初心者でも最高においしい一杯を煎れられる 雑味のないコーヒー講座を体験してきました

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<チョコレート探検家・チョコレートくんが一杯分をハンドドリップ>

長年、いろいろなコーヒーの煎れ方を試してきましたが、まずくはないものの、コーヒー豆の特徴をはっきりと舌で感じ取れる味わいには出合えないできました。そんな私にチョコレート探検家・チョコレートくんが本所吾妻橋の「ホソミーファクトリー」でひらかれている講座を案内してくれました。初心者でも雑味のないコーヒーを最短20分で煎れられるようになるといいます。チョコレートくんもこの講座をきっかけに、飲めなかったコーヒーが好きになったばかりか、3ヵ月後には、日本で最大規模のエントリー数を誇るコーヒーの競技会「SBC(すみだ下町ブリューワーズカップ)」のフリースタイル部門で3位入賞を果たしたそうです。講師をつとめる白河栢乃(かやの)さんいわく「雑味」とは、「タバコぽい嫌な苦味、煤っぽい感じ、舌にピリッとくる感じ」などだとか。そうした雑味がない、まろやかなコーヒーをチョコレートくんのように煎れてみたいと参加しました。

目次

注ぐ練習から

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<お湯を細く注ぐ練習を、通常は30分前後行う。このスキルはコーヒーをおいしくする最大のポイントになるそう>

約2時間の講座はお湯を細く注ぐ練習からスタート。今回参加した人は皆、いきなり上手に注げました。講師・白河さんの伝えるポイントが簡潔で、わかりやすいからでしょう。「注ぎ口の根元にお湯が溜まる細かい角度を覚えると、簡単に細く注げるようになります」

「とても注ぎ方が上手です。プロでもこのように細く注げる人は少ないのに、皆さんはいともたやすくやってしまった。そうなると、おいしく煎れられます。まずくはなりません」褒め上手な話術に緊張感がゆるみ、コーヒー器具を軽やかに操らせてくれます。

正しく折る

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<全体のかたちや穴の数、溝の形状、素材が違う、多様なドリッパーを用意。どれを選ぶかも上手に煎れる上で重要>

次に、ドリッパーに密着するようペーパーフィルターを折っていきます。フィルターはドリップの形状別に円すい型と台形型があるのですが、私はそんなことも知りませんでした。家にあるのは円すい型ドリッパーなのに、台形型フィルターを使い続けていたのです。フィルターには表裏に凸凹が刻まれた部分がありますが、凸(出っ張り)の方を上にして内側に折り込みます。表裏のどちらが凸なのか、わかりにくいときは、色の濃い方を上にして内側に折り込みます。私は今回、円すい型ドリッパー、ハリオ製『V60』を使用しましたので、ここでは円すい型フィルターの折り方を紹介します。

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<使用したハリオ『V60』(1~4杯用)、大きな穴が1つ空いているのが特徴>

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<円すい型フィルターの折り方。横にある凹凸の刻みを見て、色の濃い方の凸部を上にして内側に折る>

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<2つの縦線を合わせて折り、先端の三角形も内側に折り込む>

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<折ったフィルターをドリッパーにセット>

中間焙煎の豆を選ぶ

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<焙煎されたパナマ産スペシャルティコーヒー豆「エスメラルダ・ダイヤモンド・マウンテン』。優れた焙煎工房は購入時に豆の香りを嗅がせてくれるという。そんな店をこれから探してみようと思う>

今回、用いたのは一般によく使う焙煎具合(シティローストのやや手前)で炒られた豆。焙煎(ロースト)は生豆を炒って香りや苦味、酸味、甘味といった風味を生み出す作業ですが、この豆は浅炒りから深炒りまで8段階のうちの、酸味と苦味が中間になる標準的炒り方によるものになります。

「この豆の香りをよく覚えておいてください。焦げ臭が強い豆、香りが涙目になるほど刺さる豆は見た目より中が焼けています。すると、鮮度を落とす炭酸ガスの発生率も高まり、ピリピリ刺激する作用も強くなります」と白河さん。そんな豆で煎れたコーヒーは冷めると雑味が際立ってくるので、選んではいけないそうです。

