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海風が吹いたら、生ハム日和!最高品質イタリア「パルマの生ハム」の秘密

記事投稿日:2019/09/08最終更新日:2019/09/08

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パルマに行くなら、やっぱり生ハムは食べておきたい。

街のレストランでプロシュット・ディ・パルマ(パルマの生ハム)を置いていないところは無い。ヨーロッパで伝統的に生産されている食品に与えられるD.O.P.原産地保護保証に指定されている。生産地はパルマの郊外、アペニン山脈の麓だ。原産地保護保証に指定されている製品は、原産地はもちろん、材料、生産方法まで細かな規律があり、それに則って生産される。そして、最終的に検査に合格したもののみがパルマの王冠の焼印を押され、プロシュット・ディ・パルマという名をつけることができる。街の人たちはこのパルマの生ハムを食べて育つから、下手なものは出せない。どのレストランでもほぼ間違いなく美味しい生ハムをいただくことができる。

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目次

パルマの生ハムの歴史

パルマでは1850年ごろから伝統的に商品として生ハムを製造している。養豚も盛んで、1852年にはパルマ郊外のフィデンツァの養豚場が最高の豚として賞を取っている。

1861年のイタリア統一は、パルマの豚の品質をイタリア中に知らしめる大きな機会となった。その当時の豚は土着品種の黒豚だった。中〜大型、放牧に適し、成長は遅い。味が強く、ハム、サラミを作るのに適しているとされていた。赤身だけでなく、ピンク色を帯びた脂身で、特にどんぐりを食べて育った豚の肉は、最高品質とされた。

養豚場は平野で、パルミジャーノ・レッジャーノチーズ工場の脇に作られ、チーズ作りで残った乳を与えられた。1日に2個のパルミジャーノレッジャーチーズを作る小さな工場で出る乳清で、1年間に40頭の豚を太らせることができる。

山の地方では放牧にされ、自然のどんぐりを食べさせた。家庭で買われた豚は玄関から家の中に入り、台所で家族皆に撫でられ、食べ物を与えられていたという。2歳には約150kgもの重さになる。

1860年代から少しずつラージホワイト種と交配され、土着の黒豚と比べて倍の速さで太ること(ラージホワイト種の豚は1年で150kgもの大きさになる)から、ラージホワイトが増え、土着のパルマの黒豚は絶滅に追いやられた。

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1800年代初頭にサラミ、生ハム類を生産していたのは、主に農家で、小さなお店、トラットリアなどは、自ら作るか、もしくはお気に入りの農家から購入していた。屠畜は主にノルチーノと呼ばれる屠畜人が農家を回って、屠畜していた。ノルチーノを雇っていない農家は、貧困農家とランク付けされていた。さらに時代が進むと、オステリア、トラットリアなどで、安い肉を購入してハム、サラミを作り、品質が落ちることがあることから、市が品質管理をしていた。

市の屠畜場ができ、1869年にはパルマの屠畜場で3,330頭の豚が屠畜されたという記録がある。1872年のパルマ商工会議所の資料ではその年パルマで24万1,400キロの生ハム、サラミなどの肉加工品が売られた。そのうち20%は、パルマ以外の街に販売され、その後の鉄道の普及により、販売範囲が広がっていった。パルマ郊外のサルソマッジョーレで取れる塩が最高品質であることから、塩の値段が高い上に、鉄道使用の値段と税関(屠畜税、消費税)が高価なことにより値段はつり上がったが、1874年にはフランス、イギリス、アメリカへの輸出の記録が残っている。

1900年代のベルトコンベアー、冷蔵の機械化によって、生産量は上がっていき現在、2018年には約850万本の生ハムを生産している。近年一度絶滅したパルマの黒豚を蘇らせ、生ハム、サラミを作る生産者も出てきているが、原産地保護保証の規定の原料には黒豚は入っていないため、プロシュット・ディ・パルマと呼ぶことはできない。

  • 参考資料:Guida al museo del procsiutto e sei salumi di parma a langhirano

自然の力:パルマで吹く海風

プロシュット・ディ・パルマは、エミリア街から南に最低5km離れ、東はエンツァ川、西はスティローネ川に挟まれた標高900m以下の丘で生産することができる。

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エンツァ川とスティローネ川を挟んで、ターロ川、パルマ川、バガンツァ川と何本かの川が流れているが、プロシュット・ディ・パルマの工場は、これらの川沿いにある。そして工場は、川の上流から下流に向けて縦長の窓が付いている。これは川を伝ってくるリグリア海からの海風をプロシュット全体に受けさせるためだ。

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写真のように生ハムは、スカレーレと呼ばれる棚に吊り下げて熟成させられる。通常は閉められている窓を、海風が川を沿って降りてくる時、川の上流から下流に向けて付けられている窓が全開にされる。この風を浴びて、パルマの生ハムは乾燥される。川の源流の向こう側にはリグリア海がある。この風無しには、パルマの生ハムを生産することはできない。

生ハムの部位

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一本の生ハムでも、部位によって風味が変わる。最初の切り始め(下の部分)は、塩がいちばん最初に入ってくるところだから、他の部位に比較して塩が効いていて、乾燥している。そして前足の部分(写真で骨を中心にして左側)も同様に脂身の少ないさっぱりとした味わいだ。反対にお尻の部分(写真の中骨をして右側)は、脂がしっかりあり、この脂が肉の甘みを際立たせる。柔らかく、塩分も少ない。膝の付け根の部分(上の骨の付け根に近いところ)は、多少筋があるものの、塩分が少なく、甘みがある。

パルマでは、スーパーマーケットでもいくつかの部位を選べるところが多い。

スライスされたハム

スライスされたハムを1枚手に取ると、向こう側が透けて見えるほど薄くスライスされる。「フテール・ウン・パルスット」パルマの方言で、「生ハムを薄く切って、口の中で溶けるのを楽しみながら食べる」と言う。1年以上の熟成によって肉のタンパク質が加水分解し、消化しやすくなって子供から老人までパルマ人の好物となった。

パルマでは、是非この極薄にスライスされたプロシュットをお試しいただきたい。

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この記事を書いた人
西村明美
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