東京でミャンマーのもてなしと料理に心温まる。曙橋「ゴールデン バガン」

体にやさしくて幸せな気持ちになれる。私と食の好みが共通する食いしん坊のブロガーが新宿「ゴールデン バガン」のミャンマー料理をそう称賛。興味をもち、ミャンマー料理のことを何も知らずに訪ねましたが、豆や発酵食材を用いた料理は驚きのおいしさ。店を営む夫妻の温厚な人柄にも触れ、心も体も安らぎで充たされる豊かな時間を味わいました。

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<靖国通り沿いに立地する店。都営新宿線・曙橋駅から徒歩約7分。周辺は新宿の喧噪から離れ、落ち着いた雰囲気です>

シェフとマダムの笑顔になごむ

ミャンマー料理レストラン「ゴールデン バガン」の扉を開けると、厨房に立つシェフのサイさんと、ミャンマーの文化交流ツアーなど旅行の企画、現地添乗もおこなうマダムのモモさんが穏やかな笑顔で迎えてくれました。ご夫妻ともミャンマー東部のシャン州出身。日本に移住し20年以上が経ち、日本語は堪能です。初対面でも気さくに話しかけてくれて自然と気持ちがゆるみます。知人の和食店を居抜きして開いたという店は気取らずくつろげる和の間取り。インテリアにミャンマーの工芸品や地図や旅行情報の資料が飾られ、東京にいながらミャンマーの文化を観て感じ、過ごせる空間になっています。

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ミャンマーの工芸品で彩られる店内。尋ねれば、丁寧に説明してくれます。

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1991年に来日して以来、和食の経験を26年積んできたサイさんと、日本とミャンマーの文化交流に尽力しているモモさん。2人の温厚な人柄が料理をいっそうおいしく感じさせます。モモさんは昼に週3日ほど店に立つそう。

豆をたっぷり使う料理

ミャンマーは世界でインドに次ぐ豆の生産国。料理にもひよこ豆、えんどう豆、いんげん豆、レンズ豆、大豆、緑豆などさまざまな豆をふんだんに用いています。この店を初めて訪れたランチタイムに口にしたのも、ひよこ豆がたっぷりのチャーハンでした。ほのかに甘い豆、ごま油で炒めたにんにく、揚げた玉ねぎ、塩味抑えめなご飯の調和が穏やかでやさしい。そして日本人は好きだろうからと卵をトッピングするアイデアも心憎い。和食店での調理経験が豊富なサイさんが日本人向けにアレンジする一皿に魅了されました。

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<ひよこ豆のチャーハン「ペー・ピョッ・タミンジョー」。ミャンマーではミルクティーと一緒によく食べる朝食だそう>

ふんわりした揚げ物が人気

ランチ定番の一皿から感じ取れたサイさんのバランス感覚、食べる人の健康への気遣いに心つかまれた私はいろいろなミャンマー料理を味わってみたいと願い、ディナータイムの取材を相談。サイさんに特徴的な料理を三品厳選してもらい撮影し、いただくことにしました。はじめの一皿は「トフー・ジョー」です。

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<お酒が進むと店でも人気の「 トフー・ジョー」>

これはひよこ豆でつくる豆腐を揚げたシャン州の代表的な料理。油で二度揚げしますが、新鮮な油を使っているのでしょう。外食の揚げ物にありがちなくどい感じはなく、ふんわりとした食感と柔和な味わいに感銘の声が漏れ出ました。「トフー」はシャン州発祥の食品で、ひよこ豆でつくられるそうです。豆腐に語感が似ていますが別もの。ミャンマーには日本の豆腐と同じく大豆でつくる「ペービャー」という食品もあるとか。

発酵食のサラダ

ミャンマーでおなじみの料理に揚げ豆と発酵した茶の葉のサラダ「ラペットッ」があります。摘んだ茶葉を飲むためだけではなく、食べるために半年から1年かけて発酵させる。そんな深い食文化があると知り、興味を抱きつついただきました。

そら豆、ごま、大豆、ひよこ豆、ピーナッツなどを揚げて干しエビやトマト、きゃべつに和えている。豆の塩味とカリカリとした食感。青とうがらし、にんにくのアクセント、さらには発酵茶葉やレモン汁の酸味が顔を覗かせ、同時に味を引き締め、食欲を促してきます。どんどん箸をのばしたくなります。お茶請けとしてミャンマー人は好んで食べるそうですが、仕切られたプレートの上で食材を別々に盛るのだとか。サイさんはそれでは味気ないと、彩りも意識しながら、目でもおいしく味わえるよう、食材を分けずに一皿に混ぜて供しています。

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<ミャンマー人の大好物「ラペットッ」。ヘルシーでありつつ、酒の肴としても最高>

ミャンマーの味をきちんと伝える

サイさんは本場の味を再現することも心がけています。一部の食材や調味料など味の決め手になるものはミャンマーから取り寄せつつ日本の食材を使い、両国の食文化の融合をはかっているのです。そのぶれない考えがことさら伝わってきたのが、ミャンマーの発酵竹の子と日本の豚肉を煮込んだ「ワエッターミッチン」という料理。やわらかい竹の子の酸味と口に入れるとほぐれるトロトロの豚肉。独特のシャン風味が体に沁み入るように感じ取れ、こんな温かな料理があるシャン州を旅してみたくなりました。

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<これからの季節にぴったりのシャン風煮込み料理「ワエッターミッチン」>

ミャンマーには納豆がある!

納豆は日本独自の食文化ではなく中国に源流があり、ミャンマーでは多様な納豆がつくられ日常食になっています。そんな納豆のルーツを取材した辺境作家が高野秀行さん。著書『謎のアジア納豆』(新潮社)で詳しくレポートされています。この本にもシャン州の納豆が紹介されているし、「ゴールデン バガン」にも高野さんは来られるそう。

それで、ミャンマーの納豆とはどのようなものなのか知りたくなり、納豆せんべいとピーナッツをミックスした「ペーボ・アソンジョー」をオーダー。板状の納豆を口に入れると、まず濃い味わいに驚きます。パリパリとした食感も心地よく、これまたお酒によく合うのです。淡白な味わいの日本の豆腐に比してしっかりした味付け。同じ食材でもまるで違う食べ物に変わる。異国の食文化に触れ、ますますミャンマー・シャン州への関心が強まりました。

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<毎日の晩酌で食べたくなる親しみを覚えた「ペーボ・アソンジョー」。家に持ち帰りたい!>

豆、発酵、保存食。ミャンマー料理の特色を「ゴールデン バガン」で味わい体感した取材。とても食べやすく、同時に独特の食文化も感じられました。そして、体を気遣った食材や調味料の作用か、食後にしばらく幸せな余韻が残ったことも報告します。日本人の根源的な食の嗜好によく合うサイさんの料理。私はどこかで口にしたような懐かしさも覚えたのですが、その理由を探りたくて、これからも頻繁にこの店へ足を運ぶことになりそうです。

ゴールデン バガン ミャンマー アジアレストラン

住所:東京都新宿区富久町8-20
電話:03-6380-5752
営業時間:ランチタイム11:30~14:30、ディナータイム17:00~22:00
定休日:日曜・祭日

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