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【一歩先の京都】大切なコトを繋いでいこうとする人たち <丹波・丹後編>

記事投稿日:2021/01/08最終更新日:2021/01/08

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京都といえば、「清水寺」「金閣寺」「嵯峨野」「嵐山」など、いかにも京都らしいスポットが浮かぶことでしょう。

しかし、それらは京都のごく一部です。京都府は南北に長く(120km)、それぞれの土地が異なる気候、風土、異文化を持っています。

今回、初めて京都府の中部~北部に訪れました。昔の地名でいうと、丹波~丹後というあたりです。

そこでは、厳しい気候と風土が、上質の農作物や食材を生み出していました。京都府は75%が森林のため、耕作地面積が小さく、収穫量も少ないため、全国的には、農産物の知名度は高くありません。

その厳しい環境下で、昔からの伝統を守り続けている人、この土地の豊かさに魅せられ、外から移り住んでその灯を守り、つないでいこうと奮闘している人たちに出会いました。

ここの土地の豊かさ、人の豊かさは、これからの日本が進むべき道を示唆しているようにも思えました。この記事では、そのことをお伝えしたいと思います。

目次

京都府 中部北部の概要

京都府人口260万人の内、半数以上が京都市在住で、中部、北部の人口は少なく、日本全国のご多分に漏れず、過疎地域です。しかし、このエリアは「森の京都」「海の京都」と呼ばれています。

  • 森の京都:亀岡市、南丹市、福知山市、綾部市、京丹波町
  • 海の京都:宮津市、京丹後市、舞鶴市、与謝野町、伊根町

厳密な区分けで言えば違いますが、ざっくりいうと、森の京都が昔でいう「丹波」、海の京都が「丹後」地方とすればわかりやすいでしょう。

「森の京都」は、寒暖差の大きい気候により、甘くてコクのある豊かな農作物が採れますが、山間部であるため、北海道のように広大な耕作地はなく、農業のオートメーション、効率化、大量生産化は実践しにくいという事情があります。

「海の京都」は、日本海の若狭湾、舞鶴湾に面しており、カニ、ぶり、さわらなどの魚介類が豊富に獲れます。

>>>森の京都サイトはこちら

>>>海の京都サイトはこちら

では、今回実際に訪れた場所を順番に見ていきましょう。

ジビエ料理:厨房 ゆるり

南丹市美山町(なんたんし みやまちょう)は、イノシシ、鹿などの獣害に悩まされてきた土地です。

ゆるりのご主人 梅棹さんが、ジビエレストランを始めようと思ったのは、獣害を減らし、地域の農作物と農業を守りたい、という切実な思いからです。店名の「ゆるり」とは、この辺りの方言で「いろり」のこと。梅棹さんはご自身が目指していることをこう言います。「レストランでは、牛肉、豚肉、鶏肉をチョイスできたりしますよね。そのチョイスの中に、猪肉や鹿肉があたりまえにあるような、そんな社会にしたいと思っています」。若い夫婦の奮闘ぶりをこちらの記事でくわしく紹介しています。どうぞご覧ください。

>>>ゆるりの記事『【京都府美山町】厨房「ゆるり」の梅棹さんが、ジビエ料理を始めた理由』はこちら

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猪鍋、猪のミートボール、鹿のローストビーフ風、その他にも美山町産の食材が並びます。

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昔の町長宅だった大きな茅葺き屋根のお家が、厨房ゆるりです。3代目の若きご夫婦がジビエ料理を提供しています。

古民家宿泊:美山FUTON & Breakfast

山、川、日本家屋、懐かしい日本の原風景を味わえる古民家に宿泊できる宿。

オーナーは、茅葺き(かやぶき)職人でオープンは2011年。1棟貸しで、現在4棟あり(内1棟は別オーナーで運営を担当)

