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豪華な内装や建築を楽しもう! 東京の旧邸宅7選
東京というと現代的な高層ビルが建ち並ぶ大都会のイメージが強いですが、実はレトロな西洋建築が今も残る街でもあります。文明開化の昔から政治経済の中心として栄えてきた東京には、東京駅や旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)をはじめ、その時代を彩った美しい建築物が当時の趣を伝えているのです。
今回は、そうした都内の西洋建築の中でも、かつて個人の邸宅として建てられたものであり、気軽に一般見学ができる都内の旧邸宅についてご紹介します。天気のいい休日、都内の旧邸宅などを建物探訪して、タイムスリップした気分を味わってみては。
※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、施設によって営業時間の変更や休業の可能性があります。お出かけの際には、必ず公式サイト等でスケジュールをご確認のうえ、感染対策をしてお出かけください。
目次
当時の建築様式を楽しめる東京の旧邸宅
東京には歴史的・文化的価値の高い建築物がたくさんあります。明治以降、東京では西洋文化を取り入れた近代建築が次々と生まれました。煉瓦造りの駅舎や洋風建築の財閥の邸宅などに施された、細かな装飾の美しさは現代でも色褪せません。なかには、内部が見学できるだけでなく、カフェやレストランとして楽しめるところも!
最初の項目では、東京にある旧邸宅の魅力を3つのポイントで解説します。
旧邸宅には近現代の資料的価値がある
明治、大正、昭和初期に建てられた旧邸宅は、往時の西洋建築(主にイギリスやアメリカ、中にはスペインなども)や、現在では珍しい和洋折衷の建築様式で建てられており、往時の文化や暮らしを伝える、歴史的価値のある貴重な資料にもなっています(一部の旧邸宅は老朽化による解体・当時の建築をできるだけ復元したケースもあります)。そのため、旧邸宅の多くは、国や自治体の文化財に指定され、管理・保護されている場合が多いのです。
旧邸宅ならではのレトロな装飾を堪能できる
旧邸宅は、建築様式だけでなく、装飾や調度品も当時の面影のまま残っていることも魅力のひとつ。階段の手すりの細工や、壁紙、タイル、シャンデリアなど、細部に至るまで技巧を凝らしたこだわりがあり、どこを撮ってもフォトジェニック!
洋行帰りも多かったであろう方々の邸宅は、パリやロンドンの住居デザインを取り入れたハイカラなものが残されています。レトロな雰囲気やタイムスリップしたような感覚を楽しみたい人、アンティーク調のインテリアが好きな人にはぜひ、おすすめしたいスポットです。
現役の施設として楽しめる旧邸宅も
見学だけでなくカフェやレストラン、なかには美術館や資料館として現役で営業している旧邸宅もあります。
今回のちほど詳しくご紹介する7つの邸宅以外にも、柴又にある大正ロマンを感じる和洋折衷の邸宅「山本亭」では、日本庭園を眺めながらお茶をいただけますし、渋谷区松濤にあるレストラン「シェ松尾」も、イギリス人の私的な邸宅だった空間です。ゆっくりと食事やお茶をいただきながら過ごすことで、往時の暮らしをより身近に感じて堪能することができます。
東京都内の旧邸宅1:鳩山会館
<写真はイメージです。Photo by 写真AC>
文京区の護国寺駅と江戸川橋駅の中ほどにある丘の上に建つ、「音羽御殿(おとわごてん)」としても知られる洋館。バラが美しい庭園と開放的なサンルームで知られるイギリス風の洋館で、現在は、修復を加えて記念館として一般に公開されています。
鳩山会館の概要
日本の政界・教育界に功績を残す鳩山家の屋敷を一般公開している「鳩山会館」。内閣総理大臣を務めた鳩山一郎氏の邸宅として、関東大震災の翌年、大正13年に建てられました。随所にハトやミミズクなど鳥のモチーフが装飾されています。在りし日の鳩山一郎氏が、自由党(現・自由民主党)の創設を計ったり、日ソ国交回復の下準備を行なったりした舞台でもあります。
鳩山会館の見どころ
設計は、鳩山一郎の友人でもあり、「歌舞伎座」「日本赤十字社」「明治生命館」などを手がけた大正・昭和初期を代表する建築家、岡田信一郎。バラの庭を前に建つイギリス風の外観に、アダムスタイルの応接室、開放感あふれる大きなサンルームの窓、鳩がいっぱいのステンドグラスなど、見どころ多数。音楽会やアフタヌーンティーイベントなども時折開催されています。
