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国立西洋美術館で開催中の『ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代』に行ってみよう

記事投稿日:2019/04/19最終更新日:2019/04/22

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国立西洋美術館で開催されている『ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代』についてご紹介いたします。

目次

東京で唯一の世界文化遺産「国立西洋美術館」

日本に18件ある世界文化遺産の内、東京にはたった1件しかないのをご存知ですか?

その唯一の世界文化遺産が上野公園にある国立西洋美術館です。

国立西洋美術館は、20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエが手がけました。2016年にル・コルビュジエの建築作品17資産が「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献」として世界文化遺産に登録されました。その17資産は世界7カ国にまたがり、その内の1資産が国立西洋美術館です。

3_外観左側①.jpg
©国立西洋美術館

2019年5月19日まで、ル・コルビュジエの建築作品の一つである国立西洋美術館で、ル・コルビュジエの展覧会が開催されています。

モダニズム建築の巨匠 ル・コルビュジエ

はじめに、ル・コルビュジエについて簡単にご紹介しましょう。

ル・コルビュジエは近代建築3大巨匠の一人に数えられる建築家。それまでの伝統にとらわれず、最新の技術、素材を使った合理的で機能的な建築様式である「モダニズム建築」を牽引した第一人者です。

1887年、スイスに生まれたル・コルビュジエの本名はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレと言います。元々画家を志望しており、スイスの美術学校へ入学しましたが、教師の勧めで建築の道に足を踏み入れます。しかし、学校で建築学を学んだわけではありません。パリとベルリンの建築事務所で修業したり、ヨーロッパ中を旅して建築を見て回ったりして、独学で建築を学んでいきました。

1920年、画家のアメデ・オザンファンと一緒に創刊した雑誌『エスプリ・ヌーヴォー』で、ル・コルビュジエは建築論を連載しはじめます。実は「ル・コルビュジエ」というのはこの時に使った彼のペンネームです。後に『建築をめざして』という著作にまとめられたその連載では「家は住むための機械である」という言葉を残し、合理的、機能的で普遍的な建築を提唱しました。

1 パリ・ジャコブ通りの自宅におけるル・コルビュジエ.jpg

従弟のピエール・ジャンヌレとともに事務所を開き、本格的に建築家としての活動を始めたル・コルビュジエは、1925年に開催された『パリ国際装飾芸術博覧会』に「エスプリ・ヌーヴォー館」というパヴィリオンを設計します。「装飾芸術」を真っ向から否定し、規格化と大量生産に対応したそのデザインは物議を醸しました。(そのため、エスプリ・ヌーヴォー館は人目のつかない場所に追いやられてしまったそうです。)

1927年、ル・コルビュジエは建材や技法などの技術的な側面と、居住者の生活を豊かにする仕組みの両方を実現させるための要点を「近代建築の五原則」としてまとめます。ピロティ、屋上庭園、自由な間取り、横長の窓、自由な立面からなるこの原則は、それまでの伝統的な建築観を打ち破った画期的なもので、現在まで多くの建築家に影響を与え続けています。1931年に建設された「サヴォワ邸」はこの五原則を忠実に導入した、ル・コルビュジエの最高傑作と言われる建築です。

12「サヴォワ邸」.jpg

その後、個人宅はもちろん、集合住宅、宗教施設、美術館など、多くの施設を設計しましたが、同時に多くの建築以外の作品も残しています。家具、絵画、彫刻、書籍など、様々なかたちで世界のデザイン界をリードし続けました。

13「ヴォワザン計画」図面の前のル・コルビュジエ.jpg

『ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代』

前置きが長くなりました...。それでは今回の本題に入ります。

元々画家志望だったル・コルビュジエは、建築家として忙しく働きながらも、絵を描き続けていました。今回の展覧会は、建築家としてのル・コルビュジエはもちろんですが、画家としてのル・コルビュジエをフィーチャーしています。主に展示されているのは1920年代、ル・コルビュジエが30代のときの作品。彼が本格的に建築家として活動を始めたばかりで、画家として「ピュリスム」という表現方法を打ち出していた時期にあたります。ル・コルビュジエの作品以外にも、ともにピュリスムを提唱したアメデ・オザンファンの作品や、彼らに影響を与えたピカソやフェルナン・レジェ、フアン・グリスら、キュビスムの画家の作品も展示されています。

