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チョコレート好きには至福の体験! 蔵前のチョコレート工場見学に行こう
<サンフランシスコで創業した「ダンデライオン・チョコレート」の日本1号店「ファクトリー&カフェ蔵前」>
ものづくりの街、蔵前で2016年にオープンしたチョコレート・ファクトリーはカフェを併設。作る様子を見ながら、チョコレートのドリンクやスイーツを味わえます。すべての製造工程を作業終了後に見学できるツアーが人気と知り、参加してきました。
目次
- 心地いい場所に立地
- カカオ豆買い付けからチョコレート作りまで一貫して行う
- MADE IN 蔵前のチョコレートバー
- リッチな味わいのドリンクとスイーツ
- オープンかつ濃厚なファクトリーツアー
- ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ 蔵前 店舗情報
心地いい場所に立地
<地域住民が犬と散歩し、自転車で行き交う蔵前の静かな通りに立地。目前は桜と銀杏の紅葉を楽しめる精華公園>
工房を兼ねたハンドメイドの雑貨、工芸店や、洗練された雰囲気のレストラン&バーなど、魅力的な空間が点在する蔵前。ものづくり体験も盛んに開かれ、外国人も含めて、単なる観光ではない充足感を求める人の間で人気が上昇中です。そんな目が離せない地域ですから、蔵前と周辺をたびたび歩きまわっています。そのパトロール最中に見つけたのが、2010年にサンフランシスコのミッション地区で創業した「ダンデライオン・チョコレート」の日本1号店でした。元倉庫の床や天井板など、味わい深い内装を残しつつ、クール&モダンに改装。その魅力的な内外観に加えて、穏やかな雰囲気の通りに溶けこみ、小さな子供たちが遊び、活気ある公園に面している点に特別な配慮を感じて惹かれました。HQ(ヘッド・クォーター)の芹沢さんにお話を伺うと「スタッフが心地よく働ける場所にこだわっています。気持ちよく仕事ができれば、それがお客様にも伝わると考えているからです」とのこと。店舗は鎌倉、京都、伊勢にもあるのですが、いずれも、とても良い環境に立地しているとか。創業者トッド・マソニスさんはアーティストや職人が多く暮らし、ショップも増え、独自の文化が形成されたミッション地区に蔵前はとても似ていると話したそうです。
<店に入ると、バリスタが迎えてくれる。ドリンクやスイーツはここでオーダーする>
<ファクトリーで作られたカカオ70%と85%のチョコレートバーが並ぶ。1個1,296円(以下すべて税込価格)。カカオ豆の産地ごとに味の特徴が異なり、収穫年でも味は変化。たとえばベリーズ産のカカオ豆で作るチョコレート『マヤ・マウンテン, ベリーズ 70%』は2015年の収穫時には、ほのかなストロベリージャム⇒2016年収穫時はレモンキャンディ⇒2017年収穫時はチーズケーキのようと、フレーバー(香りと風味)が変化しているとか。味の多様性を受け入れて楽しむ寛容さ、自由さが素晴らしい!>
<チョコレートドリンクを提供するカフェチームのバリスタ>
<製造工程を間近に見られる1階のスタンド席。10時~18時くらいまでチョコレートが作られる>
カカオ豆買い付けからチョコレート作りまで一貫して行う
<2016年度のソーシング(買い付け)レポート。製本したものは店内で閲覧、購入が可能。また、ホームページ上ではレポートのPDF版を公開している。左の人物がソーシング担当のグレッグ・ダレサンドレさん。右がダンデライオン・チョコレートが初めてカカオ豆を買い付けたマダカスカルのオーガニック農場主、バーティル・アケッソンさん>
サンフランシスコと蔵前にあるダンデライオン・チョコレートのファクトリーは、カカオ豆からチョコレートバー(板チョコ)になるまですべての製造工程を行う「ビーントゥバー」の工房。産地や品質などカカオ豆を吟味することで、より品質の高いチョコレートを作ろうとしています。日本には現在80近いビーントゥバーのメーカーがありますが、ダンデライオン・チョコレートがユニークなのはカカオ豆の買い付けを商社に委ねずに、自ら世界各地をめぐってカカオ豆の農園、生産者を訪ねて交流していること。「品種」、「丹精こめた栽培」、「細心の注意を払った発酵」を重視しつつ、労働状況やカカオ豆の品質を把握し、シングルオリジンチョコレートにふさわしい香りや味わいを持つ最高のカカオ豆を選んでいるそうです。この取り組みを伝えるためにソーシングレポート(現在、2016年度版が最新)を発行し、取引している農園と生産者、どんなカカオ豆をどれくらいの金額で買い付けているかすべてわかるようにしています。スペシャルなカカオ豆を良い生産者から直接仕入れる誠実で生真面目な仕事ぶり、信条を知るだけで、ダンデライオン・チョコレート製品の上質さを確信できる気がします。