基本情報
名前:鳩山会館
住所:東京都文京区音羽1-7-1
開館時間:10:00~16:00(最終入館 15:30)
休館日:毎週月曜日(ただし、当日が祝日の場合は開館とし、その翌日を休館日とする)
※1~2月、8月は長期休館を設けています。
※最新情報やアクセスについては、必ず公式サイトなどでの確認をお願いいたします。
公式サイト:https://www.hatoyamakaikan.com/index.php
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東京都内の旧邸宅2:旧岩崎邸庭園
<写真はイメージです。Photo by 写真AC>
数多くのドラマや映画の撮影に使われている「旧岩崎邸庭園」。お庭も和洋折衷で、大名庭園も一部踏襲しつつ、広大な芝庭を持つ近代庭園の初期の形を残しています。往時はプライベートな迎賓館として使われていたそうで、調度品も見事なゴージャスでクラシカルな空間が味わえます。
旧岩崎邸庭園の概要
東京メトロ「湯島」駅から徒歩3分ほどのところにある「旧岩崎邸庭園」は、三菱財閥の創業者である岩崎弥太郎の長男・久彌の本邸として1896年に建てられました。当時は約1万5,000坪の敷地に、20棟もの建物が並んでいたそうですが、現在は3分の1の敷地となり、洋館と和館、撞球場(ビリヤード場)が残されています。国の重要文化財に指定されています。
旧岩崎邸庭園の見どころ
設計は、「鹿鳴館」を手がけたイギリス人、ジョサイア・コンドル。17世紀のジャコビアン様式の装飾が随所に施されています。さらにイスラムやルネサンスのモチーフ、カントリーハウスのイメージなども取り入れられ、タイルや天井の装飾、調度品に至るまで、細部に三菱財閥の力を感じます。素敵な洋館とお庭を堪能した後は、お茶席でお抹茶がいただけますよ。
ちなみに、館内が撮影できるのは平日のみ(混雑回避のため)なので、写真に残したい方はご注意ください。
基本情報
名前:旧岩崎邸庭園
住所:東京都台東区池之端一丁目
開園時間:9:00~17:00(最終入園は16:30まで)
休業日:年末・年始(12月29日~翌年1月1日まで)
公式サイト:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index035.html
※2021年5月18日現在、臨時休園中。最新情報やアクセスについては、必ず公式サイトなどでの確認をお願いいたします。
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東京都内の旧邸宅3:小笠原伯爵邸
新宿区の大江戸線「若松河田」駅にある「小笠原伯爵邸」は、レストランやカフェとしても利用できます。小笠原伯爵の豊富な海外経験からくるモダンな生活や、芸術への造詣の深さが偲ばれる、当時の芸術の粋を集めた邸宅です。
小笠原伯爵邸の概要
昭和初期、1927年に小笠原長幹伯爵の邸宅として建てられたスパニッシュ様式の洋館で、2002年に修復されてよみがえり、レストランやウエディング利用ができます。設計は、「慶應義塾大学図書館」や「如水会館」など、数多くの大正・昭和戦前期の折衷様式を手がけた曽禰中條建築事務所です。東京都選定の歴史的建造物に指定されています。
小笠原伯爵邸の見どころ
クリーム色の外壁にエメラルドグリーンのスペイン瓦、天井にステンドグラスが施されたロビー、開放感あふれる回廊など、日本では希少な完成度の高いスパニッシュ建築です。なかでも、最大の見せ場は、華麗な装飾を施されたイスラム風喫煙室。内壁の装飾や大理石の柱、大理石で模様が描かれた床も、往時のままの美しさを誇っています。
基本情報
名前:小笠原伯爵邸
住所:東京都新宿区河田町10-10
営業時間(レストラン):ランチ 11:30~15:00、ディナー 18:00~23:00 ※予約制
休業日:都度、公式サイトにて毎月の営業時間をお知らせ
公式サイト:https://www.ogasawaratei.com
※最新情報やアクセスについては、必ず公式サイトなどでの確認をお願いいたします。
