシンジーノです。
岡山県に備中(びっちゅう)という地方があるのですがご存知でしょうか。あなたは備中と聞いてどんなイメージを持たれますか?
「どこそれ?」「備前焼のとなり?」など、正直ピンとこない、という方も多いのではないでしょうか。
私は備中のお隣の備後(現在の広島県府中市上下町)で生まれたのですが、備中のことはまったく知りませんでした。しかし全国的にもさほど有名ではないここ備中エリアは、実は知る人ぞ知る魅力の宝庫だったのです。
この記事を読むと、日本にはまだまだ知られていない素敵なところがあるんだなぁと驚かれることでしょう。
この記事では備中の概要、豊かな日本酒文化、動く大原美術館「アート列車」、主な観光スポットなどをお伝えしたいと思います。(特に日本酒を中心にお話を進めます。)
目次
- 備中の基本情報
- 備中の日本酒とは?
- 備中の日本酒3種とおつまみを飲み比べ
- 動く大原美術館!井原鉄道「アート列車」
- 備中の主な観光スポット(倉敷・高梁市吹屋ふるさと村・水島コンビナート)
- 備中の魅力 まとめ
備中の基本情報
岡山県は、旧国名でいうと3つのエリアに分けられます。備前(県東南部)、美作(みまさか:県東北部)、備中(県西部)です。
もともとこの地方は"吉備の国"と呼ばれており、その吉備の国が備前、備中、備後の3つに分けられました。その後、備前が備前と美作に別れ、備後は広島県の東部に組み入れられました。
備中の主な町としては、南部に倉敷市があり、中部に高梁市(たかはしし)、北部に新見市(にいみし)などがあります。備中文化は中国山地を水源とする高梁川を中心に栄えました。
高梁川の上流は上質な石灰岩地帯で、ミネラルバランスに優れた上質な水に恵まれ、それがこの地域の酒造りを盛んにしていったようです。
備中の日本酒とは?
こちらは東京の新橋にある岡山県アンテナショップ(とっとり・おかやま新橋館)のお酒コーナーです。
どうでしょうか。これだけたくさんの種類のお酒が岡山で造られていることをご存知でしたか(これでもごく一部)。
岡山の日本酒は他の土地では目にする機会が少ないかもしれませんが、岡山県には多くの酒蔵があります。ほぼ家族経営の小さな蔵が多いため、全国に出荷するほどの量は造れず、全国に出回りませんが、こだわりをもって丁寧に日本酒を作っている酒蔵はたくさんあったのです。
備中のお酒の特徴とは?
ひとことで言えば、口あたり軽快なソフトな飲み口で、きれいな味わいのお酒が多いです。淡麗旨口(たんれいうまくち)のお酒ともいえるでしょう。
ただ備中のすべてのお酒がそうではありません。高梁川は上流と下流では水の硬度が違い、南部ではお魚料理に合うやや甘めのお酒、北部~中部では、猪肉のようなワイルドな料理にも合うどっしりとしたお酒が多いのです。
備中杜氏とは?
美味しい日本酒を造る条件は2つあります。ひとつは上質な水に恵まれ、もうひとつは良質なお米が穫れることです。備中はその両方を兼ね備えており、かなり昔から日本酒は造られていたようです。
史述では江戸の元禄年間(1688~1703)には造られていたことがわかっており、酒造りは脈々と受け継がれています。文化年間(1804~1817)に「備中杜氏」と呼ばれるようになり、明治20年頃には備中杜氏は100名を越していたようです。明治40年第1回全国清酒品評会において岡山の酒が優等賞第1位で入賞し、全国的に備中杜氏の技術の優秀性が知らしめられました。そして大正13年には540名もの備中杜氏が存在していたようです。
備中のお酒3種とおつまみを飲み比べ
今回、備中の日本酒3種類をいただく機会がありましたので、3種の飲み比べ、そしてそれぞれのお酒に合うおつまみをご紹介します。こちらがその3種の日本酒です。
左から、「渚のうた/嘉美心(かみこころ)酒造」、「十八盛雄町純米/十八盛(じゅうはちざかり)酒造」、「備州/白菊(しらぎく)酒造」です。
「おかやま備中杜氏の郷」のおちょこもいただきました。
おっ、かわいい。こういうおちょこは青色の丸い線二本が定番ですが、これはスマイルマークでした。楽しくお酒が飲めそうですね。ちなみに、この青色は日本酒の色を見極めるために付けられているそうです。
