ヤギ飼い・牛飼い・馬飼い

「アルプスの少女ハイジ」の登場人物である少年ペーターが羊飼いではなく「ヤギ飼い」であるということは、スイスに来てから知ったちょっと驚きの事実だった。

ハイジ(スイスでは「ハイディHeidi」と言わないと通じない!)はもちろん架空のお話だが、ストーリーに登場するヤギの飼育を始めとする生活風景は、20世紀前半のスイスで実際によく見られた典型的なもの。ヤギの飼育には牛などの家畜のように広い牧草地を必要としないため、自分の土地を持っていない貧しい人々にも飼うことができたのだ。

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彼らにとってヤギはいわば牛の代わりで、乳や肉などの食材を提供してくれる貴重な存在。そんな各家庭のヤギを朝集めて高原に連れて行き夕方に戻ってくるのは、当時の子供・特に男児が担った重要な仕事のひとつ。1950年代半ばに通年の学校制度が導入されるまでは、ペーターのようなガイセンブーベンGeissenbuben(ヤギ使い少年)が実際に多く存在していたのだそうだ。

スイスには現在およそ8万頭のヤギがおり、今も牛や羊などと並んで家畜として飼育されている。

農業従事者ではない一般のスイス人が生活のためにヤギを飼う必要性はもはやなくなっているが、ヤギをいわゆる「ペット」に近い存在として飼うことは今でも決して珍しくない。

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しかしスイス全土的なレベルで家畜といえば、やはり牛と羊と豚。

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さすがにチューリッヒやジュネーブの中心市街地でこれらの家畜を見ることはないが、ちょっと郊外に出るとすぐに色々な動物の姿が目に飛び込んでくるのがスイスらしい所だ。

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スイスには家畜の飼育方法にかなり厳しい規定があり、連邦獣医局BVETのウェブサイト掲載情報(リンクは本文最下部参照)を見ると、例えば牛や羊は「年間最低90日間屋外を自由に歩かせなければならない(うち最低30日間は冬期に外に出す)」という記述がある。羊については、2018年以降は畜舎内で繋いで飼育することも全面的に禁止になるそうだ。

その他よく見られるのは馬。スイス人にとって馬はちょっと特別な存在で、乗馬や馬の飼育が「生き甲斐」になっている人が本当に大勢いる。好きな動物として馬を真っ先に挙げる人も大変多く、犬と並ぶ人間の良き伴侶としての地位を確実なものにしているといっても過言ではない。

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乗馬や馬の飼育というのは私達日本人にとっては縁遠く、いわゆる「リッチな人限定」なイメージがあるが、スイスでは決して特殊な趣味ではない。私の住む村は馬飼いの比率が特に高く、更にすぐ近くにはスイス最古のフォーレンワイデFohlenweide(繁殖や訓練を始め、個人が所有する仔馬を一定期間預けて集団生活させる「馬の幼稚園」や老馬の静養・乗馬レッスンなど、馬関連の幅広いサービスを提供する専門施設)があるということもあって、馬がいる風景はイコール村の日常だ。

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スイスの農村には、これら以外にもロバやアルパカ(!)など興味深い動物がいっぱい。身近な野生動物については、また別の機会に改めてご紹介したい。

記事執筆参考資料・出典およびウェブリンク

http://www.nutztiere.ch/

連邦獣医局BVETによる、スイスにおける家畜および産業動物についての情報ポータルサイト(独語・仏語・伊語)

フォーレンワイド・ワインフェルデンFohlenweid Weinfelden(独語)

http://www.fohlen-weid.ch/

スイス最古・1894年設立のフォーレンワイデ施設

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Asami AMMANN-HONDA

スイス東部トゥールガウ州の農村在住。元書店員、現在は兼業主婦(介護補助士&日本語教師&日独英通訳)。趣味はスポーツ・園芸・料理、専門は音響映像技術。

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