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【埼玉・飯能】顔振(かあぶり)峠:義経伝説と渋沢平九郎の悲劇の舞台
こんにちは! たびこふれ編集部、低山クライマーのシンジーノです。
みなさん、山、登ってますか?(きちんと感染予防対策した上で)山は気持ちいいですよ~。気分のリフレッシュができ、体力がついて免疫力もアップします。ところで、埼玉県に「奥武蔵」というエリアがあるのですが、どの辺りかご存じですか?
「奥武蔵」とは、西武池袋線~秩父線の飯能駅から西武秩父駅間を登山口とする山々と、東武東上線の小川町を拠点とする山々にまたがったエリアを総称してそう呼んでいます。このエリアの特徴をひとことでいうと「派手さはないけれど、渋い山が多い」です。標高も1,000メートル前後で、首都圏から日帰りしやすい手ごろな山が多いです。位置的に富士山を拝める山は限られてきますが、丹沢、奥多摩、筑波山、秩父、群馬、日光連山などを見渡すことができます。またシーズン中でもさほど混まない、静かな山歩きを楽しめる、どちらかといえば穴場的なおすすめエリアです。
今回ご紹介するのは、その奥武蔵エリアの中の「顔振峠(かあぶりとうげ)」と「ユガテ」です。
<顔振峠下山路から見える風景>
>>>【低山おすすめ】首都圏から気軽に行ける山登りルート15選の記事はこちら
目次
「顔振峠・ユガテ」コースとは?
位置的には、埼玉県飯能(はんのう)市と越生(おごせ)町をまたいだエリアに、顔振峠(かあぶりとうげ)とユガテはあります。しかしそれにしても「顔振峠」、「ユガテ」とは、なんとも珍しい名前ですよね。いったいどんな由来があるのでしょうか?
顔振峠(かあぶりとうげ)とは
源 義経が兄頼朝の追っ手から逃れて落ちのびてゆく途中、この峠にさしかかり、そのあまりの美しさに、何度も振り返ってその風景をみた、という伝説によって名づけられたそうです。また、幕末、新政府軍に追われて逃れてきた、幕府の振武軍の「渋沢 平九郎(渋沢栄一の養子)」が立ち寄って女主人に道をたずね、大刀を預けた峠の茶屋が今も残っています(後半でお話します)。
ユガテとは
標高290mの山上集落の地名。春には花が咲きほこり、「まるで桃源郷のようだ」といわれています。ユガテの名の由来には諸説あり、漢字では「湯ヶ手」や「湯ヶ天」と書かれ、湯にちなんだと見られる説もありますが、湯が沸いていたという歴史的記述はなく、なぜカタカナなのかもはっきりしません。ただ、この辺りは近くの「高麗(こま)」のように渡来人が住んでいたということからも、外来語に由来してカタカナ地名になったのかもしれません。
「顔振峠・ユガテ」コースへのアクセス
このコースの起点は、西武秩父線の東吾野駅または吾野駅です。今回は、景色のよさそうな顔振峠でランチ休憩をとりたかったので、東吾野駅出発にしました。
<吾野三兄弟(駅)のひとつ東吾野駅>
「顔振峠・ユガテ」コーススケジュール
コースタイムは、以下の通りです。
東吾野駅(8:15)・・・橋本山(8:50)・・・ユガテ(9:05)・・・エビガ坂(9:20)・・・蟹穴山(9:47)・・・越上山(10:30)・・・諏訪神社(10:50)・・・顔振峠到着「平九郎茶屋」で休憩(11:05~11:35)・・・ 顔振峠見晴台(11:50~12:05)・・・下山開始・・・吾野駅着(13:00)
総歩行距離:約11km
記号:・・・徒歩
標識も多く立っているので、間違えやすい箇所はほぼありません。道も歩きやすく整備されており、初心者でも安心して歩くことができるコースです。