MADE IN 蔵前のチョコレートバー
<日本で販売するチョコレートは蔵前のファクトリーで作られたもの。包装とラベル貼りもスタッフが手作業で行う。ラベル左下にはカカオ豆のローストプロファイラー(焙煎の温度や時間、砂糖を入れるタイミングなどの条件を決める人)の名前が赤字で記されている>
ビーントゥバーのメーカーは、ブランド毎にそれぞれ目指しているチョコレートがあり、製品の特長もさまざま。単一品種のカカオ豆(シングルオリジン)の個性を引き出したビーントゥバーのチョコレートは強いインパクトを受ける味わいのため、食べ慣れない人のためにカカオ豆に含まれているもの以外に、カカオバターを混ぜて食べやすくしているメーカーもあります。同じ豆を使っても、メーカーによって味が全く変わってしまうのです。ダンデライオン・チョコレートは口溶けが滑らかなチョコレートをおいしいと考え、シングルオリジンとオーガニックのきび砂糖のみで作っているそうです。おもしろいのは、サンフランシスコと蔵前のファクトリーで同じシングルオリジンを用いても、チョコレートバーの風味はそれぞれ異なるという事実。どういうことかいうと、カフェ、プロダクション、ペストリー、HQという全部署のスタッフが集まり、テストを約4回(×4種類=20種類)重ねてみんなで決めているんですって。そうした蔵前独自のチョコレート作りを認め、いろいろな意見を尊重する本国の経営者たちの柔軟な考えが素晴らしいなぁと感動し、このブランドのファンになってしまいました。
<私が選んだのはドミニカ共和国のシングルオリジンから作られた『サンフランシスコ・デ・マコリス, ドミニカ共和国 70%』。ナツメグ、オレンジピールの香りやヨーグルトの余韻を楽しめる。苦味、酸味とも思いのほかマイルドで、そのまま食べてももちろんおいしいが、個人的には自然派の赤ワインとともにじっくり、ゆっくり堪能したいと感じた。このチョコレートバーは、チョコレートの世界最高峰の品評会「インターナショナル・チョコレート・アワード2018(Asia-Pacific)」において、少数生産で香料などを使用しないチョコレートバーが対象となる部門で銀賞を受賞した>
リッチな味わいのドリンクとスイーツ
<シングルオリジンチョコレートを用いた『ブラウニーバイトフライト』680円。ナッツ風味のエクアドル、ベリー風味のドミニカ共和国、パイナップル&ハニー風味のベリーズと、カカオ豆の産地によるフレーバーの違いを楽しめる(時期によってチョコレートのラインナップが変わる)。口溶けの滑らかなチョコレートがたっぷりで、贅沢な気分になれる。右は近所の「NAKAMURA TEA LIFE STORE」から仕入れた静岡産、無農薬・有機栽培のほうじ茶で香りづけした『クラマエホットチョコレート』680円>
ビーントゥバーのチョコレートにより親しんでもらえるようにと、蔵前のファクトリーはチョコレートドリンクや、エスプレッソにチョコレートを合わせたモカ、ペストリー(焼き菓子)を用意しています。たっぷりとチョコレートを用いたそれらはリッチかつ滑らかな味わいで、私は飲食後、しばらく甘美な余韻に浸れたのでした。ダンデライオン・チョコレートのチョコレートバーはもともとカカオ豆に含まれているもの以外に、カカオバターを加えることをしていませんから、チョコレートドリンクの方が私のようなビーントゥバー初心者の心をつかみやすいかもしれないと思いました。とくに驚いたのはペストリーの豊かな風味でした。ファクトリーの最奥に位置する部屋で作られるペストリーは、チョコレート好きの心を一瞬にして魅了する華があります。過剰という意味ではなく、あくまで品が良くて、口に含んでスムーズに溶けていくチョコレートの風味に、しみじみと心酔していくといいましょうか。スイーツ好きな私の半生でも未体験の食感でした。
<チョコレートのスイーツも毎日ファクトリーで作っている。左は『ドゥルセ・デ・レチェ・バー』486円、右は『チョコレートブラウニー』432円>
オープンかつ濃密なファクトリーツアー