一杯20gが基本

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<デジタルのキッチンスケールで20gの豆を正確に計測>

初心者が一杯分、130~150ccのコーヒーをいちばんおいしく淹れられる豆の量は20gが目安だそうです。それで20g分をキッチンスケールで計るのですが、私は今まで豆の量を正確に計ることをせず、1杯分の豆の適量もわかっていませんでした。そのアバウトさも、上手に煎れられない要因だったのでしょう。 20gの豆は各自が粗めに挽きました。その挽き加減を目に焼きつけて覚えるようにします。

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<20gのコーヒー豆を富士珈機製ミル『みるっこ』で粗挽きした>

ふんわり盛る

挽いた豆をペーパーフィルターに入れたら、ドリッパーを揺らしてふんわりと優しく盛っていきます。きちっと密度を詰めて盛ると、根詰まりを起こしがちで、お湯がドリッパーとフィルターの間に染み出て雑味のもとになるとか。既存のコーヒー講習会では、「きれいに盛りなさい」と教えられますが、白河さんは「力を抜いて、優しく」がおいしさのキーワードになると、きっぱりと言いきります。

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<挽いた粉をペーパーフィルターに優しく、もっさりと盛るのがポイント>

お湯は90℃

<沸騰したお湯をポットに移して90℃に下がるまで待つ。計測はデジタル温度計が便利>

次はいよいよドリップへ。まずは沸騰したお湯をポットに移し、温度計で90℃に下がるまで待ちます。私はふだん沸騰したお湯を無造作に注いでいましたが、じつは厳密なお湯の温度管理が大事なのでした。ちなみに、浅炒りの豆は92℃以上になると酸が出やすく、深煎りの豆は炭酸ガスが発生しやすくなるそうです。コーヒーの酸っぱさが苦手という人は84℃くらいまで下げたお湯を注ぐようにしましょう。

優しく細く

お次はいよいよドリップへ。まずは蒸らしから。約90℃のお湯を粉の真ん中に垂らし1回転半お湯を回します。そして、立ちあがる香りを嗅ぎ、スッと鼻に当たる香りがやわらいだら(時間にすると30~40秒くらい)、真ん中に優しく注いでいきます。初心者の場合、ここからはお湯を回す必要はありません。お湯が上に浮いている間は次のお湯を足さないようにします。そうして抽出されるコーヒーが50ccになるまで小刻みに注いでいきます。

「皆さん優しく注げているので、この時点では雑味がまったく入ってきません」と白河さん。大らかに見守りながら掛ける励ましの言葉に参加者の顔がゆるみ、心もなごみます。

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<チョコレートくんが蒸らしのお手本を見せてくれた。ポットの注ぎ口を低い位置にして、細くお湯を垂らす。ここで濡れる範囲は500円硬貨ほどにとどめるのがポイント。最初の蒸らしがうまくいけば、雑味が入ることは少なくなる>

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<蒸らしたら、必ず香りを嗅いで確認する>

お湯で割る

優しさを念頭にした手の運びは続きます。50ccに達したら、ドリッパーを慎重に引き上げます。コーヒーに1滴でも雑味を落としたら、味は大きく変わるとか。さらに、50ccのコーヒーが130ccになるまでお湯で割ってくださいと白河さんは指示します。

「雑味のないおいしいエキスをクリーンなお湯で割ると、まろやかさが引き立てられます」白河さんはさらに、スプーンで撹拌し、泡が生じるかどうかの確認を促してきました。「茶色くてきめ細かい泡はおいしいエキスが出ているサイン。白くて大きめの泡は雑味成分がたっぷり入っているというサインです。白くて大きめの泡は必ず取ってください」泡を取ると香りが違ってくるそうです。たった1滴や泡にも注意を払う。コーヒーをおいしく煎れるには、細心の配慮が欠かせないのですね。

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<50ccのコーヒーを抽出できたら、ドリッパーを優しくはずし、130ccになるまでポットに残ったお湯を足していく>

味の個性

ドリップが完了したら、テイスティングをおこないます。使うポットの素材やドリッパーの形状、お湯の注ぎ方の違いで、人それぞれ個性的な味わいになるそうです。飲み比べてみると、同じ豆を用いているのに、濃さや酸味の強弱に差があることがわかります。しかし、何より驚いたのは、他者が煎れたそれぞれより、自分が煎れたコーヒーのまろやかさと透明感でした(笑)。50ccの濃いコーヒーを抽出するのに5分近く時間が経過したため、継ぎ足したお湯も冷めて、ぬるいコーヒーになっているのですが、冷めてもとてもおいしいのです。そして、喉を潤したあと、心地いい余韻とともに豆の特徴的な風味がいっそうと立ち現われてきたのです。これがいわゆる「アフターのフレーバー(風味)」というものでしょうか。こんなにもすっきりとしていながら奥行き深いコーヒーは初めて口にできたし、味わいの細部を繊細に感じ取れている自身の味覚に、我ながら感心してしまいました。