※一部、越上山(おがみやま)には急峻な岩場がありますが、登らずに通り過ぎることもできます。
「顔振峠・ユガテ」コースの見どころ:山歩き日記
それでは、冬らしく空気が澄んだある晴れた日に、私が実際に登ったルートに沿ってたどってみましょう。
出発地点は、西武秩父線の東吾野駅です。西武池袋駅から1時間10分~30分。(途中飯能駅で乗り換えます。時間帯によっては直通電車あり)
山は最寄り駅からバス、タクシーなどで登山口に向かうコースが多いのですが、今回のコースは駅から歩き始め、駅に降りてくるという登山者に優しく、便利なルートです。
<東吾野駅>
駅を背に川を渡り、左に折れます。
車道沿いに歩いていると、ユガテ方面の標識が出てくるので、回り込むように、右に折れて入っていきます。
<ユガテ方面案内標識>
緑豊かな山里の情趣の中を、のんびり歩いていきます。「今日もいい天気、絶好の山登り日和です。」
武蔵野観音霊場三十番である福徳寺に着きます。
<福徳寺分岐>
二手に分かれ、どちらの道を取ってもユガテに行けるようです。私は右に登っていく「飛脚道」を選びました。飛脚・・・?早い・・・?距離が短く急登?「まぁ、行ってみよう!」
<山道>
登山道に入りました。
<杉並木を歩く>
そこそこ急ですが比較的歩きやすい道を、ずんずん登っていきます。
<山中のルート案内マップ>
二つのユガテへ向かうルートが、絵でわかりやすく書かれたマップが、木に貼ってありました。今度はもうひとつの道も歩いてみたいです。マップには英語、中国語、ハングル表記があります(タイトルだけ?意味ないやろ!笑)。外国の方にも人気のコースなのかもしれませんね。
<男坂、女坂分岐>
ここで、男坂と女坂に分かれます。男坂を登ると、橋本山見晴台に行けるようなので、迷わず男坂へGO!!
どの山も男坂の方が急登なのですが、ここはさほどでもありませんでした。
<橋本山>
8:50 橋本山山頂(標高321m)へ到着。山というより丘のようです。南側の眺望がGOODです。
<橋本山からの眺め>
まだまだこれからが本番です。先を急ぎましょう。
途中、きのこ園という小さな広場に出ました。「きのこ園」という文字が木の枝で作られているのがかわいいです。
<集落っぽいエリア出現>
山の中に炭焼き小屋通りのような道が開けてきました。
<ユガテ方面への分岐>
さらに標識に沿って、道を右に進むと・・・
<山上集落ユガテ>
山の中に平らな原っぱや畑が見えてきました。
9:05 ユガテに到着です(標高290m)。
<ユガテ中央の広場>
このユガテ集落には、なんと300年以上、11代も続いている民家が2軒、在るそうです。
<日本の農村の原風景が残っているユガテ>
<ユガテの森 ひまわり畑の看板>
今は冬なので、淋しい感じがしましたが、懐かしい昔の日本の農村のように、のどかで落ちつける雰囲気が漂っていました。ユガテは春には、梅、桜など花々が咲き誇り、「まるで桃源郷のようだ」と言われているそうです。この雰囲気に憧れて、都会から農業をやりに来る人もいるそうですよ。
<ユガテのトイレ>
なんとなくムーミン谷にありそうなトイレがありました。(ちなみにムーミンバレーパークも同じ飯能市にあります。関係ないとは思いますが。)
<続く山道>
ユガテを後にして、さらに歩みを進めます。
<エビガ坂分岐標識>
9:20 エビガ坂着。鎌北湖やスカリ山方面と、顔振峠方面(吾野駅、一本杉峠)の分岐点です。地図にもエビガ坂と出ているほどの場所ですが、柱に手書きで書かれているとは。。。しかも文字が消えかかっている(笑)。
