近代建築の宝庫!外灘の路地裏を歩く ~中国・上海~

上海観光と言えば絶対に外せないスポットである外灘(わいたん)。

上海を初めて訪れた観光客は誰もが外灘を訪れます。近代上海の繁栄ぶりを物語る建築を眺めてはその荘厳さに圧倒され、黄浦江を挟んで対岸にある超高層建築に目を移しては改革開放政策以来の中国の発展ぶりを感じます。上海の過去と現在を一目で見られる象徴的な場所でもあります。上海に長く住んでいる筆者にとっても外灘は特別な存在。定期的に足を運んでいる場所です。

観光客の多くは外灘の風景を楽しむ際、黄浦江の遊歩道を散歩して終了することが多いと思います。

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上海の歴史建築好きな筆者はそれに加えて外灘の裏通りを歩くことが多いです。このエリアは歩けばすぐに近代建築に出会える場所。外灘は外国政府の統治下にあった旧租界エリアであったため戦火を免れており、戦前からの多くの建築が残りました。本日はそんな外灘裏路地散策をご紹介します。

目次

まずは黄浦江の遊歩道へ

外灘の裏通りを歩く前に、まずは黄浦江の遊歩道から外灘の景色を見て見ましょう。この日(2020年8月)は、長らく続いたぐずつき天気が一掃されたかのような晴れ間の日で、青空と街並みのコントラストが本当にきれいでした。

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写真に写っている建物は全て租界時代に建てられたものです。左の白いドームを頂く建物は旧香港上海銀行(HSBC)上海支店、右側の時計台のある建物は江海関という税関の建物でした。時計台からは15分毎に短いチャイム、毎時00分にメロディが流れます。

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黄浦江を挟んで対岸にあるのが、中国の経済発展の象徴的な場所として皆さんの目に触れる機会も多い、超高層建築が建ち並ぶ浦東・陸家嘴。

今回写真を撮ったのは昼間でしたが、ここは夜に来ても本当にきれいです!遊歩道で黄浦江の両岸の景色を楽しんだら、緑の屋根がある建物を目指して遊歩道を降ります。

外灘観光道路 基本情報

  • 中国語表記:外滩观景大道
  • 住所:上海市黄浦区中山東一路
  • アクセス:地下鉄2号線「南京東路駅」6番出口徒歩11分

上海近現代史の生き証人的存在・和平飯店

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外灘の建築の中でも目を引くのがこちらの緑の三角屋根の建物。和平飯店(わへいはんてん、英名:ピースホテル)です。旧租界時代に、イギリス人商人ヴィクター・サッスーンが建てた、当時上海一、いや極東一との誉れ高い豪華ホテルです。開業は1929年。開業当時のホテルの名称は華懋飯店(フワーマオホテル・英名:キャセイホテル)でした。

サッスーン一族は香港や上海で主に貿易で財を成していましたが、事業を継いだヴィクター・サッスーン氏は不動産業、金融業で大成功。このホテル建築後は最上階に自身が居住していました。外灘にこのホテルより高い建物を建設することを拒んでいたといいます。

このホテルが伝説的存在である理由に、その豪華さに加え、国内外の数多くの政治家や映画スターといったVIPが宿泊したことにもあります。古くはチャップリン、近年ではクリントン元アメリカ大統領が宿泊しました。

過去に筆者が和平飯店のガイドツアーに参加した際に撮影した、一部利用客のみしか立ち入れないホテル館内の様子を数点ご紹介します。

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租界時代、上海の名士たちが集ったダンスパーティに使われたダンスホール。当時の床もそのまま残ってるいるのは上海で唯一ここだけという話です。

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高層階にある中華レストラン。インテリアは「西洋人が作った中国風設計」ということで、洋中折衷の設計になっているそうです。天井の細工が豪華絢爛ですね。

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和平飯店はオールドジャズバンドが有名で、毎夜ホテル1階のバーでは歴史あるジャズ隊の生演奏が楽しめます。

宿泊客でなくても、レストランやカフェの利用は可能。また1Fロビーの散策は自由にできますので、オールド上海の雰囲気を感じるためにホテル館内を歩いてみるといいですね。