「ピュリスム」とは、それまでの芸術は社会の近代化に対応していないとして、科学的な精神によって普遍性を目指した芸術表現です。

2《多数のオブジェのある静物》.jpg

ル・コルビュジエ、オザンファンが描くピュリスムの絵画は、ボトル、水差し、本、ギターなどの日用品を、様々な角度からの視点で一つの絵の中に平面的に描いています。ピカソなどでお馴染みの「キュビスム」でも同じ技法が用いられていますが、キュビスムと違う点は、それらが科学的な規則性に基づいて配置されていることです。黄金比などの幾何学的に秩序をもたらす原理を用いてモチーフが配置されているのです。

モチーフとして日用品を選んだのは、それらが長い間使われる中で無駄が削ぎ落とされ、デザインとして完成したものだからだそう。先ほど紹介した「家は住むための機械である」という言葉からも分かるように、ル・コルビュジエは常に芸術に機能性を追い求めていたのですね。

実は、ル・コルビュジエもオザンファンも、当初はキュビスムを批判していました。しかし、キュビスムの絵画に実際に触れ、研究していく内にその認識を改めていきます。今回の展覧会は1917年から1932年までに描かれた作品がたくさん展示されているため、画風がどう変わっていくか、ピカソやレジェの作品がどのような影響を及ぼしていくのかを知ることができます。

5《開いた本、パイプ、グラス、マッチ箱のある静物》.jpg

9《サイフォン》.jpg

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ル・コルビュジエの作品の中でル・コルビュジエの作品を見られる悦び

140点もの作品を鑑賞していく内に、いつの間にか2階展示室の入り口に戻ってきてしまったのに気づくでしょう。展示室をぐるっと一周したのです。

既にそれぞれの作品を充分に堪能されたと思いますので、続けて少しマクロな視点で再度鑑賞してみてはいかがでしょうか。

初めにも書きましたが、この国立西洋美術館本館もル・コルビュジエの作品です。今回、私達はル・コルビュジエの作品の中でル・コルビュジエの作品を鑑賞できるのです。

1929年、ジュネーブに「ムンダネウム」という文化複合施設をつくる計画があり、ル・コルビュジエはその設計を任されました。結局その計画は実現しませんでしたが、ル・コルビュジエはそのときに考えた"増え続けるコレクションに対応するため、螺旋状に外側に展示室を増築していく"というコンセプトを「無限成長美術館」と名づけ、亡くなるまで計画を練り続けました。この国立西洋美術館本館はル・コルビュジエが生涯追い求めた「無限成長美術館」の基本的な原理に基づいて設計されています。

入場してすぐ通されるのが19世紀ホール。吹き抜けの上の三角形の窓からやわらかな自然光が入ってきています。

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奥のスロープから2階にあがります。ル・コルビュジエの建築ではよくスロープが使われています。階段とは異なり、空間の変化をゆっくりと楽しめるような造りになっているのです。

2階の展示室は、場所によって異なる天井の高さや壁の配置などによって、様々な空間が作られています。しかし、小さな部屋に区切られていないため、見通しが生まれ、途切れることなく現れる展示空間を回遊するように鑑賞できるようになっています。

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2階展示室にはいくつか階段が現れます。残念ながら現在は非公開になっていますが、中3階のバルコニーに繋がる階段です。手すりが片側にしかない階段もル・コルビュジエの建築ではよく使われているそうです。

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ル・コルビュジエが生涯にわたって考案してきた「無限成長美術館」計画ですが、彼が手がけた美術館はここ国立西洋美術館とインドのチャンディガールとアーメダバードの美術館の3館のみ。中でも国立西洋美術館が彼の理想に一番近いものだと言われています。

様々な変化を楽しめながらも、調和がとれた館内で、若きル・コルビュジエが描いた作品を鑑賞できる贅沢。他ではなかなか体験できない、大変貴重な時間を過ごすことができるのではないでしょうか。(そういえば、ル・コルビュジエが1925年に手がけたラ・ロシュ=ジャンヌレ邸は、クライアントが蒐集していたキュビスムやピュリスムの絵画を飾るために設計された家でした。それを疑似体験できると言ったら大袈裟でしょうか?)

みなさんもこの機会に是非国立西洋美術館に行かれることをおすすめします。

ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代

  • 住所:〒110-0007 東京都台東区上野公園7番7号
  • 開館時間:9:30~17:30(金・土曜日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
  • 休館日:毎週月曜日(ただし、4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
  • HP:https://www.lecorbusier2019.jp

※記載の情報は2019年4月現在のものです。最新情報は上記HPをご覧ください。

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