公開日:
最終更新日:
山形で「冬の農業」体験!そしてわかった事。
物見遊山の観光ツアーではものたりない・・・
たびこふれ編集部のシンジーノです。
"モノからコトの消費へ"とか言われて「体験型ツアー」もちらほら出てきているようですが、実際、何をどこまで体験できるのか、そもそも体験は面白いのか・・・
ってことで「体験ツアー」に同行取材してきました。
阪急交通社 仙台支店が企画した「山形冬の農業体験モニターツアー2日間」です。
結論から言いますと、笑いや歓声、温かさで充ちたツアーでとっても面白かったです。
みなさんにもぜひ紹介したいと思います。
<体験したこと>
①山形といえばまずは"いも煮"
②みんなでワイワイ"ひっぱりうどん"
③秘伝豆選別体験
④雪下キャベツ堀り収穫体験
⑤山形そば打ち体験
体験会場は山形駅から車で約30分の村木沢地区にある「農事組合法人 村木沢あじさい営農組合」さんです。
農業体験の前に山形郷土料理でお昼ごはんです。
いも煮
山形といえばまず浮かぶのが"いも煮"ですよね。牛肉と里芋とネギ等を醤油味で煮込んだ料理です(地方によっては味噌味だったり、豚肉だったりします)。ここのいも煮の特徴は、「悪戸いも」という、知る人ぞ知る里芋を使っていることです。悪戸いもはねっとりとおもちのような食感で、いも煮にぴったりの里芋でした。
「悪戸いも」とは
大鍋で煮るからこそ、この美味しさが出るんでしょうね。
どうですか、牛肉たっぷりで食べ応えがあります。入っている芋が例の「悪戸いも」です。
ひっぱりうどん
こちらもケンミンショーなどで紹介されましたが山形ならではの郷土料理です。農業で忙しい時期、農家の奥さんも農作業に従事していますので食事を作るのに時間をあまりかけられません。簡単に出来て大勢で一気に食べられる料理が求められ、ひっぱりうどんが生まれたそうです。一風変わった名前のこのうどんの特徴は、大鍋でうどんを茹で、市販の麺つゆに納豆、サバ水煮缶(これがユニーク)、生卵を入れぐちゃぐちゃにしてスタンバイし、その椀の中に鍋からうどん を箸でひっぱりこむよう入れ、更にぐちゃぐちゃとかき混ぜて出来上がりです。納豆と生卵がうどんに絡みつき、和風カルボナーラのような味わいです。そして「なんなの~?」と思わず口に出てしまうほど意外な取り合わせのサバ缶がうどんと合うのです(イヤほんとに合うんです)。
納豆、サバ缶、ネギが具です。
具をお椀に入れ、市販の麺つゆと生卵を加えて。。。ぐちゃぐちゃにかき混ぜる!
大鍋の茹で上げうどんを箸でお椀に滑らせるように引っぱりこみます。
それをさらにぐちゃぐちゃとかき混ぜてできあがりです。
みなさん、思い思いにお好みで具をお椀に入れます。
付け合わせで出されたお漬物がまた美味しかった!
ひっぱりうどんは熊谷で行われた「うどんサミット」にも出店していました。・・・うどんサミットin熊谷の記事
では腹ごしらえできたらいよいよ体験へ
秘伝豆選別体験
私はこの名前を聞いた時、「豆を選別する"秘伝の技"があるのかな?」と思ったのですが、そうではなくて豆の名前が「秘伝豆」でした(笑)秘伝豆とは晩生種の大粒の豆で、枝豆としても大豆としても食べられますが、短い時期しか収穫できない「幻の豆」というような意味から秘伝という名がついたそうです(諸説あり)
豆を収穫する時、どうしても商品化には不要な豆(割れ、虫食い、変色など)が混じることがあります。それは機械では選別しきれず、人の目で見て選り分けていくしかないそうで、今回はその選別作業を体験しました。地味で細かい作業で皆さん最初は難しかったようですが、徐々にコツがわかってくると作業が面白くなり、大袋に入った30kgの豆は30分位の間に選別されました。選別した豆を袋詰め、計量し、商品シールを貼って作業は終了です。
選別方法の説明を熱心に聞きいるお客さま。
選別した豆を袋に入れ、計量します。
だんだん慣れてきて皆さん楽しそうでした。やればやるほど面白くなるみたいです。
商品シールを貼って段ボール箱に収納して一連の作業は終了です。
雪下キャベツ堀り収穫体験
山形県は雪深いところで、畑には雪が降り積もり、白くすっぽりと覆われます。それは天然の冷蔵庫となり、雪中のキャベツは冷たくても凍らない、いわばチルドの状態で保存されます。この体験では雪の積もった畑の中に長靴で入っていき、スコップでキャベツを掘り起こし収穫します。私も穫れたてのキャベツを頂きましたが、甘くみずみずしかったです。よくテレビ番組でレポーターが獲れたて野菜を食べて「あまーい!」なんて言ってますよね。あれ見て私などは「ホントかよっ !」って突っ込みを入れていましたが(笑)ホントでした。(食レポーターの皆さんごめんなさい!)ちなみに冬に雪がたくさん降って畑を覆うと次の夏は虫が発生しにくくなるそうです。自然の力ってすごいですね。
雪で覆われた畑の中に入っていきます。
組合の職員の方が見本を見せてくださいました。穫れたてのキャベツをかじります。
キャベツを傷つけないようにスコップで掘り起こしていきます。
「雪下キャベツ、採ったど~!」
山形そば打ち体験
そば打ち体験を指導されたのは「あじさい営農組合」の佐藤さんと森田さんでした。佐藤さんが一番山形なまりが強く、お客さんは仙台の方でしたが、何を言っているのかわからず「???」。会場は終始笑いにつつまれていました。
こちらがそば打ち名人の佐藤さんです。
こちらが森田さん
こね鉢にそば粉と小麦粉をいれ、水を回し入れていきます。
ハイ、ポーズ!ありがとうございます。
板についてますね~
みなさん熱心です。
そば打ち工程の中で一番大切なのは「水回し」といって粉に水をなじませる時だそうです。
素人はついつい早く粉をまとめてしまいたくなるのですが、ここでしっかりなじませないと茹でた時、そばが切れやすくなるそうです。
そぼろ状になるまであせらずじっくりとかき混ぜていくのがコツだそうです。佐藤先生の手つきを見ようとみなさん自然に周りに集まってきます。
伸ばしに入ります。
普段からそば打ちをやられているのかな。手さばきが鮮やかでした。
お母さん、かっこいい!