木立の中、爽やかな山歩きを楽しめる道が続きます。
<茶嶽山(450m)>
山頂といえるほどのスペースもない所です。山の名前も地図に見当たりません。表示もカラーでお茶目な手書きです(笑)
<急な下り道>
プリティ(?)な山を越えたと思ったら一転、ロープが張られた急な下り坂もあります。
<木の根っこがへばりついた登り坂>
こういう道歩きにくいんですよね~。登山者泣かせ。
<蟹穴山(460m)>
今度は蟹穴山だって。しかも蟹の絵入りで(笑)。さっきの茶嶽山と同じ人が書いたのでしょうか。。。これも山の地図に載っていません。
エビガ坂を越えると尾根に出て、ところどころ木々の間から下界の街並みが望めるようになります。尾根歩きはホント気持ちいいです。山歩きの醍醐味のひとつです。
このように視界が開けて解放感のあるところでは、腰をおろしてひと休みしたくなりますね~。
南側に山々の眺望が開けます。
<尾根道>
今回のルートの中でけっこうハードだったのは、ここエビガ坂から越上山(おがみやま)までの尾根歩きの区間です。小さなアップダウンがなんども繰り返して、かなり歩いた感が得られました。
<古道って感じの趣きがある道>
昔の人もこの道を草鞋履きで歩いたんでしょうか。時代劇に出てきそうな雰囲気です。
<越上山登り口>
今回のルートで一番高い越上山(おがみやま)の登り口です。本道から逸れて登り、また同じ道を戻ってきます。
急峻な岩場が続きます。道も狭いので、山登りに慣れていない方はちょっと怖いかもしれません。
<越上山眺望>
山頂の少し下の所に、眺望の良い大きな岩場があります。
<越上山山頂>
10:30 越上山登頂(標高566m)。木々に囲まれてまったく視界がありません。残念!登ってきた道を下降りて本道に戻ります。ちなみに、この越上山は昔、雨乞いの山でもあったそうです。
<諏訪神社境内>
10:50 諏訪神社に到着です。
<神社トイレ>
諏訪神社には、立派なトイレがあります。このコースは奥武蔵エリアには珍しく、あちこちにトイレあるので女性にも安心です。
<顔振峠>
11:05 本日一番のメイン目的地、顔振峠(かあぶりとうげ)に到着しました。
源 義経が兄頼朝の追っ手から逃れ落ちのびてゆく途中、この峠にさしかかり、あまりの美しさに何度も振り返ってその風景を顧みた、という伝説から名づけられた顔振峠。あの義経も、この景色を見たのでしょうか。
<顔振峠「平九郎茶屋」駐車場からの風景>
では、動画でもどうぞ~
顔振峠には、茶屋がいくつか営業しています。奥武蔵グリーンライン(林道)上なので、ドライブ客やライダーの休憩場所にもなっているようです。私はその茶屋の中のひとつ「平九郎茶屋」で休むことにしました。
<平九郎茶屋>
この顔振峠の茶屋でのひとり宴を楽しみにしていました。二ヒヒ!さて、私が注文したのは・・・
天ぷら盛り合わせ(700円)。フキノトウ、かぼちゃ、さつまいも、にんじん、いんげん、写真からは見えませんが、後ろに大きいキノコ天が隠れています。振り塩で食べます。油が軽くて、フキノトウのほろ苦さが、絶品でした。もうビールがすすむ、すすむ。
肉そば(750円)。お店の人が「ごめんなさい、豚肉がなくなってしまったので猪肉でもいいですか?」「ハイ、もちろんです。ウエルカムです!」この山の中で、野趣あふれる猪肉っていいじゃないですか!肉は脂身がなく、やや硬めではありましたが、出汁と相まって滋味あふれ、ビールがすすむ、すすむ。後で、キノコの天ぷらもそばの中にダイブ!
