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ワーグナーが愛した街、RAVELLO(ラベッロ)
ソレント半島からサレルノへと続く海岸線の美しさは格別です。切り立った崖の中腹に葡萄やレモンの畑を作り、海賊を避けるように山や崖の中腹に点在する家々。自然の美しさと、その中で自然と格闘するごとく日々の人々の営みがあります。
かつて、海洋都市としての栄華を今にとどめるアマルフィ、多くの作家、音楽家に愛されたラベッロ。アマルフィの街は海浜にあるが、ラベッロは標高350メートルほどにあります。その眺めに惹かれて、昔から音楽家ワーグナーをはじめ、たくさんの著名人が、その贅沢な眺めに気持ちよく大金を払い続けてきたわけです。
別にRAVELLOの街から頼まれたわけでもありませんが、簡単に紹介したいと思います。
アマルフィ海岸といえば、ポジターノ、名前の由来の街アマルフィが知られていますが、絶景といえばこのラベッロです。
アマルフィから、車で20分ほど登ったところにあり、その街のテラスからみるアマルフィターナと青いサレルノ湾の海が格別です。もともとは、この地域は海賊に襲われることを避けて、高いところに住居を構えていましたが、その住居が点々と半島の山沿いに展開し、独特の風景を生み出しています。中でも、ラベッロはそんな街の中では一番大きく、そこからの眺めは絶景と言えます。
ユネスコ世界遺産に指定されているアマルフィターナという道路が、ソレントからサレルノまでソレント半島の断崖絶壁を細い道がくねくねと通っています。アマルフィターナの四季折々に見せる風景に魅せられて、昔から多くの人が再びこの地域にやってくるのです。
ラベッロには、瀟洒なヴィラが2軒あります。コンサートが開かれるルーフォロ荘と、街の海側の突端にあるチンブローネ荘です。チンブローネは街の中心から20分ほどの徒歩が必要ですが、ぜひ両方訪れることをおすすめします。青いサレルノ湾と切り立った崖に白い別荘が織りなす絶景があります。
では、2軒のヴィラを写真とともに説明します。
チンブローネ荘(Villa Cimbrone)
<5月には見事な藤の花が咲きます>
英国のグリムソープ卿(ビッグベンの設計者、アーネストベケットとも呼ばれている)は1905年に18世紀のこのヴィラ資産を購入し、彼のイタリア人の知人ニコロマンシの助けを借りて、敷地を瀟洒な中世風の邸宅にリフォームしました。ヴィラチンブローネは、豪華な5つ星のホテルとして現存しています。
庭部分は一般に公開されていますが、ホテルの建物へは宿泊者のみ入ることができます。グリムソープ卿は、その財力でラベッロ周辺の教会や宮殿から中世の彫刻やローマ時代の柱を買い集め運ばせ、このヴィラの装飾に使用したため独特の雰囲気を醸しています。(彼は実際にはバッカス神殿の下の庭に埋葬されています)。
アマルフィ海岸の壮大な眺めを満喫できるテラスの端はアラバスター石の胸像群が飾られています。ホテルは開設当時からの宿泊名簿が残っており、有名どころではバージニアウルフ、D.Hローレンス、リットン・ストレイチーとTSエリオットなどの名前が残っています。なかでもスウェーデン人でハリウッド女優のグレタガルボは1937年に恋人でオーケストラ指揮者のレオポルドストコフスキーと一緒にヴィラチンブローネで休暇を取り、当時のパパラッチたちから逃れました。
余談ですが、グレタガルボは極端な人嫌いで有名で、ファンにサインをしたことがなく、3度アカデミー賞にノミネートされましたが、授賞式への参加を断った女優です。さぞかしこのヴィラでの恋人との静かなひとときは素晴らしものだったに違いありません。テラスオブインフィニティに立ち、アマルフィ海岸の壮大な景色とこのユニークなラヴェッロホテルでの滞在を楽しんだと思います。
このヴィラの庭にはヘリポートがあり、結婚式を挙げるカップルをナポリ空港とホテルとの送迎を行っています。ヘリコプターで、絶景の中を二人で飛ぶことができるパッケージもあります。
>>チンブローネ荘(Villa Cimbrone)HPはこちら
ルーフォロ荘(Villa Rufolo)
ルーフォロ荘はラベッロの中心の大聖堂の広場に面して目立たない入口があります。ルーフォロ荘は1270年から1280年にかけてラベッロの有力者ルーフォロ一族により建てられました。ボッカッチョ作「デカメロン」の中にも当時のオーナーだったランドルフォ・ルーフォロのことが記されており、当時はイタリア中で有名だったことがわかります。
その後、複数のオーナーの後、1851年に植物商であり芸術商であったスコットランド人サー・フランシス・ネヴィル・リードにより、当時まだ目新しかった植物で庭園が彩られ、庭から眺められるサレルノ海の青さと見事なハーモニーを奏でるようになりました。
かのワーグナーもラベッロを愛した人の一人で、ラベッロに滞在しながら、オペラも作曲もしたといわれています。ここラベッロに滞在して、彼の最後の作品となるオペラ「パルシファル(Parsifal)」の第二章を書き上げたと言われています。そのワーグナーの縁で、ラベッロでは、毎年夏に野外コンサートが開かれます。夏の夕暮れに、瀟洒な南欧のルーフォロ荘というヴィラの庭園で聞く音楽とサレルノ湾から吹き上げる涼しい風、真夏夜の夢と呼ぶにふさわしいのです。
今年のフェスティバルは開催が困難と思われますが、以下のページでフェスティバルの詳細・日程などをご覧になれます。来年こそはぜひという方はご覧ください。
このコロナ禍が早く終息して、世界中からラベッロに集まった人々と共に、ひとときの音楽の平和な世界にみなさんと浸りたいと思います。
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ドルチェビータ
- 2003年より2011年までイタリア、2014年から2017年まで英国にいました。