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野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方~愛媛への旅(ジャバラ)
野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。
地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。
今回は愛媛県を旅しました。
目次
今回、旅のきっかけになったもの!
ある日、友達と東京の焼き鳥屋で飲んでいた時、「ビールから今度はジャバラロック飲んでまーす」とSNSに投稿したところ、すぐに「本物のジャバラを見たことがありますか?」とコメントが入りました。
<問題のジャバラロック>
「ないでーす」と返信したら、「今度送ります!」と。
えっ?全然知らない人からそんなコメント、大丈夫?
とりあえず、メッセージをくれた柑橘農家さんと連絡を取り合い、なんと最初のメッセージをもらった3カ月後には愛媛へ。実は愛媛は私が前から行きたかった場所でもあったのです!
高知にいる友達に運転をお願いし、いざ、新千歳空港から羽田空港を経由して松山空港へ。まだ雪がたくさんある北海道から、春の松山へ!暖かい!
<さすが!みかん王国ですね>
そう、今回の私の旅のきっかけとなったのは「ジャバラ」!
ところで「ジャバラ」ってみなさんご存知ですか?
和歌山県の北山村が原産の柑橘で、愛媛では昔から正月料理に欠かせない縁起物の食材。「邪気を払う」というところからこの名前がつけられたとか。
ユズや橙、カボスなどの仲間で、果汁が豊富。ユズなどとは違った風味があり、糖度と酸度のバランスがとれたまろやかな風味が特徴です。果皮には花粉症やアトピー性皮膚炎の抑制効果が期待されるナリルチンというフラボノイドの一種多く含まれているといわれています。
道後温泉を楽しんだ!
到着した日はお一人様でした。この日は観光客として、初めての愛媛を楽しもうと決めていました。ホテルにチェックインしてからすぐに向かったのは、行きたかった「道後温泉」です。
<昼間からの温泉は気持ちがいい!明治、大正、昭和、平成、令和と続く建物。たくさんの人が利用した道後温泉>
道後温泉は、3000年もの歴史を誇るといわれ、兵庫の有馬温泉、和歌山の白浜温泉と並ぶ日本三古湯のひとつ。愛媛県を代表する観光スポットとして有名です。
「道後温泉本館」は、夏目漱石の小説「坊っちゃん」に登場して一躍有名になり、「坊っちゃん湯」とも呼ばれています。1894年に建築された歴史ある建物で、街のシンボル的存在であり、1994年に国の重要文化財として指定されました。
宮崎駿監督の映画「千と千尋の神隠し」に登場する湯屋のモデルのひとつともいわれています。
<今はお休みしていますが「坊っちゃんの間」では、お茶とお団子がいただけます>
道後温泉本館の営業ですが、現在、休憩室がある2階以上は休館し、1階「神の湯」で営業(北側入口に玄関が変更)しながら、修理工事に着手しています(工事期間 2024年度まで)。
3年前にオープンした「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」は「太古の道後」がテーマ。道後温泉にまつわる伝説や物語などを「愛媛の伝統工芸」と「最先端のアート」をコラボレーションした作品で演出しています。「温泉の癒し」と松山・道後でしか体験できない、感性を刺激する新たな温泉文化を発信する拠点です。飛鳥乃湯泉の概要は、https://dogo.jpを見てみてください。
道後温泉
- 住所:愛媛県松山市道後湯之町5-6(道後温泉本館)
- TEL:089-921-5141(道後温泉本館)
- 公式HP:https://dogo.jp
温泉街にはいろいろな魅力的なお店が立ち並んでいます。地ビールの飲み比べや、ついつい買い食いをしていましました。
<焼肉じゃないよ!ぬれおかきです。串に刺しているのが斬新で食べやすい!>
<愛媛に来たんだから、みかんソフトクリームも食べないと!>
本当の旅の目的 その1
翌日は運転手役の高知県在住の野菜ソムリエのKさんと合流。レッツゴー!
実は、私が一番行きたかったのは「愛媛県農林水産研究所・果樹研究センター みかん研究所」なんです。ここは4ヘクタールもある敷地内で、既存の柑橘の研究や新品種の開発などを行っています。柑橘類の栽培ができない北海道民の野菜ソムリエとしては柑橘のことをもっと知りたいと思っていました。見るもの、聞くもの知らないことばかり。
<「南津海」は初夏から食べられる早生種の新しい柑橘>
<酸味があまりないのが特徴の「マイヤーレモン」>
一番見たかったのが愛媛の「ブラッドオレンジ」!
<果肉が赤みがかっているブラッドオレンジ!>
ブラッドオレンジは、果肉が赤いオレンジの総称で、文字通り血のような赤い色をしています。この色はアントシアニンによるもので、一般的なオレンジに比べて抗酸化作用が強いといわれています。これまでは主にイタリアから輸入されていました。
代表的な品種としては、「タロッコ種」と「モロ種」。国内では愛媛県や大分県、和歌山県などで栽培されています。
モロ種はシチリア島東部のカターニア平原で作られてきたオレンジで、ブラッドオレンジの中では最も赤みが強く、皮の部分にも赤みが出ています。果肉の色も最も濃く、初めていた人はちょっと驚くかもしれません。2~3月が食べごろです。
タロッコ種イタリアでポピュラーなオレンジで、ブラッドオレンジの中では最も甘みが強く、酸味もほどよくあってとても濃厚な味が特徴です。色はほんのり赤紫がさす程度です。3~5月が食べごろです。
<手前がモロ種で、奥がタロッコ種>
「みかん研究所」で聞いた話では、「日本では温暖化が進み、今の品種改良では追い付かない。ならば、海外でもっと気温の高いところで栽培されている柑橘を探したところ、イタリアのブラッドオレンジに行きつきました。もう10年ほど前からブラッドオレンジ栽培研究をしてきたんです」とのこと。
「桃栗三年柿八年」といわれますが、果樹は育ってからある程度の実が成るまでに時間がかかるから大変なんですね。
本当の旅の目的 その2
次は、今回の旅のきっかけを作ってくれた柑橘農家さんのミカン畑へ。いろいろな品種の柑橘を栽培しています。
柑橘の畑は日が当たってなんぼ! だから、すごい傾斜のところに柑橘の木が植えられています。
そして、私のために、採らずにおいてくれていたブラッドオレンジを収穫させてもらいました。
<収穫はハサミで丁寧に切り、さらに実の近くのところまで切りそろえます>
「ジャバラ」から始まった旅。ミカン畑に行ってみたいとずっと思っていましたが、こんな形で実現するとは思ってもいませんでした!
旅の思い出たち
ちょこちょこと立ち寄った直売所などで、愛媛県のキャラクター「みきゃんちゃん」が付いたお土産もしっかり買いましたよ。
<空港で飲んだみかんジュース>
<かまぼこにレモン果汁が入っているなんて初めて!>
<帰宅して安着祝いにつまんだのはこちら。コップ酒とね!>
今回は、柑橘といってもとてもマニアックな「ジャバラ」から始まる野菜ソムリエ的な愛媛の旅をご紹介しました。
2泊3日、もちろん鯛めしやじゃこ天、農家さんオススメの八幡浜ちゃんぽんなど、愛媛飯はちゃんといただきましたよ!
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吉川雅子
- 札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。