宿泊する方々は、家族連れが多く、特に夏が人気だそうです。今回見学した一番新しい古民家「美山EISA」の前の川は泳ぐこともできます。子供たちに大人気。また6月の夜には、蛍が舞い、秋には豊かな農作物を味わうことができます。

この宿に泊まると「そこで時間をともに過ごすという価値」に気づきます。旅とは、大切な人と思い出に残る時間を過ごすことかもしれません。

実際に泊まった人の行動を見てみると、宿を拠点にあちこちを観光しまくる、というのではなく、家の中で卓を囲んで座り、なにもせず、おしゃべりして過ごす人たちが多いそうです。

お客さんの層は、家族連れ以外にも同窓会、女子会などで使われることも多く、また、行動派には、サイクリング、竹細工や、かやぶき吹き体験もできるなどアクティビティも充実しており、外国人にも人気だそうです。

>>>美山FUTON & Breafastの公式サイトはこちら

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美山FUTON & Breakfastで、4棟めとなる一番新しい「美山EISA」。

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南国リゾートの雰囲気も漂う、お風呂は離れの中にあります。

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美山EISAの前にある川は泳ぐこともできます。

日本の原風景:かやぶきの里

イメージは白川郷や五箇山集落。ここ美山のかやぶきの里は観光地観光地しておらず、今も人々の、日々の営みが息づいていることが感じられます。

かやの葺き替えは20~25年に1度は必要で、その費用はなんと800万~1,000万円もかかるといいます(一部自治体から助成あり)。地元の人たちの努力と相互協力によって、日本海から京都へ続く「鯖街道」として栄えた往時の景観を後世に語り続けています。

>>>美山町観光情報サイト 美山ナビはこちら

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造られた観光地ではなく、人々の生活が今も息づいているかやぶきの里。台湾人旅行者がブログで紹介したところ、大人気になっているのだとか。

丹後の日本酒とフレンチのマリアージュ:橋立ベイホテル

丹後・丹波はレベルの高い日本酒どころでもあります。美味しい日本酒ができる環境(米が良く、水が良い)が揃っています。大量生産できないので全国的知名度は高くありませんが、すっきりした上品な酒を醸しています。

今回、海鮮アンバサダーであり、日本酒のソムリエでもある古田 豊弘氏に、丹後の日本酒と食(フレンチ)との融合という観点からお話を伺いました。

日本には美味しい日本酒がある、美味しい食べ物がある。それらを組み合わせることによって美味しさがさらにひきたてられる。ポイントは、どの日本酒が美味しいか、ではなく、相性の良い日本酒と食事をマリアージュする楽しみを知ることにより、日本酒も料理ももっと楽しめるようになる、という視点から、実際に具体的な組み合わせの提案をしていただき、日本酒とフレンチを楽しみました。

詳しくはこちらの記事でご紹介していますので、ご覧ください。

>>>記事『【京都】丹後の日本酒との組み合わせで、食事をもっと楽しむ方法!』はこちら

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<オードルブルの一例:レバーパテ、生ハムとモッツアレラ、ハタハタのエスカベッシュ(南蛮漬け)>

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<提供された日本酒の一例:玉川 純米吟醸 祝 2017BY古酒>

カニのセリ:舞鶴西港

今回、一般人は普段見ることのできない、舞鶴西港でのカニのセリを見学させていただきました。

セリには「セリ人」「帳面づけ」「出し子」という3つの役割があり、中でも一番黒子に見える「出し子」が、セリの要となる大事な役目なのだそう。出し子とは、カニを買い手にしっかり見せる人のことです。出し子の腕次第で、良いセリになるかどうか決まるのだとか。

セリの様子がわかる動画を撮りましたので、こちらをご覧ください。

<舞鶴西港のセリの様子動画>

無農薬、無化学肥料での野菜栽培:自然耕房 あおき

サラリーマンだったご主人が「無農薬、無化学肥料で農業をしたい」と言いだして、夫婦で20年前に大阪から京丹後市へ移住した青木さん。しかし、ご主人は5年前に突然亡くなりました。

