悲しい歴史を刻むトラテロルコ三文化広場

メキシコ市内観光のワンポイントになっているトラテロルコ三文化広場である。
が、バスは止まるのが難しいので、車窓の案内だけ。
だが、もし、興味、時間があったら、是非じっくり訪ねてみたい所。
それは、メキシコを知る悲しい歴史の記念碑的場所であるから。

三文化広場というのは、メキシコの過去から現在に至る3つの時代を象徴する建造物が一堂に並んで見られる場所であるところからの名前である。
アステカの先住民時代のトラテロルコ遺跡、スペインの植民地時代の古いサンティアゴ教会、そして、近代の高層ビル。
3つの時代の3つの文化を象徴している場所である。

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同時にこの場所は、当にメキシコの歴史において過去の悲しい3つの出来事があった場所でもある事を忘れてはならないと思う。

その1、トラテロルコのこの場所はアステカの最後の王クワウテモックとスペインの征服者エルナン コルテスの最後の壮絶な戦いがあった場所である。
最後、アステカ軍は、この場所に篭城して戦わざるをえなかった。
アステカ王国のあった島はスペイン側の小船で包囲され、外との接触を絶たれ、まったく水も食料も絶たれた飢餓状態で。
それでもクエアウテモック王は1521年8月13日まで、英雄的に戦った。
だが、最後、王がスペイン軍に捕らえられ、当時最大の帝国として栄えていたアステカ王国は完全崩壊し、都は破壊された。

ここに、この記念碑がある。

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「1521年8月13日
クアウテモクによって英雄的に守られてきた
トラテロルコはエルナン・コルテスの手に落ちた

それは勝利でもなければ、敗北でもなく
メスティーソ国民の痛ましい誕生であった
それが今日のメキシコである」

記念碑が示すように、その後、植民地時代、征服者と被征服者の混血、メスティーソの誕生、それが、今日のメキシコ人であり、メキシコ文化であり、メキシコである。

その2、それは、1968年10月2日。
1968年は、1964年の東京オリンピックの4年後のメキシコオリンピックであった。
そのオリンピック開催の10日前の出来事。

当時、学生を中心とした学生社会人の政府反対運動が大きく大きく広がっていた。
1968年10月2日の午後5時頃、このトラテロルコの広場で、学生をはじめ多くの人々集めた大集会が行われていた。
その時、ヘリコプターが上空を飛んだ、そして大挙して軍隊が一斉に広場になだれ込み、同時に銃で人々を撃ちまくった。
メキシコ政府は、まったく武器を持たない市民を、大虐殺したのである。
300人以上の死者をだしたと言われるトラテロルコ事件がこの場所であったのである。

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そのトラテロルコの大虐殺の10日後、世界中の人々を集めたオリンピックが、何もなかったように、開催されたのである。

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今、なお、毎年、10月2日、学生達を中心としたデモがトラテロルコ三文化広場からソカロ広場まで行く。
政府による弾圧大虐殺事件は、今なお未解決で、メキシコ国民の心に大きな傷として残っている。

その3、それは、1985年9月19日のメキシコ大地震。
トラテロルコ三文化広場の後ろには高層ビルが建ち、それが、三文化の一つの象徴である。
だが、実は、この高層ビルはマンションビルであるが、メキシコ大地震の時にわずかに残った建物である。
1960年台、メキシコは、もっとも経済発展を遂げたと言う時代であったらしいが、その頃、ここに、政府は建売マンションの大団地の高層ビル群を建てた。
これらの高層ビル、欠陥住宅であったであろう。
1985年のメキシコ大地震で、最大の被害を出したと言われる、トラテロルコ高層マンションビル群の多くが瓦礫となった。
先日9月19日、メキシコシティで、大々的な地震防災訓練が行われた。

そんな、悲しい歴史を刻んだ場所、トラテロルコ三文化広場であるが、
先住民の文化のアステカのトラテロルコの遺跡は入場料無料で、遺跡を回れるので、中まで入って是非見学してください。
植民地時代の文化として、征服当時の16世紀初めの古いサンティアゴ教会。もちろん、メキシコの教会は拝観料取りませんので、拝観してください。
そして、近代文化を現す高層ビル。すぐ横に立つ高いビルは、昔の外務省のビルだったものだが、現在はメキシコ大学の文化会館です。
この中に3つの博物館が作られたので、是非ここも見学する事をお勧めしたい。入場料は3つの博物館を見て30ペソですが。

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博物館1は、1968年のトラテロルコ事件を扱った博物館。説明がスペイン語なのであるが、写真だけでも見る事で、当時の出来事を知る事ができると思う。

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博物館2は、トラテロルコ考古学博物館。資料は国立人類学博物館のように多くはないが、結構興味深いと思う。

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博物館3は、美術館で現代アート BLAISTEN コレクションであるが、アート好きの人には、いいだろう。
        メキシコに滞在した日本人画家、北川民治の絵が一枚あります。
        日系画家、ルイス西川の作品もあります。

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通り過ぎるだけでなく、ちょっとトラテロルコ三文化広場、足を踏み入れ、メキシコの歴史を知ってみませんか?





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サッチー

メキシコに語学留学後、1977年に渡航。のべ28年間メキシコ生活。現在、観光ガイドの仕事をしている

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