それでは、まず十八盛雄町純米(倉敷市)から。香り抑えめで、コクとキレのバランスの良いお酒です。
十八酒造は「食中酒を造りたい」の信念の下、1.穏やかな香り、2.米の旨みを活かした豊かな味わい、3.呑み飽きしないキレ、の3つにこだわったお酒を造っておられるそうです。
最近では香りフルーティーでよくも悪くも主張の強いお酒が流行っていますが、おつまみをじゃませず、でしゃばらない、でもしっかり器の大きいお酒はいつまでも飲み続けられます。
そしてこちらに合うおつまみは・・・
手作りハム・健康王国(新見市)のドライポークです。
ビーフジャーキーのようなスパイシーかつスモーキーな香りと旨みのあるおつまみです。ビーフジャーキーほどしょっぱくはなく口に含んだ時は硬めですが、すぐホロホロととろけてじゅわっと肉の旨みが口の中に広がります。
この強い味を十八盛雄町純米が、けんかせずしっかりと受けとめて交じりあい、それぞれの良い所を引き立てます。成熟した食中酒だからこそできる技でしょう。お米は岡山を代表する酒米「雄町」です。冷やしてもお燗でもいけます。
酒造好適米 雄町とは?
岡山の日本酒を語る上で外せないもの、それが「雄町」です。巷では「オマチスト」と呼ばれる熱烈な雄町ファンがいるほどです。
雄町とは4酒米のひとつで、交配の行われていない原生種のお米です。稲の背丈が高く病害虫に弱いため育てるのがとても難しく、現在も雄町米の約9割が岡山県で生産されています。雄町で造られた日本酒は野性味溢れ、香り穏やかで雑味が少なく濃厚なお酒になります。
では次のお酒に参りましょう。
渚のうた(浅口市)です。香りさわやかまろやか、ワイングラスで飲みたいようなフルーティーな日本酒です。"いかにも日本酒らしい"お酒が苦手な方にも好まれる味かもしれません。もっと甘いのかな、と思いましたが、甘みもさほど強いわけではなく、適度な酸味もあって、するっと飲めます。食米であるアケボノで醸したお米の旨みもしっかり出ています。
嘉美心酒造の酒造りの信念は、1.安全・安心、2.ごまかしのないこと、3.味の良いこと、4.品質に応じた妥当な価格、この4つを意識しているそうです。
今でこそ旨口酒がもてはやされていますが、過去日本の酒蔵の多くが淡麗辛口に傾倒した時もブレずに「旨口」を受け継いでこられた骨太の酒蔵です。
そしてこちらに合うおつまみは・・・
「王様のおやつ」イチゴのドライフルーツです。ワインやウイスキーに合うおつまみのようですが。。。
封を開けたとたん、イチゴの甘い香りが鼻にとどきます。パリパリのスナックのようではなく、セミドライでふわふわした柔らかい触感です。日本酒に合うのかな、と疑いつつ口にしたところ、「合う!」。白ワインとフルーツの組み合わせのようで渚のうたとイチゴの甘さと酸味が得も言われぬマリアージュです。
女性が好みそうな味です。渚のうたはワインのようなフルーティーなお酒なので、お燗には向かないだろうなと思いつつ一応お燗にしてみたら、意外にいけました。ただ軽快で香りだけのお酒でなく、しっかりした造り方をしているお酒だからこそでしょう。
では備中の日本酒3種飲み比べ、最後のお酒がこちらです。
備州(高梁市)です。見るからに「日本酒」というラベルですね。
ラベルの力強さと同様、3種の中では一番日本酒らしいお酒のように感じました。ひと口含んだとたん、日本酒の重み、ふくらみがどっときます。
日本酒が苦手な人は「うわっ」と感じるかもしれませんが、日本酒が好きな人は「うん、これこれ」というような味ででしょう。岡山県産の山田錦、雄町、朝日で醸したそれぞれの原酒を熟成させベストな状態でブレンドしたという(ワインでいうアッサンブラージュ)旨み、甘み、酸味がバランスよく奥行きを与えます。
冷はもちろん、お燗にしても味が崩れない骨太の味。アルコール度数も16~17度と高めです。しかし、一口めのインパクトが飲み進めるにしたがって口に馴染んでくるというか、よりまろやかさと膨らみが感じられます。ここがこの備州のすごいところです。
ちなみに白菊酒造の蔵名の由来は、酒が円熟する秋、日本を代表する花「白菊」にちなんで命名されたそうです。