どちらかというとご主人に連れてこられていた奥さんは、もともと農業は素人で、これを機に農業を辞め、大阪へ帰ろうと思っていたそうです。しかし、地元の人たちや、ここの野菜を買ってくれていた顧客の多くが「やめないでくれ!」「私たちが手伝うからどうか続けて!」と懇願され、その声に支えられながら、この地で野菜を作り続けていくことを決意したそうです。

無くなったご主人が、農業でなによりも大事にしていたのは「土づくり」。「農業へのこだわりはなんですか?」という質問に対し「こだわっていないところがこだわりです」。

この物語の詳しいお話はこちらの記事でお読みください。

>>>記事『【京都・京丹後】夫亡き後、妻が無農薬野菜を作り続けている理由』はこちら

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京丹後市で5ヘクタールの畑を持ち、野菜を育てている自然耕房 あおき。

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こちらが自然耕房 あおきの社長、青木 美恵さんです。

宮津天橋立の漁師料理:ととまーと

宮津湾の船小屋のすぐ前にあるシーフードデリ「ととまーと」。水揚げされたばかりの新鮮な魚が揃っています。漁船から直接届けられた魚を買って、好みの調理方法を伝え、その場で食べることもできます。

「魚は、しばらく熟成させてから食べると美味しい」という最近の流行に合わせるのではなく、「魚は新鮮な時に食べてほしい」という思いで魚を提供しつづける、若い漁師や仲買人の思いがつまったレストランです。

>>>「ととまーと」公式サイトはこちら

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お刺身定食。左手前からクロダイ、京さわら(淡いピンク)、やから(白身)、ブリ、タコ。

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ととまーとは船宿のすぐ目の前に建っています。

伊根の舟屋

230軒もの舟屋が現存する、全国でも珍しい地域。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、「日本で最も美しい村連合」にも加盟しています。舟屋とは、1階が船のガレージで2階が住居となっている、いうなれば水上コテージのようなものです。舟屋は母屋ではなく、離れです。舟屋は干満差の小さい日本海側でしか見られないそうです。数々の映画の舞台のロケ地として使用されました。伊根の舟屋は観光地ではなく、今なお漁師や住民の現役の生活の場として息づいています。

230軒の内、18軒は宿泊もできます。伊根町には魚屋はなく、漁港や漁師から直接魚を買いつけるので、その時期の旬の魚を味わうことができます。特にぶりは「日本三大ぶり」の漁場として知られています。その他にも岩ガキや、丹後ぐじ(アカアマダイ)などが有名です。

>>>伊根町観光協会のサイトはこちら

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<舟屋群を高い場所から一望できる展望台より>

薦池大納言(こもいけだいなごん):Italian Bar PIENO

「大きさ日本一」の大粒小豆を作られているのが薦池(こもいけ)という町です。

薦池集落は伊根町の北部標高250mに高地にあります。ここで採れる小豆が薦池大納言です。もともとは明治時代後半に、現在の京丹後市から持ち帰ったものとされ、一番の特徴はその「大きさ」です。一般的な大納言は、100粒で24~25gなのに対し、薦池大納言は100粒で36~38gあります。炊き上げることでその大きさは2~3倍にもなります。さらに特徴的なのは薦池地区でのみ連作できるという点です。他の地域では1年しか育たず、連作をするとどんどん粒が小さくなっていきます。しかし、その小さくなった小豆をまた薦池地区で栽培すると不思議なことに、大粒の大納言に成長します。薦池の土地だからこそ、この大粒小豆が生まれるのでしょう。

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<イタリアンバル ピエノで供されるぜんざい。小豆の粒の大きいこと!>

和知栗(わちぐり)のもんぶらん:菓歩菓歩(かぽかぽ)