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東京都内の旧邸宅4:旧古河庭園
<写真はイメージです。Photo by 写真AC>
駒込にある「旧古河庭園」は、ジョサイア・コンドル設計による大正時代の瀟洒な洋館とバラの名所として有名です。洋館1階の喫茶室はカフェとして予約なしでも利用でき、洋館内部は1日3回、時間を決めて行われているガイドツアーに参加すると見学できます(往復ハガキで事前予約のこと)。
旧古河庭園の概要
西ヶ原の地は、もともと明治の元勲陸奥宗光の邸宅があった場所で、宗光の次男・潤吉が古河財閥に養子入りしたことで、古河家の所有になり、その後、古河家3代目当主・古河虎之助は近隣の土地を買い、敷地を約1万坪にして本邸建設をはじめました。
本館とバラ園のある西洋庭園をジョサイア・コンドルが設計し、1917年に竣工。洋風庭園に続き、池泉回遊式の日本庭園も完成させました。戦後、接収されたり、お化け屋敷のように荒廃したりした時代を経て、大規模な修復工事がなされ、1989年、今の状態に復元されました。2006年には国の名勝に指定されています。
旧古河庭園の見どころ
素朴で重厚な外観はスコティッシュ・バロニアル様式で、スコットランドの建築やイギリスの別荘建築に近いそうです。旧古河邸はコンドルの最晩年の設計で、1階がすべて洋室で主に接客のための空間なのに対し、2階は家族の居住空間で、寝室以外のすべての部屋が伝統的な和室になっています。
同じコンドルの設計でも、旧岩崎邸は和洋折衷様式なのに対し、旧古河邸は洋館内部に和室を完全な形で取り込み、巧みな構成で和洋の調和を図っています。和と洋を共存させる手法は庭園の配置にも見られ、旧古河庭園の大きな特色となっています。
基本情報
名前:旧古河庭園
住所:東京都北区西ヶ原一丁目
開園時間:9:00~17:00(最終入園は16:30まで)
休業日:年末・年始(12月29日~翌年1月1日まで)
公式サイト:https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index034.html
※2021年5月18日現在、臨時休園中。最新情報やアクセスについては、必ず公式サイトなどでの確認をお願いいたします。
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東京都内の旧邸宅5:東京都庭園美術館
引用:東京都庭園美術館 公式Twitterより
【休館中(~5/31予定)|艶めくアール・デコの色彩展】
-- 東京都庭園美術館 (@teienartmuseum) May 12, 2021
展覧会を楽しみに待ってくださっている皆さまへ、会場の様子をご紹介していきます。
ここは本館1階大客室。アール・デコの粋が集まった空間と艶やかなメタリックカラーに惹かれます。テラス越しに見る庭園の緑もご堪能ください。 pic.twitter.com/kdErklRDXu
朝香宮(あさかのみや)邸として建てられた本館は、日本におけるアール・デコ様式建造物の金字塔であり、「東京都庭園美術館」として敷地内にある茶室、正門とともに国の重要文化財に指定されています。首相公邸や白金迎賓館として使用されるなど紆余曲折を経て、1983年に東京都庭園美術館として開館しました。
都心とは思えない緑豊かな庭園と、モダンで優美な建物が人々を魅了し続けています。2014年には新館もオープンし、併設のカフェもあります。
東京都庭園美術館の概要
戦前にフランスに遊学された朝香宮ご夫妻の邸宅として、1933年に建造されました。壁飾りから家具、照明器具に至るまで、アール・デコ様式で装飾されています。
玄関、大客室、大食堂など主要部分の内装は、当時のフランスを代表する芸術家、ルネ・ラリックやアンリ・ラパンに依頼。基本設計は宮内省内匠寮が担当し、日仏が協力して作り上げた芸術作品のような建物です。本館は、アール・デコ様式を正確に伝え、昭和初期の東京の文化受容度がうかがえる歴史的建造物として、茶室や正門とともに国の重要文化財に指定されています。
東京都庭園美術館の見どころ
建物内は天井から床のタイルまで、建物全体がまさに「アール・デコの美術品」。特に、正面玄関のガラスのレリーフ扉は、フランスのガラス工芸家、ルネ・ラリックが朝香宮邸のためだけに特別にデザインしたもので、ここでしか見られない逸品です!