上海和平飯店 基本情報

  • 中国語表記:上海和平饭店
  • 住所:上海市黄浦区南京東路20号
  • アクセス:地下鉄2号線「南京東路駅」6番出口徒歩11分

オールド上海の雰囲気たっぷりの上海老舗カフェ

これまでも上海老舗洋食店を当記事で紹介したことがありましたが、外灘エリアには上海老舗カフェがあります。今回ご紹介するのは1934年創業の「東海珈琲館」。

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和平飯店の裏通り、滇池路(ディエンチルー)にあります。現在ある「東海珈琲館」は創業当時の店舗ではありません。「東海珈琲館」は元々他の場所にあり、1997年に道路拡張工事の為に閉店しましたが、2018年にこの地にリニューアルオープンをしました。移転リニューアルと言っても、お店がある建物は1908年にイギリス系商社の社屋として建てられた建物。築100年を越えており、オールド上海の雰囲気をかもし出すにはぴったりの建物です。

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東海珈琲館の看板メニューはレモンパイ(柠檬攀)。昔ながらの製法で作られています。表面に生クリームで製造日が記してあるのも開業当時からの風習なんだそうです。この日は8月3日でしたので、3という数字が見えますね。

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筆者も今回初めて食べるレモンパイ。運ばれたパイにスプーンをさし入れてまずびっくり。想像をはるかに超えるフワッフワのメレンゲ生地だったのです。そしてパイの下の層にはレモンカスタード。と言ってもふんだんに使われた砂糖がレモン風味をかき消すほどの甘さ。何から何まで初体験の食感と味に驚きました。パイはレモンの他、チョコレートやパイナップル味もあるとのことで、次回は別の味を試してみたいです。

店内は食事もでき、この時は上海洋食の代表メニュー、上海の家庭料理にもなっているボルシチ(羅宋湯:ローソンタン)やお店の看板メニューのドイツ料理・アイスバインをオーダーしました。

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ボルシチは大きめに切った野菜や肉がふんだんに入っていました。アイスバインは一口大に切られ、食べやすくされて出されました。塩気がきいており、おいしかったです。

東海珈琲館 基本情報

  • 中国語表記:东海咖啡馆
  • 住所:上海市黄浦区滇池路110号
  • アクセス:地下鉄2号線「南京東路駅」5番出口徒歩9分

外灘路地裏散策スタート!

東海珈琲館の食事の後、今回の旅のメイン!外灘の路地裏を散策してみます。この辺りは租界時代が始まった1864年直後の時代からの建築が数多く残っており、少し歩くだけで歴史的建造物に出会えます。

旧中央銀行職員住宅

東海珈琲館脇に伸びる円明園路は、このエリア一帯の多くの道同様、1860年代にイギリス租界当局が整備した道路です。古い建築が建ち並ぶ中でも、ひときわ古さが感じられるこの建物は現在「滇池大楼(デイエンチダーロウ)」と呼ばれています。

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清の時代の1897年築。戦後間もなくは外灘に店舗を構える国営銀行の職員宿舎でした。現在は集合住宅として使用されています。

滇池大楼 基本情報

  • 中国語表記:滇池大楼
  • 住所:上海市黄浦区円明園路24号
  • アクセス:地下鉄2号線「南京東路駅」5番出口徒歩10分

租界時代の銀行本店が建ち並ぶ北京東路

円明園路を北上すると、北京東路と交差します。この道も租界時代の始まりと共に開通した道路です。道の東端にイギリス領事館があったため、開通初期は「領事館路」と呼ばれていました。北京東路の外灘付近は租界時代の銀行本店が建ち並び、現在もその当時の社屋が残っています。北京東路を西へ向かいます。

沙美大楼

こちらの建築は1921年築の沙美大楼(シャーメイダーロウ)。沙美銀行の本店だった建物です。沙美銀行撤退後はオフィスや集合住宅として使用されていましたが、10年ほど前から空き家の状態が続いているとのことです。

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沙美大楼の隣は旧浙江興業銀行本店。1936年築です。1907年に浙江省で設立された同銀行は中国で最も古い銀行の一つで、1920年代は中国の民間銀行で貯蓄高がトップレベルだったそうです。

沙美大楼 基本情報

  • 中国語表記:沙美大楼
  • 住所:上海市黄浦区北京東路190号
  • アクセス:地下鉄2号線「南京東路駅」6番出口徒歩10分

旧中国墾業銀行本店

沙美大楼の対面には旧中国墾業銀行本店があります。1932年築。租界時代の上海で一世を風靡した建築様式である、アールデコ様式の建物です。同銀行は1926年に天津で設立。1929年に本店を上海に移しました。