さてこの備州にあうおつまみは。。。
シーチップス・ミックス 豆と魚です。
イワシ・アジの煮干、焼小えび、干しかれい、黒大豆が入っています。
よくスーパーなどで煮たような商品を見かけますが、全然違います。サクサクとパリパリの食感。ゴロッと大きな黒大豆。そのひとつひとつに素材の味と旨みが詰まっていて、日本酒と合わせると出汁が出てきているかのようです。お酒とおつまみそれぞれが双方の良いところを引きたて、補完しあって美味しい味を創っています。
3種の日本酒とおつまみを飲み食べてみた感想
ひと口に備中のお酒といっても、それぞれの土地の酒蔵ごとに特徴を持つバリエーションの豊かさに驚きました。またそれらのお酒に合うおつまみもこれまた幅広く、ドライイチゴが日本酒に合うとは思ってもみませんでした。
3種の日本酒に共通するのは「食中酒」ということです。つまみの味を殺さず、活かして、お酒自身もまた活きる。これが日本酒が本来持つ素晴らしい点だと改めて感じました。
動く大原美術館!井原鉄道「アート列車」
備中エリアでユニークな試みをしている鉄道会社、井原鉄道があります。
井原鉄道は岡山県総社市と広島県福山市の旧山陽道沿いを結ぶ第三セクターの列車です。
この井原鉄道の車両に倉敷の大原美術館が所蔵する芸術作品を約40点を装飾し、世界的芸術作品を気軽に楽しめる列車があります。それがアート列車です。
<アート列車:井原鉄道公式サイトより>
<アート列車 内部:井原鉄道公式サイトより>
絵画はすべて切手の姿になってアート列車の内と外を飾っています。
田園風景の中を名画に彩られた列車がゆったりと走ります。コロナに負けず、アートと鉄道と旅を愛するすべての人に夢と元気を届けたいという思いから、クラウドファンディングによって720万円を超える支援金を集め、このアート列車は実現されました。
備中の主な観光スポット(倉敷美観地区・高梁市吹屋ふるさと村・水島コンビナート・天文のまち あさくち)
さて、備中エリアのお酒やおつまみ、ユニークなアート列車などのお話をしてきましたが、「備中エリアの観光スポットは?」と思った方もいらしたでしょう。いくつかご紹介したいと思います。
倉敷美観地区
備中を知らなくても倉敷は多くの方がご存知でしょう。岡山の代表的な観光地倉敷は備中エリアにあります。白壁やなまこ壁の町並みが残り、大原美術館やアイビースクエアなどみどころ満載の倉敷美観地区、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋などでも知られています。十八盛酒造は倉敷市の児島(国産ジーンズ発祥の地)にあります。
吹屋ふるさと村
吹屋は、高梁市成羽町にある歴史的町並み地区で、金属を精錬・鋳造する職人や工場が吹屋と呼ばれていたそうです。 石州瓦とベンガラ漆喰壁の赤い町並みで知られており、重要伝統的建造物群保存地区に選ばれました。備州の白菊酒造は高梁市成羽町にあります。
>>吹屋ふるさと村のFacebookページはこちら
>>高梁市吹屋観光協会公式サイトはこちら
水島コンビナート
石油精製、鉄鋼、自動車などを基幹に日本を代表する重化学コンビナートとして発展を続けています。水島コンビナートの夜景は「夜景100選」にも選ばれていて、想像を超える美しさに感動し、人気を集めています。
天文のまち あさくち
<天文台>
嘉美心酒造のある浅口市は天文のまちとして知られています。
世界に誇る性能を持ち、外観も圧倒的な迫力を持つ天文台があります。天文台があるということは空気が澄んでいて星がよく見える所ということですよね。
備中の魅力 まとめ
備中についてお話してきましたが、いかがでしたか。岡山県の県西部を南北に流れる高梁川を中心に、酒づくりや文化が育まれ、歴史を刻んできました。
私も備中がこれほどまでに豊かで奥行きのあるエリアだと初めて知り、興味を持ちました。ぜひ一度現地に行ってみたいと思います。あなたもぜひ一度、備中を訪れてみてください。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。