シャンデリア、ランプ、タイル、壁紙など、すべてが部屋ごとに意匠が異なり、細かく見ていくと時間があっという間に過ぎてしまいます。年1回のペースで美術館の建物自体にスポットを当てた「建物公開展」が開催され、内部の写真撮影もできますのでチャンスをお見逃しなく。自然光が差し込む新館1Fにあるカフェもおすすめです。
基本情報
名前:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5-21-9
営業時間:10:00-18:00
公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp/
※2021年5月18日現在、臨時休園中(2021年5月31日までの予定)。最新情報やアクセスについては、必ず公式サイトなどでの確認をお願いいたします。
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東京都内の旧邸宅6:渋沢史料館
<写真はイメージです。Photo by 写真AC>
北区王子にある桜の名所・飛鳥山公園の南側の一角は、明治から大正にかけて活躍した「日本資本主義の父」と呼ばれた実業家、大河ドラマ「青天を衝け」でおなじみの渋沢栄一が家族と暮らした邸宅があったところです。現在では渋沢史料館として、その一部が開放されています(現在は完全予約制)。
渋沢史料館の概要
1879年当初は別荘として、1901年から亡くなるまでの約30年間は本邸として暮らした邸宅で、およそ8,470坪の敷地に日本館・西洋館をつなぎ合わせた本邸を中心に様々な建物が建ち、「曖依村荘(あいいそんそう)」と呼ばれていました。
残念ながら屋敷の大半は戦火で灰燼に帰しましたが、大正期に建てられた2つの建物、洋風茶室「晩香廬(ばんこうろ)」と書庫の「青淵文庫(せいえんぶんこ)」だけが残り、ともに国指定重要文化財となっています。
渋沢史料館の見どころ
1917年に栄一の喜寿を祝って現在の清水建設が謹呈した洋風茶室「晩香廬(ばんこうろ)」は木造の平屋建てで、暖炉や薪入れ、火鉢などの調度品や、家具に至るまで細部に設計者のこだわりが映える建物です。
また、栄一の書庫兼接客の場として使われた「青淵文庫」は、傘寿と男爵から子爵に昇格したお祝いを兼ねて、竜門社(財団の前身)が贈呈した洋館で、渋沢家の家紋(丸に違い柏)にちなんだ柏の葉や、寿や竜の文字をデザインしたステンドグラスやタイルの美しさが見ものです。渋沢史料館は、栄一の偉業や人物像についてもより深く知ることができますので、ぜひどうぞ。
基本情報
名前:渋沢史料館
住所:東京都北区西ヶ原2-16-1
開館時間:完全予約制 10:00~12:00、13:30~15:30
休館日:都度、公式サイトにて開館カレンダーを公開
公式サイト:https://www.shibusawa.or.jp/museum/
※2021年5月18日現在、臨時休園中(2021年5月31日までの予定)。最新情報やアクセスについては、必ず公式サイトなどでの確認をお願いいたします。
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東京都内の旧邸宅7:三鷹市山本有三記念館
三鷹市下連雀にある「三鷹市山本有三記念館」は、渡米経験のある実業家の邸宅だったところを作家・山本有三が気に入って購入し、1936年から10年間、家族とともに住んだ洋館です。1996年に「三鷹市山本有三記念館」として開館しています。
三鷹市山本有三記念館の概要
「三鷹市山本有三記念館」はもともと、米国エール大学院を卒業し、大学教授も務めた実業家、清田龍之助が1926年に建てた邸宅でした。清田は実業界を退いたのち売りに出した洋館を、家族が増えて手狭になり、執筆に適した環境を探していた山本有三が1936年に購入しました。
有三は母と妻、4人の子どもたちと吉祥寺からこの下連雀の館へと移り、代表作「路傍の石」などを執筆しました。この洋館は進駐軍に接収され、有三はやむなく転居し、三鷹に戻ることがありませんでした。1996年に「三鷹市山本有三記念館」として開館。現在は、有三の生涯と作品を紹介する施設として、展覧会や朗読会も行っています。
三鷹市山本有三記念館の見どころ
大正末期に建てられた本格的な洋風建築。石を積み上げたような煙突や、個性的なデザインの3つの暖炉が見どころとなっています。当時の流行を取り入れるとともに、様々な建築様式が融合された希少な建物として1994年に三鷹市の文化財に指定されました。南側には有三記念公園(こちらは入場無料)があり、四季折々の花と緑を楽しむことができます。
基本情報
名前:三鷹市山本有三記念館
住所:東京都三鷹市下連雀2-12-27
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜日、年末年始(12月29日~1月4日)※ただし、月曜日が休日の場合は開館し、その翌日と翌々日を休館。
公式サイト:https://mitaka-sportsandculture.or.jp/yuzo/
※2021年5月18日現在、臨時休館中(2021年5月31日までの予定)。最新情報やアクセスについては、必ず公式サイトなどでの確認をお願いいたします。
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東京にも、当時の面影を残す旧邸宅は各地に残されています。現在のビルや住宅とはまったく異なる建築様式や、時を経ても色褪せない魅力を放つ装飾は、一歩足を踏み入れるだけでタイムスリップしたような感覚を味わわせてくれます。庭園やカフェを併設しているスポットもありますので、散策してみてはいかがでしょう?
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