ベートーヴェンの足跡を訪ね、ウィーン郊外の温泉保養地バーデンへ

ベートーヴェン生誕250周年を迎える2020年。以前「ベートーベンの住居パスクヴァラティハウスは、歴史を遡る不思議なアパート」の記事で、ウィーンにあるベートーヴェンの博物館をご紹介しましたが、今回は、ベートーヴェンが何度も夏を過ごした、ウィーン郊外の町バーデンにある博物館と住居を訪れてみます。

目次

ベートーヴェンとバーデン

バーデンは、ウィーンから南へ電車で30分ほどの距離のある温泉地です。ローマ人の時代から使われていたテルメは、モーツァルトやベートーヴェンの時代にも愛され、当時の皇帝フランツ二世(一世)は、夏場はこの地で執務を行ったほどでした。バーデンの歴史や見どころは、「ウィーンからの半日旅行、温泉の町バーデンをゆったり散策」の記事で紹介しています。

そんな温泉地バーデンに、ベートーヴェンは1803年から25年の間で、15回以上も訪れたと言われています。慢性的な体調不良の緩和のために、温泉を好んだベートーヴェン。作曲のインスピレーションのための、趣味の散歩に適した田園風景が広がり、当時は馬車でウィーンから三時間の距離だったこともあり、気晴らし旅行にぴったりの距離だったのでしょう。

売れっ子の作曲家だったベートーヴェンですが、気難しいと言われる気性とは裏腹に、友人に囲まれ、バーデンでも親せきや友人、仕事関係者やパトロンなど多く人が訪れ、食事などを共にしました。

宿泊先は、パトロンの居城や、保養客に部屋を貸していた個人宅など、ほぼ毎回異なります。そんな中、三年連続で宿泊したお気に入りの部屋が、現在はベートーヴェン博物館となっていて、内部の見学が可能です。

ベートーヴェン博物館

ベートーヴェンが1821、22、23年と連続して滞在したのが、バーデンの町の中心にほど近い、この建物です。

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ここに初めて逗留した時、ベートーヴェンはすでに51歳。何年もの間胃痛や痛風、リューマチにさいなまれていて、医者の勧めでここにやってきました。

建物自体は中世後期(16世紀前半)からあり、隣の建物と合わせて、バーデンで最も古い、使用されている建物となります。ベートーヴェンが住んでいたころの大家は銅細工職人で、1階が店舗、2階が住居でした。

ベートーヴェンは友人に、「自分がこんなに怠け者になれるなんて、思ったこともなかったよ」と書き送ったほど、のんびりした生活を送っていましたが、1823年は第九の第四楽章の大部分をここで作曲し、仕事にも精を出していました。

この博物館は、地下室と2階建てになっています。主な展示室は2階にあり、ベートーヴェンが滞在していた、玄関、仕事部屋、寝室からなる3部屋の他に、大きめの3室が展示室になっています。中2階や地下室には、視覚や聴覚に訴える展示があり、2014年の改装時に博物館に含まれた1階部分は、現在はショップになっています。

それではまず、ベートーヴェンの住んだ部屋から見てみましょう。

玄関向かって左の小さな部屋が、寝室です。家具は当時のものではありませんが、玄関には、ベートーヴェンの散歩のときの定番服装、帽子とコートがかけてあり、今またふらっと本人が帰ってきそうな気配が漂います。

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こちらが、作曲に使われた仕事部屋です。ここにはピアノも置かれていたことでしょう。

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壁面には、ベートーヴェンの楽譜が展示され、当時の様子がわかりやすく説明されています。

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2階にはこのほかにも3つの展示室があります。まずこちらは、当時の入浴習慣や散歩コースなどの、ベートーヴェンの生活にまつわる展示です。また、この部屋には、ベートーヴェンが弾いたピアノが展示されてありましたが、2019年に修復され、2020年にはベートーヴェンイヤーでコンサートなどで使用するため、カイザーハウスの特設展の方に貸し出されています。

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奥の部屋には、ディナーテーブルの展示があり、ベートーヴェンの交友関係が説明されています。

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また、中2階や地下室には、第九を本人の自筆譜やパート譜を追いながら聞くことができたり、ベートーヴェンが聴力を失っていく様子が体感できたりと、視覚や聴覚に関する展示があります。

1階部分はショップになっていて、ベートーヴェンや音楽関連の書籍やグッズが販売されています。

ベートーヴェンは、最初にこの宿に泊まった時に、窓の雨戸に楽譜を書きつけてしまい、それを大家に一枚ずつ売られてしまうという事件がありました。翌年宿泊しようとすると、大家から「雨戸の修理代を負担しないと、宿泊はさせられない」と条件を出されたそうです。雨戸を自腹で修理してでも滞在するほどの、お気に入りの住居だったのですね。

また、ベートーヴェンが、とある薄暗い夕方に散歩しているうちに、道に迷ってしまいました。髪がくしゃくしゃで、古いコートを着た男を見て、村人たちは物乞いと勘違いしたらしく、警察を呼ばれてしまいます。街から音楽監督を呼び寄せて、身分を証明してもらい、やっと解放されたました。いかにも散歩好きのベートーヴェンらしいエピソードです。

ベートーヴェンの他の住居

バーデンは、ベートーヴェンに限らず、音楽家が好んで湯治に訪れた町で、街角には様々な音楽家の名が刻まれています。ベートーヴェンの他の住居もいくつか保存されていますので、散歩がてら探してみてくださいね。

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また、クアパークと呼ばれる巨大な公園には、「ベートーヴェン神殿」と呼ばれる建造物もあり、2020年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートの、日本では未放送の映像でも使われました。

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まとめ

バーデンにあるベートーヴェンの所縁の地巡り、いかがだったでしょうか?この地には、紹介しきれなかったベートーヴェン関連の地もたくさんあります。

ウィーンから日帰りでこの地を訪れ、楽聖がゆったり休暇を過ごした街並みや自然を味わうのも、ベートーヴェンイヤーにふさわしい旅のスタイルかもしれませんね。

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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