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最もイタリアらしい風景「オルチャ渓谷」を越え、シエナ人執念のワイン「モンタルチーノ」の町へ
こんにちは。元イタリア駐在員のドルチェビータです!
今回はイタリアのトスカーナ州にあるモンタルチーノのワインについてです。こちらのワインは昔のシエナの人々が作り上げたものです。
ワインだけではなくそのモンタルチーノへの行き方やトスカーナ州についても記載しました。
ワインの歴史は奥が深いので是非見てください。
目次
まずは首都ローマからトスカーナへ
ローマから車でA1の高速道路を北上すること160㎞、トスカーナ州シエナ県のコムーネの一つであるキユーシィ・キアンチャーノ・テルメで高速道路を降りて州道SP53/SR2を西に40㎞走ります。すると、トスカーナの美しい丘陵が文化遺産として登録され、さらに世界遺産であるオルチャ渓谷が見えてきます。
世界遺産であるオルチャ渓谷の中を走るので写真の通り景色はいいですね。
<オルチャ渓谷のシンボルである糸杉>
こんな風に糸杉が並んで見えるのもオルチャ渓谷ならではの景色です。
イタリアは道路先進国?
イタリアは古代からその領土の隅々までアッピア街道をはじめとし、舗装された街道を張り巡らしました。商業的インフラとしてだけではなく、地方に反乱や外部からの侵略があれば首都ローマから軍団をその地域に送っていました。歴史に現れては消えた帝国は多いですが、ローマほど道路インフラに力を入れた帝国はほかにはありませんでした。
そんな道路に関する歴史があるイタリアですが、残念ながら現在の道路のメンテナンスは充分とはいえません。高速道路は整備されていますが、それ以外の地方の道路はデコボコしているところがあります。
居眠り運転等の事故が起きにくい面では安全ですが、車の故障の可能性は高くなります。
実際に運転するときは気を付けましょう。
トスカーナの自然に癒やされてみませんか??
ローマのガヤガヤした喧騒から離れてたまには自然の中に身をおいてみるととても落ち着きました。
ここは私がイタリアの中でも最も好きな地方です。トスカーナ州の南部になりますが、ローマから160㎞程度という近さもありローマに住んでいると年に何回も訪れることができます。
この地方は鉄道がなくバスしかありません。巡る際はレンタカー等の車でまわると便利です!
<オルチャ渓谷の田園風景>
私は、この地方の田園風景がイタリアの中でも一番美しいと思います。北部の田園は広大な平野であり単調な風景になりますが、ここ一帯は起伏のある丘陵地帯で四季ごとに風景が変わります。春はまき小麦から始まり菜の花の群生、強い陽射しの下の向日葵、葡萄畑、オリーブ畑の斜面と変わります。秋には葡萄の葉の紅葉が見られ、秋の訪れとともにこの一帯が霧の中にすっぽり包まれる日が多くなります。厳しい寒さの冬の日も糸杉の一本が凛とした姿で立っています。
その昔はこの地方一帯は荒れた大地でした。人々は何年もかかってその大地に作付けして今のような田園風景に変えました。
この大地を愛した人々の努力の結晶がそこにはあるように思います。
ワインの産地「モンタルチーノ」
イタリア中部のトスカーナ地方は、良質の赤ワインの産地として知られています。
モンタルチーノと言えば世界で名高い赤ワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」の故郷ですね。モンタルチーノは世界中のワイン好きが知っている有名な産地の名前です。実際にこの地で産するワインの70%は外国に輸出されています。
くねくねとカーブの多い坂道を走り終えると、14世紀に建立された城塞が眼前に聳えるモンタルチーノ町に到着します。
怨念のワインはこうして作られた!!
16世紀、シエナとフィレンツェが熾烈な領土争いをしていた当時この城塞はシエナ軍のものでした。1555年のシエナ対フィレンツェの争いのときにフィレンツェが勝利し、シエナ軍は撤退を余儀なくさせられました。それ以来、この街はフィレンツェの大富豪一族メディチ家の支配になりました。城門にもメディチ家の家紋が残っています。丘の裾にはどこまでも葡萄畑が広がり、初夏から収穫時期までは緑のカーペットが敷き詰められたようです。
話はここで終わりません。16世紀にシエナの人たちは戦争に負けてしまいました。
このシエナの人たちは執念深く、メディチ家が作るキアンティ・ワインよりも上質で美味しいワインを作り積年の恨みを晴らそうとしていました。その恨みを晴らすきっかけとなったのが19世紀に登場したブルネッロ・ディ・モンタルチーノです。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、モンタルチーノ地区で収穫された葡萄だけを利用しています。その葡萄の種類は「サンジョヴェーゼ種」。
<サンジョヴェーゼ種>
収穫から4年間の熟成期間を経た後初めて市場に出されます。熟成期間のうちの2年間は樽で熟成させます。この熟成期間を経ないとブルネッロという名前は使えません。日本式に言えば大吟醸ですかね?
今でもビオンディサンティの銘柄は、モンタルチーノワインの中でも最も高価に販売されています。いわば、シエナの人たちの怨念の結晶のようなワイン。
19世紀にしてキアンティを超える上質のワインを市場に送り出し、やっと恨みを晴らしたといえます。
<イグのマスタ / PIXTA(ピクスタ)>
最後に
いかがでしたか?
怨念のワインというと怖く聞こえてしまいますね。
オルチャ渓谷の風景は写真の通り奇麗ですし、ワインが飲めなくても行く価値はあります。
ワインが好きな方は是非この地でシエナ人が執念で作り上げた怨念のワインを飲んでみてください!!
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ドルチェビータ
- 2003年より2011年までイタリア、2014年から2017年まで英国にいました。