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旧中国墾業銀行本店 基本情報

  • 中国語表記:中国垦业银行旧址
  • 住所:上海市黄浦区北京東路255号
  • アクセス:地下鉄2号線「南京東路駅」6番出口徒歩9分

上海でたった2か所現存!北洋政府の国章がある旧塩業銀行本店

今回の外灘裏通り散策の中で筆者のお目当てだったのがこの旧塩業銀行本店。1915年に北京で設立されました。塩税を納める銀行として設立されたため、銀行名に「塩業」が入っています。

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塩業銀行は時の大総統・袁世凱のいとこが社長を務めた、半官半民の銀行で、中華民国の首都が北京にあった北洋政府の時代に特に強い勢力を誇りました。そうした背景からか、旧塩業銀行本店入り口の上には北洋政府の国章(国のマーク)が掲げられています。左に鳳凰、右に龍をあしらったデザイン。この国章は現在上海に2か所のみ現存しているという貴重なものです。

北京東路に立ち並ぶ銀行建築の主なものは見終わりました。更なる歴史建築を求め、香港路へ向かいます。香港路も租界時代の始まりと共に開通した道路です。

旧中国塩業銀行本店 基本情報

  • 中国語表記:盐业大楼
  • 住所:上海市黄浦区北京東路280号
  • アクセス:地下鉄2号線「南京東路駅」6番出口徒歩8分

中国系銀行の同業会・旧上海銀行同業界大楼

古代ギリシャ神殿を思わせるようなこちらの建物は1925年築。旧上海銀行同業界大楼です。

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19世紀終わりから中国資本の銀行の設立が相次いだことを背景に、1916年に当時の政府が銀行の同業界設立を働きかけました。1918年の上海銀行同業界正式発足時には12銀行が参加していました。1階ホールには上海小切手交換所が設けられ、上海全市の貸金業、銀行の小切手を取り扱っていました。1950年代に同業界は解散し、小切手交換所も廃止に。現在は上海市の建設会社が使用しています。

旧上海銀行同業界大楼 基本情報

  • 中国語表記:银行公会大楼
  • 住所:上海市黄浦区香港路59号
  • アクセス:地下鉄10号線「南京東路駅」6番出口徒歩10分

香港路を西へ向かい四川中路へ入ります。

租界時代のキリスト教の力を感じる旧上海中華YMCA

上海旧租界時代に入ってきた外国人の中にはキリスト教やカトリック教など宗教関係者の人たちも数多くいました。彼らの活動拠点として上海旧租界エリアを中心に教会や宗教関連施設が建てられました。四川中路にある旧上海中華YMCAもその一つです。YMCAとは「キリスト教青年会」の英文字表記の頭文字をとったもので、1844年にイギリスロンドンで発祥した組織です。

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旧上海中華YMCAは1907年築。その後別の場所に、より大きな上海中華YMCAの施設が完成した為、事務所機能はそちらへ移転。以降は主にYMCA系列の学校校舎として使われました。英語や商業のカリキュラムに力を入れた学校でしたが、その後学校再編があり、現在は上海の名門大学・同済大学の系列校となっています。

100年以上前のYMCAのロゴマークがひっそりと校舎の片隅にあり、往時を偲ばせます。

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よく見ると校舎正面入り口にもYMCAのロゴマーク跡が見えます。

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旧上海中華YMCA 基本情報

  • 中国語表記:同济黄埔设计创意中学
  • 住所:上海市黄浦区四川中路607号
  • アクセス:地下鉄10号線「南京東路駅」6番出口徒歩8分

外灘は表通りも裏通りも発見がたくさん!散策に行ってみましょう

このように、外灘の表通りから裏道に入ると、上海旧租界時代を偲ばせる建物がそこかしこにあるのが外灘路地裏めぐりの面白さです。今回の記事で紹介した建物は外灘の歴史的建築のほんの一部といっても過言でないくらい、このエリアにはまだまだたくさんの近代建築があります。外灘観光がてら、ぶらり路地裏旅もを楽しんでみましょう。きっと新しい発見があるはずです。

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阿信(axin)

上海在住9年目に突入、奥深い上海の路地を隅々まで探検する「上海ほじくり」にハマった阿信が上海の観光情報をお届けします。どうぞお楽しみに!

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