ビールの突き出しに出てきたのが、漬物。塩味が効いてて、またビールがすすむ、すす・・・コホン、もういいか。
渋沢 平九郎とは
現在の埼玉県深谷市の豪農の子として生まれる。兄は尾高 惇忠(後の富岡製糸場の初代工場長)や尾高 長七郎で、渋沢 栄一とは従兄弟。姉・千代が渋沢 栄一に嫁入って義弟となり、その後、渋沢 栄一の見立て養子(跡取り)となって、渋沢性を名乗る。
明治維新時、旧幕府軍の彰義隊に兄らとともに参加し、内部抗争で彰義隊と袂を分かち、振武軍に参加。飯能の能仁寺を本営にしたが、新政府軍に大敗し、逃げのびていく途中にはぐれて、平九郎は顔振峠の茶屋に立ち寄って道を尋ねた。茶屋の女将は逃げ道として、秩父への道を進言した。平九郎は百姓に化けるため、大刀を茶屋に預けた。そしてなぜか平九郎は秩父方面へは行かず、越生方面へ下る。そこで新政府軍と遭遇し、小刀のみで勇敢に戦うも負傷し、川岸の岩の上で自刃する。享年22歳の若さだった。(ウィキペディアより抜粋引用)
平九郎さんは、色白長身のイケメンだったらしいです。そして神道無念流の使い手でもあったそうです。平九郎はその勇敢さから地元の人々に「脱走の勇士」として讃えられ、越生町黒山には「渋沢 平九郎自決の地」の碑が建てられているそうです。
その渋沢 平九郎さんの写真がこちらです。
なるほど、イケメンですね~。東武鉄道の越生駅に等身大の渋沢平九郎の写真が設営されていました(2021年6月時点)。身長174cm。当時としてはかなり長身ですね。
顔振峠から越生に下った渋沢平九郎
今回の山歩きは顔振峠から吾野駅に下るルートを通ったのですが、後日、平九郎の歩いた道をたどってみたくて越生側に下りてみました。平九郎茶屋の向いに顔振茶屋があります。
<顔振茶屋>
顔振茶屋の裏手に上がる道を登り、右に進むと見晴らし台、左に進むと黒山バス停に下る道があります。明確な表記はありませんが、自決の地の位置から見て、平九郎はこちらの道を下ったのではないかと思います。
<黒山バス停への道>
平九郎が生を終えたのは、1868年ですから、今から約150年前のことです。おそらく山道は当時とさほど変わっていないのではないでしょうか。顔振峠から歩くこと約1時間で、車道に出ます。そこから黒山バス停に向かう道沿いに「渋沢平九郎自決の地」の石碑が建っていました。自刃したと言われる岩もあります。
<渋沢 平九郎自決の地 石碑>
顔振峠から越生に下ってくる道の上で、常に蝶々が舞っていました。まるで私に道案内をしてくれているかのようでした。
さて、本ルートに戻りましょう。
顔振茶屋の裏手から右に登ったところに「顔振峠見晴台」があります。(往復約20分)
<顔振峠見晴台からの眺望>
見晴台はさほど広くなく、眺望も360度ではありませんが、私が登った時は、人が少なく、静かないい雰囲気でした。
こちらも動画でどうぞ~
では、充分顔振峠を満喫したので、下山します。(12:00)平九郎茶屋の左手に吾野駅へ下りる道があります。
<顔振峠から吾野駅への下山路>
この吾野駅に下る道からの景色が、また素敵でした。
連なる山々の右側に奥武蔵の雄「武甲山」が見えます。山々の手前に山上集落、畑が見えます。花の季節にはさぞ鮮やかに彩られることでしょう。
<下山道>
下りは、ひたすら吾野駅を目指します。約1時間の道のりです。
今回の行程で「今日で一番、男前の標識だな~」と思ったので、パチリ!
<渓流沿いの下山道>
ただひたすら下ります。時に車道を横切りながらひたすら。
<吾野駅>
13:00吾野駅へ到着です。これにて本日の山行は終了!お疲れさまでした。
顔振峠・ユガテコースのまとめ
この顔振峠、ユガテコースの特徴をおさらいすると、以下の8つです。
- アプローチが簡単(交通至便、駅から歩いて登り始められる)
- 道が整備されているので、初心者でも山歩きが楽しめる(越上山は岩で狭く足場が悪いので注意。登らずスルーすることも可能)
- 気持ちいい尾根歩きが楽しめる
- 小さなアップダウンを繰り返すので、けっこう歩いた感を得られる
- 顔振峠では、茶屋でゆっくり休憩できる
- ユガテでは、桃源郷を思わせる山上集落ののどかさに癒される(花の季節)
- トイレが充実している(福徳寺、ユガテ、諏訪神社、顔振峠(茶屋利用の場合))
- 義経伝説、雨乞いの山、渋沢平九郎ストーリーなど歴史的ロマンを感じられる
「この山に登った!」というよりは、穏やかな山村風景を見ながら山歩きを楽しみ、歴史に思いを馳せる、そんな魅力に溢れたコースです。春や秋の花の季節ももちろん良いですが、暖かい冬のひだまりの中、歩くのも気持ちいいでしょう。
西武秩父線の吾野三兄弟(東吾野駅、吾野駅、西吾野駅)の東側の山は、適度な高さで、尾根歩き、そして眺望も楽しめる、初心者向きのいい山が揃っています。おすすめですよ。
それではまた。低山、サイコー!
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。