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火山が作り出す自然の霊場「恐山」
青森県下北半島の名所と言って思い出すのは、マグロで有名な大間港と今回紹介する恐山ではないでしょうか。
恐山といえば霊場としての少し不気味な環境とイタコの口寄せで有名ですね。今回はその恐山の歴史と自然を紹介しようと思います。
目次
硫黄立ち籠める火山の風景
まずは恐山の自然から紹介します。
恐山と聞いて思い出すのは荒涼として、色の変わった湖に草木の生えない湖畔の景色。いかにも霊場と言うに相応しい景色が想像されます。
これは心霊現象ではなく、恐山が火山として生きている証であり、至るところから火山性ガスが噴出しています。群馬県・草津の白根山のような硫黄臭が充満しており、大量に吸ってしまうと頭痛や倦怠感といった中毒症状が出ます。
湖は宇曽利山湖(うそりやまこ)と呼ばれ、火山ガスのせいで湖畔に草木も生えず湖面は不思議な色を成しており、恐山特有の環境を形成しています。硫黄成分を含んだ水なので水中に金物や硬貨を長期間入れると変色していきます。
ちなみにこの「恐山」ですが、なんと!恐山という山は存在しません!!
宇曽利山湖とそれに付随する複数の外輪山によって形成されている山地の総称で「恐山」と言われています。自分も現地に行くまで、そういう山があるんだろうなぁっと思っていました。あのエリア全体で恐山なんですね。
絶えない信仰
次に恐山の霊場を解説します。
恐山といえば霊場としてのイメージが強いですよね。
古くから亡くなった方への供養の場として知られ、湖畔にある恐山菩提寺が建立されたのがおよそ9世紀頃。近代に至るまで信仰は盛んで、訪れる人それぞれが死者を思い念仏を唱えたり賽銭を投げたりする光景が連綿と続けられています。
霊場で有名なものといえばイタコによる口寄せも盛んですね。
イタコというのは亡くなった方の霊を呼び寄せ、霊と生きている者との仲介者となって交信をする巫女(みこ)のことです。日本古来から存在するシャーマンといっても良いかもしれません。イタコという呼び名は青森や秋田での呼び名で東北他県ではオガミサマやオナカマなどと呼ばれます。シャーマンそのものは日本中に存在しますが役割は皆ほとんど同じようで「祭事を行い、死者と交信し、生きている者に伝えること」を行います。
国の選択無形民族文化財にもなっているイタコですが、イタコになるには厳しい修行が必要なので、生活スタイルも変化している現代でイタコになろうと思う人も少なくなり、高齢化が進んでいるのが実情のようです。
ちなみに恐山のイタコですが、常駐しているわけではなく、青森各地から恐山開山期間中に出張してきているとのことです。行けばいつでも居て口寄せしてくれるわけではありませんので、訪れる方はご注意を。
火山の恩恵「温泉」
霊場としてちょっと怖い感じの恐山ですが、なんとここには「温泉」があります!!この恐山温泉は恐山円通寺境内にありまして、源泉掛け流し、無料で入れます。なんでも明治~昭和初期にかけて盛んに採掘された硫黄の掘削時に噴出したそうで、今でも訪れる人々の疲れを癒しています。
宿坊もあるので亡くなった方の供養も兼ねてゆっくり温泉に入って宿泊するのも良いかもしれませんね。
霊場としてのイメージが強い恐山ですが、そのおかげで不思議な色彩の湖が見られたり、温泉に入れたりと、火山の織りなす恩恵を感じることができる場所でもありますね。恐山は火山による自然とともに故人に思いを馳せることができる良い場所に感じました。
アクセス
下北半島は内陸部には鉄道がないので、バスか自動車で向かうほかありません。鉄道の場合、JR東日本の大湊線下北駅から下北交通バス恐山線で約40分(開山期間のみ運行)自動車の場合、約300台駐車可能の駐車場有り。
自転車の場合、山地で熊出没注意エリアなので気をつけてください。硫黄の吸い過ぎにもご注意を。
- 開山期間:5月1日~10月中旬 06:00~18:00、10月中旬~10月31日 06:00~17:00
- 入山料:500円
- 問合せ:0175-22-3825(恐山寺務所)
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鈴木勝彦
- 猫と歴史好きのフリーカメラマン。自転車で日本を旅した後、18年勤めた広告制作会社を辞めて海外を旅する。歴史・文化・祭事など探求していきます。