そばの太さがマチマチでもそれはご愛嬌。大鍋で茹でに入ります。茹で時間は1分~1分半でいいそうです。
さあ、できあがり!どうです、立派なものでしょう?
ご夫婦二人三脚で。こういう体験をすると夫婦仲がよくなるかもしれませんね(笑)
ご自分で打ったそば、それは美味しいに決まってますよね。
お客さんが打たれたそばをご相伴にあずかりました。皆さん想像以上にお上手で美味しかったですよ~
農業体験の中では、「秘伝豆選別」と「そば打ち」がお客さんたちは格別楽しかったようで、笑いと歓声に包まれていました。
後方真ん中にいらっしゃるのが村木沢あじさい営農組合の代表理事をされている開沼さんです。楽しく軽妙な語り口で啓扇桜の説明をしてくださいました。
このモニターツアーがなぜ行われたのかについて触れておきたいと思います。
今、農業は後継者不足や不耕作地などの問題を抱えています。これらの問題を解消するために平成25年農事組合法人 村木沢あじさい営農組合が設立されました。「地域の農業をみんなで守る」を合言葉に若者の新規就農をすすめ、消費者交流や農業体験を通して、農地、水、環境保全活動を行い、豊かで住み良い地域づくりに貢献することを目指しておられるそうです。
今回はそのプロジェクトの一環として冬の農業・観光の体験プログラムを提供するモニターツアーが企画されました。
<取材者シンジーノの感想>
お客さんも現地受け入れの営農スタッフ、農家の方々も最初はお互い緊張されていたようですが、ツアーの途中からどちらもノリノリで愉しんでいるという雰囲気でした。会場も和やかで微笑ましく、良い空気が漂っていました。私は農家の方々に抱くイメージは、どちらかというと人見知りでおとなしい人が多いような印象でした。確かに最初はそういうムードでしたが、農業体験が進むにつれて 、だんだん変わっていったように感じます。それは訪れたお客さんが農家の人のお話を聞いて「へえ~っ」と感心したり、驚いたりする反応が農家の人たちからすると新鮮だったり、そば打ち体験では「先生、さすが!」「すごい!先生の打ったそばはやっぱり違いますね~」などの声がかかると、とっても嬉しそうだったのが印象的でした。
ツアーの始まりと終わりではお客さんも農家の人たちも表情がずいぶん変わっていましたね。
私たちはスーパーで野菜を買う時、つい価格だけで選んでしまいがちですが、その野菜がどのように作られたのか、そこにはどんな物語や苦労があるのか、それらを知り、できれば自分でも体験してみてその本当の価値を知る。そんな相互理解や共感のようなものが生まれたらいいだろうなと思いました。日本の農業を子供たちの世代へ受け継いでいけるヒントのひとつが今回の農業体験モニターツアーには秘められているように感じました。それはお仕着せでなく、説教的でもなく、楽しく体験しながら共感が生まれる。そんな絆で日本が結ばれたら・・・
阪急交通社では今回の体験モニターツアーは試験的に行いましたが、これからも体験型ツアーを地元の農業組合や自治体と連携し企画していきたいと仰っていました。
村木沢あじさい営農組合のサイトはこちら
おまけ
村木沢営農組合の近くには百目鬼(どめき)温泉という温泉があります。ほとんど地元の人しか行かないような畑の中のローカル温泉です。バスが建物についた時、お客さんから「え~ こんなとこ~?」という声が挙がりました。しかしこの湯は「3分以上浸かるのはお控えください」と書かれているほど温泉成分が濃い温泉なんです。広い露天風呂からは蔵王連峰を眺めることができ、私も実際入ってみましたが出た後、ずっと体がポッポッとして身体の芯から温まりました。
→百目鬼温泉の記事はこちら
山形の観光地と言えば、山寺(立石寺)ですね。今回のモニターツアーでは雪の山寺にも訪れました。五大堂からの冬ならではの風景をお楽しみください。
Ranking山形記事ランキング
-
シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。