ギリシャのクリスマスに食べる「キリストのパン」と、アテネのクリスマス風景

ギリシャのクリスマスの伝統的なパンって？

ギリシャにおいて主食と呼べるものは、やはりパンだと思うのですが、日本で米がそうであるように、ただ単に日々の食事の基礎という役割の他、宗教行事にも関わりの大きいものです。教会にお供えするパンや、行事ごとに焼かれる特別なパンなど、見た目もさまざまですし、それにまつわる伝統も興味深いです。

冬の一大イベントであるクリスマスには「キリストのパン」（表記によって、フリストプソモまたはクリストプソモ）と呼ばれるパンが作られます。また、新年には「聖ヴァシリスのケーキ」（ヴァシロピタ）と呼ばれる菓子パンまたはケーキを食べる習慣があり、こちらはスーパーやベーカリーでよく売られているのですが、どういうわけかキリストのパンの方は市販されているのをほとんど見たことがありません。

夫の家族はフリストプソモを焼く習慣がなく、今まで食べる機会がなかったので、今回は自分で作ってみました。作り方には特に決まりはなく、地方や家庭によってさまざま。普通の食事パンに近いプレーンなものから、ドライフルーツなど入った菓子パンタイプまでバリエーション豊富です。

私は家族の好みに合わせ、朝食やおやつにぴったりな菓子パンのフリストプソモにしました。明確な決まりはないとは言え、特別な行事のパンですから、材料はよいものをというのがお約束。アニス、クローブ、シナモン、カルダモンなどの甘いスパイスをよく使うのも、クリスマスらしいです。

あまり凝ったデザインにするのは大変という理由もあり、定番かつシンプルなギリシャ十字のデコレーションにしてみました。いわゆるギリシャ十字は、縦横の長さが等しく、それぞれが中央で交差しているものをいいます。フリストプソモによく使われる十字の模様は、先端がそれぞれ二つに分かれてカールしているものです。殻つきの胡桃を埋め込むのも定番で（なかったので殻なしの胡桃を使ってますが）、生命の営みや豊穣をあらわすシンボルとされています。

それ以外では、一家の生活や職業に関わるモチーフで飾るのも伝統。たとえば農家なら、作物や家畜を模ったモチーフをパン生地で作りデコレーションします。

「キリストのパン」にまつわる決まりごといろいろ

フリストプソモは、食べる時にもいろいろな決まりがあります。これも地方や家庭により少し違ってくるのですが、「家長が十字を切ってから切り分ける」「毎年、一切れのフリストプソモと胡桃をイコンにお供えし、次の年のクリスマスに新しいフリストプソモと胡桃をお供えするまでそのままにしておく」「キリスト誕生の喜びをあらわす蜂蜜、繁栄をあらわすイチジクと一緒にフリストプソモを食べる」「フリストプソモはナイフで切るのではなく必ず手でちぎる」など。

また、一部地方に伝わる面白い伝統に「家長が頭の上にフリストプソモをかかげ、手で割って翌年の運を占う」というのがあります。

右手に持っている方のフリストプソモの方が大きければ、翌年の幸運と繁栄が約束されるそう。ギリシャ風のクリスマスパーティーをしてみたい方は、このフリストプソモの占いをしてみると盛り上がりそうです。