<ツアーはカカオ豆の説明からスタートし、カカオポッド(カカオの実)に触れることができる。ファクトリーツアーの参加費は1,080円>
今回、私は毎月2回ほど、水曜日の夜に45分間催されているファクトリーツアー(チョコレート工場見学)に参加しました。どんなジャンルにせよ、ふだんは見ることができないバックヤードや製造現場を覗き見るのは心躍る体験ですが、なにしろ蔵前のファクトリー&カフェはチョコレート作りの様子が丸見えなのですから、あまり「特別感」は無いのかなと予想したのですが、良い意味で裏切られたのです。作業を終えた夜7時前、チョコレート好きな大人が集まり、チョコレートメーカーからこと細かに製造の流れを教えてもらう。そのマニアックな学びの機会、目と耳、口と3つの感覚を刺激するひとときは1時間弱とコンパクトながら、じつにワクワクする濃密な内容。私はチョコレートを作った経験がありませんが、素人でもそんなにすべて明かしてよいのだろうかとドキドキする工程の説明にびっくり。透明性はあらゆる面で徹底されているのだと、ダンデライオン・チョコレートの姿勢に感服し、カリフォルニア流の健やかなビジネスに心洗われました。天井が高く、遮るものがない開放的なファクトリーに身を置いて、北米の西海岸で過ごすトリップ感にもとらわれます。蔵前とサンフランシスコが直結するような、魅惑の時空体験でした。
<チョコレート製造の第一段階はカカオ豆の選別作業。仕入れた良質のカカオ豆に不純物が混じっていないか確認。さらに、割れたり欠けたりしたもの、発酵不十分なもの、大きなもの、小さなものを入念に取り除く>
<ダンデライオン・チョコレートはカカオ豆の選別から始まり、チョコレートを製造するまでを体験可能なワークショップも催す(詳細はWEB参照)。ほかにもチョコレート探検家・チョコレートくんが主宰する「チョコラボ」がダンデライオン・チョコレートのカカオ豆を使用したチョコレート作りのワークショップを随時開催。約7万4,000人のチョコ好きがフォローする、チョコレートくんのtwitterはhttps://twitter.com/pyonkichi11011 チョコラボのHPはhttps://www.chocolabo.com/ >
<選別したカカオ豆を焙煎。風味を損なわないよう、低温でじっくりローストしていく。焙煎後はカカオ豆を細かく砕き、外側の皮と風味が閉じ込められている内側のカカオニブを分離させる>
<次に「メランジャー」という機械で、約3日間かけてカカオニブとオーガニックのきび砂糖を均一に合わせ、粒を小さくする(メランジング)。この工程により舌の上でシルクのような滑らかさを感じられるチョコレートが生まれる。ツアーではメランジング中のチョコレートを味見できるのだが、うっとりとするほどの口溶けの良さだった>
<メランジングしたチョコレートはブロック状にして寝かせる>
<さらに「テンパリング」というとても繊細な作業へと進む。豊かな風味をチョコレートバーに閉じ込め、手で持っても溶けにくく、ポキッと折れる独特の感触と艶やかな光沢を生み出していく。リキッド状のチョコレートを型に移し、適温で冷却すれば、成形されたチョコレートバーの完成>
<ファクトリーツアーにはドリンクチケットが付き、ドリンクをオーダー可>
<カカオポッドの中でカカオ豆を包む白い果肉、カカオパルプで作るスムージー『カカオフルーツスムージー』680円。爽やかな酸味が個人的にはとても好みの味わい>
ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前
住所:東京都台東区蔵前4-14-6
電話:03-5833-7270
営業時間:10:00~20:30 (19:30 L.O.)
HP : https://dandelionchocolate.jp/
Facebook : https://www.facebook.com/DandelionChocolateJP/
Twitter : https://twitter.com/dandelionjapan
Instagram : https://www.instagram.com/dandelion_chocolate_japan
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- 東京佃島生まれ育ちの江戸っ子。旅行ガイドの編集者。
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