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【大阪めくり歴史さんぽ】都会の名庭園・藤田邸跡公園を訪ねる
私の地元・大阪の知っているようで知らない素敵な場所を、歴史書や物語のページを少しずつ"めくり"ながら、ご紹介したいと思います。
目次
藤田邸跡公園を知っていますか?
大阪めくり歴史さんぽ、第一弾は大阪市都島区網島町、オフィス街の大川のほとりに静かに佇む美しい日本庭園・藤田邸跡公園です。公園内には門扉があり、10時~16時まで無料で開放されています。(年末年始は閉園)
アクセスは、JR東西線の『大阪城北詰』駅が最も近く、3号出口を右折し、まっすぐ進むと、当時の栄華を偲ばせる立派な門が見えてきます。こちら側と、桜ノ宮公園側からでも入場する事は出来ます。またJR・大阪メトロ・京阪電車の『京橋駅』からも散歩がてら、高架沿いに歩いても15分程度ですので、高架下のお店で食べ物をテイクアウトして、都会の真ん中でピクニック気分も楽しいかも知れません。
こちらは、桜ノ宮公園側の門です。川の向こうには、造幣局があり、のんびりと散策を楽しんでいる家族連れや、子供たちがたくさんいました。
訪れた時は、蓮の花が見ごろでした。
傑物・藤田男爵と日本庭園
藤田邸跡公園は、その名のとおり、かって明治財界の風雲児と言われた藤田財閥の総帥・藤田伝三郎の広大な邸宅の一部を、JR東西線開通の際の資材置き場として大阪市が購入し、その後整備されたものです。2004年に自然の残る日本庭園として開園され、現在は市民の憩いの場になっています。
藤田伝三郎氏は、1841年現在の山口県萩市の醸造業の家庭に生まれ、一代で藤田財閥を作りあげました。ありとあらゆる業種の会社を経営し、今では誰もが知る大企業の多くの前身を築き、民間人初の男爵になります。今回、この記事を書くために、砂川幸雄さん著の『藤田伝三郎の雄渾なる生涯』(草思社刊)を手に取りましたが、とても、この小さな記事では語れないくらい波乱万丈で、スケールが大きく、魅力に溢れた人物だと思いました。
藤田伝三郎氏は、美術収集家としても、篤志家としても有名で、『徒手空拳から大富豪になったので「富者の楽しみ」と「貧困の味」をよく知っている』と語り、積極的に人材育成や慈善事業・寄付に努めた、と言われています。
明治後期、総面積が約53,000平方メートルあり『網島御殿』と言われた藤田邸。今は、その東邸は結婚式場を含む庭園が人気の料亭『太閤園』になり、西邸は空襲で焼失するも、建て替えられ大阪市公館になり、現在はその建物をレストラン『ザ・ガーデンオリエンタル大阪』として営業しています。
そしてもう1つ。藤田伝三郎氏といえば、美術収集家としても有名ですよね。私も、藤田美術館には、学生時代にとてもお世話になりました。それ故、藤田伝三郎氏に対して『茶道や東洋美術に造詣の深い人』というイメージでしたが、あくまでも、それは、ほんの一部であったと知り、驚きでいっぱいです。因みに、貴重なコレクションがご覧いただける藤田美術館は、2022年4月のリニューアルオープンに向けて工事中でした。少し、残念。でも、再開の日がとっても楽しみですね。
そして、公園の元になった日本庭園は、大阪で代々続く庭師の6代目・梅園梅叟(ばいえんばいそう)が10年以上の年月をかけて作庭。川沿いの平坦な土地をわざと高低差のある起伏に富んだ地形に、人工的に作り出しました。
橋は、残念ながら、安全のために渡れない状態がずっと続いていましたが、令和2年度以降、専門家による調査点検が行われるとのこと。ぐるりと回廊式庭園を楽しめる日もそう遠くないかも知れません。
▼旧藤田邸庭園
- 所在地:大阪市都島区網島町
- 大阪市ホームページ:https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000008801.html
自然の風に吹かれて、ティータイム
生い茂る緑の間に、大阪の高層ビルが、ひょっこり顔を出すのも、都会の真ん中にあるこの公園の魅力です。
こちらの本邸以外にも、別邸や別荘として、東京の椿山荘や京都の旧ホテルフジタ(現在のザ・リッツカールトン京都)、箱根の箱根小涌園があります。建築物としても庭園としても価値のある物ばかりなのが、藤田伝三郎氏の経済力だけでは無い、美的センスの良さを感じます。
公園の近くも、川や公園に囲まれており、道を一本入るだけで、別世界の様な静けさです。近辺には、先ほどの高架下以外にも、素敵なケーキ屋さんやレストランも多いので、とっておきのお店を見つけるのも楽しいかもしれません。
今回は公園から『大阪城北詰』駅方面に向かってすぐにある、かわいいパティスリー【C'est Bon(セ・ボン)】を紹介いたします。
ログハウス風の暖かい雰囲気の店内には、ケーキはもちろん、焼き菓子やオリジナルグッズ、かわいい雑貨もあります。そして、紅茶好きにはたまらないムジカの紅茶も。
たくさん自然の中でおいしい空気を深呼吸した後は、藤田伝三郎氏の「波乱でありながら、常に新しいもの美しいものを求め続けた人生」に思いを馳せながら、お腹いっぱい、おいしいスイーツと紅茶で満たされるのも幸せですね。
おすすめはシュークリームと、お土産に便利な個包装の網島まどれんぬです。バターの香りがたまらないおいしさですよ。
▼Patisserie C'est Bon(パティスリー・セ・ボン)
- 住 所 :大阪府大阪市都島区網島町8-16
- 営業時間:10:00~19:00
- 定休日 :月曜日
- TEL :06-7175-2375
- ホームページ:https://www.c-est-bon.com/sweets01.html
読んで、訪ねる醍醐味を。あなたもぜひ。
藤田邸跡公園は、日本庭園・都会のオアシスとしても充分魅力的な場所ですが、藤田伝三郎氏の伝記や、この場所を舞台にしたという近松門左衛門作の人形浄瑠璃【心中天網島】の戯曲に目を通した後に訪れると、また違った風景を感じることが出来るかも知れません。こんな時代だからこそ、企業ベンチャーのパイオニア・藤田伝三郎氏の屈さない人生に学ぶ事がありそうです。
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とうもと くみ
- 舞台観劇とスポーツ観戦(球技・格闘技)が趣味な、どこでも行っちゃう『インドア脳だけど、アクティブ派体験型トラベラー』です。旅しながら、少し昔の物語を書き続ける事が、夢。離島や、閉じられた館で事件が起こったり、時代劇の人情ものが大好物。