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<ドリップしたコーヒーを分けて、参加者みんなで飲み比べをした>

冷めてもおいしいのは雑味がないコーヒーだから。加えて、人間の舌の能力も関係していると白河さんは科学的に答えてくれました。「人間の舌が感じられる旨味成分は60℃以下。その温度帯に近づくほどおいしく感じます。この煎れ方ですと、時間が経過した冷めたコーヒーほどおいしさの個性が際立ってきます」うーん、何かとてつもない、おいしさの真理に出合えた気がして、感慨がじわじわとこみ上げ、言いようのない興奮に包まれました。人生最高のコーヒーを自分で煎れられる。そんな日がやってこようとは。諦めないでよかったです!

9歳のドリッパー

充実の講座が終わりかけたとき、たまたま家族で店にくつろぎに来ていた9歳の男の子が「僕も煎れてもいいかな」と近づいてきました。なんとその子「まーくん」は4歳のときからドリップを始め、競技会のSBCでは大人の部門でもメダルを獲っている、日本でトップクラスの実力者だとか。講座の参加者に囲まれ、スマホで動画撮影されるなか、緊張することなく、ドリップを始める「まーくん」。競技会と同じく35gの豆を挽いて、優しくお湯を注ぎ始めました。そして、コーヒー専門店のプロもかなわないような、風味豊かな一杯をサーブしてくれたのです。彼を指導したお父さんもSBCに出場するトップ選手。お父さんはSBC の大会予選が近づくと「ホソミ―ファクトリー」でトレーニングしているといいますから、親子とも煎れ方は私たちが習った手法に基づいているわけです。「ですから、皆さんもすぐにメダリストになれますよ」という白河さんの言葉がお世辞ではなく、リアルに感じられたのです。上達を目指す向上欲も湧いてきました。

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<「まーくん」は今年のSBC東京予選も、大人に混じって2部門で上位通過。有力なメダリスト候補である>

家でおさらい

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<講座の翌日、家でも煎れてみた。白河さんが言う通り、煎れるたびにおいしくなっていくのが、たまらなく嬉しい>

生まれ初めてコーヒー豆の香り、風味、特徴を感じ取れる一杯を自分で煎れられた! 興奮と感激が冷めないうちに、繰り返し練習していこうと、帰路の途中、翌日配達指定で、インターネットでデジタル温度計と『V60』をオーダー。この2つはおいしいコーヒーを煎れるのに、自分にとっての必須の道具になると自身で判断したからでした。初心者向きの豆を選び、きちんと豆の量とお湯の温度を計り、優れたドリッパーを選び、ペーパーフィルターを正しくセットする。そして雑味が出ないよう優しく、細くお湯を注ぐ。自分が知らなかった、できていなかったことを足りない道具を補いながら復習。さらにおいしいコーヒーを煎れたいと願い、翌日から何度も煎れました。お湯の注ぎ方が変わったのか、なるほど、白河さんが言う通り、同じ20gの豆でどんどんコーヒーが濃く抽出されていきます。その如実な変化もやる気にさせます。最初は1~2 杯分のコーヒーだったのが、同じ豆の量で4杯分煎れられるようになると、ものすごく自分の腕が上がった気になりました。

疑い深い私は、おいしいと感じるのは自分よがりな思い込みではないかと、コーヒーの味にはうるさい妻にも試飲してもらいました。すると、妻はびっくりした様子で、「おいしい。キャラメルのような甘みがある」と褒めてくれたのです。自分の煎れるコーヒーでたいせつな人に喜んでもらえた。2018年晩秋、人生の記念的な講座受講日を「コーヒーの日」と定めて悦びに浸り、これからずっとおいしいコーヒーが日常にある幸福を想いました。

初心者向け・雑味のないコーヒーの煎れ方講座

  • 開催日時:定期的に開催。日時は チョコレートくんのHP「チョコラボ」で確認を
  • 会場:ホソミーファクトリー
  • 募集人数:6名
  • 参加費:3,500円(税込)
  • HP:チョコレートくんのチョコラボ

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ヤスヒロ・ワールド

東京佃島生まれ育ちの江戸っ子。旅行ガイドの編集者。
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