「栗の匠」山内 善継さんの栗を使ったもんぶらんで有名なお店「菓歩菓歩」。

丹波栗は丹波地方で育つ栗の総称で、その中でも和知(わち)地区で収穫されたものが「和知栗」と呼ばれます。

山内さんは16歳から栗作りを始めます。親子三代にわたり受け継がれてきた栗農家で、自然の力と栗の持つ可能性を100%引き出す栽培方法の研究と実践を積み重ねておられます。栗というのは、放っておいても美味しくならないそうです。太陽の光を当てると甘くなるため、美味しい栗を育てるには、間引きや日当たり調整など、丁寧で細やかな栽培が必要となります。また栗はとても虫がつきやすい。山内さんは薬を使わずに虫がつかないように栗を作ります。その方法とは、チルド(1℃~ー1℃)で2週間寝かせることにより、虫がよりつかず、甘くコクのある栗を作ることができるようになったそうです。和知栗はそのようにとても手間がかかるため、生産量がとても少なく、「幻の栗」と呼ばれています。

その山内さんが丹精込めて作った和知栗で作られたのが、この「極上渋皮栗のもんぶらん」です。

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中を開いてみると。。。 

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見てください。スポンジがほとんどありません。渋皮栗は、あっさりと上品な甘さです。クリームも舌ざわりがとてもなめらかで優しい味です。白砂糖をつかっていないからか、甘みが嫌らしくなく、キレがよくのど越しがいい。

身体にすう~っとしみ込んで入っていく感じで、甘いものが苦手な方も、この芸術的なもんぶらんには魅入られることでしょう。

>>>菓歩菓歩の公式サイトはこちら

一歩先の京都 まとめ

「これだけ豊かな農作物、食材を生み出す土地でありながら、なぜ全国であまり知られていないのだろう。。。」

今回私が率直に抱いた疑問です。その理由として土地柄と人柄に関して、次の3つが挙げられるのではないかと思います。

  • 交通の便がよくない
  • 山間部のため、大量生産ができない
  • PRが上手でない

今回、実際にそれらに触れた私の感想としては、この場所で作られる栗、豆、米、酒、など、質の高い素材を絶やすことなく、どうか作り続けていってほしいと思ったことです。

日本は既にずいぶん前に高度経済成長を越え、少子高齢化、人口減の時代に突入しています。もう、ひたすら拡大志向の時代ではありません。

良いものを守り、育て、受け継ぎ、次世代へつないでいく、そのためには、安さや効率だけでなく、良いものを良いものとして認め、消費し、支援していくことを、消費者自身も理解しなければならないと思います。

「何に価値を見出すか」「本当の豊かさとはどういうものなのか」・・・

食べるものは生きていく上でとても大事。体は食べ物で作られていきますから。ただ空腹を満たす餌ではだめですよね。

日本人が、これからの時代に一番大切にしていかなければならないものが、この「森の京都」「海の京都」にはあるように感じました。

今回の訪問で、私はイタリアの小さな村で、脈々と良いものを作り続けている人たちや家族のことを思い出しました。

彼らは、商品を大量に作ってひと儲けしてやろうなんて思っていない。その素材の良さ(価値)を認め、守り、次に繋いでいくことを重視していました。

良いものを作るには、大変な手間と労力がかかるものだと知っている。その手間を惜しまず、手を抜かず、丹精込めて作り続けている。それが忘れてはいけない、一番価値のあることだと知っているのです。

丹波・丹後で頑張っている人たちに会って、意外だったのは、こだわってモノづくりをしている人たちが、必ずしもその道のスペシャリストではない、ということです。

既成概念や業界常識に囚われず、自由にストレートに、自分がいいんじゃないのかな、といったことを試行錯誤しながら進んでいる若者も多くいました。

そういう人たちと接していると、清々しい、光のようなものを感じました。

あなたも「もう一歩先の京都」丹波・丹後に訪れ、これから私たちが進むべき道を考えてみてはいかがですか?

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この記事を書いた人
シンジーノ
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記事投稿日:2021/01/08最終更新日:2021/01/08

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