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最古のインスタント食品!?「トラハナ」に注目!
ようやく春の足音が聞こえてきたものの、まだしばらくは温かい食べ物でほっこりしたい季節。ギリシャで冬によく食べられるコンフォートフードのひとつが「トラハナのスープ」です。
ギリシャで独自の発展を続ける、東地中海の伝統食品
国によって名前や製法などさまざまですが、トラハナとは東地中海沿岸や周辺国で食べられるパスタのような伝統食品です。たとえばお隣トルコでは、タルハナと呼ばれ、主にスープとして食べられています。もともとは遊牧民が乳の保存のため、そして、持ち運びに便利で調理も簡単な食品として作り始めたとされる、いわば「最古のインスタント食品」。とは言っても煮る時間は普通のパスタほどはかかるのですが、栄養価が高く腹持ちのいいお手軽な食べ物なのです。
トラハナの種類
分類上は一応パスタとされるトラハナは、そぼろのような見た目をしています。ギリシャで作られるトラハナの種類は大きく分けて「トラハナス・グリコス」(スイートトラハナ)と「トラハナス・クシノス」(サワートラハナ)があり、グリコスは挽き割り小麦を新鮮な乳で煮てから乾燥させたもの、もしくは小麦粉やセモリナ粉と牛乳(または羊乳など)で作った生地を乾燥させて砕いたもの。対してクシノスはその名の通り酸味がありますが、こちらはセモリナ粉または小麦粉に発酵乳(バターミルクやヨーグルト)を加え捏ね、発酵させた生地を乾かしてから砕いてそぼろ状にしたものです。
また、その他バリエーションとして、トルコのタルハナのように野菜のピュレや香辛料と小麦粉の生地で作られたものや、クレタ島独自の粗挽き小麦と発酵乳で作るクシノホンドロスなどがあります。
スーパーでよく見かけるヴラハというブランドのサワートラハナ。
こちらは粒が比較的しっかりとしたタイプのサワートラハナ
基本的な食べ方
トラハナの最もベーシックな食べ方はスープ。特にサワートラハナや野菜入りのトラハナでよく作られます。中でも一番シンプルな作り方は、お湯を沸かしてトラハナを加えて煮るだけ。粒の粗さによって10分~20分ぐらい、時々かきまぜながら静かに煮てできあがり。ドロッとしていて、ちょっとお粥のような感じです。
ギリシャ人はこのトラハナスープだけで簡単に食事を済ませることもあって、風邪をひいたり調子が悪い時にもトラハナのスープはよく食べます。水だけで作るトラハナのシンプルな美味しさも捨てがたいですが、牛乳またはブイヨンを加えて煮たり、仕上げに砕いたフェタチーズやバター(もしくはオリーブオイル)を加えるとさらに美味しいです。また、肉や野菜のスープに加えたり、煮込みの残りの汁にトラハナを加えるのもおすすめ。
その他の使い方
トラハナとフェタチーズのパイ
トラハナはスープだけでもさまざまなバリエーションが楽しめますが、これだけではありません。他国ではここまで幅広い使い方はされていないようですが、ギリシャでは米やパスタのようにも使われるのがトラハナです。たとえばスタッフドベジタブルのフィリングとして。また、惣菜パイに具の水分をとるために少量加えたり、メインの具として煮たトラハナをチーズや溶き卵と混ぜて使ったりします。他には野菜や肉の煮込みに加えて栄養もボリュームも満点の一品に。また、スイートトラハナでプディングのようなお菓子を作る地方もあります。
クレタ島の郷土料理、エスカルゴとクシノホンドロス
モダンギリシャ料理でも注目の食材
伝統的な食品や料理にアレンジを加えたモダンギリシャ料理の世界でも、トラハナはよく使われる食材のひとつです。特に、定番となったのが「トラハノット」。リゾットを米の代わりに大麦粒型パスタ(米粒型パスタ)で作る「クリサロット」に続き、トラハナで作った「トラハノット」も近年よく見かけるようになりました。トラハナ自体に独特の風味があるため、深みのある味で美味しいです。
料理好き・各国料理好きの方におすすめのお土産です
乾物なので持ち帰りに便利なトラハナは、料理好きな方へのお土産としても面白い食材です。ベーシックなスイートトラハナやサワートラハナは大抵のスーパーマーケットで売っていますし、クシノホンドロスは地方特産品を取り扱うお店やクレタ島食品店などで。また、アテネ中心エリアでよく開かれている物産展(シンタグマメトロ駅構内など)でも、地方の手作りパスタと並んでトラハナが売られています。
以前ご紹介したコロナキ地区のコスタレロス・チーズショップ&デリ(Patriarchou Ioakim 通り32番地)では、量り売りのトラハナも販売。
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アナグノストゥ直子
- アテネ在住。主婦業の傍ら、ライター、リサーチャー、コーディネーターとしても活動する。ブログ「ギリシャのごはん」にてギリシャ料理レシピやおいしい話題を発信中。